【例文つき】保育実習における総合所見の書き方と3つのポイント

【例文つき】保育実習における総合所見の書き方と3つのポイント

文:神戸のどか(保育士ライター)

保育実習生の受け入れをしている保育園では、保育実習の最後に「総合所見」を書く機会があるでしょう。総合所見とは、約2週間の保育実習に取り組んだ実習生を総合的に評価する大切なものです。総合所見を通して実習への取り組みを評価することで、実習の達成度や能力が不足しているところを実習生に伝える機会となります。

総合所見は重要なものですが書き慣れていない方にとっては、「どのようなことを書くの?」「書く際のポイントは?」と疑問に感じることも多いでしょう。

この記事では、保育実習の総合所見の詳細や書くべき内容について紹介します。さらに、具体的な例文を交えながら総合所見を書く際の3つポイントを解説していますので、総合所見を書くときにお役立てください。

保育実習の総合所見とは?

保育実習の総合所見とは、実習期間における実習生の取り組みについて総合的に評価するものです。約2週間行われる保育実習 の最後に、実習生を指導した保育士が記入することとなります。保育士養成施設によって書式に違いはありますが、実習生を総合的に評価するために「保育実習評価表」という書類を使用することがあります。

保育実習評価表の中には、保育実習の評価を文章で記入する「総合所見」と、実習生の姿勢や能力を設定された評価段階から選ぶ「評定尺度法(※)」が書かれていることが一般的です。

(※)評定尺度法とは、あらかじめ設定された明確な評価段階(例:大変良い・良い・普通・あまり良くない・良くないなど)を用いて、特定の物事などについての評価を行う評定法です。

そもそも、実習生にとって「保育実習」とは、今まで学んだ知識や技術を活かせる能力を養うために行われます。 全国保育士養成協議会では、保育実習の目的を以下のように定めています。

「保育実習は、その習得した教科全体の知識、技能を基礎とし、これらを総合的に実践する応用能力を養うため、児童に対する理解を通じて保育の理論と実践の関係について習熟させることを目的とする。」

保育実習は保育士を目指す方にとって、保育所の役割や子どもの育ちを理解し、現場で活躍できる保育士になるための経験を積む貴重な機会となるでしょう。そのような保育実習を締めくくる総合所見は、実習生の学びや成長を的確に伝えるだけではなく、今後の保育士としての方向性に影響を与える重要なものとなります。

出典:指定保育士養成施設の指定及び運営の 基準について[改正後全文]|一般社団法人 全国保育士養成協議会

総合所見に書くべき内容とは?

総合所見に書く内容は保育士養成施設によって指定される場合がありますが、主に「実習状況」「実習の様子や姿勢」などを書き、実習期間における実習生の取り組みを総合的に評価します。また、実習生が成長したところとともに、今後さらに学びが必要だと思われる内容を書くとよいでしょう。総合所見に書く内容の例には、下記のようなものがあります。

【総合所見に書くとよい内容】

  • 健康状態や出席状況
  • 実習日誌の提出状況
  • 子どもとの関わり
  • 保育士との関わり
  • 指導計画立案の実施の様子
  • 実習に対する姿勢や積極性
  • 園の保育方針を理解しているか
  • 実習に課題意識を持ち臨んでいたか

総合所見では、約2週間の実習期間を総合的に捉えられるような文章が求められます。上記の内容をすべて総合所見に書く必要はありませんが、一つの内容ばかりに偏らないようバランスよく書くことで、実習生にとって学びの多い総合所見となります。スペースに応じて実習生に伝えるべき内容を選択し文章にまとめましょう。

また、2週間の実習生の取り組みにくわえて、「頑張ってくださいね」「素敵な保育士になってくださいね」など応援や励ましのコメントで締めくくる書き方もおすすめです。
実習を乗り越えた実習生は、「この実習の経験を生かして良い保育士になろう」というモチベーションがより一層高まるでしょう。

【例文つき】総合所見の書き方のポイント

総合所見は書く機会が少ないため、どのように書くべきか悩まれる方もいるでしょう。よりよい総合所見にするためには、「肯定的で前向きな言葉で伝える」「実習の目標に触れる」「具体的でわかりやすい内容にする」という3つのポイントが大切です。

ここからは、具体的な例文を交えながらそれぞれのポイントについて詳しく解説します。

肯定的で前向きな言葉で伝える

総合所見には、肯定的で前向きな言葉を選んで書きましょう。実習生にも一人ひとり個性があり、よい点やさらに学びが必要な点はそれぞれ異なります。たとえば、子どもと体を動かして遊ぶことが得意な方もいれば、ピアノを弾いて子どもと歌うことが得意な方もいます。もちろんどちらも大切な資質ではありますが、保育士を目指す実習生は自分の強みを知るとともに、これから伸ばすべき点も把握しておくべきでしょう。

実習生には、「よいところ」と「さらに改善・努力すべきところ」をセットで伝えることが重要です。現場経験が少ない実習生は、実習期間中に失敗してしまい落ち込んだり自信がなくなってしまったりすることもあるでしょう。

