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現在、保育士として働いている方のなかには、「保育士はキャリアアップを望めない」と考えている方も多いのではないでしょうか。

確かに、以前は保育士の役職が限られており、「キャリアアップが難しい」とされていました。しかし、現在はそうした課題を解消するための制度が施行され、保育士もキャリアアップを目指しやすくなっています。加えて、労働環境の改善に取り組む園も増えており、今後は保育士が自分らしく働ける職場、キャリアビジョンを描きやすい職場が増えていくことでしょう。

今回は、保育士がキャリアアップを目指すための制度について詳しく解説します。「制度をうまく活用して役職に挑戦したい」「キャリアアップや給料アップを実現したい」と考えている保育士の方は、ぜひ参考にしてください。

保育士がキャリアアップを目指すための制度とは?

保育士は、未来を担う子どもたちの成長をサポートする大事な職業です。しかし、保育士には「重労働なのに給料が低い」「役職が少なくてキャリアアップが望めない」などのイメージがつきまとい、それが人材不足の一因にもなっていました。

そのため、近年は国が中心となって保育士の労働環境改善が進められ、さまざまな施策がスタートしています。

  • 保育士処遇改善等加算Ⅱ
  • 保育士等キャリアアップ研修制度
  • 上の2つは保育士の労働環境改善、処遇改善を目指して制定された取り組みの代表例で、保育士のキャリアに3つの役職が加わった点や、技能・経験に応じて給料が上乗せされる点に特徴があります。

    なお、保育士等キャリアアップ研修制度(以下、キャリアアップ研修)というのは、保育士処遇改善等加算によって策定されたもので、この2つは組み合わせて理解・活用することが大事です。

    キャリアアップに関する制度が生まれた背景

    一般的な企業であれば、人事や総務、営業などの部署があり、それぞれに主任や係長、課長、部長などさまざまな役職があります。一方、保育施設にはそうした細かい役割分担がなく、役職は下記のものに限られていました。

  • 園長
  • 主任保育士
  • クラス業務責任者(乳児リーダーや幼児リーダーなど)
  • クラス各担任
  • 園によっては、副園長を設けていたり、リーダー職がなかったりするケースもありますが、いずれにせよ役職につける人数はわずかです。そのため、保育士のなかには「キャリアを重ねても役職につけない」「経験を積んでも昇給につながらない」などに不満を感じている方が少なくありませんでした。

    そうした課題を解消し、保育士の人材確保やモチベーションアップにつなげようと制定されたのが、保育士処遇改善等加算Ⅱやキャリアアップ研修です。研修では、より深い知識・技術が学べるため、保育士がそれぞれの専門性を高めることにもつながります。

    キャリアアップによる処遇改善制度「保育士処遇改善等加算Ⅱ」

    保育士処遇改善等加算Ⅱは、2017年に始まった制度です。2015年から施行されていた保育士処遇改善等加算Ⅰが「施設の平均勤続年数によって加算率が上がる制度」だったのに対し、保育士処遇改善等加算Ⅱは「技能や経験を積んだ職員に対して、賃金が加算される制度」となっています。

    「処遇改善による加算」が受けられる対象者と、加算要件の詳細は以下のとおりです。

    キャリアアップに関する制度が生まれた背景

    前述したように、かつては保育士の役職が園長や主任などに限られていました。しかし、処遇改善加算IIでは新たに3つの役職を設け、若手・中堅保育士のキャリア構築を支援しています。

    副主任保育士 主任保育士の補佐や新人・若手保育士の育成を担う管理職
    専門リーダー 専門性の高いリーダーとして職場のスタッフを支える役職
    職務分野別リーダー 特定分野の知識を高めてスタッフに指導・アドバイスをする役職

    職場によっては別の役職名となっている場合もありますが、求められる要件に違いはありません。役職ごとの経験年数や加算される給与の金額、加算要件については以下のとおりです。

    ①副主任保育士

    経験年数 概ね7年以上の実務経験を持ち、職務分野別リーダーを経験していること
    職場での人数の割合 全体の3分の1
    加算要件 3分野以上の専門研修とマネジメント研修を修了し、研修終了後に副主任保育士の発令を受けることで昇格
    加算金額 40,000円

    研修時間は、1分野につき15時間以上となります(専門リーダー、職務分野別リーダーも同様)。

    ②専門リーダー

    経験年数 概ね7年以上の実務経験を持ち、職務分野別リーダーを経験していること
    職場での人数の割合 全体の3分の1
    加算要件 4分野以上の専門研修を修了し、研修終了後に専門リーダーの発令を受けることで昇格
    加算金額 40,000円

    副主任保育士のように受講内容に特定はなく、いずれの研修を受講しても対象となります。

    ③職務分野別リーダー

    経験年数 概ね3年以上の実務経験
    職場での人数の割合 全体の5分の1
    加算要件 6分野の研修のいずれかを修了した保育士に発令
    加算金額 5,000円

    担当する分野に該当する研修を1分野以上受講しますが、マネジメントと保育実践は加算要件に含まれません。

    処遇改善につながる「キャリアアップ研修」とは?

