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放課後児童クラブは、保護者が就労や介護などで昼間家庭にいない小学生を対象に、放課後の時間帯に適切な遊びや生活の場を提供する施設です。児童福祉法第6条に基づくこの事業は、「学童保育」や「児童クラブ」とも呼ばれ、子どもたちの健全な育成を目指しています。

放課後児童クラブの運営基準、スタッフの仕事内容、そして必要な資格について詳しく解説しますので、これから放課後児童クラブで働きたいと考えている方はぜひご覧ください。

放課後児童クラブ(学童保育)とは

放課後児童クラブとは、就労や介護などの理由で保護者が昼間家庭にいない小学生を預かり、放課後の時間帯に子どもに適切な遊びや生活の場を提供する事業・施設を指します。放課後児童クラブは児童福祉法第6条における放課後児童健全育成事業の通称であり、「学童保育」や「児童クラブ」、「学童クラブ」などとも呼ばれています。

    第六条の三

    ② この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学している児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。

(引用:e-gov法令検索「児童福祉法」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000164 引用日2024/5/28

放課後児童クラブでは、放課後児童支援員などの専門職をはじめとするスタッフが勤務しており、利用者である小学生と一緒に宿題をしたり遊んだりして放課後を過ごします。保育園や幼稚園における「延長保育」「預かり保育」の代わりとなる事業と捉えるとよいでしょう。

放課後児童クラブには自治体運営の施設と民間運営の施設があり、保育料や開所日・開所時間、料金(月額)なども施設によって異なります。習い事など外部サービスと連携したり、夕食や入浴のサービスが充実していたりする施設もあることを押さえておきましょう。

放課後児童クラブの数

現代では少子化が急速に進んでいるものの、共働き世帯の増加や核家族化の進行により、放課後児童クラブの需要は増えています。待機児童の数は依然として多く、入会に向けた書類の提出・申込を行っても希望通りに入所できない家庭がある点を押さえておきましょう。2023年における待機児童数・登録児童数のデータは下記の通りです。

【放課後児童クラブの待機児童数・登録児童数の推移(2023年5月1日時点)】

待機児童数 登録児童数
16,276人 1,457,384人

(出典:こども家庭庁「令和5年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(令和5年5月1日現在)」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/69799c33-85cb-44f6-8c70-08ed3a292ab5/dcb39315/20230401_policies_kosodateshien_houkago-jidou_30.pdf

なお、放課後児童クラブは全国に25,807か所開設されており、全体の約26%が公立公営、約50%が公立民営、残りの約24%が民立民営となっています(2023年5月1日時点)。放課後児童クラブの約75%は学校敷地内や児童館、公的施設などの公共施設内に設置されていますが、その他の場所に設置されるケースも少なくありません。

需要増に応じて、放課後児童クラブの活動は増加しています。2023年5月時点での支援の単位数は37,034単位と、2022年の36,209単位と比べて前年比825単位増えており、職員のニーズも高まっています。なお、支援の単位とは放課後児童クラブの規模を指すための基準です。40人の児童に向けて2人以上の職員が提供するサービスを1単位として表記します。

放課後児童クラブと放課後等デイサービスの違い

放課後児童クラブ(学童保育)と似た名称の事業・施設として「放課後等デイサービス」があります。学童と放課後等デイサービスは「就学児童を預かる場所」という共通点があるものの、明確に異なるサービスです。

放課後等デイサービスとは、障がいがある小学生・中学生・高校生を預かり、保護者や本人のニーズに基づいて計画的に療育に取り組む事業・施設のことです。学童とは異なり、保護者が就労していなくても利用できますが、受給者証などを持たない定型発達児は利用できません。

一方、放課後児童クラブは、主に共働き家庭の小学生を放課後に預かり、宿題や子どもに合った遊びをして過ごす施設です。このように、放課後児童クラブと放課後等デイサービスでは、対象年齢や対象児童、通所する目的が異なる点に留意しましょう。

放課後児童クラブの運営基準

放課後児童クラブでは、子どもたちの生活の質を確保するため、下記のような運営基準が整備されています。

施設面積 ・遊びや生活の場としての機能、静養するための機能を備えた専用区画(部屋やスペース)を設置する
・専用区画の面積は、児童1人あたり約1.65平方メートル以上を目安とする
開所日数 原則として1年につき250日以上開所する
開所時間 ・平日は原則として1日につき3時間以上開所する
・土日や長期休暇期間など(小学校の授業の休業日)は、原則として1日につき8時間以上開所する
クラスの人数 1つのクラス(支援の単位)を構成する児童の人数は、概ね40人以下を目安とする
職員の配置基準 支援の単位(クラス)ごとに、放課後児童支援員を2人以上配置する(1人を除いて補助員の代替が可能)

(出典:こども家庭庁「放課後児童健全育成事業の目的及び制度内容」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a403ad66-5106-4844-9f3b-3686fd713b35/b3d91c5f/20231013-policies-kosodateshien-kosodateshien-kyozai-000926909.pdf

現在運営されている放課後児童クラブの多くは、上記の基準を概ねクリアしていますが、支援の単位1つあたりの児童の人数が41人以上となっている施設も少なくありません。スタッフが不足し、常に募集を行っている施設も多くあるのが現状です。

放課後児童クラブでスタッフは何をする?

放課後児童クラブで働くことに興味がある方の中には、スタッフが仕事として何をするのか気になる方も多いでしょう。

放課後児童クラブのスタッフの主な仕事は、施設を利用する子どもたちが放課後を安心して過ごせるよう、子どもたちの活動をサポートすることです。遊びや食事・おやつ、宿題・自習といった学習活動などを中心として、子どもの学年や発達段階を考慮した支援が求められます。

また、子どもたちが自ら進んで通い続けられるよう、子どもの状態を観察して働きかけることも重要です。保護者や子どもたちが通う学校と連携した育成支援も欠かせません。

また、卒業や入学など、子どもたちの生活の節目に関する行事や季節の行事など、文化的な活動にかかわる取り組みを行うことも、放課後児童クラブの大きな役割と言えます。工作や調理実習などのイベントを定期的に開催する施設では、企画や運営、後片付けなどもスタッフの仕事となります。

放課後児童クラブの1日の流れ

放課後児童クラブにおけるスタッフの1日のスケジュールは、学校の授業がある日と学校の授業がない日(土曜日や夏休みなど)で異なります。ここでは、それぞれの1日のおおまかな流れを確認しましょう。

・放課後児童クラブの1日の流れ(学校の授業がある日)

11:30 出勤
おやつの準備
事務作業
13:00 ミーティング
14:00 子どもたちの登所・入室
出欠と帰宅予定時間の確認
宿題・自由遊びなどの見守り
15:30 おやつ
16:00 外遊びの見守り
17:00 帰りの会
18:00 延長保育開始
19:00 閉所
19:15 退勤

・放課後児童クラブの1日の流れ(学校の授業がない日)

8:00 出勤(早番)
子どもたちの登所・入室
出欠と帰宅予定時間の確認
宿題・自由遊びなどの見守り
9:00 出勤(遅番)
9:30 朝の会
宿題・学習などの見守り
ミーティング
10:30 集団遊びや工作などの活動
12:00 昼食・休憩
14:00 自由遊びの見守り
15:30 おやつ
16:00 自由遊びの見守り
17:00 帰りの会
18:00 延長保育開始
18:15 退勤(早番)
19:00 閉所
19:15 退勤(遅番)

このように、放課後児童クラブでは、学校の授業がある日よりも学校の授業のない日のほうが、スタッフの勤務時間が長いケースがほとんどです。

放課後児童クラブで働くのに必要な資格

放課後児童クラブで働くために必須となる資格は特にありません。一方で、放課後児童クラブの運営基準では、支援の単位ごとに「放課後児童支援員」の資格保持者を2名以上配置することが定められています。資格がなくても補助員として働けるものの、「放課後児童支援員」資格を取得することで応募できる求人数が増えるでしょう。

放課後児童支援員資格を取得する方法

放課後児童支援員資格を取得するには、各都道府県が行っている「放課後児童支援員認定資格研修」を修了する必要があります。保育士資格や教員免許を持っている方など、受講に向けて実務経験が必要ない方もいますが、最終学歴によっては一定の実務経験が必要になることを押さえておきましょう。研修の受講要件は下記の通りです。

●放課後児童支援員の資格取得要件

  • 保育士
  • 社会福祉士
  • 高校卒業以上で2年以上児童福祉事業に従事した方
  • 教育職員免許法第4条に規定する免許状(幼稚園・小学校・中学校・高校・特別支援学校・養護教諭・栄養教諭等)を取得した方
  • 大学で社会福祉学等の課程を修了し卒業した方
  • 大学で社会福祉学等を専修する学科等において優秀な成績で単位を修得したことにより、大学院への入学が認められた方
  • 大学院で社会福祉学等の課程を修了し卒業した方
  • 外国の大学で社会福祉学等の課程を修了し卒業した方
  • 高校卒業以上で2年以上放課後児童健全育成事業に類似する事業に従事し、市町村長が適当と認めた方
  • 5年以上放課後児童健全育成事業に従事し、市町村長が適当と認めた方

(出典:京都府「放課後児童支援員認定資格研修[子育て支援情報未来っ子ひろば]」/ https://www.pref.kyoto.jp/kosodate/news/houkago.html

教材費や交通費、昼食代などは自己負担となりますが、受講料は無料であることが一般的です。合計24時間(6分野16科目)の講義・演習で取得できる資格であり、保育士資格や教員免許、社会福祉士資格のいずれかを所持している方は免除される科目もあります。有利に就職活動・転職活動を進めるためにも、資格の取得に向けてチャレンジしてみましょう。

まとめ

放課後児童クラブは、働く保護者にとって重要な子育て支援施設です。共働き家庭や核家族化が進む現代社会において、放課後児童クラブの需要は高まり続けています。施設で働くにあたって特定の資格は不要ですが、放課後児童支援員の資格を持つことで、より多くの職場での就業が可能になります。

資格取得のための研修は各都道府県で実施されており、保育士や教員免許を持つ方には受講免除もあるので、興味のある方はぜひ挑戦してみましょう。

マイナビ保育士では、放課後児童クラブをはじめとした、保育士の方が活躍できる数多くの職場をご紹介しています。保育士に特化したキャリアアドバイザーが経歴や希望に基づいてベストな職場を紹介するため、ぜひ一度ご相談ください。

※当記事は2024年5月時点の情報をもとに作成しています