子育て情報をSNSで収集する人が急増中!ITジャーナリストの高橋さんに聞くSNSの正しい使い方

子育て情報をSNSで収集する人が急増中!ITジャーナリストの高橋さんに聞くSNSの正しい使い方

みなさんのなかには、離乳食の献立や親子でお出かけしやすい場所など、ちょっとした子育て情報をSNSで検索している方も多いのではないでしょうか。SNSはさまざまな人と悩みや話題を共有できる、とても便利なツールです。しかし、誤った情報を信じてしまう、受け取った情報の偏りに気付きにくいなどのデメリットもあります。事実、明治とボーネルンドが0〜6歳の子を持つママを対象に行った意識調査でも、「情報が多すぎて何が正しいかわからない」という声が多く見られました。

そこで今回は、 中学生の母でありITジャーナリストでもある高橋暁子さんに、SNSを利用するメリットや注意点、SNSで情報を探すときのポイントなどについてうかがいました。

\お話をうかがった方/
高橋暁子さん
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。小学校教諭、Webの編集者などを経て独立、現在に至る。SNSや情報リテラシー教育が専門。ICT教育事情、10代のネット利用実態とトラブル、スマホ&インターネット関連事件などをテーマに、講演やセミナー、コンサルティングを行っているほか、メディア出演も多数。中学生の母でもある。

ITジャーナリストで中学生の母でもある高橋暁子さん。
ITジャーナリストで中学生の母でもある高橋暁子さん。

SNS上で情報の信頼性を見極めるポイントは「だいふく」

——子育て情報を収集する際に、SNSを利用するメリットと注意点について教えてください。

高橋:利用者の属性やニーズにあわせて、リアルな口コミの情報を集めやすいというのが、SNSのいちばんのメリットではないでしょうか。集め方によっては、非常に優良な情報が集められます。また、検索したり、フォローしたりすることで、自分の好みに合う情報がレコメンド表示されるようになるのも便利です。

注意すべき点は、情報の信頼性です。口コミの情報が集めやすい一方で、事実と異なる情報や根拠のない情報、誇大表現などのよくない情報が混ざっている可能性があります。そうしたものに振り回されないようにする必要があるでしょう。「#PR」などの表示があるものは宣伝であり、口コミではないことも覚えておきましょう。

——情報の信頼性はどのように見極めればよいのでしょうか。

高橋:災害時におけるフェイクニュースの見極めに使われる、「だいふく(だれが・いつ・複数の情報を確認)」というキーワードを覚えておいてください。

「だ」は「だれ」が発信しているか。1次情報の発信者が省庁や専門家、ニュースメディアなどであるかをチェックし、信頼性を確認することです。一般の方が発信元の場合は、その方のプロフィールや過去の投稿を見て、信頼できるかどうかを見極める必要があるでしょう。

「い」は「いつ」の情報か。古い情報は間違っていたり、現状にそぐわなかったりすることもあるので注意が必要です。子育て情報も同じで、特に医療的な情報は日々刷新されています。情報収集の際は、必ず発信された時期を確認してください。

「ふく」は、複(ふく)数の情報を確かめること。発信者の1人が「よい」としていても、その人が勘違いしていたり、デマだったりする可能性もあります。ですから、1つの情報について、複数の信頼できる情報ソースを確認することが、正しい判断に近づくポイントといえます。

このように、「だれ」「いつ」「複数」の視点を持てば、情報の信頼性をある程度確認できるでしょう。

情報を見極める力は、情報リテラシーの基本であり重要な能力です。信頼性をしっかり見極めないと、詐欺などに遭うこともありますし、気付かないうちに間違った情報を拡散してしまうこともあります。子どもが成長してインターネットを利用する際、適切に指導するためにも、まずは保護者自身が情報リテラシーを身に付けましょう。

——保護者が必要とする子どもの食事や栄養、遊びの情報について、どんな人が発信していれば適切と考えられるでしょう?

高橋:子どもの食事や栄養といった健康関連のことや、医療的な情報については、省庁や医師、管理栄養士などの専門家が監修しているかどうかを必ずチェックしましょう。過去に医療系まとめサイトで、不適切な医療情報が大量に発信されたこともあるので、誤った情報に惑わされないように十分注意してください。

遊びに関する情報も同様です。教育関係者や保育関係者、施設や保育に関わる専門家、子育てを経験している保護者などの情報なら、参考にしても大丈夫かなと思います。

それぞれの特性を理解して、上手に情報収集するのがおすすめ

スマートフォンを見る女性
SNSでの情報収集は信頼性の確認が必要(写真はイメージです)。

—— X、Instagram、TikTokなど、SNSによって得られやすい情報は変わりますか?

