【パネルシアターの作り方】基本から応用まで分かりやすく解説|保育園
大きなパネルで物語を展開するパネルシアター。絵本の読み聞かせよりも特別感があり、子どもたちに大人気の出し物です。エプロンシアターやペープサートと同じく、子どもたちの想像力や集中力を育てます。
保育士として「子どもを楽しませるためにパネルシアターを準備しておきたい」と考える人も多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、パネルシアターの基本的な作り方や応用、演じ方のポイントを解説します。
必要な材料や作成のポイントを写真つきで分かりやすく解説しますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
保育園で大人気!パネルシアターとは?
パネルシアターとは、パネル布を貼った板の上で物語を展開する出し物です。シーンごとに背景を入れ替えたり、歌に合わせてパネル人形を動かしたり、まるで人形劇のような迫力を味わえます。まずは、パネルシアターの特徴を詳しく解説します。
パネルシアターの歴史
パネルシアターは、1973年に住職の古宇田亮順先生によって創案されたものです。ルーツとなったのは海外で使われていた「フランネルグラフ」という紙芝居。フランネル生地を貼り合わせるように作成するのが主流でした。
しかし、創案者の古宇田亮順先生により、不織布であれば簡単にフランネル生地にくっつくことが発見され、のちにパネルシアターと名づけられました。
パネルシアターの目的
パネルシアターは、保育園や幼稚園、小学校、子育て広場など、さまざまな現場で楽しまれています。ただ子どもたちを夢中にさせるだけでなく、以下のような目的があります。
- 物語のストーリーを理解する
- 想像力や集中力を育てる
- 言語能力や表現力を培う
- 演じ手とのコミュニケーションを図る
パネルシアターを演じるときは、子どもの感性を刺激できるような目的を意識しましょう。
パネルシアターの素材
パネルシアターでは、おもに登場人物を描くPペーパーと、舞台となるパネル布を使用します。不織布はパネルの「P」からPペーパーと呼ばれ、フランネル生地のようなパネル布と合わせて使用するのが一般的です。
パネル布は起毛生地で、Pペーパーは不織布のため多少の毛羽立ちがみられます。そのため、それぞれが摩擦によりくっつく仕組みとなっています。軽く引っかかっているようなイメージのため、はがすのも簡単です。
パネルシアターの魅力
パネルシアターは、パネルを舞台に誰でも場所を選ばず演じられる特徴があります。そのほか、パネルシアターのさまざまな魅力をご紹介します。
大切に保管しておけば長く使える
パネルシアターは、Pペーパーで簡単に作れます。そして、大切に保管しておけば長く使い続けられるという特徴があります。学生時代に作ったものや、実習で使用したものを現場で使い続けている保育士も少なくありません。
とくに、端午の節句や七夕など、行事に関するパネルシアターは毎年使えてとても便利です。保管中に折れてしまっても、アイロンをかければ修復できます。
大きなパネルで迫力がある
パネルシアターを演じるのは、パネル布を貼った大きな板のうえです。そのため、絵本や紙芝居よりも物語に迫力を感じられます。
子どもの視覚や聴覚から刺激を与えることで、子どもの興味関心を引き寄せます。保育士としても「特別感のある活動を入れたい」「行事の由来を分かりやすく伝えたい」などと感じる場面に便利です。
歌や声かけで一体感がうまれる
パネルシアターは、演じ手と子どもたちでコミュニケーションを取りながら楽しめます。いっしょに歌を歌ったり、隠れた登場人物を呼んでみたり…。小さなパネルを中心に、まるで劇場のような一体感がうまれます。
子どもの反応に応じてアレンジできる
パネルシアターは歌を歌ったり、見ている人へのクイズを盛り込んだりと、エンターテインメント性の高い出し物です。さまざまなアレンジにより、魅力を最大限に引き出せます。
子どもたちが盛り上がる場面があれば、何度繰り返しても構いません。台本通りにセリフを言う必要もなく、その場でアレンジできるのもパネルシアターの大きな魅力です。
パネルシアターに必要な材料
パネルシアターに必要な材料は以下のとおりです。
- 物語の型紙
- パネル人形
- パネル板
- パネル板の支え
- 作成に必要な文房具
ここからは、それぞれの材料について詳しく解説します。購入場所や代用品なども紹介しますので参考にしてください。
物語の型紙
パネルシアターの題材となる物語の型紙を用意します。保育雑誌はもちろん、インターネットでの無料ダウンロードも可能です。絵が得意な人は、直接Pペーパーに書き込んでもよいでしょう。
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パネル人形
