社会福祉法人とは?
私立でありながら補助金や寄付金を得て活動する社会福祉法人の保育園は、公立園と民間企業の中間的存在といえるでしょう。
1.学校法人・営利法人との違い
ここでは、社会福祉法人と学校法人・営利法人の違いを解説します。
| 社会福祉法人と「学校法人」の違い |
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学校法人とは、私立学校を設立するための公益法人です。公益法人は寄付金によって成り立っており営利を目的としませんが、学校法人の場合は学校を運営するために必要な範囲で収益事業に携わることが認められています。
社会福祉法人との違いは管轄にあり、社会福祉法人は厚生労働省、学校法人の場合は文部科学省が所轄庁です。また、学校法人は創始者の教育理念が反映されているため、社会福祉法人よりも学びに特化しているという特徴があります。 |
| 社会福祉法人と「営利法人」の違い |
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社会福祉法人が非営利法人であることに対し、営利法人は利益の追及を目的とした法人です。営利法人が設置する保育園は、利益を上げるために保護者のニーズを捉え、保育・教育カリキュラムを積極的に変更する傾向にあります。
営利法人は開設エリアが広く、全国展開している法人も少なくありません。法人によっては転勤がありますが、保育士として就職した場合も希望次第で本社の事務職に異動できるなど、将来の選択肢が増えるでしょう。 |
希望する環境や目指す方向性によって適した保育園は異なるため、どの運営主体に勤務するのがよいか一概にいえません。自分自身の保育観に合う園や、働きやすいと感じる園を選ぶことが大切です。
2.公立との違い
公立と私立の違いは運営主体にあります。公立保育園は、自治体によって運営されているため、園で働く職員は地方公務員です。給料は安定しており、年休や各種休暇といった福利厚生も充実しています。
公立の保育士になるためには、保育士資格を所持している他、自治体の公務員採用試験に合格しなければなりません。
公立と私立で保育内容に大きな違いはありませんが、私立の場合、特色ある保育方針を掲げている場合も多く、自分の興味や特技を生かして働けるでしょう。
社会福祉法人で働く保育士の仕事内容
社会福祉法人の保育園で働く保育士の業務は、ほかの運営母体の園とおおむね共通しています。
- 乳幼児の衣食住の世話
- 遊びの見守り
- 保護者への対応(連絡事項の伝達、配布物の作成など)
- イベントなどを通じた地域住民との交流
保育士の役割は、子どもたちの食事・おむつ交換・着替えのサポートだけではありません。集団遊びの実施や自由時間中の見守り、保護者との日々のやりとりも重要です。地域密着型の園では、園外の人と接する機会も多くなります。
1.社会福祉法人の保育園で働くメリット・特徴
社会福祉法人が運営する保育園のおもな特徴と、保育士として働くことで得られるメリットは、下記のとおりです。
〇民間企業の保育園と比べて、おおむね安定している
自治体からの補助や寄付を受けて活動する社会福祉法人は、株式会社などと比べて運営基盤が強固で倒産リスクが少ないことが強みです。また長い運営歴を持つ園が多く、保育や園の運営に役立つノウハウを多く持っています。
〇地域との結びつきが強い
多くの園では地域社会への貢献を重視し、近隣の高齢者や他園の子どもなどと交流する機会を積極的に設けています。こうした取り組みは、園児だけではなく園児と交流する側にとってもよい刺激となり、地域活性化のために有効です。
〇配置換え・転勤が少ない
広範囲に姉妹園を持つ民間企業の園や公立園では、しばしば異動・転勤があります。一方、社会福祉法人の多くは地元に根差しており、転勤の心配は少なめです。一部の法人では複数の園を運営していますが、転居が必要となるほどの長距離異動はほとんどないでしょう。
このように社会福祉法人が運営する保育園は、地域密着型の安定志向である点が、特徴・メリットであるといえます。
社会福祉法人が運営している保育施設の例
社会福祉法人が運営主体の保育施設における保育士求人は、無料転職サービスの「マイナビ保育士」において300件以上掲載中です。同じ社会福祉法人が運営していても、施設ごとに業務内容は異なります。
ここでは、社会福祉法人が運営している代表的な保育施設について紹介します。それぞれの施設の特徴を知り、自分にぴったりの職場を探しましょう。
1.認可保育園
認可保育園とは、人員や設備が国の基準を満たしており、都道府県知事によって認可された園です。認可保育園は保護者の保育料負担が軽くなる場合が多いことから、多くの保護者から人気を集めています。
