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幼稚園の教諭としての仕事は、職場によっては人手不足や休暇の取りにくさで大変さを感じることもあります。同じように離職を考える人は多いのか、幼稚園教諭の離職状況が気になる方もいるでしょう。

当記事では、幼稚園教諭の離職率や、離職が多い園の特徴について解説します。幼稚園教諭の経験がある方が活躍できる職場も紹介するので、転職を考えている方はぜひ当記事を参考にし、理想の働き方や将来について検討する参考にしてください。

幼稚園教諭の離職率は?

幼稚園教諭(幼稚園教員)の離職率について、幼稚園教諭の職種に限定した公的な統計データはありません。ここでは、幼稚園教諭と同様に子どもの発達・成長に関わる職種である「保育士」のデータを参考にして、幼稚園教諭の現状について考えてみましょう。

2020年に発表された厚生労働省の資料によると、保育士の離職率は9.3%であり、民間保育所(私立保育所)では10.7%となっています(2017年時点)。なお、2022年における全職種の一般労働者の平均離職率は11.9%です。保育士の離職率は、全職種平均よりも低いものの、毎年一定の割合で離職する方がいることを押さえておきましょう。

離職する方も一定数いる一方で、保育所や幼稚園、保育士、幼稚園教諭のニーズ・求人数は近年増加傾向にあります。2022年10月における有効求人倍率は、全職種平均が1.35倍であるのに対し、保育士では2.49倍となっています。離職率と有効求人倍率から、保育士は常に人材が不足している状態にあると考えられるでしょう。

上記のデータは保育士のものですが、幼稚園教諭も同様の傾向が見られると考えられます。これらの状況をふまえた上で、幼稚園教諭に多い離職理由を見てみましょう。

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

(出典:こども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/317fa7d2/20230401_policies_hoiku_05.pdf

(出典:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/gaikyou.pdf

幼稚園教諭の離職理由

幼稚園教諭の仕事を辞める理由は人によって異なりますが、幼稚園教諭の離職理由として挙げられることが多いものとして「家庭の事情」や「転職」などがあります。家庭の事情には結婚・出産など、ライフステージの変化に伴う離職が多く見られます。転職の場合、幼稚園教諭として他の園に転職する方もいれば、異業種に転職する方も少なくありません。

離職率が高い幼稚園の特徴は?

幼稚園教諭には早期離職の傾向がありますが、離職率の高さは職場の環境によって大きく異なります。下記のような特徴を持つ幼稚園は離職率が高い傾向があるため、就職・転職の際には十分に注意しましょう。

    ◆離職率が高い幼稚園の特徴

  • 人手が不足している
  • 待遇が悪い
  • 休暇が取りにくい

ここでは、上記の3つの特徴について解説します。

人手が不足している

幼稚園教諭の主な仕事は、就学前の子どもに対して、幼稚園教育要領や各幼稚園の方針に基づいた教育を行うことです。

幼児教育は遊びを中心とする活動が多く、幼稚園教諭は子どもと一緒に体を動かしながら子どもたちのサポートを行う必要があります。活動の事前準備は園児の登園前・降園後に行いますが、預かり保育を行う幼稚園も増えており、幼稚園教諭の仕事量・残業は従来と比べて増加していると考えられるでしょう。持ち帰り残業も珍しくありません。

これらの業務を安全かつ適切に行うためには、十分な職員数が必要となります。人手不足・人員不足の幼稚園では職員1人当たりの負担が大きくなるため、職員のモチベーションが続かず、ストレスがたまって離職へとつながってしまうケースも少なくありません。

待遇が悪い

「業務の量や内容に見合った給料をもらえない」「福利厚生が十分ではない」などのように、職員に対する待遇が悪い園も離職率が高い傾向があります。職場選びをする際には、給与や福利厚生など待遇面における条件を十分に確認することが大切です。

福利厚生には法律で定められている「法定福利(社会保険や休業補償など)」と、職場が独自に定める「法定外福利」の2種類があります。法定外福利には住宅手当や通勤手当、結婚休暇、各種研修、退職金制度などがありますが、法定外福利は職場によって大きく異なるため、事前に種類や内容をチェックしましょう。利用実績があるか確認することも重要です。

休暇が取りにくい

幼稚園は夏休みや年末年始などに長期休暇を取得できる場合もあり、保育士よりも休みは取りやすいものの、休暇に対する考え方は園によって大きく異なります。長期休みに預かり保育がある園や、土曜出勤のある園では希望通りの休みが取れない場合もあるでしょう。

また、幼稚園教諭は子どもの相手をする仕事であるため、園児が登園する平日に休む場合は同僚の先生のサポートが必要となります。人手が足りない園では平日の休暇取得が難しく、忙しいと感じて離職を考えるケースも少なくありません。

幼稚園教諭が離職した後の転職先は?

幼稚園教諭を辞めることを考えている方の中には、離職後にどのような仕事ができるか気になっている方もいるでしょう。幼稚園教諭は保育や幼児教育の現場だけでなく、子どもが多く利用するサービスを提供する企業など異業種への転職も十分に可能です。

ここでは、幼稚園教諭が活躍できる転職先を5つ紹介します。それぞれの仕事内容や転職を成功させるポイントも併せて確認し、自分に合った転職先を見つけましょう。

保育園

保育園は幼稚園よりも保育時間が長いものの、シフト勤務となる場合が多いため、平日休みが取りやすく、出勤時間の融通もききやすくなります。複数担任となるケースも多く、職員同士でサポートし合えることも大きなポイントです。保育園では0~6歳の乳幼児の保育を行うため、幅広い保育経験を積めるでしょう。

保育園に転職する際には、自分が希望する働き方ができる園かどうか事前に確認することが大切です。給与や福利厚生、補助金制度といった待遇面、人員配置の仕方や勤務体制、職場環境、保育理念なども十分にチェックしましょう。

認定こども園

認定こども園は、幼稚園と保育園の2つの機能を併せ持つ保育施設です。幼稚園としての機能だけでなく保育園としての機能もあるため、保育の幅を広げられるでしょう。保育者としてのスキルアップを図りたい方におすすめの職場と言えます。

認定こども園には、幼保連携型・幼稚園型・保育所型など複数の施設形態があり、保育教諭になるには幼稚園教諭免許と保育士資格の両方が必要となる点に注意が必要です。それぞれの保育方針・教育方針、労働条件などを確認した上で、自分の働き方に合う園選びを行いましょう。

テーマパーク

幼稚園教諭としての経験を活かして、子どもが多く集まるテーマパークのスタッフとして働くこともおすすめです。パーク内の迷子センターやベビールーム、託児所などでは、幼稚園教諭としての知識やスキルを大いに生かせるでしょう。

テーマパークは土日祝日や夏休みなどの長期休暇に忙しくなりやすい場所ですが、「さまざまな子どもたちとたくさん触れ合いたい」という方におすすめの職場です。幼稚園教諭免許を持っている方は待遇をよくしてもらえる場合もあるため、求人票の閲覧時や面接の際などに確認しておくとよいでしょう。

子ども服業界

「子どもと接することが好き」「服のコーディネートが得意」という方は、子ども服業界に転職し、販売員(アパレル店員)として働くことも1つの方法です。商品管理や売上管理などの事務仕事といった新しい分野に挑戦する必要はありますが、子どもや保護者への接客対応、電話対応など幼稚園教諭としての経験も生かせるでしょう。

アパレル店員は土日祝日出勤の場合が多く、年末年始やお盆といった長期休暇は繁忙期となります。カレンダー通りの休みは取りづらい可能性が高いため、働き方をよく考えた上で転職を検討するとよいでしょう。

子ども専門写真館

幼稚園教諭経験者は、子ども専門写真館でも重宝される存在です。小さな子どもにとって、写真館やフォトスタジオは見慣れない場所であるため、緊張してしまうケースも少なくありません。子どもへの対応が得意な元幼稚園教諭であれば、子どもをうまくリラックスさせて自然な笑顔を引き出せるでしょう。

子ども専門写真館では、幼稚園教諭免許保有者が優遇される場合も多く、転職もスムーズに進むと考えられます。サポート体制や資格取得支援体制、研修体制が整っている勤務先を選ぶと、フォトグラファーとしての知識やスキルを無理なく身につけることができるでしょう。

まとめ

幼稚園教諭の離職率のデータはないものの、同じように子供たちの成長に関わる保育士の離職率は9.3%であり、他職種と比べて高い水準ではありません。ただ、人手不足や休暇の取りにくさ、職場の福利厚生に問題があるなどで離職を考える方は一定数見られます。

幼稚園の教諭は子供と関わる経験を生かして、子供服業界や子供専門写真館などさまざまな場所で活躍できます。転職を考えるときは、働き方や待遇を確認しながら応募先を選びましょう。

※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています