保育士の給与が低い現状を示すものに「保育士の手取りが13万円」というフレーズがあります。
手取りとは、給与額から社会保険料や住民税・所得税などを天引きした後の、実際に受け取れる額面のことです。手取り13万円は、実際に受け取れる給与額が13万円であることを指します。「保育士の手取り13万円は本当か」「手取り13万円は低いか」が気になる方は多いでしょう。
当記事では「保育士の手取り13万円は低いか」を保育士の平均年収と比較して説明した上で、保育士が給与を増やす方法を徹底解説します。
目次
保育士の手取りが13万なのは本当?
保育士の手取りは、職場や就業の状況によっては13万円になる場合があります。
しかし、令和2年の「保育士の現状と主な取組」によると、保育士の平均給与は月給換算で30.3万円です。平均給与と比べたとき、手取り13万円はかなり低いと言えます。
(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf )
保育士の手取りが13万円になりやすいのは、主に初任給の場合です。
保育士の初任給は、公立保育園では大学卒の場合で約18.8万円、短大卒の場合は約16.7万円となっています。一方で、私立保育園では男性が約21.2万円、女性が約21.4万円が平均的な初任給です。
(出典:令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果「第4表 初 任 給」/ https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/pdf/R3_kyuyo_1_03-1.pdf )
(出典:e-Stat政府統計の総合窓口「統計表・グラフ表示」/ https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003084964 )
初任給から社会保険料などを差し引くと、勤務先の保育園によっては手取りが13万円となる可能性があります。
保育士の年代別の平均年収は?
保育士の平均年収を表形式で解説します。なお、下記に掲載する表の年収に賞与は含まれていません。
令和3年賃金構造基本統計調査によると、全国の保育士の平均年収は下記の通りです。所定内給与額に1年(12か月分)をかけて計算しています。
全国の保育士の平均年収 | |
---|---|
男性 | 女性 |
約330万円 | 約299万円 |
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html )
次に、勤続年数ごとの保育士の平均給与(月給)を男性・女性別で見ると下記の通りです。
勤続年数ごとの保育士の平均給与(男性) | |
---|---|
0年 | 約21.2万円 |
1~4年 | 約24.7万円 |
5~9年 | 約26.9万円 |
10~14年 | 約31.3万円 |
15年以上 | 約33.2万円 |
(出典:e-Stat政府統計の総合窓口「統計表・グラフ表示」/ https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001164106&tclass2=000001164107&tclass3=000001164111&tclass4val=0 )
勤続年数ごとの保育士の平均給与(女性) | |
---|---|
0年 | 約21.4万円 |
1~4年 | 約22.5万円 |
5~9年 | 約23.6万円 |
10~14年 | 約24.8万円 |
15年以上 | 約28.3万円 |
(出典:e-Stat政府統計の総合窓口「統計表・グラフ表示」/ https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001164106&tclass2=000001164107&tclass3=000001164111&tclass4val=0 )
また、下記の表は保育士以外の職種も含む全体の平均年収を、男女別・年齢階層別で表したものです。
年齢階層別の平均年収 | ||
---|---|---|
男性 | 女性 | |
20~24歳 | 277万円 | 242万円 |
25~29歳 | 393万円 | 319万円 |
30~34歳 | 458万円 | 309万円 |
35~39歳 | 518万円 | 311万円 |
40~44歳 | 571万円 | 317万円 |
45~49歳 | 621万円 | 321万円 |
(出典:国税庁 長官官房 企画課「令和2年分 民間給与実態統計調査」/ https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/002.pdf )
平均給与は全体的に、男性と比べて女性のほうが少ない点が特徴です。
また、保育士は勤続年数が長くなっても300万円以下の年収が続きやすく、年収が低い傾向にあることが分かります。
(出典:e-Stat政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計調査」/ https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001164106&tclass2=000001164107&tclass3=000001164111&stat_infid=000032182965&tclass4val=0 )
保育士の給与は改善傾向にある
保育士の給与を上げるために、さまざまな処遇改善が行われています。代表的な処遇改善制度は以下の2つです。
処遇改善等加算Ⅰ |
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処遇改善等加算Ⅰは、施設に勤務する全職員の平均経験年数と賃金改善要件分に応じて、施設に補助金が支給される制度です。 |
(出典:内閣府「処遇改善等加算Ⅰ」/ https://www.city.kawasaki.jp/450/cmsfiles/contents/0000123/123343/3-3.pdf )
処遇改善等加算Ⅱ |
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処遇改善等加算Ⅱは、園長・主任保育士未満でかつ一定の実務経験を持つ職員を対象として、施設に補助金が支給される制度です。 |
(出典:内閣府「令和2年度における処遇改善等加算の運用の改善」 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/r020221/pdf/s2-4.pdf )
どちらの制度も補助金は賃金改善に使用することが求められており、保育士の給与は改善傾向にあります。
保育士の手取りが少ないと感じる理由
保育士の給与は改善傾向にあるにもかかわらず、なぜ手取りが少ないと感じるのでしょうか。
保育士の手取りが少ないと感じる理由として、4つの要因を紹介します。
公定価格と保育士の配置が釣り合っていない |
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保育における公定価格とは、保育園の運営に必要と国が定めた費用のことです。私立の認可保育園は、公定価格を基準とした「委託費」を自治体から受け取って運営しています。
しかし、実際には公定価格の基準以上に保育士を配置しなければ、保育がままならない園が少なくありません。多数の保育士を雇用するために委託費から支払われる1人あたりの給与額が低くなり、保育士の手取りが少なくなる可能性があります。 |
保育士になったばかりである |
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保育士になったばかりの場合は保育経験がないため給与が低く、手取りも少なくなる可能性があります。保育経験を積んで昇給すると手取りを増やすことが可能です。 |
月給がボーナスで補われている |
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保育園によっては、月給は低いもののボーナスを高く設定している場合があります。月給とボーナスを合計して平均的な年収であっても、毎月の労働対価として得られる月給が低いケースが、「手取りが少ない」と不満を感じやすい要因です。 |
給与の安い地域で勤務している |
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保育士の給与は、働く地域によって変動する点が特徴です。基本的に人口の多い都道府県は給与が高い傾向にあり、給与の安い都道府県と比較すると平均年収で100万円以上の差があります。 |
保育士が手取り額を増やすには?
保育士が手取り額を増やすには、主に2つの方法があります。現在の保育園で経験を積むか、他の保育園に移るかです。
どちらの方法を選択する場合も、効率よく手取り額を増やすポイントを押さえることが重要です。現在の保育園で経験を積む場合、他の保育園に移る場合のポイントを解説します。
キャリアアップ制度を利用して役職に就く
キャリアアップ制度を利用して役職に就くと、給与にプラスして役職手当が支給されるため手取り額を増やせます。
キャリアアップ制度とは、「処遇改善等加算Ⅱ」とともに開始された「保育士等キャリアアップ研修」のことです。保育現場のリーダー的職員として活躍できる人材の育成を目的とした、保育士のキャリアアップができる研修制度となります。
保育士等キャリアアップ研修を修了して要件を満たすと、「職務分野別リーダー」「副主任保育士」「専門リーダー」の役職に就くことが可能です。いずれも処遇改善等加算Ⅱにおいて加算対象となる役職であり、手取り額のアップが期待できます。
(出典:厚生労働省「保育士等キャリアアップ研修ガイドラインの概要」/ https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/gaiyou_10.pdf )
公立保育士になる
公立保育園で働く公立保育士になることで、保育士の手取り額を増やせます。
公立保育園は私立保育園よりも初任給が低いものの、地方公務員であるため収入が安定している点が特徴です。公立保育士は景気に左右されることなく、勤続年数や就いている役職に応じた昇給・手当が期待できます。賞与や退職金もきちんと支給されるため、給与についての不安を持たずに保育士として働ける点もメリットです。
公立保育士になるには、地方公務員試験を受験して合格後、公立保育園に配属される必要があります。ハードルは高いものの、挑戦する価値はある働き方と言えるでしょう。
給与のよい保育園に転職する
給与のよい保育園に転職することも、手取り額を増やすための有効な方法です。
私立保育園は運営主体によって保育士の雇用条件に違いがあり、給与や福利厚生が異なっています。私立保育園の求人情報を確認して給与・福利厚生などの待遇がよい保育園に転職すると、手取り額を増やすことが可能です。
他の保育園への転職を検討する際は、転職先の昇給制度やキャリアアップ支援の有無についても確認しましょう。定期的な昇給があり、キャリアアップ支援の取り組みもある保育園であれば、転職後の継続的な給与アップが期待できます。
まとめ
保育士は初任給の手取りが13万円となる可能性があります。保育士の平均的な月給である30.3万円を目安とすると、手取り13万円は低い給与です。
ただし、現在は「処遇改善等加算制度」が用意されており、保育士の給与は改善傾向にあります。働く保育園や地域を選ぶことで、手取り額が少ないと感じるケースは減らせるでしょう。
保育士が手取り額を増やすには、現在の保育園で経験を積む方法と、他の保育園に移る方法があります。給与の高い保育園に転職したい方は、条件のよい非公開求人を含めて多数の求人があるマイナビ保育士を、ぜひご利用ください。
※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています