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保育現場の産休取得において「忙しいのに取得しても大丈夫だろうか」「保育士も産休を取れるのだろうか」と考えている保育士の方もいるでしょう。しかし、産休は当然認められる権利であるため、取得する際は条件や必要書類、利用できる制度などを押さえておきましょう。

当記事では、保育士の産休について基本的な条件から取得するときの流れを説明します。周囲との関係を大切にしながら産休を取るポイントも解説しているので、産休の制度を詳しく知りたいという保育士の方は必見です。

保育士は産休が取れる?

産休の取得は、保育士として当然認められる権利です。しかし、結婚・出産を機に退職する人が多いことや、深刻な人手不足から、「産休を取りづらい」と感じている保育士の方も少なくありません。

そもそも産休制度とは、出産・育児のための休業制度です。出産前の準備期間である「産前休業」、産後の身体を回復させる期間である「産後休業」を合わせて産休と呼びます。

(出典:厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000563060.pdf

最近では、産休育休制度における取得率向上や、職場復帰のための環境整備に力を入れる保育園も増えています。「子どもを育てながら働きたい方は、就職・転職の際に前例や取り組みを確認しておきましょう。

保育園での産休の取得条件

産休は労働基準法によって定められている制度であり、会社ごとに取得条件などが定められているわけではありません。そのため、雇用形態・雇用期間などに関係なく、派遣保育士・パート保育士を含むすべての保育士が産休を取得可能です。

対して、育休の取得にはいくつかの要件が定められています。育休の取得要件を満たしていない場合は、産休は取得できても、育休は取得できないケースもあるため注意が必要です。

(出典:厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000563060.pdf

保育士の産休中の給料はいくらになる?

保育園には、産休中の保育士に対して給料を払う義務はありません。代わりに、保育士が加入している健康保険・雇用保険から、給料のいくらかが支給されます。

出産に伴って利用できる制度にはさまざまな種類があります。産休取得を検討している方は、それぞれの内容を十分に押さえておきましょう。

・出産育児一時金
妊娠4か月以降に出産した人に対して、加入している健康保険または国民健康保険より支払われる手当です。保険適用のない分娩費用をカバーすることを目的としており、支給金額は子ども1人につき42万円となります。

(出典:厚生労働省「出産育児一時金の支給額・支払方法について」/ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shussan/index.html

・出産手当金
出産のために仕事を休んだ場合に、加入先の健康保険から支給される手当です。出産日以前6週間から出産日の翌日以降8週間までの間で休業していた期間につき、1日あたり標準報酬月額の3分の2が支給されます。

(出典:全国健康保険協会 協会けんぽ「出産手当金について」/ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/

・医療費控除
医療費控除の対象となるのは、妊娠と診断されてからの定期検診・通院費用、入院の際のタクシー代、入院中の食事代などです。

(出典:国税庁「No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例」/ https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1124.htm

・社会保険料の免除
産休中や育休中は、健康保険料・厚生年金保険料の支払いが免除されます。また、勤務先から給与が支払われていない期間は、雇用保険料の負担もありません。

(出典:厚生労働省 都道府県労働局「育児休業、産後パパ育休や介護休業する方を経済的に支援します」/ https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_r02_01_04.pdf

保育園では産休はいつからいつまで休める?

産休の休業期間は労働基準法によって定められています。そのため、いつからいつまで休めるかは、保育業界をはじめとするどの業界の職種でも同じです。

労働基準法では、産休期間について以下のように記載しています。

    ・使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
    ・使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

(引用:e-GOV法令検索「労働基準法」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049/引用日2022/08/31

産前休業は出産予定日から6週間前であり、実際の出産日を含みます。産後休業は出産日の翌日から8週間です。

出産予定日よりも早く産まれた場合、産前休業が前倒しで短くなり、翌日から産後休業開始となります。出産予定日を超過した場合は、実際の出産日まで産前休業が延長されます。いずれの状況でも、産後休業の日数には影響しません。

双子以上を妊娠した際は、産前休業は出産予定日の14週間前からとなります。

厚生労働省委託の母性健康管理サイトを利用すれば、出産予定日を入れるだけで産休期間を調べることが可能です。

(参考:妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ「産休・育休はいつから?産前・産後休業、育児休業の自動計算」/ https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/leave/

