認定こども園は保育園のように長時間預けられ、幼稚園のように幼児教育も行う、どちらの要素も加わった施設です。保育園の管轄である厚生労働省と、幼稚園の管轄である文部科学相、どちらの関わりもある内閣府が認定こども園を管轄しています。認定こども園は保育園・幼稚園どちらの要素もあるため、これまで保育士として働いてきた方の中には、デメリットと感じるところもあるでしょう。
当記事では、保育士の方が認定こども園で働く際に感じるメリットとデメリットを解説します。保育士で転職を考えている方は、ぜひご一読ください。
目次
認定こども園とは?
認定こども園とは、就学前の子ども達を対象に幼児教育と保育を一体的に提供する施設です。保育所は保育に、幼稚園は幼児教育に重点がおかれており、認定こども園は双方の機能や特長を併せ持つ施設となっています。
(出典:子ども家庭庁「認定こども園概要」/ https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/kodomoen/gaiyou)
認定こども園にはいくつかのタイプが存在します。ここでは、それぞれのタイプの特徴について解説します。
認定こども園の4つの種類
認定こども園は、大きく次の4種類に分類できます。
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・幼保連携型認定こども園
幼稚園・保育所双方の機能を併せ持つ施設で「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」に基づき教育と保育が実施されている。
・幼稚園型認定こども園
もともとは認可幼稚園として運営されていて、そこに保育所の機能を追加した施設を指す。「幼稚園教育要領」に基づいた教育が行われている。
・保育所型認定こども園
もともとは認可保育所として運営されていて、そこに幼稚園の機能を追加した施設を指す。「保育所保育指針」に基づいて保育が行われている。
・地方裁量型認定こども園
認可外の幼稚園・保育所で、認定こども園の機能を追加した施設のこと。
保育士が認定こども園で働くデメリット
認定こども園は幼稚園の機能も併せ持つため、保育所ではあまり行わないようなさまざまな活動も実施します。慣れないうちは活動が増えることをデメリットに感じる場合もあるでしょう。
ここでは、保育士が認定こども園で働く際にデメリットと感じる可能性がある点について具体的に解説します。
待遇が保育所と変わりない
保育所でも幼稚園でも、平均年収や休日、福利厚生といった待遇の面ではあまり大きな違いはありません。認定こども園も同じような状況です。
認定こども園で働く場合は保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要ですが、2つの資格を取得していることで特別手当が支給されるケースは多くありません。そのため、認定こども園に勤めても、待遇は保育所とあまり変わらない可能性が高いでしょう。ただし、公立の認定こども園は地方公務員と同じ扱いになり、私立園より給与が高い傾向にあります。
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業務負担が増える可能性がある
一般に、保育所と比べて幼稚園は親子遠足や発表会、親子参加といった保護者参加型のイベント、行事が多い傾向にあります。幼稚園の機能を持つ認定こども園でも、イベントや行事がよく実施されます。
イベントや行事があれば、計画の立案や必要物の手配・作成といった事前準備が必要です。発表会などイベントの内容によっては、子どもに時間をかけて指導する必要もあるでしょう。そのため、保育士の仕事量が増える可能性があります。
とはいえ、仕事内容に慣れてくれば、効率よく進められるようになるでしょう。
保護者との関わりが増える
認定こども園は、共働き世帯の子どもと共働きではない世帯の子どもの両方が利用しています。家庭環境の違いが大きいと、保護者や子どもの考え方や価値観も異なるものです。考え方の違いから、保護者や子ども同士が揉めることもあるでしょう。そのため、保育所で勤務する場合以上にきめ細やかな対応が求められる可能性があります。
一方で、保護者のさまざまな考え方や価値観に触れられることは、保育者としての視野を広げるチャンスとも言えます。
幼稚園教諭と保育士で考えの違いが生まれることがある
保育士は子どもたちの健康状態を気にかけ、生活における体験を通した関わりの中で成長をサポートするなど、保育の観点から子どもの相手をします。一方、幼稚園教諭は生活のサポートのほか、園の方針にあった運動や音楽、英語など、教育の観点から子どもと関わります。
同じ認定こども園で働いていても、幼稚園教諭側と保育士側では価値観や考え方が違うため、指導方針で意見が食い違うこともあるでしょう。互いの考えをしっかり話し合い、落としどころを見つけることが大切です。
保育士が認定こども園で働くメリット
保育士が認定こども園で働く場合、いくつかデメリットがないわけではないものの、幼稚園的機能を持つゆえのメリットもたくさんあります。
ここでは、保育士が認定こども園で働く主なメリットについて具体的に解説します。
保育経験の幅が広がる
認定こども園は、保育と教育の双方を子どもたちに提供します。そのため、勤める保育士は保育だけでなく、幼児教育に関する知識や教育的な観点も持つことが必要です。
また、保育所勤務では共働き家庭の親子と接するケースが多くなりますが、認定こども園では共働きだけでなく片働きの家庭の子どもも通っています。家庭環境や価値観、考え方が異なる保護者や子どもと関わる機会が増えるため、視野も広がるでしょう。保護者や子どもに対し、より柔軟に対応できる力がつきます。
保育士自身の経験の幅が広がるので、子どもの性格や成長段階に合わせたより適切な指導ができるようになります。
保育所とは異なる行事が体験できる
保育士が認定こども園で働く大きなメリットの1つが、保育所でできないような経験が積める点です。認定こども園では、教育の観点から幼稚園で実施されている行事やイベントを取り入れています。さまざまな行事を経験することでスキルアップにつながるでしょう。
子どもの成長を促す行事やイベントに力を入れられる環境が整っている点は、認定こども園の魅力の1つです。
幅広い子どもの成長に関われる
子どもの成長を長く見守れる点も、認定こども園で働くメリットです。保育所でも基本的には0歳から5歳まで預けられますが、3歳以上になると幼児教育目的で幼稚園に転園していくケースがあります。
認定こども園の対象年齢は保育所と同じで、幼稚園と同様に幼児教育の時間があるため、3歳になっても転園する必要がありません。そのため、保育士は、0歳から就学直前までさまざまな年齢の子どもたちと関われます。
処遇改善制度が受けられる
認定こども園は、政府が実施する処遇改善加算制度の対象です。処遇改善加算制度とは、保育士の待遇改善を目的として国から補助金が支給される制度を指します。国から認定こども園に補助金が振り込まれ、園ごとに保育士に補助金を分配する仕組みです。補助金は基本給とは別に支払われます。
処遇改善加算制度には以下の3つがあります。
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処遇改善加算1:
平均勤続年数に応じて園に補助金が入り職員に分配される。加算率は年齢に応じて2~12%になる。
処遇改善加算2: 副主任やリーダーなど役職についた際に月額5,000~4万円アップする。
処遇改善加算3: 2022年2月からの期間限定の処遇改善臨時特例事業が変化した制度で、計算方法によって算出された金額が公定価格に組み込まれる。
(出典:内閣府子ども・子育て本部「平成30子ども・子育て支援新制度市町村向けセミナー資料年」/ https://www.ans.co.jp/u/okinawa/cgi-bin/img_News/178-1.pdf)
処遇改善加算制度はたびたび見直しが行われており、今後も保育士の待遇改善の流れが続くことが見込まれます。また、自治体によっては独自に処遇改善を実施しているところもあります。
保育士が認定こども園の求人を探すときのコツ
認定こども園の求人を探すなら「給与がよい」「柔軟な働き方ができる」「方針が合っている」など、就職先に希望する条件を明確にすることが大切です。条件がはっきりしたら、求人サイトを見て合う保育士求人を探します。保育士専門の求人サイトであれば、より求人情報を見つけやすいでしょう。
よいと思う求人が複数見つかったら、認定こども園のホームページを見るなどして保育・教育方針を確かめ、いくつかに絞り込みます。絞り込めたら、応募前に園の見学に訪れて実際の保育内容を確認しましょう。
保育・教育方針が自分と合っていたり、待遇などの条件が良かったりしても、実際に園の様子を見なければ雰囲気が合うかどうかは分かりません。見学に訪れて実際に働いている保育士や通っている子どもたちの様子を見ることで、納得して働ける場所かどうかが判断しやすくなります。
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まとめ
認定こども園は幼児教育と保育を一体的に提供する施設です。幼稚園の要素も兼ね備えているため、保育士の方は幼稚園で行われるようなイベントの準備や実施、またさまざまな保護者の関わりで負担を感じることがあります。認定こども園では一般的に保育士資格と幼稚園教諭の資格が求められる施設ながら、待遇に大きな差がないことにもデメリットを感じる方もいるでしょう。
しかし、これまで保育士として働いてきた方は、幼稚園の幼児教育の知識や教育的な観点が養われ、保育経験の幅が広がります。日々の保護者と子どもとの関わり、またさまざまな行事を通して、保育士としてのスキルアップにつながるでしょう。
※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています