新子育て安心プランとは?子育て安心プラントの違いや保育士への影響

新子育て安心プランとは?子育て安心プラントの違いや保育士への影響

新子育て安心プランとは、厚生労働省による、待機児童の解消を目的とした子育て支援事業です。2018年の子育て安心プランに続く施策であり、地域性に応じた支援・保育士確保・子育て資源の活用などを軸としています。保育士として働く方の中には、新子育て安心プランによって、サービスを提供する保育士側にはどのような影響がもたらされたか気になる方もいるでしょう。

この記事では、新子育て安心プランの概要に加え、保育士の働き方への影響を詳しく解説します。プラスとなる要素も多いため、今後の業界の動向が気になる方もぜひご一読ください。

1. 新子育て安心プランとは

新子育て安心プランは、2020年12月21日に厚生労働省より発表された、待機児童の解消を目指す子育て支援事業です。2021年度から2024年度末の4年間で約14万人の保育の受け皿拡大を目指し、策定されました。

○令和3年度から令和6年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備する。
・第2期市町村子ども・子育て支援事業計画の積み上げを踏まえ、保育の受け皿を整備。
・できるだけ早く待機児童の解消を目指すとともに、女性(25~44歳)の就業率の上昇に対応。
(引用:厚生労働省「新子育て安心プランの概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000717624.pdf 引用日2023/04/14)

新子育て安心プランは、2013年に施行された待機児童解消加速化プラン、2018年の子育て安心プランに続く施策です。

1. 子育て安心プランとの違い

新子育て安心プランの前身である子育て安心プランは、主に以下の2点を目標として実施されました。

・3年間で全国の待機児童を解消
・5年間でM字カーブを解消し、女性就業率8割に対応できる約32万人分の受け皿を整備
(出典:厚生労働省「子育て安心プラン」/https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_43/pdf/s1.pdf

M字カーブとは、女性の多くが25~44歳で子育てのためにいったん離職しその後に復帰するため、労働力率を表すグラフがM字の独特なラインを描くことを指します。女性が子育てのためにキャリアを中断せずにすむことを目指し、待機児童の解消や受け皿の整備を進めるというのが子ども安心プランの目的です。

子ども安心プランの成果として、2018年に19,895人いた待機児童数は2020年4月には12,439人へと減少し、保育所数も増加しています。

(引用:厚生労働省「「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」を公表します」/https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000678692.pdf 引用日2023/04/14)

2. 新子育て安心プランの支援のポイント

新子育て安心プランにおける支援のポイントは以下の3つです。

1.地域の特性に応じた支援
2.魅力向上を通じた保育士の確保
3.地域のあらゆる子育て資源の活用
(引用:厚生労働省「新子育て安心プランの概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000717624.p 引用日2023/04/14)

新子育て安心プランでは地域ごとの特性に応じた支援をし、空いているリソースを有効活用して保育の受け皿を拡大するほか、不足する保育士を確保することも重視しています。

1. 地域にマッチした支援

全体で見れば待機児童の数は減っているものの、受け皿が大きく不足している都市部、小規模な受け皿整備が必要な自治体など、地域によって状況は異なります。そのため、地域の実情に合わせた細やかな支援を行うことを掲げています。

①地域の特性に応じた支援
○保育ニーズが増加している地域への支援
(例)
・新子育て安心プランに参加する自治体への整備費等の補助率の嵩上げ
○マッチングの促進が必要な地域への支援
(例)
・保育コンシェルジュによる相談支援の拡充
(待機児童数が50人未満である市区町村でも新子育て安心プランに参画すれば利用可能とする)
・巡回バス等による送迎に対する支援の拡充
(送迎バスの台数や保育士の配置に応じたきめ細かな支援を行う)
○人口減少地域の保育の在り方の検討
(引用:厚生労働省「新子育て安心プランの概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000717624.pdf 引用日2023/04/14)

新子育てプランに参加する自治体に対し、保育所や認定子ども園の運営・施設整備といった保育事業に必要な資金にあてる交付金の補助率が2分の1から3分の2へと嵩上げされます。

(引用:厚生労働省「新子育て安心プランについて」/

https://zennichishiyouren.com/info/news/tfpkv10000001vje-att/8_201223.pdf 引用日2023/04/14)

また、待機児童が50人以上いる市町村で設置が推奨されてきた保育コンシェルジュが、新子育て安心プランに参加すれば50人未満でも設置できるようになりました。保育コンシェルジュとは、保育を必要とする家庭のニーズを把握し、助言や支援を行う専門相談員です。

(引用:厚生労働省「新子育て安心プランの概要)/

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000717624.pdf 引用日2023/04/14)

2. 保育士の魅力を向上させ人材を確保

保育の受け皿を増やしても、保育士がいなければ機能しません。そこで、保育人材の確保を目指した施策も行われます。

②魅力向上を通じた保育士の確保
保育士が生涯働ける魅力ある職場づくりを推進するとともに、職業の魅力を広く発信する。

<施策例>
・情報発信のプラットフォーム構築
・保育補助者の活躍促進
 ➣「勤務時間30時間以下」との補助要件を撤廃
・短時間勤務の保育士の活躍促進
 ➣待機児童が存在する市町村において各クラスで常勤保育士1名必須との規制をなくし、それに代えて2名の短時間保育士で可とする
・保育士・保育所支援センターの機能強化
 ➣現職保育士の就業継続に向けた相談を補助対象に追加
・若手保育士や保育事業者等への巡回支援の拡充
 ➣働き方改革支援コンサルタントの巡回や魅力ある職場づくりに向けた啓発セミナーの実施を補助対象に追加
(引用:厚生労働省「新子育て安心プランの概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000717624.pdf 引用日2023/04/14)

保育士は仕事量が非常に多い傾向があります。そこで、保育士をサポートする保育補助者の雇用を推進する、働き方改革支援コンサルタントが巡回して適宜アドバイスを行うなど、働きやすい環境づくりを目指します。

3. 地域における子育て資源の活用

保育ニーズに柔軟に対応するため地域にある空き施設などのリソースを積極的に活用する施策も、新子育てプランの柱の1つです。

③地域のあらゆる子育て資源の活用
利用者のニーズにきめ細かく対応するため、幼稚園・ベビーシッターなど、地域のあらゆる子育て資源を活用する。

<施策例>
・幼稚園の空きスペースの活用
 ➣預かり保育等のスペース確保のための施設改修等の補助を新設
 ➣待機児童が存在する市区町村において空きスペースを活用した小規模保育の利用定員の上限(19人)を弾力化(3人増し→6人増しまで可とする)
・ベビーシッターの活用
 ➣利用料に関する自治体等の助成を非課税所得とする(令和3年度税制改正で対応)
 ➣企業主導型ベビーシッターの利用補助を拡充(1日1枚→1日2枚)
・育児休業等の取得促進
 ➣育児休業等取得に積極的に取り組む中小企業への助成事業の創設(令和3年の通常国会に子ども・子育て支援法の改正法案を提出予定)
(引用:厚生労働省「新子育て安心プランの概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000717624.pdf 引用日2023/04/14)

待機児童の多くは1、2歳児です。幼稚園での2歳児の受け入れを促進する、小規模保育の利用定員の上限を引き上げるなどの施策を実施します。

3. 新子育て安心プランが保育士の働き方に及ぼす影響

新子育て安心プランでは、約14万人の保育の受け皿整備を目指すとともに、保育士確保に向けてあらゆる方向性から施策が実施されます。

必要な保育人材を維持するには、保育士の数を増やすだけでは足りず、就業した保育士の定着率を高めることも欠かせません。そこで、現役保育士の業務負担を軽減する施策なども盛り込まれています。

保育士にどのようなメリットがあるのか、デメリットはあるのか、具体的な内容を見ていきましょう。

1. 新規資格取得支援による人材確保が進む

新規で保育士資格を取得する人材を支援するため、以下のような対策を行います。

新規資格取得支援に関する施策

・養成学校で学ぶ学生に対し、学費の一部を貸し付けする
・保育士試験合格を目指す方に対し、教材費などの費用補助をする
・保育士試験を年に2回実施する

また、保育士の仕事に興味を持ってもらうことを目的に、保育の現場の魅力が伝わる保育体験イベントの実施や情報発信サイトの構築を行うことも盛り込まれています。

2. 潜在保育士の掘り起こしによる人材確保が進む

2020年の厚労省の発表によると、潜在保育士の数は約95万人にも及びます。

(引用:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000672997.pdf 引用日2023/04/14)

潜在保育士の登用が進めば、保育士不足の解消が進むでしょう。新子育て安心プランでは、潜在保育士の掘り起こしを進めることも予定されています。保育士・保育所支援センターの機能を強化し、潜在保育士の再就職に関する相談に乗ったり、就職先を斡旋して雇用支援したりといった支援を行います。

3. ICT化が進み負担減が期待できる

保育士の仕事量が多いのは、保育以外の作業が多いことも一因です。環境改善と事務作業の負担軽減を目指し、以下のようにICTシステムの導入を促進します。

(1)保育士の業務負担軽減を図るため、保育の周辺業務や補助業務(保育に関する計画・記録や保護者との連絡、子どもの登降園管理等の業務)に係
るICT等を活用した業務システムの導入費用及び外国人の子どもの保護者とのやりとりに係る通訳や翻訳のための機器の購入にかかる費用の一部を補助す
る。
(2)認可外保育施設において、保育記録の入力支援など、保育従事者の業務負担軽減につながる機器の導入に係る費用の一部を補助し、事故防止につなげる。
(3)病児保育事業等において、空き状況の見える化や予約・キャンセル等のICT化を行うために必要なシステムの導入費用の一部を補助する。
(4)都道府県等が実施する研修を在宅等で受講できるよう、オンラインで行うために必要なシステム基盤の整備に係る費用や教材作成経費等の一部を補助する。
(5)保育士試験の申請手続や保育士資格の登録申請の届出等について、オンラインによる手続を可能とするために必要なシステム改修費等の一部を補助する。
(引用:厚生労働省「保育士の確保・資質向上等」/https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000850461.pdf 引用日2023/04/14)

ICTシステムの導入により、記録の入力や管理の効率化が進むほか、稼働状況・予約状況のの見える化なども進められます。さらに、オンラインでの研修や試験申請手続きなどの普及も進むでしょう。

4. 保育補助者などの雇用や支援が増える

保育士の業務負担を減らすために保育補助者を雇う場合、事業者に対して必要な費用が補助されます。また、従来は保育補助者の勤務時間は原則として週30時間以下との規定がありましたが、新子育て安心プランにおいては撤廃されます。

(引用:厚生労働省「保育士の確保・資質向上等」/https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000850461.pdf 引用日2023/04/14)

5. 宿舎借り上げ支援が行われる

保育士が働きやすい環境を整備する施策の一環として、保育士宿舎借り上げ支援事業が実施されます。保育事業者が保育士のために住居を契約し、国や自治体から補助金を得ることで、保育士が安い家賃で住めるというものです。
保育士宿舎借り上げ支援事業を活用すると、家賃の自己負担分のみ毎月給料から天引きされます。補助金が直接口座に振り込まれるわけではないものの、家賃負担が減るため保育士にとっては実質的な収入アップとなります。

6. 働き方改革への支援が行われる

保育士が生涯働ける職場環境を整えるため、以下のような取り組みを通して働き方改革を支援します。

働き方改革への支援例

・産休や育休取得後のキャリアパスを明確にする
・多様な働き方が柔軟に選択できる仕組みを整備する
・技能や経験、役割に見合った処遇になるよう労務管理の専門家がサポートする

また、相談窓口を設け、保育士が職場の人間関係や労働環境などについて気軽に相談できる制度を整えます。相談内容によっては保育所に処遇改善を求め指導を入れることもあり、保育士にとっては心強い味方となるでしょう。

まとめ

新子育て安心プランは、地域に合った支援や保育士の確保、子育て資源の活用などを軸に進められています。保育士の確保に関しては、あらゆる方向性で施策が進められており、保育士の働き方や待遇の改善も期待できます。

「ほいくらし」では保育業界に携わる方に向けたお役立ち情報を配信しています。保護者の方にも役立つ、子育てに関する記事も多く掲載しているため、ぜひ子育てにお悩みの際はご覧ください。

※当記事は2023年4月時点の情報をもとに作成しています

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