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訪問保育という仕事の存在を知り、「自分に合う仕事内容であれば転職先として検討したい」と考えている保育士の方もいらっしゃるのではないでしょうか。訪問保育は子どもとじっくり向き合える点に特徴があり、仕事内容も通常の保育施設とは少し異なります。そのため、訪問保育の適性がある方なら、現在の職場以上にやりがいを感じられるかもしれません。

この記事では、訪問保育の概要やベビーシッターとの違い、仕事内容、保育士にとってのメリット・デメリットについて解説します。訪問保育に興味のある保育士の方や、保育士を目指している方は、この機会に訪問保育についての理解を深めてみてはいかがでしょう。

訪問保育(居宅訪問型保育)とは?

訪問保育とは、保育士が子どものいる家庭に出向いて保育を行うサービスのことで、居宅訪問型保育とも呼ばれます。

子育てを社会全体で支え、待機児童の問題や保育士の人手不足を解決するため、内閣府は2015年4月から「子ども・子育て支援新制度」を開始しました。この制度では、従来の幼稚園や認定こども園、保育所に加えて、地域型保育と呼ばれる4つの事業が追加されています。

地域型保育は、低年齢の子どもを対象とした小規模単位の保育事業であり、居宅訪問型保育もそのなかの1つです。なお、地域型保育には居宅訪問型保育のほかに、家庭的保育(保育ママ)、小規模保育、事業所内保育があります。

(出典:内閣府「子ども・子育て支援新制度 なるほどBOOK」/ https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12772297/www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/event/publicity/naruhodo_book_2804.html

訪問保育の利用条件

訪問保育の利用対象は、3歳未満の保育を必要とする乳幼児です。訪問保育は一定の条件を満たす家庭を対象としたサービスで、以下の項目に1つ以上当てはまれば訪問保育を利用できます。

・障害、疾病等の程度を勘案して集団保育が著しく困難であると認められる場合
・保育所の閉鎖等により、保育所等による保育を利用できなくなった場合
・入所勧奨等を行ってもなお保育の利用が困難であり、市町村による入所措置の対象となる場合
・ひとり親家庭の保護者が夜間・深夜の勤務に従事する場合等、保育の必要の程度および家庭等の状況を勘案し必要な場合
・離島その他の地域であって、居宅訪問型保育事業以外の地域型保育事業の確保が困難である場合

訪問保育を利用する際は、上記に当てはまることを市町村によって認められる必要があります。地域型保育を利用するための条件は3号認定と呼ばれる認定区分です。訪問保育の利用希望者が3号認定を受ける際は、市町村に直接認定の申請や利用希望の申し込みを行います。

(出典:厚生労働省「居宅訪問型保育事業の概要」/ https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000075920.pdf

訪問保育を提供する保育士は、所定の条件を満たした家庭に対して保育を行います。

訪問保育の認可基準

訪問保育の運営事業者として認可を受けるためには、以下の基準を満たす必要があります。

職員の配置 1:1(保育対象となる子ども1人につき、保育者1人を配置)
職員の資格 必要な研修を修了し、保育士または保育士と同等以上の知識や経験があることを市町村長によって認められた者
保育の提供 ・原則、1日8時間
・保育所保育指針に準じた保育の提供

訪問保育ではサービス提供先の家庭で保育を行うため、保育室の面積に関する基準はありません。ただし、障害児に対して訪問保育を行う場合は、専門的な支援を受けられる施設を確保する必要があります。

また、保育士資格を持っていなくても、決められた機関で研修を受講すれば訪問保育に携わることが可能です。

(出典:こども家庭庁「地域型保育事業の概要」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/bfac7099/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_40.pdf

(出典:厚生労働省「居宅訪問型保育事業の概要」/ https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000075920.pdf

訪問保育とベビーシッターの違い

赤ちゃんを抱く保育士

保育者が依頼者宅を訪問してサービスを提供するという点で、訪問保育とベビーシッターは似た仕事です。しかし下記に示す通り、訪問保育とベビーシッターでは対象やサービス内容に違いがあります。

・対象
訪問保育の利用対象は3歳未満の乳幼児で、3歳以上になって保育施設への内定が決まった時点でサービスが修了となります。ベビーシッターは、事業所によって対象年齢が異なりますが、0歳から12歳程度の子どもを預けることが可能です。

・保育を提供する時間
訪問保育では、保護者が不在の時間帯に限り保育サービスを提供するのが一般的です。原則として保護者が帰宅した時点で保育を終了し、保育中の出来事や子どもの様子について保護者に報告します。

一方、ベビーシッターは保護者が在宅の場合でも保育サービスを提供することが可能です。保護者が帰宅して、夕食の準備をしたり洗濯をしたりする間に、ベビーシッターが子どものお世話を行うといったケースもあります。

・サポートの体制
訪問保育では複数人のチーム体制をとっており、1日あるいは1週間のなかで交代制で保育を行います。一方、ベビーシッターは1利用日につき1人の保育者が担当するケースがほとんどです。

訪問保育における保育士の仕事内容

訪問保育では、保育所保育指針をもとに保育の提供を行います。そのため、基本的な保育内容は保育園で働く保育士と変わりありません。ただし、食事やおやつ、子どもが遊ぶ玩具などは訪問保育の利用者(保護者)が用意します。

以下では、1日の流れを追いながら、訪問保育における仕事内容の例を紹介します。

受け渡し 利用者宅に到着したら、保護者と子どもへのあいさつや、保育にあたって注意すべき事項の確認などを行います。この時点で子どもの健康観察も行います。
午前中 子どもの体調にあわせて室内遊びや外遊びを行います。外遊びの際は、指定された公園や児童館、地域の広場などに出かけます。
お昼 保護者が用意したミルクや離乳食、通常のお昼ごはんを食べさせます。あわせて、歯磨きや排せつのサポートも行います。
午後 お昼寝の時間を設けます。起床後はおやつを食べて室内遊びや外遊びを行います。
受け渡し 保護者の帰宅後に子どもを受け渡し、保育活動についての連絡・報告を行えば業務は終了です。

保育士が訪問保育で働くメリット・デメリット

家のミニチュアと○×

訪問保育で働く保育士には、通常の保育施設とは異なるメリット・デメリットがあります。訪問保育を提供する職場への転職を検討している方は、事前に訪問保育の特徴や注意点を把握しておきましょう。

訪問保育で働くにあたってのメリット・デメリットは次の通りです。

メリット①手厚い保育サービスを提供できる

訪問保育では保育士と子どもが1対1となるため、通常の保育園よりもきめ細やかな保育や遊びを実践できます。集団保育と違って1人の子どもとじっくり向き合えるため、成長をサポートすることへのやりがいも大きいでしょう。

自分のペースで保育を進められることや、穏やかな環境で活動できることも、訪問保育のメリットといえます。

メリット②高度な知識・対応力が身につく

訪問保育では、子ども1人ひとりに対応した保育やケアが求められます。なかには医療的なケアを必要とする子どももいるため、そうしたケースでは通常の保育所では得られないような知識・対応力が身につくでしょう。

ただし、医療的なケアが必要な子どもの訪問保育を担当する際は、所定の研修を受講する必要があります。例えば、公益財団法人全国保育サービス協会が実施している居宅訪問型保育基礎研修のカリキュラムでは、0~2歳における子どもの心理や発達、乳幼児を対象とした救急救命の実習といった知識や技術が学べます。また、訪問先の家庭で保育環境を整備する方法や、訪問保育の提供者に求められるマナーなども研修の一部です。

デメリット①けがや事故に十分に注意する必要がある

通常の保育園の場合、 何かトラブルがあってもチームで対応できますが、訪問保育ではけがや事故があった際の対応を1人で行わなければなりません。

とはいえ、訪問保育では1人の子どもを1人の保育士が担当するため、けがや事故が発生するリスクは少ないと考えられます。子どもから目を離さないこと、何か起きてもすぐに手の届く範囲で保育を行うことなどを徹底し、安全の確保に努めましょう。保育中のけがや事故に関して不安がある場合は、訪問保育の経験者からアドバイスをもらうのがおすすめです。

まとめ

訪問保育とは、保育士が子どものいる家庭に出向いて保育を行うサービスです。似たようなサービスにベビーシッターがありますが、対象となる子どもの年齢や保育の提供時間、保育内容などが訪問保育とは異なります。

訪問保育の基本的な保育内容は一般的な保育所と同じです。ただし、1人の子どもとじっくり向き合えるため、より手厚い保育が提供できるでしょう。また、医療的なケアを必要とする子どもを担当する場合は、通常の保育所では得られないような知識や対応力を身につけることができます。ただし、すべての出来事に1人で対応することになるため、けがや事故には十分な配慮が必要です。

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