1_0425.jpg

認定こども園法は、教育と保育を統合して提供する施設が「認定こども園」として認定されるための法律です。この法律は、日本の少子化や家庭・地域の多様化が背景となり制定されました。

この記事では、認定こども園法とはどのような法律であるのかについて、詳しく解説します。また、認定基準について、配置基準・職員資格・教育や保育の内容・子育て支援の観点から説明するので、認定こども園の詳細を理解したい方は、ぜひご一読ください。

認定こども園法とは?

認定こども園法とは、教育と保育を併せて行う施設が「認定こども園」として都道府県や地方公共団体から公認されるための基準や手続きなどを定めた法律です。正式名称は「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」です。

認定こども園法が制定された背景には、日本で進行する少子化や家庭や地域の多様化があります。子どもを取り巻く現状を踏まえ、適切な教育と保育の提供や子育て支援などを通して健やかに成長できる環境を整えることを、認定こども園法は目的に掲げています。

具体的な内容は、「教育と保育の目標・内容」「設置主体」「職員の資格や配置といった認定基準」「認定の申請や取消しに関する手続き」などです。施行以来、社会の需要などに応じて改正も行われ、現在に至っています。

    (出典:厚生労働省「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」/     https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=36aa8229&dataType=0&pageNo=1

    (出典:文部科学省「幼保連携型認定こども園、幼稚園型認定こども園」/     https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/07/22/1350046_03.pdf

認定こども園と保育園・幼稚園の違い

認定こども園と保育園・幼稚園にはさまざまな違いがあります。「運営目的」「設置者」「入園年齢」「教育や保育の内容」「1日および1年間の教育や保育の時間」「職員の資格」「施設設備」「学級編成」「入園の申込先」などです。

例えば、認定こども園は個々の事情に応じて0歳または3歳から、保育園は0歳から、幼稚園は3歳から入園できます。1日の保育時間は、認定こども園と保育園は11時間、幼稚園は原則4時間という規定です。

所管する省庁や関わる法律も異なります。認定こども園と保育園はこども家庭庁、幼稚園は文部科学省の所管です。また、認定こども園の運営は認定こども園法に基づいているのに対し、保育園は児童福祉法、幼稚園は学校教育法に基づいています。

    (出典:須賀川市「保育所・幼稚園・認定こども園の違い」/     https://www.city.sukagawa.fukushima.jp/kosodate_kyoiku/hoikushisetsu/1014528.html

認定こども園の認定基準

認定こども園は、「幼保連携型」「幼稚園型」「保育所型」「地方裁量型」の4類型に分かれています。認定基準は類型間で共通点や相違点があるものの、幼保連携型とその他の認定こども園型に大別することが可能です。以下では、4つの認定基準について解説します。

    (出典:内閣府「認定こども園制度の概要」/     https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/senmon138shi02_8.pdf

配置基準

認定こども園は、職員の配置基準や学級編成の基準に沿って運営されています。保育に従事する職員を常時2人以上配置し、1学級は原則として園児35人以下で編成する、といった基準です。園児の年齢や利用時間に応じ、必要となる職員数は異なります。

以下は、園児の年齢と人数に対する職員数をまとめた表です。

                                                                                                                       
園児の年齢園児の人数に対する職員数
満4歳以上の園児おおむね30人につき1人
満3歳以上満4歳未満の園児おおむね20人につき1人
満1歳以上満3歳未満の園児おおむね6人につき1人
満1歳未満の園児おおむね3人につき1人

認定こども園法と内閣府・文部科学省・厚生労働省令では、幼保連携型認定こども園においては園長・保育教諭・調理員の配置が原則必須である旨を示しています。加えて、副園長または教頭、養護教諭、事務職員などの配置も推奨しています。

    (出典:e-Gov法令検索「幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準」/     https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426M60000182001

   (出典:e-Gov法令検索「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」/     https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000077_20230916_505AC0000000058

職員資格

職員資格の種類は、認定こども園の類型や担当する園児の年齢によって異なります。幼保連携型の場合は子どもの年齢に関わらず、幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を持っている保育教諭を配置する規定となっています。

一方、幼保連携型以外の認定こども園型で、満3歳未満児の保育を行う職員は保育士資格が必要です。また、満3歳児以上の保育を行う職員は、幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を持っていることが原則的には求められています。

ただし、幼稚園教諭免許状と保育士資格の片方しか保有していない方も、担当する役職などによって満3歳児以上を保育できるケースがあります。

    (出典:大分県「幼稚園型認定こども園等の認定基準と運営」/     https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/1019684_1390658_misc.pdf

   (出典:e-Gov法令検索「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」/     https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000077_20230916_505AC0000000058

    認定こども園で働くために必要な資格について

教育や保育の内容

認定こども園は基本的に、園児が健康で安全な生活を送れる環境を整え、心身の成長をサポートすることを目的とした施設です。いずれの類型においても、卒園後にスムーズに小学校教育へと移行できることを念頭に置いた教育や保育の内容が盛り込まれています。

ただし、教育や保育の内容に関するガイドラインは、認定こども園の類型によって異なります。幼保連携型は「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」、幼稚園型は「幼稚園教育要領」、保育所型は「保育所保育指針」に基づくことが前提です。

    (出典:こども家庭庁「認定こども園概要」/     https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/kodomoen/gaiyou

   (出典:e-Gov法令検索「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」/     https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000077_20230916_505AC0000000058

子育て支援

子育て支援とは、教育や保育に携わる施設としての専門性を活かし、保護者が育児の実践力を培えるように支援を提供することです。親子交流会の開催や保育相談、一時的な保育の代行、地域の子育て支援に関する情報提供なども子育て支援の一環です。

子育て支援を行う際は、認定こども園が所在する地域の保育ニーズや保護者の要望を反映させる必要があります。併せて、子育てサークルやボランティアといった地域の人材やサービスなどの社会資源を活用することも求められています。

    (出典:愛知県「認定こども園における「子育て支援事業」について」/     https://www.pref.aichi.jp/kosodate/kodomoenpage/2kentoukaigi/2siryou5.pdf

   (出典:e-Gov法令検索「幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準」/     https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426M60000182001

認定こども園法と保育所保育指針・幼稚園教育要領の違い

認定こども園法と保育所保育指針・幼稚園教育要領は、未就学児の幼児教育に関する文書である点は共通しています。保育所保育指針・幼稚園教育要領との大きな違いは、認定こども園法は法律であり、施設で行う教育や保育の詳細な内容に触れていない点です。

法律としての認定こども園法には、認定こども園の認定基準や申請手続きなどが示されています。具体的な教育や保育の内容に関するガイドラインとしては「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が活用されています。

幼稚園教育要領は、幼稚園教育の狙い・内容や、卒園までに育てたい資質・能力などを明確化した要領です。各幼稚園は、幼稚園教育要領と「幼稚園教育要領解説」を併用して具体的な教育課程の組み立てなどを行います。

保育所保育指針は、子どもの年齢に応じた保育のあり方や保育所の運営などを示した指針です。保育所保育指針は保育の内容に重点を置いていますが、満3歳児以上の対応に関しては幼稚園教育要領との整合性を図った内容となっています。

    (出典:文部科学省「幼稚園教育要領と保育所保育指針の関係」/     https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/030/shiryo/06022009/005.htm

   (出典:文部科学省「幼稚園教育要領と保育所保育指針の対比表」/     https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/030/shiryo/06022009/005/001.htm

    【改訂】まるわかり「新・保育所保育指針」~保育園に求められることは? 保育の5領域とは?明日から現場で活かせる実践例も紹介

認定こども園の法改正

幼保連携型認定こども園で働く保育士の方に対して、幼稚園教諭免許状の取得要件を緩和する特例の適用が2023年4月から始まっています。幼保連携型認定こども園での就業に必要となる、幼稚園教諭免許状と保育士資格の併用を促進する狙いです。

幼稚園教諭免許状か保育士資格の1つを保有する方に対しては、2024年3月末までの経過措置として、未保有の資格の取得要件を緩和する特例があります。2023年4月開始の特例は、保育士資格を保有する方が幼稚園教諭免許状を取得する場合に適用されます。

特例適用の条件は、認定こども園などでの保育士経験が3年かつ4,320時間あり、幼保連携型認定こども園で保育教諭経験が2年かつ2,880時間以上あることです。条件を満たすと、大学などで幼稚園教諭免許状の取得に必要な単位数が2単位軽減されます。

厚生労働省は現在、幼稚園教諭免許状のみを保有している方に対しても、保育士資格の取得要件を緩和する特例の適用を検討しています。

   (出典:厚生労働省「認定こども園法改正に伴う幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例について」/     https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000941421.pdf

まとめ

認定こども園と保育園・幼稚園には、さまざまな違いがあります。とりわけ、配置基準・職員資格・教育や保育の内容・子育て支援というような認定基準の違いが大きいです。認定こども園の形態によって異なりますが、保育士と幼稚園教諭の両方の資格が職員に求められる場合があります。

こども園では「保連携型認定こども園教育・保育要領」を活用して教育や保育に関するガイドラインを設けています。幼稚園教育要領や保育所保育指針とはまた異なるため、これまで幼稚園・保育園に務めており、こども園に転職を希望している方は、確認しておくのがよいでしょう。

※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています