保育士として最も注意しなければならないのが、子どもの安全です。しかし、子どもはときに予想外の行動をとるもの。園児のけがは保育士が仕事する上で、「避けにくいトラブル」の1つと言えるでしょう。
園児にけがさせてしまったときは、応急処置(場合によってはかかりつけ医や病院を受診)をするとともに、施設や保護者にきちんと状況を説明する必要があります。また、けがをした原因を特定し、改善を目指すことも大事でしょう。
その際、保育士のなかには事態を重く受け止めて「保育士を辞めたほうがよいのではないか」と考えてしまう人もいますが、保育士を辞めるのは適切な行為なのでしょうか。
当記事では、保育士なら誰もが遭遇する可能性のある「園児のけが」を取り上げ、「保育士を辞めたい」と思ってしまう人の心情や、事態に直面したときにしてはならない対応について解説します。現役保育士の人はもちろん、保育士を目指している人もぜひご覧ください。
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目次
園児のけがが原因で保育士を辞めたいと思う人は多い
子どもの安全をいちばんに考えるのは、保育士として当然のことです。しかし、子どもは自由に走りまわり、危険かどうかの判断がつかないまま行動することもあるため、どれだけ注意を払っていても事故やけがの可能性がつきまといます。
園児がけがをして施設や保護者に状況を説明する際、自分に落ち度がないことを訴えようとする人もいますが、子どもを預かっている以上、保育士には事故やけがに対する責任があります。厳しい言い方になりますが、けがが発生した理由や経緯に落ち度がなくても、責任がなくなることはないのです。
そして、多くの場合は保育士が園児の監督を怠ったとして、事後の対応が行われることになります。そのため、園児のけがが原因で、「仕事を辞めたい」と考えてしまう保育士も少なからずいるようです。
園児が怪我をした際に辞めたいと感じる瞬間
応急処置や医療機関の受診、施設への報告、保護者への謝罪と説明......。園児にけがをさせてしまった場合、保育士はさまざまな対応に追われます。責任感の強い保育士であれば、精神的な負担を感じてしまう場面も多いでしょう。
ここでは、園児がけがをした際の対応と、対応に追われるなかで「保育士を辞めたい」と感じてしまう心理状態について解説します。
保護者への説明
子どもがけがをしてしまったときは、その日のうちに保護者と対面して、謝罪と説明を行います。
その際に、必ず報告しなければならないのは、けがをしたときの詳しい状況と原因、対処、園としての再発防止対策です。なかには、突然の事態に気持ちが動転してしまい、保育士を責めたてる保護者もいますが、それでも納得してもらえるようにきちんと説明することが大事です。
ただし、保育士が誠意をもって謝罪しても、保護者がすぐに許してくれるとは限りません。「子どもにけがをさせるような先生で大丈夫かしら」と不信感をあらわにする人や、冷たい態度をとり続ける人もいるでしょう。ときには、けがをした子どもの保護者から、他の保護者へと話がまわるケースもあります。
「園で起きた事故やけがは、原則として保育園の責任」ということは理解していても、保護者への説明や対応によって発生するストレスは、けっして小さくありません。そして、そうしたストレスから、仕事を辞めたいと考えてしまう保育士もいます。
上司や関係者による責任追及
園児がけがをしたことは、ただちに上司や園長先生に報告しなければなりません。状況によっては「どうして目を離したのか」「教育者として大切なお子さんを預かっている自覚があるのか」などの叱責を受け、つらい思いをすることもあります。
けがの原因や状況を説明した後、「責任は誰にあるのか」といった論議が始まり、現場の保育士が責任を追求される。そうしたやりとりからくるストレスも、保育士が仕事を辞めたくなる原因と言えるでしょう。
ただし、保育園で起きた園児のけがは、担当していた保育士1人の責任とは言い切れません。保育園の設備や安全対策、人員配置、職場環境などが原因となって起こるケースもあるからです。
そのため、本来であれば「すべて自分の責任」などと感じる必要はありません。小さなけがであっても、報告・連絡・相談を徹底し、園として適切に対応することが何より大事でしょう。
虚偽報告による信用失墜
けっして多くはありませんが、なかには責任追及を恐れるあまり、自分の落ち度を隠そうと虚偽報告をする保育士もいます。しかし、事実と異なる報告は、どこかしらにほころびがあるものです。
けがをした園児の言葉や他の園児たちの言葉、保護者や園側の追求によって、虚偽であることがばれてしまった場合は、園児にけがをさせたこと以上の問題になります。また、保身のためにうそをついてしまった保育士は、保育園の上司や同僚、保護者からの信用もなくなるでしょう。
保育士は、まわりの人との信頼関係があってこその仕事です。信用が失墜してしまうと保育活動にも大きな支障が出るため、退職を覚悟することにもなりかねません。
