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保育士の待遇や待機児童の問題など、保育士の人手不足が話題になることは多いものの、実際保育士の人数推移はどのようになっているのでしょうか。また、保育士の人材不足を解消するために、保育士として活躍する方に向けたさまざまな支援策や待遇改善が行われています。

当記事では保育士の人数推移とともに、保育士が不足する理由と解決策について解説します。人手不足の現状について学びながら、現在の環境を見直すための参考にしてください。

保育士として働いている人数の推移は?

2020年の保育士登録者数は、下記の通りです。

男性 82,330人
女性 1,583,219人
男女計 1,665,549人

(出典:厚生労働省「保育士登録者数等(男女別)」/ https://www.mhlw.go.jp/content/000656131.pdf

保育士登録者数の95%が女性で、男女比率を見ると圧倒的に女性保育士の方が多いことが特徴です。

2019年の保育士登録者数と比較すると、登録者累計は男女合わせて約67,000人増加しています。過去のデータグラフからも、保育士登録者数は年々増加傾向にあることが分かります。

ただし、「保育士登録者数=実際の従事者」というわけではありません。保育士登録者数と実際に保育士として働く人の数には、大きく差があります。

2019年の保育士登録者数と実際の従事者数は、下記の通りです。

保育士登録者数 1,607,000人
実際の従事者数 626,000人

(出典:厚生労働省「保育を取り巻く状況について」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf

保育士登録者数に対して、実際の従事者数は2分の1以下であり、保育士資格を保有しているものの、現在保育士として働いていない人が多く見られます。

2013年以降、保育所などで働く保育士の数自体は増え続けています。保育士として働く人がいる一方で、さまざまな理由から保育士として働かないことを選ぶ人もいるのも特徴です。

保育士が人手不足になる理由は?

保育士の有効求人倍率は1.98倍となっています。有効求人倍率は高い時期には3倍近くにもなり、保育士を必要とする職場は人手が足りていないことがうかがえます。

(出典:厚生労働省「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」/ https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7610/ho1.pdf

保育所など保育士を必要とする職場での人手不足が続いている現状には、いくつか理由があります。厚生労働省の統計による就業希望者が増えない主な理由は、下記の通りです。

    ●責任の重さを感じる
    ●事故への不安がある
    ●就業時間が希望と合わない
    ●休暇が少なく取りにくい

(出典:厚生労働省「保育分野における人材不足の原因・理由①」/ https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000057759.pdf

ここからは、就業希望者が増えない理由を詳しく解説します。

責任が重い・事故への不安がある

保育士の有資格者が保育士として働かないことを選ぶ理由の1つが、責任の重さや事故への不安です。

保育所では、子どもたちが安全に過ごせる環境づくりを意識しつつ働く必要があります。遊具の点検や玩具の誤飲防止など、子どもの年齢に合わせた安全配慮が必須です。また、万が一体調不良やケガが起こった場合は、子どもへの対応だけでなく保護者への連絡と説明も必要となります。

保育事故に関する報道も多く、メンタル面の負担が大きくなることを考えて保育士としての勤務を選ばない人もいます。「命に関わる可能性がある職場で働く自信がない」という人も少なくありません。

就業時間が希望と合わない

就業時間が希望と合わないことも、保育士の就業希望者が増えない理由の1つです。

多くの保育所では、働き方の多様化に合わせて子どもの受け入れ時間に幅を持たせています。早朝や遅い時間、土日・祝日など、子どもを預ける側にとって、保育園の受け入れ時間が長いことは大きなメリットです。

しかし、子どもの受け入れ時間に幅がある保育所ほど、保育士は土日出勤・夜間勤務・早朝勤務などが発生しやすく、仕事とプライベートのバランスを取りにくくなります。家庭がある人は、特に就業時間が合わないと感じる傾向にあります。

賃金が希望と合わない

保育士の就業希望者が増えない理由として、賃金が希望と合わないことが挙げられます。

保育士の平均年収は、下記の通りです。

男女平均 約382万円
男性 約421万円
女性 約380万円

(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査結果の概況」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html

