「考える力」を育てるために保育園でできること

「考える力」を育てるために保育園でできること

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これからの時代、子どもたちが身につけておくべき能力として重要視されているのが、「考える力」です。「自分で物事を考えるなんて、当たり前のことじゃないの?」と思うかもしれませんが、ここでいう「考える力」とは、物事をじっくりと観察し、本質を知ることで、正しい情報を選ぶ判断力や、新しいものを生み出す発想力を伸ばしていくこと。そこには、保育園や幼稚園などの幼児教育機関における保育者との関わりが重要な役割を果たします。そこで今回は、子どもの「考える力」を伸ばすために効果的な声かけや、接し方について考えていきましょう。

幼児期の終わりまでに育ってほしい「思考力=考える力」とは?

子どもの考える力教育推進委員会代表の狩野みきさんは、著書『子どもの「自分で考える力」を引き出す練習帳』(PHP研究所)の中で、「多様化する時代、情報があふれている時代、AIに仕事を奪われるかもしれない時代だからこそ、『自分で考えて、自分で道を切りひらく力』が求められます」と述べています。

また、2018年4月から施行された新しい保育所保育指針でも、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の10の項目のひとつとして「思考力の芽生え」を指定。つまり、幼児期に「考える力」の素地を築くことは、「就学後の子どもたちの能力を後押しすることにもつながる」と考えられているわけです。

ただし、ここで言う「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」というのは、小学校入学までに達成されなければならない目標ではなく、あくまで「育って欲しい方向性」を示したもの。保育者が厳しく指導して教えるものではないので、日常の保育生活や遊びを通じて身につけられるように工夫していきましょう。

保育所保育指針の中に、「『思考力の芽生え』は、周囲の環境に好奇心をもって積極的に関わりながら、新たな発見をしたり、もっと面白くなる方法を考えたりする中で育まれる」あるように、大事なのは、子どもたちの好奇心や探究心を引き出す環境をつくってあげることなんです!

「問題発生!」は子どもの考える力を鍛えるチャンス

では、どのような瞬間に子どもたちの思考力は芽生えるのでしょうか。筑波大学附属小学校教諭の田中博史先生は、著書『子どもと接するときにほんとうに大切なこと』(キノブックス)の中で、次のように説明しています。

子どもは、自分がなにかに困ったり疑問をもったりしたときにはじめて、自分の力で考えようとするものです。

目の前にあるうまくいかないことを解決しようとか、いくつかの選択肢からなにを選べばいいかとか、そういう場面が目の前にあらわれたときにはじめて、自分で考えようとするスイッチが入るのです。

引用:田中博史著(2018)、『子どもと接するときにほんとうに大切なこと』 キノブックス

つまり、「困ったな」「うまくいかないな」という出来事に直面したとき、「どうやったらうまくできるようになるかな」と自分で解決法を探すことが、「考える力」のベースになっているということ。子どもが困難に直面する前に大人が手助けしたり、ぶつからないように先回りして問題を解決してあげたりすると、子どもの「考える力」は、いつまでたっても育たないでしょう。
過干渉・過保護な保護者による問題が取り沙汰されることは少なくありませんが、そうした接し方もまた、無意識のうちに子どもの「考えるチャンス」を奪っているのかもしれませんね。

子どもの「考える力」を育むために覚えておきたい3つのこと

続いては、子どもたちの「考える力」を育むために、保育者が心がけるべきことをご紹介します。ここで気をつけなければならないのは、保育所保育指針にも書かれている「それぞれの子どもの考えを受け止め、そのことを言葉にして子どもたちに伝えながら、さらなる考えを引き出していくことが求められる」ということ。簡単に言えば、「子どもの個性に応じた対応を心がける」ということです。

次にあげるポイントをおさえながら、声かけや対応を工夫していきましょう。

◎先回り・過剰なアドバイスはNG!

先に述べたように、良かれと思って先回りして問題を解決してあげたり、子ども自身が考える間もなくアドバイスしたりするのは控えるべきです。また、脳画像診断医の加藤俊徳先生は、著書『脳を育てる親の話し方』(青春出版社)の中で、「過剰なアドバイスは『指示待ち』になる脳のルートを強くしてしまう」とも指摘しており、「考える脳をつくるためには、すべてを教えるのではなく、途中まで教えて考えさせる」のが効果的だと述べています。

◎「やってごらん」「よく見てごらん」が考える脳を育てる

では実際に、どのような声かけをしたらいいのでしょう。加藤先生があげるのは、「やってごらん」という言葉です。
現代ではインターネットなどですぐに正解にたどりつけるため、昔に比べて「実際にやってみて検証する」といった経験が極端に減ってきています。考える脳を育むためにも、まずは自分でやってみて、試行錯誤しながら進んでいくようにしましょう。

といっても、「やってごらん」と声掛けするだけでは、具体的なやり方がわからずに立ち止まってしまう子どもも多いはず。そういう場合は「よく見てごらん」と、周りの状況をよく把握させたり、対象をじっくり観察したりするように促すのがいいのだそう。焦らず、時間をかけて、ゆっくりと取り組むのがポイントですよ!

◎あえて「子どもが困るような場面」を作る!?

前出の田中博史先生は、子どもの考える力を育てる方法として、あえて「子どもが困るような場面」を作ることをあげています。

たとえば「お友だちに一枚ずつ配ってくれる?」と、わざと少ない枚数の折り紙を渡します。この状況に子ども自身が気づき、何らかのアクションを起こしたら? すかさず「よく気づいたね、えらいね」と言ってほめてあげましょう。

田中先生によると「ほめられたことが子どものエネルギーになるので、子どもは次もまた自分から考えようと動くようになる」とのこと。たとえ小さな問題でも、自分で気づき、自分で解決法を考えるという行動を繰り返すことが大切なのですね。

文/保育ライター 野口 燈

[参照]
狩野みき(2020)、『子どもの「自分で考える力」を引き出す練習帳』、PHP研究所.
厚生労働省「保育所保育指針解説」
田中博史(2018)、『子どもと接するときにほんとうに大切なこと』,キノブックス.
加藤俊徳/吉野加容子(2014)、『脳を育てる親の話し方』,青春出版社.

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