保育士が産休を取得するときの流れ

保育士が産休を取得する際の流れは、以下の通りです。

1:園長や施設長に相談する
まずは園長・施設長に妊娠と産休取得の希望を伝えましょう。産休取得手続きには時間がかかること、デリケートな妊娠初期には仕事面で配慮してもらう必要があることから、相談は早めにするのがおすすめです。
2:産休取得の申請をする
産休取得の申請には、申請書の提出や社会保険料の免除手続き、出産手当金の申請などがあります。また、育休を取得する場合は産休とは別で手続きが必要となるため注意しましょう。
3:職員・保護者へ周知する
園長・施設長と報告時期を相談し、職員や保護者に産休取得の旨を周知します。職員へは会議や申し送りの場で、保護者へはクラス通信などの書面や懇親会の場で報告するケースが多い傾向にあります。

保育士が産休取得に必要な書類

産休取得に必要な書類は、以下の通りです。

・産前産後休業届
保育園から受け取り、必要事項を記入して提出します。フォーマットは勤務先によって異なります。

・健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書
保育園から受け取り、必要事項を記入して所轄の年金事務所に提出する書類です。また、育休取得を希望するのであれば「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」の提出も必要となります。

保育園から書類を受け取れなかった場合は、いずれも日本年金機構のホームページからダウンロード可能です。

(参考:日本年金機構「産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」/ https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/menjo/20140326-01.html

保育士の産休中の雇用について

産休中は、法律により解雇の制限・無効が定められています。根拠となる条文は、以下の通りです。

    使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。

(引用:e-GOV「労働基準法」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049/引用日2022/08/31

    妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。

(引用:e-GOV「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000113/引用日2022/08/31

仮に保育園側が産休中の保育士に解雇を言い渡しても、法律により解雇は無効になります。

また、産休中に限らず、妊娠・出産を理由として不利益な扱いをすることは法律違反にあたります。例として挙げられるのは、つわりや切迫流産を理由に退職を強要する、産休・育休の取得を理由に通常あり得ない配置異動を行うなどです。

(出典:厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000563060.pdf

保育園で産休を取るときのポイント

近年、人手不足に悩まされる保育園は非常に多い傾向にあります。勤務人数に余裕がない職場では、産休・育休の間だけ代わりの保育士を雇う、副担任をクラス担任にするなどの人事変更が必要です。

また、保育職はチームワークが求められる職業であり、個々の状況の変化を伝え合うことが重要です。

保育園で産休を取る際には、いくつか押さえておくべきポイントがあります。ここでは、保育園で産休を取るときのポイントを4つ解説します。

保育園には早めに伝える

妊娠が判明したら、職場には可能な限り早めに報告するのが賢明です。産休の取得が早い段階で分かれば、その後の業務の引き継ぎもスムーズに行うことが可能です。

また、時短勤務制度の利用を検討するなど、復帰後の働き方についても相談しておくことで、休業終了後も無理なく働くことができるでしょう。

感謝の気持ちを伝える

産休取得は当然認められる権利です。しかし、人手不足が深刻な保育現場では、日常保育や引き継ぎ業務において他の職員に負担をかけてしまうことは避けられません。復帰後も気持ちよく働くためには、周囲の協力を当たり前だと考えず、感謝の気持ちを積極的に伝えることが大切です。

具体的には、サポートや引き継ぎに対して感謝を言葉にしたり、休業開始前の挨拶の際に簡単なプレゼントを渡したりするのがよいでしょう。

職員間の関係を大切にする

妊娠中は、つわりやお腹の張りなど、予想できない体調の変化が起こります。日頃から職員とよい関係を築き、自身の体調について伝えておくことで、業務中も無理なく働けるようフォローしてもらえるでしょう。

また、産休に入ってからも日々の連絡や出産報告を怠らないことで、復帰後スムーズに働ける可能性が高くなります。

業務負担があるときは相談する

つわりやお腹の張りで業務が負担となる場合、担当業務変更などの配慮をお願いすることが可能です。また、電車やバスで通勤している方は、医師の指導によりラッシュを避けた出勤時間の調整もできます。

無理をすると切迫流産などの深刻な事態になりかねないため、体調に応じて園長・施設長に相談しましょう。

まとめ

産休は労働基準法によって定められている制度であり、雇用形態・雇用期間に関係なくすべての保育士が取得することができます。産休中は保育士が加入している健康保険・雇用保険から給料のいくらかが支給され、出産に伴って一時金・医療費控除などが利用できます。

産前休業は出産予定日から6週間前、産後休業は出産日の翌日から8週間となっており、出産予定日を超過した場合でも休業日数には影響しません。産休を取得する際は、園長や施設長に相談し、取得の申請をした上で周りの職員へ周知しましょう。

※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています