保育士資格を取得し、現場で活躍している方の中には、一般企業で働くことに興味を持っている方もいるでしょう。実際、保育士の資格や経験を生かせる仕事は多く、一般企業で子どもとかかわりながら働いている方も多くいます。
当記事では、保育士資格を生かして働ける仕事を紹介するとともに、保育士が一般企業で働くメリットとデメリットについて解説します。ご自身のキャリアを見つめ直したいと思っている保育士の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
保育士資格を生かして働ける一般企業
保育士としての仕事と言われて多くの人が真っ先に思い付くのが、「保育園の先生」です。しかし、保育士資格を生かせる仕事は、保育園だけではありません。一般企業の中にも保育士資格を生かせる勤務先はたくさんあります。
厚生労働省が公表した調査結果では、保育士養成施設卒業者の約15%は「その他」の仕事を選んでいます。また同資料によると、保育士養成校の学生が一般職に就くことを決めた主な理由は下記の通りです。
【一般職を選んだ理由】
実習で保育をすることに自信をもつことができなかったから | 40.4% |
給与・福利厚生が充実しているから | 31.1% |
休暇の保障や労働時間が適切であるから | 24.7% |
(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf )
保育士と言うと専門職の印象が強く、一般職での就職では不利になるイメージを持つ人もいます。しかし、保育士資格を取る・保育現場で経験を積む過程で下記のようなスキルを身に付けた人は一般職でも大いに歓迎され、活躍できる人材です。
【歓迎されやすいスキル】
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●乳幼児に関する専門的知識
●乳幼児への適切な対応力
●乳幼児の目線・嗜好に対する理解力
●乳幼児・保護者とのコミュニケーション能力
以下では、保育士資格者優遇・職務経験者歓迎が見込まれる一般企業を7つ紹介します。
企業内保育所
企業内保育所は、一般企業のビル内や近隣に設置された保育施設です。運営する企業勤務の従業員のみが利用者となる単独設置型の保育所以外にも、地域の子どもたちも受け入れる地域開放型や複数の企業が利用する共同型などがあります。大半が小規模保育サービスであり、仕事内容は普通の保育園と大きく変わりません。
【生かせるスキル・特徴】
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●カレンダー通りに休めることが多い
●子ども一人ひとりとじっくり向き合える
●開催行事や事務作業が少ない
●保護者と連絡が付きやすい
【注意点】
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●企業の事業方針や業績によって閉園する恐れがある
●行事の少なさが物足りなさにつながることがある
保育園の運営
保育園を運営する企業の総合職保育士や総合職として働く道もあります。総合職保育士は、複数の園を転任しながら実務経験を積み、管理職を目指す人に向いた働き方です。総合職の場合、保育園の運営管理・営業・事務・人事などに関わるケースが多いものの、実際に担当する仕事内容は企業や部署によって異なります。
【生かせるスキル・特徴】
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●将来の選択肢が増えしながら働ける
●保育の実情を踏まえた現実的な提案ができる
●人手が足りないときには保育のヘルプに入れる
【注意点】
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●部署によっては子どもと関わることがなくなる
●派遣先の保育園を選べないことが多い
子ども服・おもちゃの企画販売
保育士のスキルを生かせる仕事として、子ども服やおもちゃの企画販売もあります。主な仕事内容は、店頭での接客・品出し・ディスプレイなどが多めです。役職が付くとクレーム処理や商品管理、スタッフの教育なども任されます。自社商品を開発している企業であれば、企画に携わることも可能です。
【生かせるスキル・特徴】
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●保育士としてのコミュニケーション力が売り場での接客に生かせる
●子どもが好みそうな商品の陳列ができる
●子どもの月齢・年齢に合った商品を提案できる
●壁面装飾など、制作のスキルが生かせる
【注意点】
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●仕事の担当範囲が幅広いところもある
●企業によっては売り上げノルマがある
●店頭に立つ場合は体力が必要になる
子ども向け写真館
子ども向け写真館での仕事は、「子どもの笑顔が大好き」「子どもを可愛く着飾らせるのが楽しい」という人に向いています。仕事内容は受付・衣装選び・メイク・写真選びなどが主です。企業によっては技術が伴えば、写真撮影も任されます。
【生かせるスキル・特徴】
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●年間行事に関する知識を生かした提案ができる
●子どもの機嫌を損ねず素早く着替えさせられる
●子どものカメラ目線や笑顔を引き出しやすい
【注意点】
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●技術を習得するまでは補助や事務に回りやすい
●子どもや保護者とセンスが同じとは限らない
テーマパーク
多くの子どもが訪れるテーマパークも、保育士資格を生かせる職場です。テーマパークでは、どの施設のどの部署に配属されるかで仕事内容が大きく異なります。
【テーマパークの配属先の例】
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●施設内託児所
●迷子センター
●ベビールーム
●チケット・物産ショップ
●園内・アトラクションガイド
●ショースタッフ
●清掃員
【生かせるスキル・特徴】
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●さまざまなタイプの子どもと接する
●迷子の不安を和らげスムーズに事情を聴取できる
●子どもの安全に配慮した行動ができる
【注意点】
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●非正規が多い
●シフトが不安定になりやすい
●配属を選べないことが多い
習い事の先生
習い事の先生も、子どもの扱いを心得た保育士に向いた仕事です。習い事の種類や対象年齢によって、仕事内容や求められるスキルが異なります。
【習い事の例】
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●ピアノの先生
●外国語の先生
●書道の先生
●スポーツのインストラクター
●知育教室の先生
●お受験向け学習塾の先生
【生かせるスキル・特徴】
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●子どもの特性を理解した対応ができる
●子どもの成長・学習レベルに合わせた対応ができる
●子ども自身のやる気を引き出しやすい
【注意点】
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●習い事によっては相応の実力を求められる
●他の資格が必要になる習い事もある
保育士が一般企業に転職するメリット
それでは、保育士が一般企業に転職した場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。保育士が一般企業で働く主なメリットは、下記の2つです。
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●収入アップを見込める
保育士の平均年収は約382万円と、一般企業に比べて低めです。さらに小規模な職場が多い保育士の仕事は、長く働いても昇給しにくいという問題があります。一般企業では勤続年数や仕事の結果によって昇給できる機会が多く、転職による収入アップを期待できるでしょう。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html )
●仕事の負担が減る可能性がある
毎日の日誌付けや、季節・行事ごとの制作など、保育士の仕事は残業や持ち帰りが発生しやすい傾向にあります。残業に関する規定などがしっかりしている企業を選べば、自分1人で負担する仕事が少なくなる可能性があります。
保育士が一般企業に転職するデメリット
一般企業への転職では、メリットがある一方でデメリットもあります。保育士が一般企業へ転職することによる主なデメリットは、下記の3つです。
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●新しい仕事を覚える必要がある
異業種への転職では、職場で必要なスキルやルールを改めて身に付けなければなりません。保育士経験や資格を生かせる仕事であっても転職先では基本的に新人扱いとなるため、保育士の平均年収である約382万円を下回る可能性があります。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html )
●年齢によっては転職が厳しい 業種によっては、求人募集をかける職員の年齢を制限しているところがあります。人手が不足している職場であれば、多少年齢を重ねても採用される傾向です。それでも40代以上で未経験となれば、初めから正社員を希望条件にしての転職活動は難しいと言えるでしょう。
●子どもと触れ合う機会が減る場合がある
子どもに関する仕事であっても、保育園以上に乳幼児と触れ合える職場はあまりありません。事務や営業に配属された場合は特に子どもと接する機会がなくなります。子どもが好きで保育士資格を取った人には、大きなデメリットとなるでしょう。
まとめ
保育士資格を生かせる仕事は、企業内保育所や保育園の運営など、保育にかかわる現場のほか、子ども服販売や子ども写真館・テーマパークのスタッフなど多岐にわたります。実際、一般企業に就職する保育士資格取得者も多く、収入アップや業務負担の軽減を見込める可能性もあります。ただし、新しい仕事を覚える必要があったり、保育の仕事ほど子どもたちとかかわれなくなる点はデメリットです。
子どもと深くかかわる保育士の仕事を続けたいという方は、ぜひマイナビ保育士にご相談ください。キャリアアドバイザーが、保育士のみなさんのキャリア形成について考えるお手伝いをします。
※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています