念願だった保育士を1年で退職。大人気保育系ユーチューバーはどうやって誕生した?|①保育系ユーチューバー・mocaちゃん

念願だった保育士を1年で退職。大人気保育系ユーチューバーはどうやって誕生した?|①保育系ユーチューバー・mocaちゃん

現役保育士、あるいは保育学生のみなさんのなかには、「mocaちゃん」を知っている方も多いのではないでしょうか。「mocaちゃん」は元保育士であり、保育現場ですぐに実践できる手遊びやシアター製作の動画で人気を博している保育系ユーチューバーです。本記事では、「mocaちゃん」自身の保育観にフォーカスし、保育士を志した理由や辞めた経緯、YouTubeにかける思いなどを語ってもらいました。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム)
取材・文/清家茂樹 写真/塚原孝顕

小学6年生のときから保育士への道を一直線

私が保育士を目指した理由は、本当にシンプル。子どもの頃から小さい子と遊んだり、面倒を見たりするのが好きだったからです。

自分自身がそれに気づいたのは、小学6年生のときの「きょうだい学級」がきっかけでした。きょうだい学級というのは、違う学年の子同士がペアを組んで交流する行事のことで、上級生は交流を通じて思いやりを育み、下の学年の子は上級生の振る舞いを見て社会性を学ぶといった目的があります。

そして、最上級生としてきょうだい学級に参加した私は、「小さい子と遊ぶのって楽しいな!」と心から思えたのです。中学生になってからは「職業体験」にも参加したのですが、そのときもたくさんの職業のなかから保育士を選びました。今になって振り返ると、小学6年生のときからブレることなく、一直線で保育士を目指したことになりますよね。

でも……。子ども時代からの念願だった保育士になれたのに、結果的には1年で辞めてしまいました。保育士に限った話ではありませんし、同じ悩みを抱えた保育士さんもたくさんいらっしゃると思いますが、保育士を辞めたいちばんの原因は人間関係です。

新卒で入った「新園」で人間関係に悩み退職

私が新卒で入った保育園は「新園」だったために、保育指針がまったく決まっておらず、保育士のほとんどが新人。経験のある先輩はほんの2、3人という状況でした。そうした状況も、人間関係の悩みが大きくなった要因だったかもしれません。

「これから自分たちで、いい園を作り上げていこう」と意気込んでみても、軸となる保育指針が決まっていないのですから、みんなの考え方や行動もまとまるはずがありません。私たち新人は、困ったことや不安なことがあっても、「誰に聞けばいいのか、どうしていいのかわからない」という状態で、次第に職場の人間関係がぎくしゃくしていきました。

今になって思えば、先輩たちも新園ということで、プレッシャーやストレスを感じていたのだろうと理解できます。でも、保育士になったばかりの私にそれを思いやる余裕はなく、ストレスをぶつけるかのように厳しくされたことを、とてもつらく感じていました。

そうしたなか、「この先輩たちと、どうやってうまく付き合えばいいのか」ということばかり考えるようになり、「子どもたちのことをいちばんに考えたい」という当初の思いとはかけ離れた日々を送るようになっていったんです。その結果、「これはわたしがしたかった保育ではない」「この環境では理想と現実のギャップを埋められない」と感じて、保育士を辞める決心をしました。

配信に寄せられた質問がきっかけで「保育の学び」をテーマに

保育士を辞めた私は、その後保育系ユーチューバーになったわけですが、実は学生時代からYouTubeを観るのが好きで、保育士になってからは自分でライブ配信もしていました。

当時は軽い気持ちではじめただけですし、内容もただの雑談です。でも、プロフィールに保育士だということを載せていたために、保育学生の視聴者さんから保育実習などについての質問がちらほらと寄せられるようになり、次第に保育関連の「知りたい」「学びたい」をかなえるところに需要を感じるようになりました。

それからは、動画の内容もただの雑談から、「保育に関する疑問を解決する内容」へと変わっていきました。ただの雑談だと、配信者のことを好きじゃないと観てもらえませんが、「保育についての疑問を解決する」という内容なら、目的意識を持って観てもらえる。そこに、それまでとは違う楽しさを感じたのです。

付け加えるなら、私自身がかつて保育に関する疑問を解消できずに悩んでいたことも、保育をテーマにした理由の1つです。たとえば、手遊びを学びたいと思っても、本や雑誌だとどんな歌い方なのか、どんな動きなのかがわかりません。結局、学校の授業や保育現場以外に学ぶ手段がなく、疑問を感じるたびに「もっといい方法はないのだろうか」とモヤモヤしていたのです。

しかも、当時のYouTubeは、いわゆる「○○してみた」といったエンタメ系のショート動画が中心。保育の学びについての動画はほとんどなかったので、「よし、だったら自分がやっちゃおう!」と思い切ることができました。

「【保育系YouTuber】 mocaちゃんTime」では、手遊びうた100曲メドレーや、大人気手遊びが多数アップされています。

視聴者のコメントから動画のバリエーションが拡大

YouTubeチャンネルをスタートした当初は、私自身が悩んでいたことを解決するような動画が多かったのですが、チャンネル登録者数が増えるにしたがって、視聴者さんの要望に応える内容に変化していきました。ライブ配信を行っていたときと同様、視聴者さんから「こんな悩みがある」というコメントをいただくことが増えたからです。

例えば、「保育園で使うのに、どんなおもちゃをどんなふうに作ればいいか」といった悩みが寄せられることも多く、そういうときは「市販では3000円のおもちゃを100均の材料だけで作る」といった内容の動画を配信しています。園によっては「購入したおもちゃを使うのはNG、手作りしないといけない」というところもあるんですよ。幸い絵を描いたりシアターを作ったりすることが好きなので、工作系の配信は自分自身も楽しみながらやっています。

今後について聞かれることもありますが、それほど明確には考えていません。でも、YouTube以外の活動もやってみたいですね。それこそ絵を描いたり、シアターやおもちゃを作ったりするときに、「これがあると保育士には便利!」と思える文房具を開発するなど、動画以外でもみなさんのお役に立てることがあると思うんです。

もちろん、活動の中心はYouTubeですから、これからも保育士さんや保育学生のみなさんの悩みを解決できるコンテンツを増やせるようにがんばります。ですので、みなさんチャンネル登録をよろしくお願いいたします(笑)。

1996年生まれ、千葉県出身。自身のチャンネルでは、保育の現場ですぐに実践できる手遊びやシアター製作、演じ方などを配信しており、そのクオリティーの高さから現役保育士、保育学生の絶大な支持を得ている。また、身近なもので簡単にできるシアター製作やおもちゃ製作の動画も人気。著書に『保育士さんの現場・日常で「困った!」に役立つ mocaちゃんの保育のコツ大全』(KADOKAWA)、『保育で使える mocaちゃんのあそびアイデアBOOK』(日本文芸社)がある。
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