    キャリアアップ研修とは、保育士の待遇改善と専門性強化を目指して制定された制度で、経験年数・役職などの要件を満たした保育士が、所定の研修を受講することで処遇改善が受けられます。

    キャリアアップ研修は、各都道府県が提供する「県実施研修」と、外部委託による「指定研修」の2種に分かれます。

    このうち指定研修は、指定保育士養成施設・非営利団体(社会福祉法人など)・市町が実施する研修のうち、県がキャリアアップ研修の要件を満たすとして指定した講座のみが対象です。

    なお、具体的な機関については、各自治体ホームページに掲載されている「指定研修実施機関一覧」で確認できます。研修の開催日・会場などについても自治体ごとに発表されるので、受講を希望される方は事前に確認しておきましょう。

    研修は8分野からなり、受講時間は1つの分野につき15時間以上。分野ごとに定められた5つの項目を受講したことが認められると、県や指定研修実施機関から修了証が交付されます。修了証には期限や自治体の制限がなく、一度交付されると他の都道府県でも通用します。

    ここからは、研修で受講できるそれぞれの分野と、受講後のキャリア設計について解説しましょう。

    キャリアアップ研修の8つの分野

    キャリアアップ研修で受講する8分野は、「専門分野別研修」「マネジメント研修」「保育実践研修」の3種類に大別できます。

    ◯専門分野別研修

    ①乳児保育 乳児への適切な関わり、保育環境を学ぶ
    ②幼児教育 幼児の発達に応じた教育や環境を学ぶ
    ③障害児保育 障害への理解、正しい保育環境について学ぶ
    ④食育・アレルギー対応 食育の知識やアレルギーへの正しい対応を学ぶ
    ⑤保健衛生・安全対策 傷病への対策や保育園における安全対策を学ぶ
    ⑥保護者支援・子育て支援 保護者との接し方や支援の方法について学ぶ

    前述した、職務分野別リーダー(特定の分野で認められたリーダー)は、以上6つの講座から自分の担当する分野を受講します。。

    ◯マネジメント研修

    ⑦マネジメント 保育士・スタッフの管理や育成、施設の運営などを学ぶ

    副主任保育士を目指す方は、マネジメント研修の受講が必須です。リーダーとしての役割や責任を学ぶことはもちろん、保育の質を高めるためのマネジメント能力を身につけることも研修の目的となります。

    ◯保育実践研修

    ⑧保育実践 子どもに対する理解を深め、実戦的な保育方法を身につける

    保育実践研修は、保育現場での実習経験の少ない保育士や、長い間現場で保育を行っていない方(潜在保育士を含む)を対象にした研修です。研修では、子どもに対する理解を深めるとともに、子どもとの関わり方や遊び環境づくりなどを学びます。

    いずれの研修も、所定の手続きをすることで受講でき、新たに申請書を提出すれば、翌年も同じ講座を受けることが可能です。

    転職・復職時にも有効!受講後のキャリア設計は?

    受講した分野について、正しい知識が身についたと認められれば、修了証の発行と名簿への登録が行われます。

    修了証は役職のある求人に応募する際に、特定の要件を満たした証明となるため、転職活動で有利に働く可能性があります。また、ブランクがある方の場合は、修了証を示すことで経験や知識の証明が容易になるため、復職がスムーズになるでしょう。

    なお、自治体によっては、独自に処遇改善の施策を行っているところもあります。保育士を目指す方に無金利で貸付金を行う制度や、家賃補助・テキスト代補助など、さまざまな施策があるので、興味のある方は各自治体のホームページなどで確認してみましょう。

    まとめ

    かつては、園長、主任保育士、クラス業務責任者などの役職しかなかったことで、保育士には「キャリアアップが望めない」「給料も上がりにくい」というイメージがありました。しかし、現在は保育士処遇改善等加算Ⅱ、キャリアアップ研修といった制度が制定され、保育士のキャリアアップ支援や労働環境の改善が進められています。

    保育士処遇改善等加算Ⅱ、キャリアアップ研修のいちばんの特徴は、副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーという3つの役職が設置されたことと、経験や立場に応じた処遇改善が受けられることです。それによって若手・中堅保育士が、キャリアアップや収入アップを目指しやすくなりました。

    ただし、制度の対象になるには、勤務年数、役職などの要件を満たした上で、キャリアアップ研修を受講する必要があります。

    保育士としてキャリアアップを図りたい方、キャリアアップとともに給料アップを目指したい方は、今回の記事を参考に各制度を活用してみてはいかがでしょうか。