パラシュート反射とは?乳幼児健診で反応しないのは異常?
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保育士は、物心がついた3~5歳の子どもたちだけでなく、脳の発達がまだまだ未熟な乳児への保育も行うことが基本です。一人ひとりに対して適切な保育を行えるよう、乳児の発達段階を理解しておく必要があります。
乳児は外からの刺激に反射して体が無意識のうちに動くことが多く、生後半年から10か月くらいには「パラシュート反射」という反射があらわれることも特徴です。
では、パラシュート反射とは具体的にどのような反射のことでしょうか。今回は、パラシュート反射の概要や種類、パラシュート反射をしない赤ちゃんへの対応方法について詳しく解説します。
パラシュート反射とは?
パラシュート反射とは、生後半年から10か月程度であらわれる無意識的な反射の1つで、両わきを支えるよう体を持ち上げ、突然前方向に頭を傾けさせたときに、自然とバランスを取るかのように赤ちゃんの両腕が前に出る反射のことです。
大人になっても同じような反射が起こることから、一度備わると永久的に残る人間の反射神経・能力と言えるでしょう。
パラシュート反射の出現期間
ひとくちに反射と言ってもさまざまな種類が存在します。パラシュート反射は、身体の姿勢やバランスを保つ反射の総称の「姿勢反射」が大きくかかわっており、大脳や中脳が発達した生後半年から10か月程度であらわれることが特徴です。
下記に、姿勢反射のさらに詳しい種類と概要をまとめました。
姿勢反射の種類
パラシュート反射 | 赤ちゃんの両わきを支えて持ち上げ、突然前方向に頭を傾けさせたときに、赤ちゃんの両腕が前に出る反射 |
ホッピング反射 | 赤ちゃんを前後左右のいずれかに倒そうとしたとき、無意識的に足を踏み出す反射 |
ランドウ反射 | 赤ちゃんの腹部を支えてうつ伏せの状態で持ち上げると、赤ちゃんが頭を上げて水平の状態を保とうとする反射 |
いずれも人間が安全に体を支えられるよう・守れるように備わった反射能力と言えます。
なお、姿勢反射のほかに「原始反射」という反射の種類も存在します。原始反射とは、お母さんのお腹に宿ってから生まれるもので、新生児期にはすでに見られる反射動作です。半年程度で始まり、姿勢反射とは違って成長とともに反射能力が消失することも特徴となっています。
下記に、原始反射の種類と大まかな消失期間をまとめました。
原始反射の種類
把握反射 | ・赤ちゃんの手のひらや足を刺激すると、指をぎゅっと曲げる反射 ・手の把握反射は生後5か月程度、足の把握反射は生後9か月~1歳程度で消失する |
モロー反射 | ・赤ちゃんの体を刺激すると、何かに抱き着こうとする反射 ・生後5か月程度で消失する |
歩行反射 | ・歩くことのできない赤ちゃんの両わきを支えて立たせると、前かがみになって歩き出すかのような動きをする反射 ・生後5か月程度で消失する |
吸啜反射 | ・赤ちゃんの口に哺乳瓶などを入れたとき、無意識的に吸う反射 ・生後5~6か月程度で消失する |
パラシュート反射の種類
パラシュート反射には、側方パラシュート反射と前方パラシュート反射の2種類が存在します。
側方パラシュート反射とは、体を左右のどちらか片側に預けたとき、赤ちゃんの預けた側の手が体を支えるかのように伸びる反射のことです。一方で前方パラシュート反射とは、体を前方に傾けたとき赤ちゃんの両腕が前方に伸びる反射を指します。
パラシュート反射を見る乳幼児健診
乳幼児は、3歳を迎えるまでに指定の病院・保健センターで約5回の健康診断を行います。その中でもパラシュート反射は、基本的に9~10か月児健康診断で確認することが可能です。
9~10か月児の健診では、発達異常がないかを確認するべく下記の検査項目で所見を取ります。
検査項目 | 検査内容 |
---|---|
身体的発育異常 | 体重・身長が乳児身体発育曲線に沿って増加しているか |
精神的発達障害 | 呼びかけに応じて反応があるか、一人遊びをきちんとできているか、他人を他人と認識して人見知りできているか |
運動発達異常 | 座位・腹臥位・立位での姿勢や運動・動作のしかたは正しいか |
神経系の異常 | 関節の屈曲・背屈はできているか、パラシュート反射が出ているか |
感覚器の異常 | 先天白内障・先天緑内障などの重症眼疾患の症状が出ていないか |
聴覚の異常 | 呼びかけに応じて視線が合う・反応しているか |
先天異常 | 出生前の原因による形態異常が出ていないか |
その他の異常 | 身体(特に目立たない部分)において、打撲痕や紫斑など児童虐待が疑わしい痕がないか |
パラシュート反射の検査は、「神経系の異常」の項目においてチェックされることが一般的です。
健診でパラシュート反射が見られない場合
9~10か月児健康診断でパラシュート反射が見られない場合は、脳性まひや神経発達の異常が疑われます。
しかし、9~10か月児健康診断でパラシュート反射が見られないからと言ってこのような異常の可能性が格段に上がるわけではありません。中には神経系の成長に時間がかかっているだけで、10か月を超えてからパラシュート反射が出てくる赤ちゃんも多く存在します。そのため、その場で精密検査が行われることはほとんどなく、その後1~2か月といったスパンで経過観察を行われることが基本です。
このように、パラシュート反射は訓練で身に付けられるものではなく、個人差も当然あります。9~10か月健診でパラシュート反射が見られなくても、すぐに医療機関の専門医に相談したり無理に訓練させたりすることは避けましょう。特に自宅での無理な訓練は、かえって赤ちゃんの体に負担をかけてしまうおそれがあります。
パラシュート反射ができないのは異常?
赤ちゃんがパラシュート反射ができないのには、神経発達の異常などのほかに下記のような理由があります。
・病院の雰囲気に緊張している・怖がっているため ・神経発達がのんびりなため ・反射を起こす部分が骨折や何らかのケガをしているため |
骨折などのケガは可能性として低いものの、可能性はゼロではありません。ハイハイや1人歩きと同様、パラシュート反射ができるようになるまでには一人ひとり個人差があるため、自分の子どもが10か月を超えてもパラシュート反射をしないという場合でも、さほど心配する必要はありません。実際に、多くの医師から様子見でよいとアドバイスされるでしょう。
むしろ、お母さんやお父さんの焦りは、まだ多くの言葉が通じないであろう赤ちゃんにも伝わってしまいます。無理に訓練させたり悩んだりせず、赤ちゃんの成長を信じて、ゆっくりと成長を見守ることが最も大切です。
パラシュート反射しない赤ちゃんの対応の仕方
パラシュート反射で、子どもの正常・異常がすべて把握できるわけではなく、子どもの成長過程を把握できる単純な発達指標となります。すべての赤ちゃんが、一般的な期間できちんとパラシュート反射が出て、かつ自然に消失するわけではありません。
パラシュート反射をしない赤ちゃんに、少しでも早くパラシュート反射ができるようにと訓練を行うことは避けるべきです。むやみやたらに赤ちゃんの体を動かすことによって、重大なケガにつながるおそれもあります。
一概に「パラシュート反射がない=運動機能に異常がある・発達に遅れがある」とは言えないため、子どもが喜ぶようなおもちゃを使ってたくさん遊ばせながら、ゆっくりと成長を待ちましょう。
また、乳幼児を預かる保育士の場合、パラシュート反射をしない赤ちゃんを保育する際は保護者対応に注意を払う必要があります。子どもがパラシュート反射をしないことにより、保護者がデリケートな状態となっている可能性があるためです。少しでも保護者を安心させられるよう、日々どのような成長をしているかを詳細に伝えるようにしましょう。
まとめ
パラシュート反射とは、両わきを支えるよう体を持ち上げ、突然前方向に頭を傾けさせたときに、自然とバランスを取るかのように赤ちゃんの両腕が前に出る反射のことです。生後半年から10か月程度であらわれる、無意識的な反射能力の1つとされています。
パラシュート反射が見られない場合は、脳性まひや神経発達に異常が起きている可能性があると言われていますが、実際には個人差があり赤ちゃんのその日の状態によってもできる・できないがあるため、医師に相談して様子見程度に留めておきましょう。
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