高橋:Instagramは育児グッズや子ども服のコーディネート、食事など、ビジュアル的あるいは感覚的に伝えられる情報が多い傾向にあります。そのため、ポジティブで楽しそうな様子を楽しんだり、流行の情報を集めたりするのに向いているでしょう。ただし、Instagramではネガティブな情報が見えにくい可能性があります。また、「#PR」などが付いているものは宣伝なので、その情報が必ずしも役に立つとは限りません。

X(旧Twitter)はよりリアルなコメントが多いので、Instagramで気になった情報をXで調べてみて、ネガティブな意見や口コミをチェックすると、情報が補完できるかもしれません。TikTokについては、流行の情報やライフハック、ハウツーなどの情報をショートムービーで手早く入手できる点に特徴があります。 

——LINEなどを利用する場合、グループチャットでの相手の反応が気になって仕方がない人もいるようです。SNSにおける適度な距離の取り方、上手な付き合い方についても教えてください。

高橋:文章だけでやりとりするのは、とても難しいですよね。文章力や読解力が必要ですし、時間も必要です。もし、「やりとりがうまくいかないな」と思ったら、SNSでは必要最低限の連絡にとどめて、オフラインでコミュニケーションを取るようにしましょう。特に、感情がからむような話はSNSではせず、直接会って話すことをおすすめします。リアルな人間関係をしっかり作った上で、それを保管するツールとしてSNSを利用すると、より便利に使えるはずです。

加えて、利用時間を決めることも大事です。1日1回だけ見て、返事が必要なものは返事をする。そんな使い方で十分だと思います。長時間使いすぎたり、コミュニケーションをSNSだけに頼ったりすると問題が生まれやすいので、気を付けてください。

保護者の情報意識を高めることが、園のトラブル回避につながる

——保育者としてのSNSの使い方、SNSを活用する保護者との付き合い方などについて、注意点があれば教えてください。

高橋:保護者が、入園式や卒園式で撮った子どもの写真をYouTube、InstagramなどのSNSに投稿する際、他人の顔や個人情報が映り込んでいて、園側にクレームがくるというトラブルが増えています。現在の子育て世代は、情報リテラシーの教育を受けていないため、情報に対する意識が低い方も少なくないのです。そうしたトラブルを避けるためには、「他人の顔写真や個人情報をSNSやインターネット上に出さない」ということを園から保護者にアナウンスし、情報リテラシーを高めてもらうことが大事でしょう。

また、保育者や教員と保護者が個人的にSNSでつながることも、トラブルになりやすいので注意してください。保育者や教員は注目されやすく、どこかで個人的な情報が見つかると、話題になってシェアされがちです。個人が特定されるような状況でSNSを利用するのは、なるべく避けたほうがよいでしょう。

SNSの利用では、「子どもの情報を守ること」をいちばんに心がけて!

スマートフォンで赤ちゃんと写真を撮る女性
子どもの写真の取り扱いには十分に注意を(写真はイメージです)。

——子育て中の保護者のSNS利用について、課題に感じていることはありますか?

高橋:シェアレンティング(Sharenting)ですね。シェアレンティングというのは、親が自分の子どもの写真や情報を、オンライン上で共有(シェア)することを指します。今どきの保護者は、SNSなどで何気なく子どもの写真を公開していますが、なかには投稿すべきではないものもあります。園の名前が写っている入園式の写真だったり、トイレトレーニングでおまるにまたがっている写真や、パパとおふろに入っている写真だったり……。そうした写真はデジタルタトゥーとなって、簡単に消すことができません。悪用されれば、自宅や子どもが通っている園や学校の場所が特定されたり、児童ポルノサイトに転載されたりすることも考えられます。つまり、保護者が何気なく投稿した写真が、小児性愛者による犯罪や誘拐、ストーカーにつながってしまう可能性がゼロではないのです。

だからこそ、保護者は「SNSに子どもの写真を投稿することが、子どもの人生を左右するかもしれない」ということを知っておく必要があると思います。子どもが写っている写真の肖像権は子ども自身にありますから、たとえ親であっても、子どもの同意なく子どもに不利益を与える可能性がある写真をSNSに投稿する権利はないのです。

ただ、核家族化が進む現代では、子育てについて相談できる相手がおらず、孤独を感じて追い詰められてしまう人も多く見られます。そういった人が、SNSを通じて同じような立場の人とつながったり、「育児を頑張ろう」と前向きな気持ちになったりするのは、けっして悪いことではありません。子育てや子どもに対して、プラスに働くこともあるでしょう。ですから、SNSを利用するときは公開範囲を友人限定にする、あるいは一定期間で削除する、乳幼児の顔ができあがる前に限定して公開するなどして、子どもの情報をしっかり守りながら、上手に使うことを心がけてください。自宅や個人情報が特定される写真、将来子どもに不利益を与える可能性がある裸の写真などは、そのような目的でも絶対に公開しないでくださいね。

◆ITジャーナリスト 高橋暁子公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

取材・文/早川奈緒子  編集/イージーゴー

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