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環境構成の書き方は、保育士や保育実習生が悩みやすい事務作業のひとつです。人的環境・物的環境などから成る環境構成は、指導案や実習日誌を書くうえで重要なポイントです。子どもの指導にどのような計画を立て、どのような工夫を施すかは、保育を行う際に大切な要素となります。目的に合う環境構成を整えることができれば、遊びの充実にもつながります。

今回は、保育における環境構成の特徴と、指導案・実習日誌に書くときのポイントについて紹介します。

保育の環境構成とは?

/(引用:厚生労働省「保育所保育指針解説」

保育所では、保育所に入所する子どもに対して、最善の利益を得られるような配慮が求められます。心身ともに健やかな成長や自立を促すのにふさわしい生活の場を整えるための指標が、保育の環境構成です。

保育の環境は、単純に安全面だけを重視すればよいわけではありません。保育所保育指針においても、以下のように保育の環境には多種多様な事象が絡み合うと明言しています。

保育の環境には、保育士等や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、更には自然や社会の事象などがある。保育所は、こうした人、物、場などの環境が相互に関連し合い、子どもの生活が豊かなものとなるよう、次の事項に留意しつつ、計画的に環境を構成し、工夫して保育しなければならない。

(引用:厚生労働省「保育所保育指針解説)

子どもは日々、あらゆる感覚を通して周囲から刺激を受けています。ときには、大人の反応次第で子どもの経験の豊かさに影響が生じることもあります。そのため、保育士は保育の重要性を踏まえたうえで、子どもの生活が豊かになる環境の構成と計画的な実行が求められます。

保育環境を構成する主な要素

子どもが複数の要素からさまざまな刺激を受けていることは、保育環境を構成するうえで重視すべきポイントのひとつです。主な要素として、以下の8種類が挙げられます。

要素 概要
周囲の人間の表情・動き・話し方など
自然 自然物との触れ合い
遊び道具など子どもの遊びを左右する周囲の物
情報 音・動き・色・形などの情報
空間 遊び・睡眠・食事の空間
時間 食事の準備・片付け・トイレなどの時間
動線 日常の動作に影響する物の配置
温度・湿度・空気の質 空気の質を保つ換気・空気の入れ替えなど

人や自然との触れ合いは、子どもの成長や活動に大きく影響します。物や情報が足りなかったり過剰だったりする場合、子どもの遊びを左右するほか、耳や目に刺激を与えかねません。また、子どもの精神的な健やかさのための環境のみではなく、空気の質を保つなど体の健康を維持するための要素も含まれます。

環境構成を考える際のポイント3つ

保育園での遊び・活動を考える際は、必要な環境構成を整えたうえで実施することが重要です。保育の環境として最適な構成に基づいた活動は、遊びの充実につながり、心身の健やかな成長にプラスの影響を与えます。

ここからは、実際に環境構成を考える際に意識すべき3つのポイントについて解説します。

子どもが自発的に活動したくなるように配慮する

子どもが自発的に活動したくなるよう、子どもの視点で魅力的な環境を整えることが重要です。興味や関心を引き、好奇心を刺激する遊びや活動でありつつ、子どもたちの資質や経験が発揮される環境でなくてはなりません。

たとえば食育をテーマにする場合、一方的に解説するだけでは子どもたちは退屈に感じます。園外活動や簡易的な実験を取り入れ、どのような変化が起こるのか想像して発表してもらうなど、自ら考えるようなプログラムを取り入れましょう。その際、自然界の環境を活かして遊びつつ、保育士や保護者も子どもたちと発見や感動を共有することがポイントです。

遊びと学び、多様な活動を取り入れて、子どもの経験に偏りが出ないよう工夫しましょう。

周囲の子どもや大人と関われるような環境を整える

子どもが保育士や施設職員などの大人とリラックスした状態で接することのできる環境も必要です。周囲の子どもや大人とコミュニケーションを取る中で、自立性や人との関わり方を学べるよう配慮しましょう。

たとえば、以下の対策方法が挙げられます。

・複数人の子どもで遊べる遊具
・おもちゃを取り入れる

・友達と一緒に体を動かせる遊びを提案する

・大人と自然なやり取りができる動線を作る

複数人で一緒に遊べる遊具や教育玩具などを取り入れることで、子どもは「誰かと一緒に遊ぶことは楽しい」と学びます。グループを作ってステージでダンスを踊ったり、チームワークを試すゲームをしたりするなど、コストがかからず体ひとつでできる遊びもおすすめです。

また、見落としやすい物の配置や動線にも注意しましょう。子どもが保育士や保護者など周囲の大人とコミュニケーションを取れるよう、遊具の出し入れを一緒に行うことも効果的です。遊びのコーナーづくり自体を授業として組み込む方法もあります。

保健的環境や安全確保を意識する

子どもの健やかな成長と自立を促すためには、保健的環境や安全確保が欠かせません。健康や命に限らず、心身ともに守られる環境は、子どもが安心して自身の気持ちや意見を表に出せる場となります。

また、保育士や職員同士で衛生面への配慮を徹底し、体制を整えたときには手順をマニュアル化して共有することも必要です。「保健的環境や安全確保は職員全員で取り組むべきものである」という共通認識を持ち、人によって対処に差が出ないよう注意してください。

指導案・実習日誌で「環境構成」を書く際のポイント・具体例

環境構成を書く際は、まず遊びの目的・狙いを明確にするとスムーズに内容をまとめることができます。どのような狙いがあるのかわかった状態で準備すると、子どもたちが取りやすい位置に道具を置いたり安全な動線を確保したりと、活動自体にもよい影響があります。

ここからは、指導案や実習日誌で環境構成を書く場合に意識すべきポイントや具体例を紹介します。

図で示す

保育の現場では、保育士や子どもなどの人的環境のほかに、施設や遊具などの物的環境も視野に入れて環境構成を構築しなくてはなりません。場合によっては、自然や社会の事象も絡んで複雑化することがあるため、環境構成は文章で整理するのではなく、まず図で示すことをおすすめします。

たとえば粘土遊びの場合、部屋の中には以下の人物や道具が必要です。

・指導者(保育士)
・子ども・粘土遊びの道具
・子どもたちの机・椅子

子どもたちの机や椅子の位置を「教室内に島を6個作る」と文章で書くよりも、図で6個の机と人数分の椅子を描くほうが瞬時に状況を整理できます。指導者の位置や最初に粘土遊びの道具を置いておく場所も図で描くことにより、子どもたちの動きや動線もイメージできるでしょう。実践前にあらかじめどのような危険があるか想像しやすいため、想定外の事故を防ぐことにもつながります。

箇条書きで示す

公園への散歩や園庭遊びを行う場合、自由に遊具で遊んだり園庭を駆けまわったりする子どもたちの位置を図にすることは簡単ではありません。子どもたちの位置などの図解が必要な活動ではない場合は、シンプルに箇条書きでまとめる方法がおすすめです。

以下のような内容を箇条書きで書き出してみましょう。


・どのような遊具
・遊びが想定されるか
・ひとりで遊んでいる子どもへのサポートはどうするのか
・必要な安全対策や指導は何があるか
・万が一の対処はどのような手順で行うか

遊具ごと・遊びごとに分けて留意点を書くと、箇条書きのみでも十分情報は整理できます。クラスのみんなで一緒にひとつの遊具を使うときや遊びを行うときは、手順ごとに注意点や指導ポイントを箇条書きにしましょう。

まとめ

保育の環境構成とは、子どもたちが心身ともに健やかに成長できるよう、最適な環境を維持するための指標です。人的環境と物的環境の2種類があり、複数の要素が相互に影響することで子どもたちの成長を促します。

指導案や実習日誌で環境構成を書く際は、内容ではなく書き方を工夫しましょう。箇条書きや図を用いて、視覚的にわかりやすく書くことがポイントです。室内遊びや運動遊びなど、シーン別で複数の方法を取り入れることも効率的です。環境構成は活動の目的・狙いを整理するうえでも役立つため、自分にとって最適なまとめ方を見つけてください。