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仕事に集中したり、気持ちをリフレッシュしたり、疲れた体を休めたり......。勤務時間中にきちんと休憩を取るのは、とても大事なことです。しかし、「保育士は休憩を取るのが難しい」と言われるように、保育士として働いていると、思うように休憩を取れないケースが多々あります。また、そうした実情に悩みや不満を抱える保育士も、けっして少なくありません。

では、なぜ保育士はゆっくり休めない状況に陥ってしまうのでしょうか。当記事では、保育士の休憩時間の実態や休憩時間を取るのが難しい理由、保育士が休憩時間を確保する方法などについて解説します。保育士を目指している人や保育士として転職を検討している人は、ぜひご覧ください。

はじめて転職する方へ

保育士に休憩時間はある?

労働基準法の第34条では、「雇用者は労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働者に与えるべき」と定められています。

(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049#Mp-At_34

もちろん、保育士にもこのルールが適用されており、8時間労働の場合は就労時間のなかで1時間の休憩時間が取れます。

休憩時間は、原則として労働者に一斉に与えることが求められていますが(一斉付与の原則)、業務の性格上、保育士はこの限りではありません。自由遊び・昼食・午睡などの時間にも子どもたちを見守り、突発的なトラブルに対処する必要があるため、保育士は交代で休憩するのが一般的となっています。

時短・パート勤務の休憩時間は?

休憩時間の規定に、正社員かパートかの違いはありません。時短勤務やパート勤務などで1日6時間以上働く場合、雇用者は労働基準法の第34条にしたがって、45分の休憩時間を与える必要があります。なお、1日の就労時間が6時間未満の労働者に対しては、休憩時間を与える義務がありません。

(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049#Mp-At_34

勤務形態やシフトに関係なく、休憩時間に業務から離れて自由に過ごすことは、労働者の権利として認められています。また、生後1年未満の子どもを持つ女性は、通常の休憩時間とは別に育児時間を請求することも可能です。労働基準法第67条では、「休憩時間のほか1日2回、それぞれ少なくとも30分、育児のための時間を請求できる」としており、この時間には授乳や子どもの送り迎えなどが含まれます。

保育士が休憩時間を取るのが難しい理由

労働基準法で休憩時間が明確に規定されているにもかかわらず、保育士が休憩を取りにくい理由はどこにあるのでしょう。

ここでは、「保育士は休憩時間を取るのが難しい」と言われてしまう、4つの事情について解説します。

休憩時間に連絡ノートなどの雑務をこなす

子どもたちの世話に加えて、保育指導案や配布物を作成したり、連絡ノートをチェックしたりするのも保育士の重要な仕事です。そして、他の業務に追われて事務作業をこなせない場合は、休憩時間を削ったり、残業したりして対応することになります。なかには、休憩時間を利用して、打ち合わせや職員会議を行う園もあるようです。

また、職場によっては、休憩用のスペースがないためにゆっくり休みにくいというケースもあります。そうした場合、他の保育士が作業をしている職員室で休憩することになるため、つい事務仕事を進めたり、他の人の作業を手伝ってしまったりする人も多いでしょう。

給食の時間は子どもたちのサポートに追われる

一般的な企業の休憩時間であれば、昼食を取りながら心身をリフレッシュすることが可能です。しかし、保育士の場合は、食事中の事故・トラブルを防ぐために子どもたちを見守ったり、うまく食べられない子どもをサポートしたりしながら、食事を済ませなければなりません。ときには、食育のために食の大切さを伝えたり、食事のマナーを指導したりすることもあります。

加えて、食事の前には食事用テーブル・椅子の準備や給食の配膳を行い、食後は後片づけと掃除を行います。体調不良の子どもや、アレルギーの子どもがいればその都度対応が必要でしょう。

こうしたことから、給食の時間を休憩時間とする場合、実際は「業務」をこなしているような状況になってしまいます。

子どもの午睡中も見守りや清掃を行う

午睡中は、窒息事故やSIDS(乳幼児突然死症候群)への対策が求められるため、保育士は室温管理や呼吸チェックのほか、布団が顔にかかったりうつぶせ寝になったりしていないかなども確認しなければなりません。

また、午睡時間になったからといって、すべての子どもがすんなり寝てくれるわけではありません。なかなか寝つかない子どもや途中で起きてぐずる子どもがいればあやして寝かしつけ、急な発熱・嘔吐などのトラブルがあればすみやかに対処します。

午睡中を休憩時間とする保育園も多く見られますが、保育士はなかなか気を抜けないのが実情です。

いつでも対応できるように外出はできない

本来であれば、休憩時間は業務から離れて自由に過ごせる時間であり、一般企業では昼休みに外食したり、昼食を買いに行ったりする場面が当たり前となっています。

しかし、保育士の場合は、「何かあってもすぐ対処できるように」という理由から、休憩時間の外出が認められていないケースがほとんどです。たとえ就業規則などで休憩時間中の外出を禁じていなくても、他の保育士や保護者の目を気にして、外出を控える保育士は多いでしょう。

また、急な仕事や保護者からの電話などで、休憩室から呼び出されることもしょっちゅうです。呼び出しが頻繁にあると、せっかくの休憩時間がオンコール待機時間のようになってしまうでしょう。

保育士が休憩時間を確保する方法

休憩や息抜きをしないまま働くと、疲労やストレスがたまっていきます。そして、疲労やストレスを解消できずにいると、仕事へのモチベーションが維持できなくなったり、心身の健康を損ねたりする可能性もあるでしょう。保育士の過労は保育の質の低下に直結し、事故を招いたり、保護者の心証を悪くしたりする恐れもあります。

保育士が休憩時間をきちんと確保して、保育の質と仕事へのモチベーションを保つためには、以下の方法がおすすめです。

配置や勤務体制の見直しを相談する

休憩時間に業務をこなすのが当たり前の環境だと、休憩することに罪悪感を覚えてしまうこともあるでしょう。もし、まわりに信頼できる上司や先輩保育士がいるようなら、休憩時間を取りやすい枠組みづくりについて相談してみてはいかがでしょうか。

その際、「休憩したい」と主張するだけでなく、自身や周囲の勤務実態について冷静に説明したり、業務の負担軽減に役立つアイデアを提案したりすれば、話を聞いてもらいやすくなります。「1時間まとめて休憩するのが難しければ、30分ずつに分割して休憩を取るのはどうでしょう」「記入書類の様式をもう少し簡略化してみては?」といったように、状況を見ながら柔軟に交渉することも重要です。

すぐに現状を改善できないとしても、勇気を持って一歩踏み出すことは、自分自身や園の将来を変える大きなきっかけとなるでしょう。

休憩に入りやすい保育所に転職する

人手不足などが原因で、頑張っても園の体制が変わりそうにない場合は、転職を視野に入れてみるのも一案です。

休憩を取りやすい職場への転職を検討するときは、以下の条件に当てはまる園を探してみましょう。処遇改善やICT導入に対する意識が高い園であれば、休憩時間も確保しやすいはずです。

  • 雇用形態や勤続年数などに関係なく、誰でも意見を言いやすい風土がある
  • 保育ICTシステムなどを積極的に導入し、保育士や保護者の負担軽減を図っている
  • 福利厚生が整っている
  • サービス残業や持ち帰り仕事などの時間外労働が少ない
  • 大きな行事やイベントが少ない

効率よく転職活動を進めたい方には、マイナビ保育士のご利用がおすすめです。マイナビ保育士では、経験豊富なキャリアアドバイザーが「転職で重視したいポイント」をきちんとヒアリングし、1人ひとりに合った求人をご紹介いたします。

まとめ

労働基準法の第34条では、「雇用者は労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働者に与えるべき」と定められています。しかし、実際は休憩時間を使って子どもたちの見守りをしたり、事務作業をこなしたりする保育士が少なくありません。また、子どもの命を預かっていることから、休憩中でも気を抜けないのが、保育士という仕事の特性です。

十分な休憩時間を確保できずに、疲労やストレスをため込んでしまうようであれば、職場環境の改善について、上長や先輩に提案してみるのも1つの方法です。どうしても園の体制を変えられそうにない場合は、マイナビ保育士を活用して、休憩を取りやすい職場への転職を検討するのもよいでしょう。