保育士として働くにあたり、避けて通れないものが書類選考です。提出書類に記入する内容のうち、履歴書や職務経歴書の自己PR欄に何を書くべきか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
自分自身を客観的に語らなければならない自己PRは、何が正解なのか判断がつきにくい項目です。しかし、他の志望者と差をつけるためには軽視できない部分でもあります。
ここでは、保育士の採用試験で役立つ、自己PR作成のコツについてご紹介します。盛り込むべき内容や書き方の注意点も解説しているため、ぜひご活用ください。
目次
保育士の自己PR作成前に知っておきたいこと
日々子どもたちと接する保育士は、その人の内面が非常に重視される仕事です。採用試験でも個々の内面をはかることのできる質問が多く出され、自己PRの回答内容に重きが置かれています。
そのため、自己PRで手を抜けば印象が弱くなり、採用に至ることは難しくなるでしょう。しかし、奇をてらった回答では「うちの園のカラーには合わない」と採用を見送られてしまう恐れがあります。
採用試験に通過するための自己PRの作成方法をご紹介する前に、まず自己PRをまとめるうえで知っておくべきポイントを解説します。
志望園の特徴
自己PRは、就職後にどのような活躍ができるかを伝えるためのアピールチャンスです。他の志望者と差をつけるためには、志望園の特徴をよく調査し、教育理念や園独自の取り組みに沿ったアプローチをしなければなりません。
たとえば、英語教育に力を入れている園に応募する場合、留学経験や英会話能力があることを盛り込んだ自己PRは好印象となるでしょう。
他園の採用試験でも利用できる自己PRでは、採用後の活躍イメージや真剣さが伝わらず、選考に落ちる原因となってしまいます。自己PRの効果を最大限発揮するためには、志望園の特徴を理解したうえで自己PRを作成する必要があります。
自分自身の経験と志望園の特徴から共通点を見つけ、自己PRの内容に加えることで、志望園のために作成した自己PRであると伝えられるでしょう。
自身の性格・人柄
保育園の採用試験では人柄が最も重視されます。どんなに学歴や職歴が優れていても、人柄に保育士としての適性がないと判断されれば採用されることはありません。
そのため、自己PRで大きなアピールポイントとなるものは、性格・人柄に基づくエピソードです。採用者の心に響く自己PRを作成する際は、自己分析を行って自分自身の性格や人柄からアピールポイントとなる部分を探すことから始めましょう。
性格・人柄に関するアピールポイントがどうしても見つからないときは、園が求める人物像から自分自身の共通点を探す方法がおすすめです。志望園が求める保育士の人柄や園のカラーに合うエピソードを洗い出してみましょう。
保育士の自己PRに生かせる長所とは?
保育園によって教育理念は異なっても、保育士として求められる要素に大差はありません。
「責任感が強い」「体力がある」「視野が広い」「共感力が高い」「コミュニケーション能力がある」「ポジティブ思考である」「ピアノの演奏や歌に自信がある」「面倒見がよい」という8つの長所は、自己PRにも活かせる要素です。
■責任感が強い
保護者の方々の大切な子どもを預かるという職業の性質上、保育士の仕事は責任感がなければ務まりません。
そのため、責任感を問われる仕事に携わっていた経験のある方は、その具体的なエピソードを自己PRに取り入れましょう。協調性や社会貢献の精神を同時にアピールできるボランティア経験もおすすめのエピソードです。
■体力がある
保育士は体力が必要となる仕事です。お遊戯会やプールの準備など、重い資材を運ぶことも多いため、身体的な強さが問われます。
部活動や地域のスポーツクラブなど、スポーツ関係の実績を自己PRへ盛り込み、体力があることをアピールしましょう。保育園の多くは体力や忍耐力のある保育士を求めているため、心身ともに丈夫な方は歓迎される傾向にあります。
■視野が広い
保育士はたくさんの子どもたちをひとりで見る場合もあります。視野が狭くては、ひとりの子どもを相手しているうちに、他の子どもが危ない行動をしていても気づくことができません。
そのため、ひとりで複数の子どもを見られる視野の広さは重宝されます。子どもの急な体調変化や、ひとりひとりの癖を把握している保育士は、保護者の方からも頼りにしてもらえます。
