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保育士の仕事はやりがいが大きい一方で、給与水準に比べて家賃などの生活費負担が重いと感じる方も少なくありません。そのため、住宅手当や社宅制度、国や自治体による宿舎借り上げ支援事業といった「家賃補助」をうまく活用すれば、生活の安定や長期的なキャリア形成にもつなげられます。
当記事では、保育士が受けられる家賃補助の種類や各自治体の制度、利用時の注意点まで詳しく解説します。転職や就職を考える際の比較材料としても、ぜひ参考にしてください。
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目次
保育士のための「家賃補助」とは?
保育士のための家賃補助とは、住居費用の全額もしくは一部を負担し、支援を行う制度です。家賃補助と住宅手当(住居手当)、家賃手当など類似用語に関して、法的な棲み分けは存在しません。事業者の判断により、表記方法の決定を行うため、複数種類の名称が混在します。
家賃補助にかかる費用は、事業者または国や地方自治体が負担します。国や地方自治体の家賃補助は事業者に対する支給を行うことから、保育士自身の交付申請ができません。制度を利用する際は、保育士のための福利厚生拡充を行う企業運営の認可保育所、私立認定こども園、認可保育所などを経由し、支給を受けます。いずれにしても、生活費の中で大きな比重を占める住居費用の支援を行い、生活水準向上を図るための制度です。
保育士が受けられる家賃補助の主な種類3つ
保育士が受けられる家賃補助は主に3つあります。勤務先の園が支給する住宅手当や、園が用意する寮・社宅制度、さらに国が実施する保育士宿舎借り上げ支援事業が代表的です。ここでは、それぞれの特徴を解説します。
勤務先の園による家賃補助(住宅手当)
住宅手当は、勤務先の園が福利厚生の一環として支給する家賃補助の制度です。支給額は園によって異なりますが、一般的には月10,000~30,000円程度で、給与とともに支給されます。名称は「住宅手当」「住居手当」「家賃手当」など園ごとに違いがありますが、いずれも同じ性質を持ちます。住む場所を自由に選べる一方で、制度の有無や金額は園によって差があるため、就職前に条件を確認することが大切です。
【家賃補助(住宅手当)のメリット】
- 住居を自分で自由に選べる
- 退職後も住み続けられる
- 家賃額にかかわらず一律支給される場合がある
【家賃補助(住宅手当)のデメリット】
- 園によって制度がない場合がある
- 課税の対象になる
- 家賃補助の中では金額が低めの傾向にある
勤務先の園による寮・社宅制度
寮・社宅制度は、勤務先の園が保有するマンションやアパートを保育士に貸し出す仕組みで、一般的な家賃より安い優遇家賃が設定されるため実質的な家賃補助となります。家賃は無料から数万円程度まで幅があり、家具や家電が備え付けられているケースもあります。トイレや浴室が共用の寮タイプから、ワンルームマンション型まで内容は園によって異なります。
【寮・社宅制度のメリット】
- 家賃が格安になり生活費を節約できる
- 職場に近く通勤が便利
- 課税対象とならない
- 同僚と住むことで安心感がある
【寮・社宅制度のデメリット】
- 退職すると退去しなければならない
- 住居の設備や環境は園ごとに差がある
- 自分の希望エリアに住めない
- プライベートと仕事の区別が難しい場合がある
国による保育士宿舎借り上げ支援事業
国が推進する「保育士宿舎借り上げ支援事業」は、園や自治体が賃貸物件を契約し、保育士に優遇家賃または無償で貸与する制度です。国・自治体・園が家賃を分担するため補助額が大きく、2025年度から対象の方の上限は月75,000円に設定されています(2024年度以前から対象となっている人については経過措置あり)。
敷金・礼金などの初期費用も不要となることが多く、転居を伴う就職・転職でも大きな経済的負担を避けられる点が特徴です。ただし、指定された物件に住む必要があり、選択肢の自由度は低くなります。
【保育士宿舎借り上げ支援事業のメリット】
- 補助額が大きく、自己負担を大幅に減らせる
- 初期費用がかからず引っ越ししやすい
- 保育士の待遇改善に力を入れる園や自治体で導入されている
【保育士宿舎借り上げ支援事業のデメリット】
- 課税対象となる
- 退職すると退去しなければならない
- 物件を自由に選べない
- 自治体の方針次第で制度が廃止される可能性がある
保育士の家賃補助はどれを選べばいい?
