子どもを支援する施設はさまざまあり、放課後や長期休暇に利用できる施設を探した際にでてくる選択肢が「学童保育」と「放課後等デイサービス」です。言葉の意味合いが似ている施設のため、どちらを利用するか迷う方もいるかもしれませんが、それぞれの施設は対象者や支援内容、目的なども異なるため注意が必要です。
当記事では、学童保育と放課後等デイサービスの違いを項目に分けて解説します。利用に迷われている保護者の方はもちろん、どちらに転職するのが自分にあっているか検討中の方も、ぜひ一読ください。
目次
学童保育と放課後等デイサービスとは?違いを解説
放課後や長期休暇に子どもを預ける選択肢として、「学童保育(放課後児童クラブ)」と「放課後等デイサービス」があります。しかし、名称が似ていることもあり、違いが分からない方も少なくありません。
学童保育と放課後等デイサービスは、目的・対象者・支援内容などが大きく異なります。学童保育と放課後等デイサービスの仕事に興味がある方は、それぞれの違いを理解しておきましょう。
2つのサービスの違いを詳しく解説します。
目的
学童保育は、共働き家庭やひとり親家庭の小学生が安全かつ健全に生活するために設置されている施設です。子どもの生活を継続的に保障し、保護者の方の働く権利を守ることを目的としています。学校の教室や児童館、公民館などを利用してサービスを提供するケースが一般的です。
(出典:厚生労働省「社会保障審議会少子化対策特別部会資料 学童保育の現状と課題、私たちの願い」/ https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0918-11d.pdf)
(出典:厚生労働省「放課後児童クラブ関連資料」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000184120.pdf)
一方、放課後等デイサービスは、幼稚園および大学を除く学校に就学する障害児の利益保障や健全な育成などを目的とした施設です。共生社会の実現に向けた支援や保護者の方のサポートを行う役割も担っています。
(出典:厚生労働省「放課後等デイサービスの現状と課題について」/ https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000806210.pdf)
放課後等デイサービスは、開設にあたり必要な設備基準が細かく定められており、学校や児童館とは別の場所に設置されるケースがほとんどです。
事業が生まれた背景
学童保育が生まれた背景には、共働き家庭の増加によって子どもの安全と生活保障に対する社会問題があります。当初は、保護者同士の自主運営や市町村の独自事業として行われていました。平成10年度に放課後児童健全育成事業が法定化され、平成27年度には子ども・子育て支援新制度が施行されて現在に至ります。
(出典:厚生労働省「放課後児童クラブ運営指針解説書(改訂版)」/ https://www.mhlw.go.jp/content/000765364.pdf)
放課後等デイサービスは、平成24年度に児童福祉法が改正され、障害児支援の給付体系の再編・一元化が行われたことにより生まれました。未就学児の発達支援は「児童発達支援」、幼稚園および大学を除く学校に就学する子どもへの発達支援は「放課後等デイサービス」が行っています。障害児支援の体系の再編・一元化により、身近な地域で障害児支援が受けられるようになりました。
(出典:厚生労働省「障害児通所支援について」/ https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000811090.pdf)
対象者と利用定員
学童保育の対象者と利用定員は、下記の通りです。
対象者 | 留守家庭の小学生 |
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利用定員 | おおむね40人以下 |
学童保育は、保護者の方が労働や疾病、介護などにより昼間に家庭で適切な養育をできない場合が対象です。1施設あたりの利用人数は、おおよそ40人以下と定められています。
(出典:厚生労働省「放課後児童クラブ関連資料」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000184120.pdf)
放課後等デイサービスの対象者と利用定員は、下記の通りです。
対象者 | 幼稚園および大学を除く学校に就学する障害児 |
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利用定員 | 10人以上 |
基本的には就学後の6歳~18歳の子どもが対象です。福祉を損なうおそれがあると各事業所が認めた際は、満20歳までサービスを継続できます。
(出典:厚生労働省「放課後等デイサービスの現状と課題について」/ https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000806210.pdf)
(出典:厚生労働省「児童発達支援・放課後等デイサービスの現状等について」/ https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001023067.pdf)
支援内容
学童保育の主な支援内容は、下記の通りです。
- 学習サポート
- 遊びやスポーツの見守り
- 芸術活動の実施
- 社会性の育成
- おやつの提供