■共感力が高い
子どもに理屈で説明しても必ず納得してもらえるとは限りません。そのため、保育士の仕事は「子どもの気持ちに寄り添う」ことが大切です。
相手の気持ちに寄り添って考えることが得意な方は、共感力の高さを自己PRへ盛り込みましょう。共感力の高い保育士は子どもたちから慕われやすいため、志望園に好印象を与えられるはずです。
■コミュニケーション能力がある
保育士は毎日さまざまな保護者と接するため、コミュニケーション能力の高さは多くの園が求める長所です。保育業界は女性の多い職場で人間関係に悩む保育士も多いため、職員同士で円滑なコミュニケーションが取れる人という印象を与えることができます。
コミュニケーション能力が高いことを証明する具体的なエピソードを説明できると、志望先の採用担当者も想像しやすく説得力が高まるでしょう。
■ポジティブ思考である
常に人と関わる仕事の保育士は、ポジティブで明るい人材が求められます。保育士として働くと、園児の保育や保護者対応など思い通りにいかないこともあるでしょう。
そこで、諦めずに継続して行動できたり解決策を考えたりできると、仕事に前向きで魅力的な人に映ります。ポジティブな思考で壁を乗り越えた経験があれば、具体的な自己PRができます。
■ピアノの演奏や歌に自信がある
ピアノの演奏や歌が得意なことは、保育士にとって大きなアピールポイントです。発表会や卒園式などの行事や日常保育の中で、保育士はピアノの伴奏をしたり手遊び歌を取り入れたりと、音楽に関わることが多くあります。
また、リトミックに力を入れている園では、音楽関係に高いスキルを持つ保育士は貴重な人材です。音楽を続けている年数や得意な楽曲などを答えられるとよいでしょう。
■面倒見がよい
常に子どもを見守り、支えることが仕事の保育士にとって、面倒見がよいことも立派なアピールポイントです。面倒見がよいことを自己PRとするなら、他人のことを思いやれる心や気配りができるところも一緒にアピールできるエピソードがあるとよいでしょう。
採用側にとって、子どもの保育だけでなく、保護者対応や他の保育士との協調性にも適正があるとイメージしやすくなります。
【中途採用】保育士の自己PRに使える例文
どうしても履歴書に書く自己PRの文章が思い浮かばないときは、例文をヒントにすると考えやすくなります。また、自己PRに関連する具体的なエピソードを用意しておくと、自分の長所を印象付けるのに効果的です。例文をもとに志望園の特徴や自信の長所を踏まえて、オリジナルの自己PRに仕上げましょう。
ブランクを経て復職する場合
<自己PR>
出産を機に前職の保育園を退職しましたが、2児の子育てをする中で、もう一度保育士として多くの子どもたちに関わりたいと思うようになり、貴園を志望しました。前園では2歳児・3歳児・5歳児クラスの担任を務めた経験があります。また、現在1歳児と3歳児の子育て中であり、幅広い年齢の子どもたちに対応することができます。
妊娠・出産、育児を経験したことで、子育ての大変さや不安・悩みなどを身をもって感じることができました。自分自身が子育てを経験した母親として、保護者の気持ちに寄り添いサポートできると考えております。
保育現場から離れてブランクはありますが、子育てを通してこれまで以上に子どもへの接し方や保護者の気持ちの理解が深まりました。前職で担任を務めた際に培った経験と合わせて、貴園で活躍したいと考えております。
ものづくりが得意の場合
<自己PR>
わたしは工作や粘土、絵などのものづくりが得意です。
以前、わたしが担当していたクラスでは、製作が苦手で集中して取り組めない子どもが多くいました。木の実や野菜、リボンなどさまざまな素材を用意したり、青空の下で広々と絵を描いたり、製作の活動時間を楽しめるような工夫を考えて保育内容を構成しました。さまざまな製作内容を取り入れることで、粘土が苦手でも絵が得意だと気づく子や、自分の好きな素材・色を見つけられる子が現れました。
子どもたちの得意や好きを発見するサポートができたことは、自分の保育に対する大きな自信につながっています。貴園の保育方針である「子どもたちの健やかな成長を支える」に対して、わたしは得意なものづくりを通して、子どもたちに秘められたさまざまな可能性を発掘するサポートをしたいと考えております。
実務経験が豊富にある場合
<自己PR>
わたしは前園でフルタイムの正規保育士として8年間働き、各年齢の担任を務めた経歴があります。子どもと保護者双方に安心してもらえる保育士を目標に、それぞれの年齢に合わせた保育や保護者の気持ちに寄り添った相談対応を心掛けてまいりました。
また、園全体で子どもや保護者をしっかりサポートできるよう、職員間の密なコミュニケーションも意識しておりました。新人保育士の悩みや相談を聞いてアドバイスしたり、時間ごとに入れ替わるパート保育士をまとめたりと、お互いに協力して働きやすい職場環境となるよう働きかけました。
貴園においても、まずは職員間でオープンなコミュニケーションが取れる体制を整え、保護者から安心して子どもたちの保育を任せてもらえるような雰囲気作りに貢献したいと考えております。
チームワークを大切にしている場合
<自己PR>
わたしはチームワークを大切にしながら仕事に取り組むことを大切にしています。
前園ではやる気のある保育士が多い分、それぞれの保育方針の衝突や保育士同士の対立が耐えず、問題に感じていました。わたしは対立する双方の保育士に意見を聞き、中立の立場として話し合いの機会を設けるようにしました。はじめはお互いの意見に反論するばかりで、話が進まないこともありましたが、意見を整理しゴールを見つけられるように粘り強く働きかけました。
話し合いを進めるうちに、子どもたちにとって本当に必要な保育をお互いが考えられるようになり、衝突や対立が減っていきました。
貴園においても、それぞれの保育士の大切な意見を尊重しつつ、協調性やチームワークを意識した保育活動や職場環境作りに取り組みたいと考えております。
粘り強さをアピールする場合
<自己PR>
わたしは保育士として5年間働いた経験と、自慢の粘り強さを生かして貴園で活躍したいと思い志望しました。
わたしの強みである粘り強さは、学生時代の勉強方法に現れています。当時、アメリカへの留学を目指していたのですが、TOEICの点数が500点しか取れず途方に暮れていました。そこで、TOEIC900点を目標に学習スケジュールを組みました。毎朝6時に起き1時間、帰宅してから2時間の合計3時間の勉強時間を欠かさず取るようにしました。
授業やアルバイト、友達との付き合いなど、毎日3時間を捻出するのに苦労する毎日でしたが、諦めずに取り組みました。一度決めた目標に向かって粘り強く取り組んだ結果、留学前にTOEIC900点を果たすことができました。
貴園で採用された際は、子どもたちと全力で向き合い、困難なことにも粘り強く取り組めるような保育士を目指してまいりたいと考えております。
保育士としての経験が浅い場合
<自己PR>
わたしはいつでも「報・連・相」を意識して、業務における情報共有を大切にします。
前園は市内でも園児数が一番多く、その分働いている職員も多くいました。保育士はもちろん、パート職員や保育補助など多くの職員が忙しく働く中で、はじめは先輩保育士に声をかけられませんでした。しかしそのことで、情報共有がうまくいかず保護者や他の保育士に迷惑をかけてしまいました。
前園での失敗から、子どもや保護者のことを一番に考えて動かなければならないと学びました。園児も職員も多い園では、どうしても情報共有が疎かになりがちです。しかし、「報・連・相」を意識して取り組むことで、他の職員と連携が取れ、スムーズな保護者対応にもつながりました。
貴園でも「報・連・相」を通した情報共有を意識して、強い責任感を持った子どもの保育や誠実な保護者対応につなげたいと考えております。
保育士における自己PRの書き方・内容・コツ
履歴書や職務経歴書の自己PR欄の書き方に頭を抱える方は少なくないでしょう。実は、ポイントさえ押さえれば自己PR欄の書き方は決して難しくありません。とはいえ、自己PRに必要な要素が含まれていなければ、いくらボリュームのある自己PRを作っても意味のないものとなります。
履歴書や職務経歴書の自己PR欄で重要なのは、自分自身が伝えたいことを理解したうえで、採用者に効果的にアピールすることです。
最後に、自己PRの書き方のコツや盛り込むべき内容をご紹介します。
履歴書や職務経歴書の書き方を知りたい場合は、下記の記事を参考にしてください。