保育士が利用できる家賃補助には、住宅手当や園独自の寮・社宅制度、そして国の「保育士宿舎借り上げ支援事業」があります。どれを選ぶか迷った場合は、補助額の大きさを基準に考えるのがおすすめです。
特に借り上げ支援事業は負担軽減効果が高く、2025年度からは上限が月75,000円に設定されています。長期的に見ても住宅手当より大幅に節約できるため、利用条件を満たすなら優先で検討をおすすめする制度と言えます。ただし、自治体や園ごとに導入状況や対象範囲が異なるため、応募時に詳細を確認しましょう。
地方自治体によって異なる保育士の家賃補助制度
保育士の家賃補助は国の制度だけでなく、地方自治体ごとにも独自の支援があります。地域によって補助内容や金額、対象条件が異なるため、就職や転職を考える際には各自治体の制度を確認しておくことが大切です。ここでは代表的な自治体の制度を紹介します。
東京都世田谷区
東京都世田谷区では「保育士等宿舎借り上げ支援事業」を通じ、区内で保育施設を運営する事業者が常勤の保育士等を借上げた宿舎に入居させる場合、その経費を補助しています。対象となる施設は私立認可保育園、認定こども園、小規模保育事業、認証保育所など幅広く、対象職種には保育士や栄養士、看護師も含まれます。補助金額は宿舎の賃借料や共益費、礼金、更新料などを対象とし、上限82,000円のうち7/8(最大71,750円)が支給され、残りは事業者負担となります。なお、敷金や仲介手数料などは補助対象外です。
(出典:世田谷「世田谷区保育士等宿舎借上げ支援事業について」)
神奈川県横浜市
横浜市が実施する「保育士宿舎借り上げ支援事業」では、市内で認可保育所や認定こども園、小規模保育事業、横浜保育室、事業所内保育などを運営する法人が、常勤保育士のために宿舎を借り上げた場合に補助を行います。
対象となる保育士は、月120時間以上勤務する常勤者で、雇用から10年目の会計年度末までが条件です。補助金額は家賃と共益費・管理費を合算した額の3/4で、上限82,000円の範囲内で法人に支給されます敷金や仲介手数料などは対象外です。
(出典:横浜市「保育士宿舎借り上げ支援事業」)
千葉県千葉市
千葉市が実施する「保育士等宿舎借り上げ支援事業」では、民間の認定こども園や認可保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業などが対象です。補助対象となるのは、雇用開始から5年目の会計年度末までの保育士や看護師等で、1日6時間以上かつ月20日以上勤務していることが条件です。
補助金額は月額65,000円を上限とし、その4分の3(最大48,750円)が補助されます。対象となる経費は賃借料、共益費、礼金、更新料で、敷金や仲介手数料、駐車場代などは含まれません。
大阪府大阪市
大阪市が実施する「保育士宿舎借り上げ支援事業」は、市内の民間保育所等に勤務する採用から6年以内の保育士が対象です。事業者が借り上げたマンション等を宿舎として提供した場合、宿舎の家賃に対して補助が行われます。補助上限は通常66,000円で、採用前に市内で勤務経験がある場合や、採用から7年以内の保育士は上限49,000円となります。
ただし、令和元年度から継続利用している場合は、上限が82,000円または61,000円に引き上げられる特例があります。対象経費は賃借料や共益費などで、補助の実施可否は各事業者によって異なります。
(出典:大阪市「大阪市保育士宿舎借り上げ支援事業補助金交付要綱」)
(出典:大阪市「大阪市内で保育士として働く方を支援します」)
京都府京都市
京都市では「保育士宿舎借り上げ支援事業」を通じ、遠隔地出身の新規採用保育士を対象に宿舎借り上げ費用を補助しています。対象は市内の民間保育園・認定こども園で、常勤保育士として採用されてから5年以内の方が条件です。親元が府外、または通勤に片道1時間以上かかる場合も対象となります。
補助対象経費は賃借料、共益費・管理費、礼金、更新料で、補助基準額は月65,000円以内で、その4分の3を市が補助し、残りの4分の1を法人が負担します。自己負担額は園ごとに異なり、設定によっては実質的に家賃が大幅に軽減されます。
(出典:京都市情報館「保育士の宿舎借り上げ費用を月額最大65,000円まで京都市と保育園が負担します。」)
兵庫県姫路市
姫路市では「保育士宿舎借り上げ支援事業」を通じ、市内の私立保育所や認定こども園が雇用する保育士・保育教諭のために借り上げた宿舎に対し、経費の一部を補助しています。対象は新規採用された常勤保育士・保育教諭で、市外から転居した人や通勤困難と認められる人が条件です。
補助対象経費は賃借料、共益費、管理費、礼金、更新料で、上限は月82,000円で、4分の3(1,000円未満切り捨て)が補助され、残りは設置者負担となります。支給期間は採用から最長5年間です。
(出典:姫路市「保育士等住居借り上げ支援事業」)
保育士が家賃補助付き求人に申し込むときの注意点
保育士に対するメリットの多い家賃補助付き求人ですが、申込前の注意事項が存在します。注意事項を念頭に求人選びを行わなければ、勤務先とニーズがマッチしない原因となります。以下に挙げる内容を正しく理解し、求人情報の比較・応募を行いましょう。
保育士宿舎借り上げ支援事業の補助金額は「給与所得」となる
保育士宿舎借り上げ支援事業で提供される社宅や寮は、税務上「給与所得」とみなされる場合があります。国税庁によれば、使用人に社宅を貸与する際、無償の場合は「賃貸料相当額」全額が課税対象となります。また、相場より低い家賃を受け取っている場合、その差額が課税されます。
ただし、使用人が賃貸料相当額の50%以上を負担していれば課税されません。一方、現金で支給される住宅手当や、本人が直接契約した家賃補助は全額が給与課税の対象です。そのため、借り上げ社宅制度を利用する場合は、給与としてどの部分が課税対象になるかを事前に確認しておくことが大切です。
(出典:国税庁「No.2597使用人に社宅や寮などを貸したとき」)
保育園の自治体によって支援内容に大きな差がある
保育士宿舎借り上げ支援事業の対象施設や対象者・支給額など支援内容は、地方自治体の裁量にゆだねられます。次のような制限事項を設け、対象者の絞り込みを行う事業者も存在するため、事前の確認が必要です。
- 保育士資格を持つこと
- 同じ市区町村内の転職に該当しないこと
- 常勤勤務であること
- 勤務地から自宅の徒歩分数
- 配偶者の年収が所定の金額以下であること
家賃補助の対象が「単身者のみ」の場合がある
保育園独自の家賃補助を行う事業所でも、対象職員の絞り込みを行うケースが多くあります。単身者を条件に保育士が家賃補助を行う職場で働き、結婚を機に引越を余儀なくされる可能性も否めません。
さらに、既婚者に対して補助支給を行う保育園では、一人暮らしの保育士相当の金額であることが一般的です。パートナー・保育士自身と2倍の支給を行うことはありません。
まとめ
保育士向けの家賃補助は、勤務先が支給する住宅手当や寮・社宅制度、国の保育士宿舎借り上げ支援事業などがあり、生活費の大きな負担を軽減できる制度です。中でも借り上げ支援事業は補助額が高く、2025年度からは上限が月75,000円と設定され、長期的な節約効果が期待できます。
ただし、制度の有無や支給条件は園や自治体によって異なり、課税対象となる場合もあります。単身者限定や勤続年数制限などの条件もあるため、求人応募の際には利用条件を必ず確認することが重要です。
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※当記事は2025年9月時点の情報をもとに作成しています