パネル人形とは、Pペーパーで作る登場人物やアイテムのことです。通常の紙ではパネル板にくっつかないため、不織布でできたPペーパーを準備しましょう。おもに、通販や大型書店などで購入可能です。
Pペーパーには、並口と厚口の2種類があります。厚みに0.1mmほどの違いがあり、厚口は少し重くはがれやすいため並口がおすすめです。表裏に絵を描くときは、色移りしないよう厚口を選ぶとよいでしょう。
パネル板
パネル板とは、物語を演じるステージとなる板のことです。段ボールや発泡スチロールなどの板に、起毛のパネル布を貼りつけます。
パネル布は、Pペーパーと同じく通販や大型書店などで購入可能です。板に被せるように貼りつけるため、ひと回り大きなサイズを準備します。手間を省きたい人は、板やスタンドがセットになったものを選びましょう。
パネル板の支え
パネル板を支えるために、スタンドを準備します。デッサンのときに使用される「イーゼル」があれば簡単に設置できます。机や壁に立てかけるだけでも演じられますが、まれにパネル板が滑って倒れてしまうことも。
滑らないようにパネル板の前に重しを置く方法もありますが、パネル下部が使えなくなるのでおすすめできません。パネル板の大きさにもよりますが、小さめのイーゼルであれば100均でも購入可能です。
文房具
パネルシアターを作成するために、以下のような文房具も準備しておきましょう。
- はさみ
- カッターナイフ
- 布テープ
- 木工用ボンド
- 鉛筆
- 油性ペン
- 絵の具
- ポスカ
- 裁縫道具
- 両面テープ
両面テープや裁縫道具は、のちに解説する応用編のしかけに使用します。ほとんどが、保育園にある備品で揃うはずです。100均で販売されているものも多く、自宅用にも簡単に揃えられます。
【基本】パネルシアターの作り方
必要な材料が揃ったら、早速パネルシアターを作成してみましょう。ここからは、パネルシアターの基本的な作り方をご紹介します。手順を写真つきで分かりやすく解説しますので、チャレンジしてみてくださいね。
型紙を拡大コピー
まずは、選んだ題材の型紙を拡大コピーします。参考にする保育雑誌などに記載されている倍率通りに拡大しましょう。準備したパネル板が小さめのものであれば、大きさに合わせて調節してくださいね。
Pペーパーに縁取り
コピーした型紙をPペーパーに写していきます。型紙にPペーパーをのせると透けるため、写し絵が可能です。部品の間隔を1~2㎝ほど開けながら写します。太くはっきりと縁取るのがポイントですが、着色後に再度縁取りするなら軽く鉛筆で下書きする程度でよいでしょう。
絵の具やポスカで着色
下書きしたPペーパーに着色をおこないます。色が乾いてから、黒の油性マジックで再度縁取りをするとキレイに仕上がります。着色に使用するアイテムの特徴は以下のとおりです。
絵の具
- 広い範囲を簡単に塗れる
- 細かい色の調整が可能
- 水少なめでベタ塗りにすると発色がよい
- 絵の具の準備や片づけが大変
- 乾くまでに時間がかかる
油性ペン
- 細かい部分も簡単に塗れる
- 裏写りする可能性があるので下敷きが必要
- 広い範囲を塗るとインクがすぐになくなる
- 細かい色の調整が難しい
ポスカ
- 太字・中字など着色範囲によって調整できる
- 発色や乾きがよい
- 広い範囲を塗るとインクがすぐになくなる
- 細かい色の調整が難しい
着色する範囲や量によって、それぞれのアイテムを使い分けることをおすすめします。
Pペーパーを切り取る
着色や縁取りが乾いたら、部品ごとに切り取ります。黒の油性ペンで縁取った線より外側を切るよう意識しましょう。小さい部品は、接着面が少ないためパネル板にうまくくっつかない可能性があります。余白多めにカットするのがポイントです。
パネル板を作成する
パネル板の大きさは、クラス全員が見られるよう縦100㎝、横150㎝あれば十分です。保管場所に困るようであれば、折りたためるタイプにしてもよいでしょう。まずは、折り目のついたパネル布をアイロンで伸ばします。
土台は、段ボールや発泡スチロールを活用し、布テープや接着剤で固定します。裏側に引っ張るように貼りつけると、シワなく仕上げられます。
【応用】パネルシアターのしかけ
ここからは、パネルシアターの応用編をご紹介します。しかけを加えることで、よりパネルシアターの魅力を引き出せますよ。
重ね貼りで表裏の向きや表情を変える
パネル人形の向きを変えて移動させたいときは、重ね貼りがおすすめです。大きさを合わせて、表裏で向きや表情を変えます。裏合わせにして両面テープで貼りつけましょう。裏写りがないように厚口タイプのPペーパーを選ぶと、1枚で表裏の表情を変えられます。
袋張りや切り込みでポケットをつくる
アイテムを登場人物のポケットに入れたり、バッグに入れたりするアレンジには、袋張りや切り込みのしかけを作りましょう。Pペーパーを2重にして袋を作ったり、切り込みを入れて裏に隠せるようにするだけで完成です。
裏打ちでアイテムを重ねる
裏打ちとは、登場人物やアイテムを重ねるときのしかけです。Pペーパー同士は、摩擦がなく重ねられません。重ねたいアイテムの裏にパネル布を貼るだけで、登場人物にバッグなどを持たせられます。
細かい動きは糸で固定する
通常、Pペーパーで作った登場人物は単純な動きしかできません。しかし、胴体と手足の間
を糸で固定するしかけを使えば、手足を自由に動かせます。あちこち走って移動する演出や、手を伸ばして踊る動きなどに対応できます。
長い糸を垂らして裏で操る
音符など、いくつものアイテムを同時に動かしたいときは、長い糸を使用してしかけを作ります。長く切った糸を、動かしたいすべてのアイテムにつなげてパネル板の裏側に垂らしましょう。裏側から糸を引っ張ることで、複数のアイテムを自然に操れますよ。
パネルシアターを演じるときのポイント
素敵なパネルシアターを作っても、子どもたちの前でうまく演じられなければ意味がありません。ここからは、パネルシアターを演じるときに意識したいポイントを解説します。
何度か練習を繰り返す
パネルシアターが完成したら、何度か練習してみましょう。練習せずに本番で使用すると、パネル人形を出す順番を間違えたり、せっかく作ったアイテムを出し忘れてしまいます。
細かいセリフはアドリブで何とかなるかもしれませんが、物語の流れはしっかり頭に入れておきましょう。アイテムを裏返すタイミングや、はがすタイミングを覚えておくとスムーズに演じられます。
パネル板の位置や角度に注意する
子どもたちが教室の床に座っているのか、イスに座っているのかによって目線が異なります。パネル板の角度によっては、見えにくくなる可能性も。
パネル板の位置や角度は、事前にしっかり確認しておきましょう。パネル人形が落ちないように、やや斜めに設置するのもポイントです。
パネル人形は出演順に並べる
パネル人形は、出演順に並べておくとスムーズに演じられます。パネル板の後ろに机を置くなど、見えないように作業台を確保しましょう。
とくに、題材となる物語が長い場合や、登場人物や使用するアイテムが多いときは大変です。台本やパネル人形を取り出しやすいように置いておけば、安心して演じられます。
物語に関連する導入を設ける
パネルシアター自体がおもしろい内容でも、子どもたちが集中する姿勢になっていなければ意味がありません。子どもたちが最初から楽しめるよう、パネルシアターの前に興味をそそる手遊びを導入として取り入れてみましょう。
また、注目を集めるために題材となるパネルシアターにちなんだ曲を、ピアノやギターで演奏するのもおすすめです。
盛り上がる&簡単にできるパネルシアターを選ぶコツ
「そもそもどんなパネルシアターを作ればいいか分からない」「簡単に作れて盛り上がるパネルシアターを選びたい」と考える保育士も多いのではないでしょうか?そこでここからは、パネルシアターを選ぶときのコツをご紹介します。
すべて揃った切るだけのキットを活用する
塗ったり切ったりといった製作作業が苦手な人は、簡単に作れるキットを活用してみてはいかがでしょうか?型紙とPペーパーがセットになったものや、切るだけで完成するものなど、さまざまな種類が販売されています。
対象年齢を意識して題材を選ぶ
子どもたちを楽しませるためには、演じ手のテクニックも必要ですが「対象年齢に合った題材かどうか?」を意識することも大切です。乳児に難しくて長い物語を見せても、なかなか盛り上がりません。物語を簡素化するなど、アレンジして対応してもよいでしょう。
絵本や歌を題材にして作成する
パネルシアターの本を購入すれば、複数の物語が集約されています。しかし、なかには子どもに親しみがなく興味を示してくれないケースも。そんなときは、いつも読んでいる絵本や歌っている歌を題材にして作成してみましょう。
「おおきなかぶ」や、「とんぼのめがね」など、親しみのある内容であれば、子どもたちも興味津々!パネルシアターで演じることで、物語の違った魅力を伝えられるかもしれません。
季節に合わせた題材を選ぶ
パネルシアターを作るときは、季節を意識してみましょう。行事の出し物として演じられる内容を選ぶのもおすすめです。
七夕やクリスマス、ハロウィンなど、夜がテーマになる題材のときは「ブラックシアター」にも挑戦してみましょう。黒いパネル布に、蛍光絵の具を使ったPペーパー、ブラックライトを用意すれば、幻想的で見応えのある物語に仕上がりますよ。
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まとめ
パネルシアターは、大きなパネルで物語を演じる、迫力のある出し物です。題材を変えるだけで、さまざまな年齢層に合わせられます。
一度作ってしまえば、何度も再利用できる点もよいですね。まずは簡単な題材からチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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