給料相場は地域や勤務先によってさまざまであり、役職が付くと年収は高くなることもあります。

経験を重ねることで年収アップを目指せるものの、保育士の仕事量や責任の重さと給料が見合っていないと感じる人は少なくありません。

休暇が取りにくい

保育士として働くことを希望しない人の中には、休暇の取りにくさがネックに感じている人もいます。

保育士の勤務形態は、「完全週休2日制」「週休2日制(4週8休など)」が一般的です。土曜日も子どもを預かる保育施設が多いため、保育士が土・日と続けて休みを取ることは難しいと言えます。

また、「仕事量が多い」「人手が足りない」などの理由で、休日出勤の振替休日が取れなかったり急な事情でも休みにくかったりする場合もあります。「十分な休息が取れない」「リフレッシュが思うようにできない」という状況は、保育士にとって大きな負担です。

保育士不足を解決する方法は?

保育士不足の解決は、待機児童数の減少にもつながります。保育士の就業率を高めるには、保育士としての就業を希望しない理由をなくすことが大切です。具体的には、保育士の不安を軽減したり職場環境を整えたり、保育士が安心して働けるような対策が必要となります。

ここでは、保育士不足解消のために推奨されている解決策を3つ解説します。

保育士の処遇改善

保育士不足の解決には、給与面や待遇面の見直しなど保育士の処遇改善が欠かせません。

保育士の処遇改善に向けた具体策は、次の通りです。

    ●保育士の収入の引き上げ
    ●IT技術の導入による業務負担の軽減
    ●キャリアアップ研修の実施
    ●保育士の離職防止に向けた雇用管理研修の実施

政府は、保育士の処遇改善を目的とした補助として「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」を行っています。対象となる保育施設は、保育士の収入を約3%引き上げるための費用補助を受けることが可能です。

(出典:厚生労働省「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業 リーフレット」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/r031223/leaf.pdf

費用補助の対象施設と補助要件は、下記の通りです。

対象施設 保育所、幼稚園、認定こども園、家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業、事業所内保育事業、特例保育を行う施設
補助要件 ・補助額の全額を賃金改善に充てる
・最低でも改善額全体の3分の2以上を基本給または決まって毎月支払われる手当で賃金改善を行う
・賃金改善の計画書と実績報告書を各市町村に提出する

また、経験に応じた収入加算も行われており、保育士がキャリアアップを目指しやすい環境が整いつつあります。

保育士の就業継続支援

保育士の人手不足解消には、保育士が仕事を継続できるようなサポート体制が必要です。

就業継続支援の具体例は、下記の通りです。

    ●離職防止に向けた研修の実施
    ●各種助成金の促進

離職防止に向けた研修では、新人保育士を対象とした就職後に感じたギャップへの対応方法や保護者対応などについて学びます。

保育士の就業継続を図る目的で評価・処遇制度や健康づくり制度を導入する場合、「中小企業労働環境向上助成金」の活用が可能です。他にも、「子育て期短時間勤務支援助成金」「中小企業両立支援助成金」「キャリアアップ助成金」など、保育士の就業継続に活用できる助成金はさまざまあります。

(出典:厚生労働省「保育士確保プラン」/ https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000070945.pdf

保育士の再就職支援

保育士就業率を上げるには、保育士資格を持っているものの保育士として働いていない「潜在保育士」へのアプローチも重要です。

保育士として働いた経験がある人であれば、即戦力として職場で活躍してもらうことができます。多くの潜在保育士が保育士として復職できれば、現役保育士の負担軽減にもつながります。

再就職を目指す潜在保育士支援の具体例は、下記の通りです。

    ●支援センターの活用
    ●ハローワークでのマッチング強化
    ●保育従事者に関する情報の活用

(出典:厚生労働省「保育士確保プラン」/ https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000070945.pdf

保育士・保育所支援センターの積極的な活用により、潜在保育士への職業あっせんや再就職への相談を行うことができます。また、保育士の離職者数や平均勤続年数などの情報を役立てることで、潜在保育士の就業意欲促進を図る効果も期待できます。

まとめ

保育士の登録者数・従事者数は近年増加しているものの、保育士の有効求人倍率は高い水準で推移しており、人材は不足している状態と言えます。子どもの命を預かるという責任の重さや、休暇・賃金などの待遇面が人手不足の原因となっており、保育士不足を解消するために働きやすい環境の整備が進められています。

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※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています