子どもを妊娠して、出産後も保育士として育児と仕事を両立していきたいという方は少なくありません。出産後も仕事を続けていくために事前に知っておきたいのが、産休や育休の制度です。スムーズに産休・育休に入るためにも、制度について知識をつけておくとよいでしょう。
当記事では、保育士の方は産休・育休が取れるのか、また産休・育休の期間と取得する条件、取得したときの給与事情などについて解説します。子どもを授かったり、授かる予定があったりする方は、ぜひご一読ください。
目次
保育士は産休・育休が取れる?
産休・育休は法律で定められている休業制度であり、保育士も基本的には産休や育休を取得できます。一方で、中には妊娠・出産を機に退職を選んでしまう保育士の方もいます。職場の雰囲気や人手不足といった問題、仕事内容など、さまざまな理由で仕事と子育ての両立が難しいと感じる人も少なくありません。
ただし、女性の社会進出が進んだ現在では、保育士の産休・育休の取得を促進している保育園や、産休・育休後の復職を応援してくれる保育園も多くあります。
保育士の育休の現状
厚生労働省の令和4年度の調査によると、育児休業を取得した女性の割合は80.2%でした。一方、同年度の男性の育休取得率は17.13%と、女性に比べて低い水準です。ただし、男性の育休取得率は年々増加傾向にあり、政府は令和7年度には30%に到達することを目標に掲げています。
(出典:厚生労働省「「令和4年度雇用均等基本調査」結果を公表します ~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/07.pdf)
(出典:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf)
また、育休を取った女性は9割以上が6か月以上仕事を休むことを選んでいます。一方、男性は約5割が育休の期間を2週間未満に留めており、短期間の取得が中心となっているのが実情です。
ただし、育休を1か月以上3か月未満取得する男性の割合は24.5%であり、3番目に多い取得期間となっています。なお、男性が育休を取得しなかった理由としては、収入面の不安や職場の雰囲気などが多く挙げられています。
(出典:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf)
保育士が産休・育休を取れる期間と取得の条件
産休は雇用形態に関係なく、どのような方でも取得可能な制度です。しかし、育休を取得するためには一定の条件をクリアする必要があります。
それぞれどのような制度であるかを再度理解した上で、取得期間や条件を押さえておきましょう。
産休の取得できる時期と条件
「産休」は産前・産後休業の略称です。産休を請求した女性を、産前6週間(双子以上の場合は14週間)・産後8週間は就業させてはならないことが、労働基準法で定められています。女性が産前・産後休業を請求したにもかかわらず就業させた場合、雇用者は法律違反となり処罰の対象になるため注意が必要です。なお、出産当日は産前休業に含まれます。
産後休業は、死産や流産についても対象となる制度です。産後休業の時期は原則として産後8週間ですが、本人が請求し医師が認めた場合に限り、産後6週間を経過していれば就業できます。産後6週間以内の場合は、本人が就労を希望しても休みを取らせなければなりません。
(出典:厚生労働省「労働基準法における母性保護規定」/ https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku05/pdf/seisaku05i_0011.pdf)
産休は正規雇用の場合はもちろん、パートや派遣社員でも会社に請求できます。ただし、取得の仕方によっては職場の上司や同僚に負担がかかるケースがあります。産休を取得する場合は早めに上司や同僚に引き継ぎを行い、お互いに不安が残らないように配慮するとよいでしょう。
育休の取得できる時期と条件
育休は育児休業制度の略であり、育児・介護休業法で定められた両立支援制度のことです。労働者が1歳に満たない子どもを養育している場合、申出をすることで一定期間の育休を取得できます。
育休は男女を問わず、正社員であれば取得可能です。契約期間に定めがある方でも、子どもが1歳6か月(2歳になる日まで取得する場合は2歳)になるまでに労働契約が満了し、更新されないことが決定していない場合は取得できます。仮に勤務先の就業規則に育休の規定がなくても、法律に基づき育休を取得することが可能です。
(出典:厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000563060.pdf)
また、2023年10月1日からは「産後パパ育休制度」が施行されました。産後パパ育休制度は、育休とは別に、出生後8週間の内4週間まで2回に分けて休業できる制度です。育休も原則2回に分割して取得できるため、産後パパ育休制度と合わせれば最大4回休業できます。
(出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正のポイント」/ https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/)
厚生労働省委託の「働く女性の心とからだの応援サイト」では産休と育休の自動計算ができるため、ぜひご活用ください。
保育士が産休・育休を取得したときの給料事情
保育士が産休・育休を取っている間、保育園から給料は支給されません。代わりに、国からさまざまな経済的支援を受けられます。産休・育休を取得した場合に得られる経済的支援は以下の4種類です。
出産育児一時金 | 出産における経済的な負担を軽減するための制度です。健康保険の加入者が妊娠4か月(85日)以上で出産した場合、一児につき42万円が支給されます。 申請方法は健康保険によって(国民健康保険の場合は自治体によって)異なるため、協会けんぽなどの保険者や市区町村に確認しましょう。 |
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出産手当金 | 出産に伴う休業をカバーするための制度です。産前・産後休業の期間中、賃金の3分の2相当額が健康保険から支給されます。ただし、休業中も就業先から給料が支払われている場合は対象になりません。 |
育児休業給付金 | 雇用保険に加入している方が育休を取った場合に給付金を受け取れる制度です。育児休業開始から180日目までは育休前の賃金の67%が、181日目から子どもの1歳の誕生日までは50%が支給されます。 |
産休・育休中の社会保険料の免除 | 産休・育休の期間中は厚生年金や健康保険料が免除されます。会社から年金事務所又は健康保険組合に申出をすることで、本人・会社ともに免除を受けることが可能です。社会保険料の免除を受けても、健康保険の給付や将来受け取る年金額への影響はありません。 |
(出典:厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ」/ https://www.mhlw.go.jp/tenji/dl/file07-02pa.pdf)
保育士の産休・育休の取り方
保育士の一般的な産休・育休の取り方は以下の通りです。
保育園の園長や施設長に相談する |
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最初に、保育園の園長や施設長に妊娠の報告をし、産休・育休を取得したい旨を伝えましょう。遠慮や心配が先立ってなかなか言い出せない場合もあるでしょうが、なるべく早めに相談することが大切です。早めの相談によって業務の引き継ぎがスムーズに進みやすくなるほか、園側も人員配置や人員補充などに余裕をもって取り組めます。 また、特に妊娠初期はつわりの症状が出やすく、妊娠以前と同じ働き方をするのが困難なケースも少なくありません。園長や施設長に早めに相談しておけば、体調不良の際にサポートを受けやすくなるのもメリットと言えるでしょう。 |
産休と育休の申請をする |
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保育園側に報告できたら、産休・育休の申請をします。産休・育休の関係書類は基本的に保育園側が用意してくれますが、記入は本人が行う必要があるため、制度や仕組みをある程度理解しておくとよいでしょう。申請書類に記入する上で疑問点や不明点があれば、職場の担当者に確認すると安心です。 |
職員と保護者に周知する |
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産休・育休の取得は周りの職員にも大きな影響を与えます。そのため、職員会議や朝の申し送りなどの場で職員にも周知しましょう。周知のタイミングは園長や施設長に相談しておくのがおすすめです。周知の際には産休・育休の期間と一緒に、復帰の時期も伝えましょう。 保護者に周知することも大切です。保護者に伝える方法には、手紙のほか、懇親会・参観日など保護者が集まるタイミングでの報告などがあります。保護者の中には保育士がいなくなることに不安を感じる方もいるため、引き継ぎをきちんと行っていることや引き継ぎ先の先生などを明言するとよいでしょう。 |
まとめ
産休と育休は法律で定められている休業制度であるため、条件を満たせば保育士の方も取得可能です。休業中は勤務先の保育園から給料は支給されない代わりに、国からさまざまな経済的支援を受けられます。
また保育士が産休・育休を取得する際は、早いうちに取得したい旨を園長や施設長に相談しましょう。申請後は職員と保護者にも産休・育休することを周知するのも大切です。
※当記事は2024年1月時点の情報をもとに作成しています