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保育士資格を持ちながら、社会福祉施設で働いていない「潜在保育士」に、復帰チャンスがきています。処遇改善手当や支援金制度、専門の求人窓口など、潜在保育士の復帰を後押しするためのさまざまな制度・サービスが整備され、現場の状況が大きく改善されてきたからです。
そこで今回は、潜在保育士が安心して復帰できるようになった背景について、詳しく解説します。
保育士の数が不足するなか、社会も子育て家族も潜在保育士の復帰を強く望んでいます。そうした思いに応えるため、そして好きな仕事に戻るためにも、保育業界の現状をきちんと理解しておきましょう。
目次
現在の潜在保育士の状況
潜在保育士とは、保育士資格を持ちながら、保育園や認定こども園などの社会福祉施設で働いていない人材のことです。こども家庭庁の調べによると、2023年における潜在保育士の数は1,157万人。これは、資格所有者全体の約6割にあたる数です。

出典:こども家庭庁 令和7年「保育人材の確保のための総合的な対策」
そうしたなか、2024年の保育士の有効求人倍率は、3.54(3.54件の求人に対して保育士が1人しかいない状況)となっており、人手不足の状況が続いています。当然、潜在保育士の復帰が強く望まれていますが、さまざまな事情から保育士への復帰を選択しない方が多いのが実情です。
潜在保育士でいる理由とは?

国家資格のなかでも、難易度が高いといわれる保育士資格を持ちながら、潜在保育士でいる理由として下記が挙げられます。
- 賃金が見合わない
- 人間関係が大変
- 体力に不安がある
- 子育てとの両立が難しい
- ブランクが長くて自信がない
以下では、主な理由について詳しく見ていきましょう。
賃金が見合わない
保育士の平均給与は他の職種よりも低めの水準で、厚生労働省が行った「令和6年賃金構造基本統計調査」では、全職種の平均給与より7万円も低い数値でした。
令和元年度 職種別平均賃金(月収換算:役職者を除く)
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全産業平均賃金 |
34.8万円 |
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保育士平均賃金 |
27.7万円 |
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
他の仕事のほうが条件がよければ、保育士を選ぶ人が増えないのも無理はないでしょう。
人間関係が大変
人間関係の難しさも、保育士が避けられる理由の1つです。事実、同僚との教育方針の違いや、保護者対応などで苦労している保育士は多く、東京都保育士実態調査でも退職理由の第1位は「職場の人間関係」でした。
しかし、保育士は連携を求められる仕事なだけに、人間関係は避けて通れません。そのため、過去の経験(人間関係)が原因となって、「もう戻りたくない」と思う人も少なくないようです。
体力に不安がある
保育士の仕事は多忙なことで知られています。子どもたちと一緒に体を動かし、食事や睡眠などのお世話をし、片付けや制作も行ったうえで、膨大な事務作業をこなす----。これは、体力に自信がないとできない大変な仕事です。
潜在保育士として長く過ごした人や年齢が少し上の人は、ついていく体力があるかどうか、不安になるのも仕方のないことでしょう。
子育てとの両立が難しい
保育士は若い女性の割合が多く、出産を理由に退職する人も少なくありません。子育てが始まると、子どもの体調不良で急に仕事を抜けることがあったり、学校や習い事の都合で長い時間働けなくなったりするからです。
「保育現場は人手不足なのに、逆に迷惑をかけてしまうかもしれない」「かといって、パート勤務で低い給与になるのは避けたい」。子育てと仕事の両立を考える際のそうした思いも、潜在保育士が復帰しにくい理由となっています。
ブランクが長くて自信がない
保育士の仕事には、幅広い専門知識や技術が求められます。そして、そうした知識は常にアップデートされています。現場から離れていた時間が長いと、今の自分のスキルに自信が持てず、復帰をためらってしまう可能性が高いでしょう。
保育士の復帰しやすい環境が整ってきている?

ここまで、潜在保育士が復帰を選択しない理由について解説してきましたが、背景にある課題はこの数年で大きく改善しています。特に給与に関しては、今後さらなる伸びが期待できる状況です。データと一緒に詳しく見ていきましょう。
処遇改善手当による給与のアップ
保育士の処遇改善手当とは、保育士の賃金を改善するために2013年から始まった国の補助金制度です。この制度が始まってからは、保育士の給与が着実に上昇しています。


出典:こども家庭庁「令和6年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定を踏まえた公定価格の人件費改定」
出典:こども家庭庁「保育士・保育の現場の魅力発信に関する取組について」
2024年には、私立の保育士の給与を国家公務員の給与に近づけるための人事院勧告も出され、ぐっと給与が伸びました。
人事院勧告の内容
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処遇改善手当では、さらに賃金に反映しやすい仕組みが提案されているので、今後も改善が期待できるはずです。
※令和7年度の処遇改善手当の仕組みについてはこちらをご覧ください。
働き方改革と研修制度の充実
働き方改革の波は、保育現場にも届いています。マイナビ保育士が全国の保育所を対象に行った調査によると、75.2%の事業所が保育士の労働改善と定着に向けた取り組みを実施していることがわかりました。


出典:マイナビ保育士 保育士白書2023年度版
取り組みの内容を見ると、時間外労働の削減やスキルアップ支援、職員数の確保、休暇の取得促進、育児介護支援、コミュニケーションの円滑化など、潜在保育士の悩みに応えるものが多い点に特徴があります。なお、スキルアップについては、国や自治体が研修費用を補助し、修了した職員の賃金改善にあてるキャリアアップ補助金制度なども 採用されています。
一方、国も働きやすい環境づくりのために、相談窓口の設置や保育士支援アドバイザーの派遣、施設管理者研修などの取り組みを行っています。そうしたことから、労働改善の動きは今後も継続されるでしょう。
ICT化などによる仕事の効率化
保育士は連絡帳や保育指導案の作成、給付・監査関連書類の作成など、事務作業も数多くこなしています。しかし、近年は保育現場にも保育アプリなどのICT化が進み、作業がかなり効率化されました。
また、働き方改革に伴って時間外労働への規制も厳しくなり、保育現場の残業はかなり減っています。
マイナビ保育が、2023年に全国の保育士を対象に行った調査によると、1か月あたりの時間外労働は「0時間〜5時間未満」が半数以上となっていました。厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報」で報告された、一般労働者の月平均残業時間が「13.5時間」 だったことを考えると、かなり低い水準といえるでしょう。


出典:マイナビ保育士 保育士白書2023年度版
保育士の子育て支援体制
子育て中の潜在保育士の場合、「子どもの体調不良があっても休めなさそう」「何かと物入りで就活資金に不安がある」といった心配もあるでしょう。しかし、そんな悩みに応えるための支援体制も整ってきています。
マイナビ保育士が保育所に対して行った調査によると、すでに約7割の施設が十分な職員数の確保と育児・介護支援、休暇の取得促進などを実施しています。国や自治体もさまざまな子育て支援に取り組んでいることから、休みにくい雰囲気や経済的な負担に関する悩みは、かなり減っていくでしょう。
東京都を例に挙げると、以下のような子育て支援策が用意されています。
●再就職支援金資金
保育所などに就職が決まった際、潜在保育士に就職準備金を無利子で貸し付ける制度。貸付額は40万円以内で、2年間保育士として就労すると返還免除となる。
●保育所復帰支援資金
未就学児を持つ保育士に対して、保育所などの保育料の一部を無利子で貸し付ける制度。貸付額は保育料の半額(27,000円以内)で、2年間保育士として就労すると返還免除となる。
潜在保育士におすすめの仕事

さまざまな悩みを持つ潜在保育士に復帰をすすめるのは、保育業界の環境改善だけが理由ではありません。保育の仕事が多様化していることや、精度の高いマッチングが可能になったことも理由の1つです。
現在、女性の社会進出によって、子どもを預かる施設の需要は高まり、保育士資格を持つ方はさまざまな職場で求められています。加えて、業界に詳しいキャリアアドバイザーが増えたことで、より希望に合った職場探しができるようになりました。
つまり、保育所に限定せず、幅広い視野でライフスタイルに沿ったキャリアを選べるようになったのです。
<潜在保育士の希望とおすすめの仕事>
- 高待遇を希望
都心や大きな自治体の私立保育園、特別手当がつく児童養護施設など
- 子育てと両立したい
企業主導型保育園、院内保育所、保育補助やパートタイムなど
- 体力に不安がある
保育補助やパートタイム、時短社員、保育園や子育て支援センターの事務、保育知識を生かした在宅ワークなど
- 人間関係が苦手
派遣保育士、臨時職員、ベビーシッター、保育園や子育て支援センターの事務、保育知識を生かした在宅ワークなど
- ブランクが心配
ブランクOKや経験不問の職場、復職支援セミナーや子ども関連のボランティアなど
復帰相談もキャリアアドバイザーへ

以上のように、保育業界は働き方改革や賃金改善の取り組みが進み、以前とは事情が変わっています。そして、今後もいろいろな面で改革が進むと考えられます。大事な情報を逃さないためにも、復帰を考える際は、保育業界専門のキャリアアドバイザーに相談してみましょう。
たとえば、マイナビ保育士の場合は、復帰時期が決まっていなくても相談OK。業界の最新情報はもちろん、職場の実際の雰囲気も詳しく紹介します。
相談は無料で施設見学会やブランクを埋めるセミナー、ボランティアの情報も充実しているので、悩みに沿った提案を受けられるはずです。まずは気軽にサイトをのぞいてみてはいかがでしょうか。
まとめ
潜在保育士の数は、資格所有者全体の約6割にのぼり、給与の安さや膨大な仕事量、人間関係の大変さ、子育てとの両立の難しさなどが、復帰を選択しない大きな理由となっています。
しかし、この数年で保育業界の事情は大きく変わっており、今は「復帰のチャンス」といえるかもしれません。
たとえば、保育士の給与は処遇改善手当で上昇しており、ICTの導入によって残業が月に0〜5時間未満という施設も増えています。さらに、人間関係のトラブルを回避するための相談窓口が設けられ、経済的な子育て支援体制も整ってきました。
保育士の資格を生かせる仕事も多様化しているため、ブランクがあっても安心して働ける職場はきっと見つかります。まずは、保育業界専門のキャリアアドバイザーに相談することから始めてみましょう。
<参考>
こども家庭庁 保育士・保育の現場の魅力発信に関する取組について
こども家庭庁 保育士の復職支援の強化について
こども家庭庁 令和6年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定を踏まえた公定価格の人件費改定
こども家庭庁 保育DXの推進について
厚生労働省 保育士等に関する関係資料
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/s.1_3.pdf
厚生労働省 保育人材の確保
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000057741.html
こども家庭庁 令和7年度こども家庭庁当初予算案





