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施設型給付とは、2015年4月に始まった「子ども・子育て新制度」によって、保育園や幼稚園、認定こども園などの対象となる施設に施設型給付費を給付する財政支援制度です。しかし、施設型給付の仕組みや始まった背景など、詳しく知らないという方もいるのではないでしょうか。

当記事では、施設型給付の概要や始まった背景、仕組み、幼児教育・保育の無償化との関係など、施設型給付に関する内容を詳しく解説します。

幼稚園の施設型給付とは?

子ども・子育て支援新制度によって、特定の幼稚園や保育所には施設型給付費が支給されています。しかし、「施設型給付」の言葉自体は知っていても、どのような給付費なのか詳細が分からない方もいるでしょう。

ここでは、施設型給付の概要と給付が始まった背景を解説します。

施設型給付の概要

施設型給付とは、2015年4月に始まった「子ども・子育て支援新制度」による財政支援の取り組みの1つです。教育・保育給付認定を受けた子どもが、市町村によって特定教育・保育施設と認められた施設を利用した場合に支払われる、給付費・運営補助費を指しています。

(出典:厚生労働省「子ども・子育て支援新制度について」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000060788_4.pdf

特定教育・保育施設に該当する施設は、主に下記が挙げられます。

  • 認定こども園
  • 子ども・子育て支援新制度に移行する幼稚園
  • 保育所
  • 小規模保育事業所

施設型給付は、教育・保育施設を利用する各家庭に直接支払われるものではありません。各家庭の居住地である市町村から、施設が代理で給付を受ける仕組みです。

(出典:越前市「令和4年度の施設型給付費等について」/ https://www.city.echizen.lg.jp/office/050/020/shisetugatakyufu.html

(出典:芦屋市「市立保育所・認定こども園における施設型給付について」/ https://www.city.ashiya.lg.jp/kodomo/shisetugatakyuuhu.html

私立幼稚園の中には施設型給付を受けない施設も存在します。たとえば、従来どおりの私学助成で運営費が賄えている場合や、独自の教育方針がある幼稚園です。施設型給付を受けない幼稚園も、施設型給付を受ける施設同様、学校教育を提供する施設として位置付けられます。財政措置に関しては私学助成のほか、入園料・保育料の軽減を目的とした幼稚園就園奨励費を受けられます。

(出典:内閣府・文部科学省・厚生労働省「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(施設・事業者向け)」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/56a679cc/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_35.pdf

施設型給付が始まった背景

施設型給付が始まった背景として、下記のような子育て環境の変化が多くの家庭で見られることが挙げられます。

  • 核家族の増加
  • 地域とのつながりの希薄化
  • 兄弟姉妹数の減少
  • 共働き家庭の増加

子育て環境は大きく変化しているのが実情です。国や都道府県、市町村はこれらの子育て環境の変化と地域の実情を踏まえ、子育て家庭への支援の強化が必要と判断し、施設型給付の創設に至っています。

(出典:内閣府子ども・子育て本部「子ども・子育て支援新制度について」/ https://ninteikodomoen.or.jp/wp-content/uploads/2017/04/750f311671c8def4299b8c39bb1ebd65.pdf

2014年までは教育・保育施設の運営費の不足分は、多くの自治体が独自に財政支援を行っていました。子ども・子育て支援新制度が始まった2015年からは、運営費の不足分の負担を国・都道府県と市町村が担うことで、より質の高い財政支援の実現につなげられています。

施設型給付を受ける子どもの認定区分

認定区分とは、施設型給付を受ける子どもの年齢や保育の必要性を基に、1号・2号・3号と区別する支給区分を指しています。

3つの区分の違いは下記の通りです。

認定区分 対象年齢 保育の必要性 利用施設
1号認定 3~5歳 なし 幼稚園
認定こども園
2号認定 3~5歳 あり 保育所
認定こども園
3号認定 0~2歳 あり 保育所
認定こども園
小規模保育事業 など

(出典:内閣府・文部科学省・厚生労働省「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(施設・事業者向け)」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/56a679cc/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_35.pdf

「保育の必要性」とは保護者の方が就労している場合や疾病、妊娠・出産のほか、家族の介護・看護をしているケースなどが挙げられます。

1号認定は保育の必要性がない教育がメインの施設に区分される子どもで、預かり時間は4時間ほどが目安です。2号・3号認定は保育の必要性がある子どもが区分されます。利用できる施設には保育所なども含まれており、預かり時間は保護者の方の就労状況などによって変化するのが特徴です。

施設型給付の仕組み

施設型給付は、市町村の確認を受けた教育・保育を行う施設・事業に対し、一定の基準に基づいて財政支援を保障する制度です。

以下ではどのような仕組みによって給付費が算定されるのか、給付の構造を解説します。

施設型給付の基本構造

施設型給付費は、国が定める公定価格から利用者負担額を控除して算定されています。

    施設型給付費=公定価格-利用者負担額

公定価格とは、子ども一人あたりにかかる通常の教育・保育費用を基礎として算定される費用額です。認定区分ごとの保育の必要量と、利用施設の違いなどを考慮して費用額が算定されます。