子どもたちは、宿題をしたり校庭や体育館で遊んだり自由にすごします。遊びの時間やおやつの提供時間などにはある程度ルールを設け、社会性を育む支援も行います。
放課後等デイサービスの主な支援内容は、下記の通りです。
- 自立支援や日常生活の充実につながる活動
- 豊かな感性を培う創作活動
- 社会経験の幅を広げるための地域交流
- リラックスできるような余暇の提供
利用するお子さんの特性や発達には個人差があるため、支援内容は一人ひとり異なります。児童発達支援管理責任者が作成した個別支援計画書に沿って支援を行います。
利用までの流れ
学童保育の利用までの流れは、下記の通りです。
1 | 学童保育施設または自治体に問い合わせて申請書類を入手する |
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2 | 申請書類を学童保育施設に持参する |
3 | 審査によって入所可否を決定する |
公営の学童保育を利用するには、保護者が労働や介護などにより子どもの養育ができないことを示す書類の提出が必須です。条件を満たせなければ入所は認められません。
民間の学童保育は、運営元によって必要な提出書類が異なるため、直接問い合わせが必要です。
放課後等デイサービスの利用までの流れは、下記の通りです。
1 | 自治体窓口へ相談し、受給者証の発行手続きをする |
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2 | 放課後等デイサービスの見学をする |
3 | 障害支援利用計画案を作成する |
4 | 受給者証が発行されたら放課後等デイサービスと契約する |
なお、受給者証を持っている方は、放課後等デイサービスの見学後に障害児支援利用計画案を作成するといった流れになります。自治体によっては、福祉関連の相談に対応する相談支援を実施しています。放課後等デイサービスの手続きをサポートしてもらうと利用がスムーズです。
利用可能日数
学童保育は、公立・民営どちらも利用可能日数に制限がありません。多くの施設では、土曜日や夏休みの受け入れも行っています。ただし、長期休暇のみの預かりを行わない施設もあるため、事前に確認が必要です。
放課後等デイサービスでは、利用可能日数に上限を設けています。厚生労働省が通知している利用可能日数の上限は、原則23日です。しかし、実際の上限は自治体が審査に基づいて設定するため、23日未満となるケースもあります。
料金
学童保育の料金は利用回数によって変わるものの、公営は月額4,000円~6,000円未満の施設が多く見られます。6,000円未満の間で料金を設定している施設は、全体の約46%を占めていることが特徴です。
(出典:厚生労働省「児童を対象とする給付事業等に係る費用負担の現状」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000024840.pdf)
民間の料金は運営元によって異なるものの、月額30,000円~50,000円が相場です。公営に比べて料金が高く設定されています。
放課後等デイサービスの自己負担額は、世帯の収入状況に応じて上限が設けられています。世帯の収入状況ごとの自己負担額の上限は、下記の通りです。
生活保護受給世帯 | 0円 |
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市町村民税課税世帯 | 4,600円(通所施設・ホームヘルプ利用) |
上記以外 | 37,200円 |
(出典:厚生労働省「障害者福祉:障害児の利用者負担」/ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan2.html)
自己負担額とは別に、おやつ代やイベント開催にかかる費用が発生することもあります。
放課後等デイサービスで働く保育士の給料相場|勤務するメリットも
保育士が学童保育・放課後等デイサービスで働く際に求められるもの
学童保育には、「放課後児童支援員」の資格保有者を最低2人配置しなければなりません。また、放課後等デイサービスには、「管理者」「児童発達支援管理責任者」「児童指導員または保育士」の配置が義務付けられています。配置が義務付けられている資格を取得している保育士の方は、転職や就職で有利になります。
学童保育・放課後等デイサービスで求められる人材像は、下記の通りです。
- コミュニケーション能力がある
- 相手の立場や気持ちに寄り添える
- 子どもや保護者の方と信頼関係を築ける
- 児童心理学について学んでいる
必須となる資格はないものの、子どもが楽しく安心してすごせるようにスタッフや保護者の方とコミュニケーションを図ったり連携したりする能力が必要です。
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まとめ
学童保育と放課後等デイサービスは、似ているように思われますが、目的や事業が生まれた背景、利用者、支援内容などそれぞれ大きく異なります。学童保育は共働き家庭やひとり親家庭の支援として設置されているのに対し、放課後等デイサービスは、障害者時の利益保障や健全な育成などを目的とした施設です。
保育士がそれぞれの施設で働くのに、必須となる資格はありません。しかし、施設に必要な資格を持っていれば就職・転職の際に有利になります。また保護者やスタッフとの円滑な情報共有などに必要となるコミュニケーション能力、相手の気持ちに寄り添う力なども求められます。
※当記事は2024年6月時点の情報をもとに作成しています