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病児保育士は、病気にかかっている・病気の回復期にある子どもを預かり、保護者に代わって保育や看護を行う保育士を指します。一般的な保育士とは異なる知識やスキルを要するものの、保育士資格を活かして働けるため、病児保育士への転職を考えている方もいるのではないでしょうか。

当記事では、病児保育士への転職を考えるにあたって、気になる給料相場・平均年収について解説します。主な仕事内容や1日の流れ、必要な資格なども解説するため、病児保育士を目指している・転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

病児保育士の給料相場・平均年収

病児保育士と一般的な保育士の給料には大差がありません。平均月収・平均年収は、勤務先の施設形態・勤続年数・雇用形態・能力などによって異なります。以下は、厚生労働省が発表した2022年における一般的な保育士の平均給与です。

一般的な保育士の平均給与
平均年収 平均月収 平均賞与
約391万円 約26.7万円 約71.2万円

(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html

参考として、全国の平均年収と平均賞与を男性・女性・男女平均に分け、以下に表としてまとめました。一般的な保育士の平均年収や平均賞与は、全国の「男性」や「男女平均」の金額よりは低いものの、「女性」に関しては大幅に上回っています。

全国の平均年収・平均賞与
性別 全国の平均年収 全国の平均賞与
男性 約563万円 約92万円
女性 約314万円 約44万円
男女平均 約458万円 約72万円

(出典:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」/ https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2022/pdf/000.pdf

病児保育に携わる場合、取得している資格によっては資格手当が支給されるケースが多く、給料も高くなります。また、医療機関併設施設の場合、勤務地や病院の規模によって給料が高くなる可能性もあります。

男女別にみた一般的な保育士の平均給与

男女別にみた一般的な保育士の平均給与について解説します。以下は、厚生労働省が発表した2022年における平均年収・平均月収・平均賞与をまとめた表です。

【男女別】一般的な保育士の平均給与
性別 平均年収 平均月収 平均賞与
男性 約404万円 約27.8万円 約70.8万円
女性 約391万円 約26.6万円 約71.2万円
男女平均 約391万円 約26.7万円 約71.2万円

(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html

一般的な保育士の平均給与を男女で比較すると、男性のほうが高い傾向です。男性の平均月収が女性よりも1万円以上高く、平均年収の男女差も10万円以上開いています。平均賞与は女性がわずかに男性を上回っています。

国税庁の調査によると、2022年の全国の平均年収は男性が約563万円、女性は約314万円です。男女間で200万円以上の差が開いています。一方、保育士の平均年収においても男女間で差はあるものの、差額は15万円程度です。

各種統計の数値からは、一般的な保育士の平均給与はほかの職種よりも男女間で差が小さく、特に女性の給与水準が高いことが分かります。

(出典:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」/ https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2022/pdf/000.pdf

エリア別にみた一般的な保育士の平均給与

一般的な保育士の平均給与は、エリアによっても異なります。以下は、関東における都道府県別の一般的な保育士の平均給与です。

【エリア別(関東)】一般的な保育士の平均給与
都道府県 平均年収 平均月収 平均賞与
茨城県 約374万円 約26.0万円 約61.2万円
栃木県 約384万円 約25.8万円 約74.5万円
群馬県 約375万円 約25.1万円 約73.7万円
埼玉県 約384万円 約26.3万円 約68.3万円
千葉県 約398万円 約27.0万円 約74.8万円
東京都 約451万円 約30.2万円 約88.4万円
神奈川県 約439万円 約30.8万円 約69.9万円

(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html

関東における平均年収は、東京都の約451万円が最も高く、神奈川県の約439万円、千葉県の約398万円が続いています。平均給与が400万円を超えているのは東京都と神奈川県の2都県のみで、最も低い県とは約65万~75万円前後の開きがあります。

平均月収は、神奈川県が約30.8万円で最も高く、2位は東京都の約30.2万円です。神奈川県の平均賞与は東京都よりも約20万円弱低いため、平均年収では順位が逆転しています。平均月収が高めの神奈川県や東京都と、最も低い県とでは約5万円の差があります。

統計から読み取れるのは、東京都や神奈川県といった都心の平均給与が高く、地方は低めという点です。ただし、平均月収が低い地方においても、賞与の金額が高い県では平均年収を押し上げています。

そもそも病児保育士とは?

病児保育士とは、病気にかかっている病児や、病気の回復期にある病後児を預かり、保護者に代わり保育や看護を行う保育士です。病児保育士の事業類型としては、「病児対応型・病後児対応型」「体調不良児対応型」「非施設型(訪問型)」の3タイプがあります。

以下では、病児保育士の仕事内容や働く場所、1日の流れについて詳しく解説します。

(出典:厚生労働省「病児保育事業」/ https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/teianbukai107shiryou2_2.pdf

病児保育士の仕事内容

病児保育士の仕事内容とは、病児や病後児といった子どもを預かり、保育を行うことです。検温や服薬の介助などは行うものの、医療行為には携わりません。子どもの病状が急変した際は、医療機関に連絡したり、連れて行ったりします。

病児保育では子どもの身体に負担となる遊びを避け、絵本の読み聞かせや動画鑑賞などを取り入れ、安静に過ごせる環境に置くよう心がけます。保育終了時には、子どもの状態や体調の変化などを保護者に伝えることも仕事の一部です。

病児保育士が働く場所は?

病児保育士が働く場所には、さまざまなところがあります。4つの例を紹介します。

    ・医療機関併設施設(病児対応型・病後児対応型)
    病院やクリニックなどの医療機関に併設されている病児保育の施設です。医師や看護師と連携しやすい点がメリットです。

    ・病児保育専門施設(病児対応型・病後児対応型)
    民間企業やNPO法人、自治体などが運営する施設です。看護師が常駐しています。

    ・一般の保育施設(体調不良児対応型)
    体調不良の園児を個室や専用スペースなどで保育する保育施設です。対応可能な基準は施設によって異なります。

    ・各家庭(非施設型)
    病気になった子どもの家庭を訪問し、保育を行います。

病児保育士の1日の流れ

病児保育士の仕事内容は勤務先によって異なるものの、おおまかな1日の流れがあります。以下は、1日の流れの一例です。

                                                                                                                                               
8:00保護者から子どもの状態を聞き取り、受け入れる
9:00検温と体調確認後、おやつを提供し、症状に応じた保育をする
12:00検温と体調確認後、昼食を提供
13:00子どもの昼寝時間に、連絡帳や日誌の記入など事務処理をする
15:00検温と体調確認後、おやつを提供
17:00子どもの状態を保護者に説明し、引き渡す

病児保育士は、子どもが安心して施設で過ごせるよう配慮して保育を行います。定期的な検温や体調確認は欠かせず、体調に応じたおやつや食事を提供します。

病児保育士になるために必要な資格は?

病児保育士になるために基本的に必要なのは、保育士または看護師の資格です。「病児保育士」という資格は存在しません。しかし、複数の民間団体が病児保育に関する資格を認定しており、持っていると就職・転職活動やキャリアアップに有利となる可能性はあります。

以下では3つの資格を取り上げ、それぞれの応募要件や取得までの流れ、特徴などの概要をまとめました。

                                                                                                       
認定病児保育専門士
認定団体全国病児保育協議会
資格取得の応募要件・保育士や看護師として、病児保育施設や病後児保育施設において常勤で2年以上、または非常勤で3年以上週20時間以上勤務している
・施設長の推薦状がある、など
取得までの流れ書類審査を経て資格認定講習会に参加

課題・研修レポートの提出、審査

面接と口頭試問

登録と認定手続き    
特徴取得に2年間程度必要
病気や体調不良についての専門知識が身につく
資格は5年間有効で、更新が必要    
                                                                                                       
医療保育専門士
認定団体日本医療保育学会
資格取得の応募要件・保育士資格があり、応募時に保育業務に従事している
・病児保育室・障がい児施設・病院・診療所などにおいて常勤で1年以上、または非常勤で年間150日以上かつ2年以上の保育経験がある
・日本医療保育学会における応募時の正会員歴が1年以上
取得の流れ書類審査を経て資格認定研修会に参加

課題・研修レポート提出

事例研修論文を提出、審査

口頭試問

登録と認定手続き    
特徴・取得に2年程度が必要
・看護や医療に関する専門知識が身につく
・認定日から5年通過後の年度末まで有効で、更新が必要    
                                                                                                       
認定病児保育スペシャリスト
認定団体日本病児保育協会
資格取得の応募要件高卒の18歳以上
取得の流れWeb講座を受講

1次試験と2次試験

24時間以上の実習またはオンライン実習    
特徴資格認定は2002年に終了

現在、保育士や看護師として働いており、病児保育士への転職を検討している方は、上記のような資格取得を目指すことで効率よく転職活動を進められるでしょう。

病児保育士になるために必要な資格とは?仕事内容や給料相場も紹介

まとめ

病児保育士の給料相場や平均年収は、一般的な保育士と変わりません。一般的な保育士の平均年収は約391万円で、全国の平均年収である約458万円(男女平均)を下回る数値です。しかし、資格の有無や勤務先の規模、勤務エリアによっては、一般的な保育士の平均年収より高い収入を得られる可能性もあります。

病児保育士になるには「病児保育士」という資格はないため、保育士または看護師の資格が必要になります。保育士の方は病児保育士に関係する認定病児保育専門士や医療保育専門士、認定病児保育スペシャリストなどの資格を取ることで、さらなるキャリアアップ、スムーズな転職活動が期待できるでしょう。

※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています