理事長の親族だけを優遇!? 独自ルールのせいで、報われない私たち[ヤメエピ@保育士辞めたい]

理事長の親族だけを優遇!? 独自ルールのせいで、報われない私たち[ヤメエピ@保育士辞めたい]

「保育士辞めたい!」と感じる瞬間ありませんか?もう無理。。疲れた。。そんなあなたが心底共感できる話をお届け!

「手厚い保育」にひかれ、今の職場への転職を決意

「保育士1人が見る子どもの人数は最低限。手厚い保育が信条です」。求人サイトのこの文言にひかれて、今の園の面接を受けたのは3年前のことです。前に勤めていた大規模園では、受け持つ子どもの数が多く、1人ひとりに寄り添えるような状況ではありませんでした。その点にストレスを抱えていた私は、「手厚い保育」という言葉に心をつかまれてしまったのです。

ただし、提示された給料は安く、26歳の中途採用で手取りが18万円。同業の友人たちには心配されましたが、当時は「お金よりやりがい」だと思っていたし、「しっかり仕事をこなして役職についたりすれば、給料も自然に上がっていくだろう」くらいに考えていました。

園見学をしたときの印象がすごくよかったのも、給料が気にならなかった理由の1つです。園長先生に施設を案内されているときに、子どもたちが寄ってきて「園長先生、あそぼ!」と腕にぶらさがったり、抱きついたり。子どもたちに信頼されていることが伝わってきて、ここで働きたいと強く思いました。保育室で園長先生と保育士が「まさとくん、今日は給食を残さず食べたんですよ」と談笑する様子からも、雰囲気がよさそうだなと感じていたんです。なのに、こんなにもこの園に嫌悪感を抱くようになるなんて!

理事長の親族以外、役職につけないなんて知らなかった

園に対して不信感を持つようになったのは、職員会議で理事長にお会いしたのがきっかけでした。理事長は高齢で、私が働きはじめたときには体調を崩しており、1年ほど会う機会がなかったんです。会議の前、理事長が「新しく入った畑中さんって人はどちら?」と切り出したので、何か言葉をかけてもらえるのかと思い、「はい!」と明るく返事をしたのですが……。理事長は、私の顔をまじまじと見ながら、「あぁ、そう」と言っただけ。何事もなく席につきました。

そして会議がはじまると、ある事件が起こったのです。私が改善要望として保育室のドアノブが壊れていることを指摘すると、突然理事長が声を荒げました。「あなた、ずいぶんえらそうに言うのね。園が古いって言いたいの? 修理代はあなたが出してくださるのかしら?」。私はあまりに理不尽な対応に驚くばかり。まわりに助けを求めようとしましたが、普段はやさしい園長がうつむいたまま、顔を上げようとしません。妙だなと思いつつも、「出すぎたことを言って、申し訳ございません」と言うしかありませんでした。

会議が終わると、あわてた様子で同僚が駆け寄ってきました。そして、小声でこう教えてくれたのです。「この園は同族経営で、園長は理事長の息子さんだし、役職についている保育士はみんな血縁関係。創業者でもある理事長には、誰もさからえないの」。どうやら、私だけがその事実を知らなかったようです。すっきりしなかったので、ほかの園で働く友人にグチってみたのですが、「同族経営でもいい園はたくさんあるよ。きっと理事長のクセが強いだけだから、気にしなくて大丈夫」と諭されて終わりました。

たしかに、理事長がくる日をのぞけば、園の雰囲気はとても穏やかです。仕事量のわりに給料は安めですが、保育士はみんながんばっています。なので、私は「評価されるようにがんばろう。そうすれば昇進できて、給料だって上がるはず!」と自分に言い聞かせて、気合いを入れ直すことにしました。しかし、その思いはあっさりと打ち砕かれたのです。

雰囲気は嫌いじゃないけど、理不尽な扱いにうんざり

昨年の3月、1人の先生が退職しました。副主任のさゆみ先生です。彼女は理事長の血縁でないにもかかわらず役職についていたので、私は「春からは私が副主任かも」と淡い期待を抱いていました。しかし、人事の通達を見て呆然。私は現状のままで、4月からやってくる新しい職員が副主任になっていたんです。そして、その人の苗字は理事長と同じ。言うまでもなく血縁者でした。

後日、さゆみ先生に話を聞いてみると、「あの園で親族以外の保育士が主任以上になるのは、絶対に無理なの。役職についている人が辞めたら、理事長が親族を連れてきて、そのポジションを埋めるから」とのこと。彼女も、これ以上いても昇進の見込みはないからと、転職に踏み切ったそうです。

園の理念や活動内容にはまったく異論がありません。保育士はみんな一生懸命だし、子どもたちもいきいきしています。でも、血縁者じゃないからといって理不尽なことを言われたり、昇進の可能性がなかったりするのは、さすがにつらいです。同族経営がダメなわけではなく、理事長のワンマンぶりが問題だと思います。とはいえ、その点は私がどうがんばっても変えようがありません。このままだと、また転職を考えるしかないかな、と毎日鬱々としています。

※本記事は、ほいくらし編集部の記者が取材を行い、その内容をもとに執筆した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えて構成していますご了承ください。


取材・文/木下喜子 イラスト/やましたともこ

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