利用者負担額は保育料や施設利用料のことを指しており、政令で定められている額を限度として、各市町村が施設・事業の利用者の所得に応じて定める金額のことです。

(出典:内閣府・文部科学省・厚生労働省「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(施設・事業者向け)」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/56a679cc/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_35.pdf

教育標準時間認定の子どもに係る施設型給付の構造

教育標準時間認定の子どもとは、1号認定に該当する子どもを指しています。1号認定における施設型給付の構造は、2号・3号認定と下記の違いがあります。

●1号認定

公定価格= 施設型給付(全国統一費用部分)=国:都道府県:市町村=2:1:1
施設型給付(地方単独費用部分)=市町村:都道府県=1:1
利用者負担額

●2号・3号認定

公定価格= 施設型給付=国:都道府県:市町村=2:1:1
利用者負担額

1号認定の施設型給付費は、「全国統一費用部分」と「地方単独費用部分」を組み合わせて支給されるのが特徴です。私立幼稚園に関する国や地方の費用負担状況などを考慮して取り入れられた支給形態となっています。

1号認定に関しては当面の間、2つの費用部分を組み合わせて一体的に支給するとされています。

(出典:内閣府・文部科学省・厚生労働省「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(施設・事業者向け)」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/56a679cc/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_35.pdf

(出典:内閣府子ども・子育て支援新制度施行準備室「子ども・子育て支援新制度について」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000060788_4.pdf

施設型給付と地域型保育給付の違い

子ども・子育て支援新制度では、施設型給付のほかに「地域型保育給付」と呼ばれる財政支援制度も創設されています。施設型給付との違いは、支給対象となる施設や事業です。

施設型給付は、0歳〜5歳までの子どもを預かる保育所・認定こども園と、3歳〜5歳までの子どもを預かる幼稚園が対象です。対して地域型保育給付は、原則として0歳〜2歳までの子どもを預かる、下記の4つの施設・事業が支給対象となります。

家庭的保育(保育ママ) 定員5人以下の少人数対象の保育事業
小規模保育 定員6〜19人の比較的小規模な保育事業
居宅訪問型保育(ベビーシッター) 各家庭の住まいで1対1を基本とする保育事業
事業所内保育 会社が設置する保育施設などで、従業員の子どもと地域の子どもを対象に保育する事業

(出典:土浦市「「施設型給付」と「地域型保育給付」」/ https://www.city.tsuchiura.lg.jp/page/page006384.html

上記の施設・事業は教育や保育に関する補助金の支給対象外となっていたものの、子ども・子育て支援新制度によって支給対象となった経緯があります。幅広い事業を補助金の支給対象とすることで教育・保育施設の不足解消につなげ、待機児童数を減らすのが目的です。

施設型給付を受ける幼稚園と幼児教育・保育の無償化の関係

幼児教育・保育の無償化とは、2019年10月から始まった新制度です。幼児教育は人格形成において無視できない基礎であること、また子育てや教育にかかる家庭の費用負担軽減などを目的に、教育・保育施設の利用料を無償とします。無償化の対象は、幼稚園や認定こども園、保育所などに通う3〜5歳児のすべての子どもです。

私学助成を受ける私立幼稚園など、施設型給付を受けていない施設や認可外保育施設は、無償化の内容が異なるため注意しましょう。一定の条件を満たしている場合や無償化給付を受けるための事前申請手続きをした場合に、月額上限内で無償化が受けられます。

施設型給付を受けている幼稚園や認定こども園、保育所は無償化の対象です。ただし、無償化となる費用は、施設の利用料に限ります。原則として食材料費や通園送迎費、行事費などは無償化の対象外で、従来どおり保護者の方が費用を負担する形式です。

(出典:内閣府・文部科学省・厚生労働省「幼児教育・保育の無償化について」/ https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/08/15/1419586-5.pdf

(出典:猪名川町生活部こども課「10分でわかる幼児教育・保育無償化」/ https://www.town.inagawa.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/81/10minute.pdf

施設型給付の法定代理受領の必要性

施設型給付は保護者の方への個人給付が基礎となっていますが、各家庭への支給ではなく施設に直接支払われる「法定代理受領」が取り入れられています。給付費を確実に、教育・保育に関する費用に役立てるための仕組みです。

施設側は法定代理受領を行った際、給付費の金額を保護者の方に通知しなければなりません。受領実績の通知は法律によって定められており、各自治体のホームページなどで公開されます。なお、通知は施設型給付費の受領を保護者の方に報告することが目的です。通知にともなって、新たな還付や追加の給付・支払いなどは発生しません。

(出典:芦屋市「市立幼稚園における施設型給付について」/ https://www.city.ashiya.lg.jp/kanri/shisetugata.html

まとめ

幼稚園の施設型給付とは、2015年に子ども・子育て支援新制度の一環として開始された財政支援の取り組みです。認定こども園や幼稚園・保育所・小規模保育事業所など特定教育・保育施設に該当する施設に、給付費・運営補助費として給付されます。

核家族化や共働き家庭の増加といった子育て環境の変化から生まれた施設型給付は、子育て家庭への質の高い教育・保育支援の強化を目指した取り組みです。幼児教育・保育の無償化とも関係しており、施設型給付を受けている施設に通う3〜5歳の子どもは、施設の利用料が無償となります。

※当記事は2024年1月時点の情報をもとに作成しています