(内部リンク:「保育士の履歴書の書き方」/https://hoiku.mynavi.jp/useful/history/)
(内部リンク:「保育士の職務経歴書の書き方」/https://hoiku.mynavi.jp/useful/career/)
採用者に伝わりやすい自己PRの書き方
自己PRは、大まかな流れを意識して作成すると失敗しません。
以下のような構成で自己PRを作りましょう。
(1)自分自身のアピールポイント(結論)
(2)アピールポイントを補強する具体的なエピソード
(3)今後の仕事に活かせる部分
採用試験では、応募者が職場でどのように役立つのかが重点的にチェックされます。
まずは自己PRの結論となるアピールポイントを書き出し、「なぜそのアピールポイントを自己PRの主題としたのか」を具体的なエピソードで肉付けします。
たとえば、体力と忍耐力に自信があることを自己PRの主題とする場合、以下のようにまとめることができます。
(1)自分自身のアピールポイント(結論)
・体力と忍耐力に自信がある
(2)アピールポイントを補強する具体的なエピソード
・高校3年間はバレーボール部に所属していた
・ケガでレギュラーから外れたが、諦めずにリハビリを頑張った
・リハビリの結果、翌年にはレギュラーに返り咲いた
(3)今後の仕事に活かせる部分
バレーボールから養った体力と最後まで諦めない忍耐力で、子どもたちと全力で向き合う
具体的なエピソードの後に、アピールポイントである長所どういった点で仕事に活かせるのかを伝えることも重要です。「このような長所があるため、自分はこうした場面で活躍できます」と自信を持ってアピールしましょう。
自己PRに盛り込みたい内容
自己PRには下記の内容を盛り込むと、志望園に好印象を与えることができます。
・将来のキャリアプランや目標
自己PRにキャリアプランや将来の具体的な目標を加えると、「長期的に働く気がある」というやる気をアピールできます。「リーダーになりたい」「管理職を目指したい」など、将来的な目標を伝えることで、採用者に前向きな印象を与えることができます。
・保育方針に沿った経験
志望園の掲げる保育方針・理念に沿った経験や能力も大きな効果を発揮します。求める人物像に近ければ近いほど採用される確率はアップするため、自己分析をしっかりと行って保育方針に合うスキルを洗い出しておきましょう。
・失敗や短所を乗り越えた経験
話し方次第では、失敗や短所もポジティブな印象を与えられます。「失敗をどのように乗り越えたのか」「短所をどのように補っているのか」を答えることができれば、高評価を得るチャンスです。
自己PRを書くときのコツ
少なすぎる自己PRがあまりよくないことはもちろん、自己PRにたくさんの内容を盛り込み過ぎることもおすすめしません。
自己PRが複雑な内容だと採用者が正しく理解することができず、「簡潔にまとめることができない」というマイナス評価につながる恐れもあります。
下記の2点のコツを踏まえて、採用者担当者が最後まで読んでくれる自己PRを作成しましょう。
- 主題(アピールポイント)はひとつに絞る
- 体験談など根拠のある内容にする
自己PRを作成するときは、説得力のある内容を簡潔にまとめることを意識してください。主題となるアピールポイントの根拠として具体的なエピソードを入れると、「自分が勝手に思い込んでいる長所」ではないことを示すことができます。
志望動機と内容が重複しないように気を付けつつ、自己PRで自分自身のアピールポイントをしっかりと伝えましょう。
志望動機の書き方は、下記の記事を参考にしてください。
(内部リンク:「保育士の志望動機の書き方」/https://hoiku.mynavi.jp/useful/reason/)
まとめ
保育士の採用試験に通過するためには、説得力のある自己PRを用意する必要があります。自己PRでは自分自身の長所を伝えることが第一ですが、あえて失敗を乗り越えたエピソードを用いる方法も効果的でしょう。
自己PRで重要なのは、アピールポイントを簡潔かつ具体的に伝えることです。当記事で紹介している自己PRの書き方のコツを参考に、まずは自己分析から始めてください。自分自身を客観的に見つめ直すことで、今まで気づかなかった長所に気付けるでしょう。
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