実習生に対して、「頼んだ仕事ができていない」「○○先生の考えは間違っている」などとすべての行動や考え方を否定してしまうことで、自信を喪失してしまい前に進めなくなってしまうかもしれません。総合所見には、今後の成長につながるような前向きな課題や改善策を伝えるようにしましょう。

【例文】肯定的で前向きな言葉で伝える書き方

初めは緊張もあり子どもたちへの関わり方で戸惑うこともあったようですが、実習を重ねるごとに笑顔で積極的に関わろうとする姿が見られました。○○先生が、子どもたちの名前を呼んだり輪に入り遊んだりすることで、子どもたちも嬉しそうにしていましたね。実習期間の後半になると子どもたちと○○先生の関係も深まり、子どもが安心して側で遊んでいるようでした。

一方で、○○先生が、自分で想定していたよりも子どもたちの反応が少なかったというような、想定外の事態に直面したときには、先生自身が不安になってしまう様子が見られました。先生が不安になってしまうと子どもたちも戸惑ってしまいます。保育士として、堂々と平常心を保っていられるといいですね。

実習の目標に触れる

総合所見を書く際には、実習生の目標に触れるとよいでしょう。なぜなら、実習の目標に触れることで実習生が目標と照らし合わせることができるため、より意味のある総合所見になるからです。

実習生は、「保育園の1日の流れを把握する」「保育士の声がけを参考にして、子どもたちと積極的に関わる」などの目標を持って実習に取り組んでいます。実習生は目標を振り返ることで、自分自身の実習を見つめ直す機会になり目標と現状の差を知ることができるでしょう。

振り返りは実習生自身も行いますが、客観的な評価を見ることで実習生はこれから学ぶべき点や改善点に気づくことができます。実習生は保育士になるために新しい目標を設定し、今後も積極的に勉強に取り組めるでしょう。

【例文】実習の目標に触れる書き方

今回の実習で、「子どもたちの気持ちに寄り添いながら関わる」という目標に向かい実習に励んでいましたね。子どもたちの行動や遊びから、○○先生なりによく考え、子どもたちと向き合うことができていたと思います。子どもたちの心の状態は、その日の体調、家での様子によっても変わってきます。

そのため、1日を通して子どもの表情や様子を常に気にかけて見ることが大切です。子どもたちの気持ちに寄り添い温かい気持ちで接していた○○先生の今の気持ちを忘れずに、素敵な保育士になってくださいね。

具体的でわかりやすい内容にする

総合所見は、実習生に伝わりやすいように具体的でわかりやすく書くことが大切です。実習生に実習期間中の評価を伝える際、「全体的によくできていました」「責任実習を頑張りましたね」という言葉だけでは、どのようなことが評価されているのか伝わりにくいでしょう。総合所見の書き方によっては後から読み返したときに、「自分の実習はどのようなところが評価されたのだろう?」と、理解しにくくなってしまうこともあります。

とはいえ、スペースにも限りがあるため、約2週間の実習の評価をすべて具体的に書くことは難しいでしょう。総合所見は実習生が読んで理解できるような書き方を意識し、しっかり伝えたい部分に関してはより具体的な内容で書くことをおすすめします。

【例文】具体的でわかりやすい言葉で伝える書き方

部分実習では、季節や年齢、子どもの興味に合わせた絵本や紙芝居などを用意することができていたため、子どもたちもとても楽しんでみていましたね。絵本や紙芝居の読み聞かせは、演じ方一つでも子どもたちの反応が変わってきます。これからは、声のトーン、大きさ、早さなども工夫してみてくださいね。きっと今よりも魅力的な読み聞かせをできるようになるはずですよ。

まとめ

保育士の通常の業務をしながら、実習生の指導や保育日誌の添削、コメント、総合所見を書くことに対して、負担が大きいと感じることもあるかもしれません。しかし、実習生を指導することは、未来の保育士を育成することにつながるとても重要なことです。今はまだ現場での活躍経験が少ない実習生という立場ですが、将来は保育実習で学んだことを活かして働く日がくるでしょう。実習生の中には、保育実習をさせてもらった保育園に就職を希望する方もいます。実習生を指導することはよりよい保育士を増やし、結果的に保育園の環境がよくなることにつながるでしょう。

また、指導してもらった保育士に評価してもらう総合所見は、実習生にとって大きな励みとなります。実習生は総合所見を読むことで実習を振り返り今後の改善点を見つけ出し、将来保育士として活躍するために勉強や実践を積み重ねていくでしょう。実習生にとって実習が有意義なものとなるように、記事を参考にして総合所見を書いてみてくださいね。

参考サイト:

神戸のどか(保育士ライター)
保育園で、0歳児から5歳児の子どもたちの保育を5年半担当してきました。
「一人ひとりの個性」や「主体性」を大切にする保育園での勤務経験を活かし、
現在は保育士さんや子育て中のママやパパに向けて記事を執筆しています。
絵本や歌が大好きで、特に絵本の読み聞かせや手遊びが得意です。
保有資格:保育士・幼稚園教諭・認定ベビーシッター
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