絵本の読み聞かせ指導案の作成ポイント!内容、書き方を年齢別に紹介

絵本の読み聞かせ指導案の作成ポイント!内容、書き方を年齢別に紹介

文: ちかっぱ(保育士ライター)

子どもの心を豊かにする「絵本の読み聞かせ」。子どもたちにとって意義のある時間にしたいものです。そのためには、読み聞かせのねらいや内容を考え、環境を整える「指導案」を作成することが重要となってきます。

今回は、絵本の読み聞かせ指導案の重要性や作成前の準備、指導案の項目とポイントを解説します。年齢別の内容や見本、書き方の例文も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

絵本の読み聞かせにおいて指導案はなぜ重要?

読み聞かせの指導案を作成することで、読み聞かせを楽しんでもらうだけでなく、子どもたちの言葉をより豊かにする工夫ができます。

指導案とは、子どもの発達に応じたねらいや内容を記載し、子どもたちにどんなことを感じてほしいのかをまとめたものです。

ここでいう「ねらい」とは、保育所保育指針にも記載されている保育の目標を具体化したものです。具体的には、「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5つの項目が掲げられており、そのなかでも絵本は「言葉」に大きく影響します。

言葉の発達段階に応じて絵本を選び、進行の仕方を考えることで、ねらいを達成できるようになるでしょう。

事前に指導案を作成しておくことで、進行の際に保育士が心に余裕を持って読み聞かせができることもメリットといえます。

絵本の読み聞かせ指導案を作成する前の準備

絵本の読み聞かせ指導案作成前に、以下の4つのポイントを意識しましょう。

読むタイミングを考える

絵本の読み聞かせは、以下のようなタイミングで行うことが一般的です。

  • 主活動の導入
  • 主活動
  • 主活動後の余韻を楽しむ時間
  • 降園する前のお楽しみ

実施するタイミングや読む時間に合わせて指導案を作成していくので、あらかじめ読み聞かせをするシチュエーションを考えておくとよいでしょう。

絵本を選ぶ

子どもの成長や発達に応じて絵本を選ぶようにしましょう。

例えば、低年齢の子どもであれば、「音や色、言葉の繰り返しを楽しむ絵本」が適しています。年齢が上がるにつれて絵本に集中できる時間が長くなり、理解力もついてくるため、「お話が長くストーリー性がある絵本」や、もっと知りたいという気持ちを生む「自然や環境に関する絵本」も選択肢に入ります。

読むタイミングにあわせて選ぶことも重要です。主活動の導入として読み聞かせを行うのであれば主活動との内容が近くイメージが膨らむ絵本。降園のときであれば1日の振り返りになるような絵本など、活動に合わせて選びましょう。

絵本を通して伝えたいことを明確にしておく

選んだ絵本から何を感じてほしいか、何に気づいてほしいかなどを考えます。

そうすることで、選んだ絵本の展開にあわせて、どのような援助や声かけを行うとよいかが見えてきます。わかりやすい言葉で伝えたり、絵本からどんなことを感じたかクラス全体で考える時間をとったりなど様々な工夫が考えられます。

子どもの姿や発言をイメージする

実際に絵本を読み始めると、絵本の内容について話し始める子がいたり、その場から離れてしまう子がいたりと、読み聞かせだけを行えないことは多いものです。

絵本を読んでいる場面をイメージして、子どもの行動を予測して対応を決めておくと、当日は慌てずにすみます。

絵本の読み聞かせ指導案の項目とポイント

絵本の読み聞かせ指導案の主な項目は以下の5つです。各項目とポイントについて紹介します。

1.ねらい

ねらいには、絵本の読み聞かせを通じて子どもにどのような姿になってほしいか、何を感じてほしいかなどの目的を記載します。例えば「物語を通じて新しい言葉を知ってもらう」「物語の先を想像する楽しさを感じてもらう」といったねらいがあるでしょう。

子どもの年齢によって発達段階が異なるため、物語を楽しめる長さ、理解できる言葉に違いがあります。年齢や成長に合ったねらいを設定しましょう。

2.時間

読み聞かせの時間設定と流れを目安として記載します。

時間は絵本の内容にもよりますが、子どもたちが楽しめて集中できる15〜20分の間で設定するとよいでしょう。

3.子どもの姿

絵本の読み聞かせをしている間の子どもの反応や行動を予測し、指導案に記載します。

絵本の内容にもよりますが、子どもたちの発想はとても豊かで想定外の反応が出てくる可能性も低くありません。

子どもたちがどんな行動をするのか予測しておくことで、落ち着いた対応ができます。

4.環境構成

環境構成とは、どんな場所や状況で活動を行うのかという設定のことです。環境構成は、子どもたちがどれだけ絵本に集中できるか、絵本の世界を楽しめるかに影響します。

子どもたちは椅子に座るのか床に座るのか、部屋のどの位置で絵本を読むのかなどを考えて、環境構成を決めましょう。指導案には文章だけでなく、図で記載しておくとわかりやすくなります。

5.保育者の配慮と援助

読み聞かせの最初から楽しめるように手遊びを入れる、読み終えた後に声かけをするなど、子どもが絵本を楽しめるように保育者ができる配慮・援助を考えます。

また、絵本を読み聞かせしている最中に子どもたちが発言したとき、途中でその場から離れてしまう子がいたときにどのような対応をするのか、「3. 子どもの姿」で予測した行動に対して、保育者がどのような援助や声かけができるかを記載しましょう。

絵本の読み聞かせ指導案の見本

年少(3歳児クラス)の降園前の時間を想定し、絵本の読み聞かせ指導案を紹介します。

子どもの発達状況や人数によっても変わってくるので、参考にしながらアレンジしてみましょう。

絵本の読み聞かせ指導案
絵本の読み聞かせ指導案

年齢別の絵本の読み聞かせ指導案の例文は以下の通りです。

0歳児

0歳児は、絵本の色彩や言葉の音を目や耳で感じる時期です。保育士の声を心地良く感じて、絵本の時間を楽しんでもらいます。

ねらい

・保育者と一緒に絵本の絵や言葉を楽しむ

・色彩や音のおもしろさを感じる

子どもの姿

・絵をじっくり見て保育士の声に耳をすませる

環境構成

・ゆったりと絵本が楽しめるよう、お昼寝前の落ち着いた時間にする

保育者の配慮と援助

・子どもの指さしや声に共感する

・安心できる、ちょうどよい声量を意識する

1歳児

1歳児は、身近なものや色、形に興味津々です。少しずつ言葉が出てくる時期なので、はっきりとした色合いや発しやすい言葉を繰り返す絵本などを選ぶとよいでしょう。

ねらい

・絵本に出てくる言葉を真似して、保育者と一緒に安心して声に出してみる

・言葉と意味が理解できるよう、ジェスチャーも加えて楽しむ

子どもの姿

・言葉を発してみたり、指を指して言われているものを伝えたりしようとする

環境構成

・絵本を見やすい角度にする

保育者の配慮と援助

・落ち着いた雰囲気で、ゆっくりとページをめくる

2歳児

2歳児は、身近なものや動物、食べ物など興味のあるものの名前を言ったり、気持ちが少しずつ伝えられたりするようになる時期です。

ねらい

・どんなお話なのか、どんな登場人物が出てくるのか楽しみにしながら絵本に親しむ

子どもの姿

・絵本で出てきた言葉の意味がわかり、発言する様子が見られる

環境構成

・集中して座って絵本を楽しめるよう、一人ひとりの座る場所に自分のマークのシールを貼る

保育者の配慮と援助

・読んだあとにどんな物や人が出てきたか、クイズや問題を出し、楽しい絵本の時間になるようにする

3歳児

3歳児は、行動範囲がどんどん広がっていき、絵本を見たり聞いたりしたことから、思いや気持ちが伝えられるようになってくる時期です。

ねらい

・絵本の話しを聞き、自分なりの言葉で感じたことを表現しようとする

子どもの姿

・絵本を楽しみ、保育者に感じたことを伝える

環境構成

・自分だけでなく周りの気持ちにも気づけるように、静かな環境を作る

保育者の配慮と援助

・一人ひとりの気持ちや発言をしっかりと受け止める

4歳児

4歳児は、ルールを理解し、保育者だけでなく友だちと気持ちを伝え合う楽しさを感じてくる時期です。

ねらい

・絵本に興味を持って聞き、イメージを膨らませる

子どもの姿

・絵本からイメージしたことを保育者や友だちに積極的に伝える

環境構成

・言葉のやりとりを楽しめる時間を最後に設ける

保育者の配慮と援助

・絵本の余韻を楽しみ、出てきた発言から保育の活動へと発展させる

5歳児

5歳児は、自分の感じたことや思ったことを伝え合い、相手の気持ちに寄り添って物事を考えられるようになる時期です。

ねらい

・言葉のおもしろさや美しさを感じる

子どもの姿

・絵本に興味を持って聞き、自然や環境などについて考えて発言する

環境構成

・落ち着いて絵本や物語を楽しめるよう、マットを敷いて集中できる空間を作る

保育者の配慮と援助

・イメージが膨らみ、実際に体験できるよう発展させる

絵本の読み聞かせ指導案に明確な内容やねらいを書き、楽しい時間にしよう

絵本の読み聞かせの指導案は、読み聞かせの時間を有意義にし、子どもの発達や成長を援助するために重要なものです。

絵本を選ぶ際には年齢に応じた、心地良いと感じられる長さのものを選択するとよいでしょう。

子どもの発言や感想に向き合って保育活動に発展させたり、余韻に浸れるようにしたり、見本や例を参考にして子どもの成長を踏まえた指導案を作ってみましょう。

ちかっぱ(保育士ライター)
幼稚園の子育てサロンで未就学児の活動を担当し、満3歳児~5歳児の担任や、幼稚園事務も経験。
勤務歴10年の経験を活かし、現在はフリーランスライターとして子育て中のママパパや保育士、幼稚園教諭に向けて記事を執筆している。
自分自身も6歳4歳の子育てをしながら、子どもたちと体を動かしたり本を読んだりする時間を大切に、「明るく楽しく笑顔で」をモットーにしている。
保有資格:保育士・幼稚園教諭一種

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