認可保育園には国や自治体から補助金が交付されるため、保育士の雇用状況や給料が安定しています。同じ園で長く働き、キャリアを積みたい人には認可保育園が適しているでしょう。広い園庭やホールを持つ大規模園が多く、行事を行う機会も多いため、イベント開催の準備や運営などを経験できます。
2.認証保育園・認定保育園
認証保育園・認定保育園は、保育ニーズの高い都市部の園を利用しやすくするために始まった制度です。ビルの一室などを利用した小規模な施設で、0歳児から2歳児の低年齢児が中心の保育となるため、保育士は子どもたち一人ひとりと深く関わることができます。
都市部における保育園は、広い敷地が確保できないなどの理由で、国が定める認可保育園の基準に足りません。認可保育園の基準に満たないものの、地域のニーズに合わせた保育を行う園に対して、自治体が認証・認定し補助金を支給するのが、認証・認定制度です。認証と認定の違いは各自治体が定める名称だけで、内容の差異はありません。
3.企業内保育所
企業内保育所とは、企業のオフィス近隣や同じビル内に設置され、従業員の子どもを一時的に預かる保育施設です。
企業内保育所には、事業所内保育所と企業主導型保育所の2種類があり、事業所内保育所の場合、自治体の認可を得ることで助成金が支給されます。一方、企業主導型保育所は自治体の認可外となりますが、内閣府によって資金が援助されます。
企業主導型保育所は事業所内保育所より自由度が高いため、企業にとって開設しやすい保育施設といえます。
企業内保育所で働くメリットは、企業の一般従業員と同程度の福利厚生で働けることです。保育所は企業の営業時間に合わせて運営されるため、土日祝日が休みになる場合が多く、ワークライフバランスの取れた働き方ができるでしょう。
4.放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、障害のある6歳から18歳までの子どもが、放課後や学校の長期休暇中に利用できる通所サービスです。保育士や児童指導員は、個別支援計画に基づいて子どもの日常生活や学習を支援します。
放課後等デイサービスの業務は、障害のある就学児のサポートがメインです。子どもの障害を理解し、障害に合わせた支援を学べるため、保育・福祉のプロとしてキャリアアップが叶うでしょう。
5.学童施設
学童は、放課後や長期休暇中に6歳から12歳までの子どもを預かり、家庭の代わりに子どもの成長を支援する施設です。
利用する子どもは小学校低学年が多いものの、高学年も利用対象のため、一人ひとりに合わせた遊びや活動の場を設け、自主性や社会性を培う支援が必要です。保育業務よりも、子どもの活動を見守り一緒に遊びを楽しむ機会が多くなります。
学童施設は子育ての経験が生かせるため、育児によって現場を離れたブランクのある保育士の方も働きやすいでしょう。
6.認定こども園
認定こども園とは、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ保育施設です。
認定こども園には、幼保連携型・幼稚園型・保育所型・地方裁量型の4種類があります。自治体が認定する1号から3号まですべての子どもが利用でき、例えば、幼稚園が認定こども園になると3歳未満の子どもを受け入れられるなど、利用対象が広がります。
幼保連携型認定こども園で働くためには、保育士資格と幼稚園教諭免許、両方を取得した「保育教諭」の資格が必要です。2024年度末まで経過措置期間としてどちらか一方の資格でも働けますが、経過措置期間は特例制度によって、もう一方の資格を軽い負担で取得できます。認定こども園は増加傾向にあるため、保育教諭を保有していると転職の際に選択肢が広がるでしょう。
社会福祉法人の保育園で働くことが向いている人の特徴
以下の項目に当てはまる人は、社会福祉法人の保育園で働くことに適していると考えられます。
〇先輩保育士からの手厚いサポートを受けたい
歴史と経験に裏打ちされた保育ノウハウを持つ園では、ベテラン保育士が多数活躍しています。経験年数が少なくしっかり研修を受けたい人は、安心して働けるでしょう。
〇アットホームな雰囲気で働きたい
社会福祉法人の保育園は比較的小規模であることが多く、民間企業の園と比べてスタッフの入れ替わりは少なめです。スタッフ同士のつながりが強く、園によっては地域住民と顔見知りとなる機会も多いため、アットホームな雰囲気を好む人に向いています。
例えば、保育士としての経験が少なく、プライベートを重視しつつもスキルアップを目指したい人には、社会福祉法人が運営する保育園が向いているでしょう。