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園児がけがをしてしまったとき絶対にしてはならないこと
園児がけがをすると、保育士は子どもや保護者、園に向けてさまざまな対応をしなければなりません。そのため、大きなストレスや不安を感じることもあるでしょう。
しかし、ストレスや不安があったとしても、保育士として絶対にしてはならないことがあります。以下では、園児がけがをしてしまった際に、絶対にしてはならないこととその影響について紹介します。
保身や事実隠蔽のための虚偽報告
繰り返しになりますが、園児がけがをした際、保身や事実隠蔽のために虚偽報告をするのは絶対に避けてください。保育士の虚偽報告は、職場での信用を失うだけでなく、将来的な働き方の幅も狭めてしまうNG行為です。
保育園を含めた保育サービスを提供する施設は、虚偽報告をして信用を失った保育士を採用しようとは考えません。施設同士、あるいは園長・保育士同士のつながりから、近隣の保育園に情報が回ってしまう可能性もあるため、確実に転職活動に影響が出るでしょう。
今まで、コツコツとキャリアを積んできたにもかかわらず、保育士として働く道が閉ざされてしまえば、別の職種に転職するしかなくなってしまいます。そうならないように、十分注意してください。責任を負いたくないための無断退職
けがの責任を負いたくないために、退職届けを出さずに無断退職しようと考える人もいるかもしれません。しかし、「無断退職しても、けがの責任がなくなるわけではない」ということを忘れてはいけません。大げさな話をするなら、保護者が賠償請求を行った場合、訴えられた保育士は退職したあとも損害賠償の責任を負います。
そして何より、保育士の無断退職は、勤務している保育園や子どもたちに多大な迷惑をかけてしまいます。保育園は、預かる子どもの数に合わせて保育士を採用しているため、保育士が1人でも欠けると業務に支障をきたすでしょう。子どもたちにしても、突然先生が変わってしまったらとまどうはずです。
また、無断退職は転職する際にもデメリットがあります。転職先が決まると、新しい職場に以下の書類を提出する必要がありますが、これらは退職時に職場から受け取るのが一般的です。
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
書類をそろえるために前の職場に連絡すれば、結局それまでの流れに対する叱責を受けることになります。だからといって放置すれば書類が揃わず、転職先から不審に思われてしまうでしょう。
虚偽報告と無断退職は、事後対応のなかでも特にやってはいけないことです。どのような状況で事故やけがが起こったにせよ、真摯に謝罪と報告を行い、周囲との関係維持に努めましょう。
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辞めたあとの転職先
園児のけがは保育士を続ける限り、避けては通れないトラブルです。そして、園長や同僚、保護者もそのことは理解しています。だからこそ、事後対応をきちんとやっておけば、たとえ転職を決意した場合でも、しっかり評価してもらえるでしょう。
園児のけがが理由で退職する場合、その後の働き方は次の2つになります。
・保育士自体を辞めて、別の職種へ転職する ・保育士は辞めず、別の保育園へ転職する
責任感の強い人のなかには、保育士を辞めて、まったく違う職種で働こうとする人が多いかもしれません。確かに、保育の仕事から離れることで、過去のショックはやわらぐでしょうが、心のなかのわだかまりまで消えるとは限りません。せっかく取得した保育士資格を生かすこともできなくなります。
とはいえ、別の保育園へ転職するのも大きな勇気が必要です。保育の現場に立ち続けるためには、過去の失敗ときちんと向き合い、同じことが起こらないように最大限努力する必要があるでしょう。どちらを選ぶにせよ、「自分は何のために仕事をするのか」「何をかなえたいのか」などを明確にした上で、後悔のない職場選びを行ってください。
保育士をやめたいと思っている方へ。
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まとめ
園児がけがをした場合は、けがに対する処置や施設への報告、保護者への謝罪と説明など、保育士が対応すべきことはたくさんあります。そして、そうした対応につらさやストレスを感じて、保育士を辞めたいと考えてしまう人は少なくありません。
ただし、つらさやストレスを感じるからといって、虚偽報告や無断退職をしてはいけません。どちらの行為も信用失墜と人間関係悪化につながり、転職活動にも悪い影響をおよぼすでしょう。
園児のけがは、保育士1人だけの責任ではないケースも多く見られます。誠実な謝罪と説明を心がけ、周囲との関係維持に努めることで、後悔のない道を歩んでください。