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出産を機に職場を離れた保育士の方の中には、育休明けの職場復帰に不安を抱えている方もいるでしょう。保育士の職場復帰に関する悩みや不安には「家事と育児の両立ができるか」「希望条件に合った転職先を見つけられるか」などがあり、復職への高い壁となっていることがあります。

当記事では、潜在保育士の実態や職場復帰するためのポイント、子育てと仕事を両立して復帰する方法などを紹介します。育休からの職場復帰を考えている保育士の方はぜひご覧ください。

保育士の育休復帰は難しい?

育休復帰を考えている保育士の方の中には、「子育てと両立できるだろうか」「処遇面が変わるのでは」など、不安を抱えている方もいます。業務量が多く、育休復帰しても子育てや家事との両立に悩んで退職するケースも多くあげられます。勤務時間に融通が利いても、業務量的に仕事を持ち帰らざるを得ないケースもあるでしょう。

ここでは、「働きたいけれど、事情があって働けない」と悩んでいる保育士の方の実態について解説します。

潜在保育士の実態

厚生労働省の調査によると、2020年時点で保育士の登録者数は約167万人です。ただし、保育士資格を取得しているものの、保育所などで資格を生かして働いていない潜在保育士も約102万人含まれています。

(出典:厚生労働省「厚生労働白書」/ https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/zentai.pdf 引用日2023/12/11

単純計算で、現在保育士として活躍している方の数は約65万人となり、資格保有者の全体の半数程度です。

潜在保育士が保育士としての復帰を希望しない理由は、複数あげられます。処遇や労働時間などが希望と合わないことを理由とする割合が多い一方、下記の通り「子育てとの両立が難しい」と回答した割合も14.9%と高い数値です。約15%の人数が、子育てと保育士の仕事の両立に対して不安を抱えていることが分かります。

保育士として就業を希望しない理由 割合
賃金が希望と合わない 47.5%
他職種への興味 43.1%
責任の重さ・事故への不安 40.0%
自身の健康・体力への不安 39.1%
休暇が少ない・休暇がとりにくい 37.0%
就業時間が希望と合わない 26.5%
ブランクがあることへの不安 24.9%
業務に対する社会的評価が低い 22.3%
保護者との関係がむずかしい 19.6%
その他 18.9%
子育てとの両立がむずかしい 14.9%

(引用:厚生労働省「厚生労働白書」/ https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/zentai.pdf 引用日2023/12/11
※「保育士として就業を希望しない理由(複数回答)」のグラフより一部数値を引用

保育園はシフト制となっているところも多く、子育てと両立させるためには日によって変わる勤務時間へ柔軟に対応してくれるサポートが求められます。保育園に預けるとしても、シフトや残業を考慮した入園先を考える必要があります。

保育士が抱える育休復帰に対する悩み

育休復帰を検討するときに保育士の方が抱える不安の1つが、異動の可能性です。同じ職場へ復帰した場合、スキルや知識が不十分と判断されると、経験したことのない業務へ異動を提案されるおそれがあります。

異動するとなれば、復帰時に想定していた業務内容や勤務時間との差が生じます。思うように子育てと両立できなかったり、職場内で新たな人間関係を築かなくてはならなかったりして、異動によってほかの問題も抱えなくてはなりません。

仮に異動を回避できたとしても、育休の間に業務フローやシステムが大きく変化していれば、学び直しが必要です。子育てに関する知識と並行して勤務先でのシステムの変化についても勉強しなくてはならず、キャリアアップへの不安を抱える方もいます。

保育士が育休から職場復帰するためのポイント

保育士の方が将来的に職場復帰を考えている場合、育休中・育休明けなどのタイミングで意識したいポイントがいくつかあげられます。

ここで紹介するポイントは、「子どもの預け先」「勤務条件」「研修」「求人情報の確認」「保育士証の確認」の5つです。それぞれ詳しく解説します。

子どもの預け先を確認する

勤務中に子どもを見てくれる身内が見つからないときは、保育園など子どもを預けられる保育施設を探す必要があります。子どもを預けられる主な保育施設は、下記の通りです。

  • 保育園
  • 幼稚園
  • 認定こども園
  • 無認可保育園 など

保育施設と一口に言っても、公立や私立の違い、運営会社の違いによって保育料もシステムもさまざまです。土日勤務の可能性がある場合は、平日以外も預けられる保育施設を中心に探しましょう。

また、保育園の場所も大切なポイントです。自宅から近い立地の保育園を選ぶと、卒園後も友達と同じ小学校へ進学したり遊んだりできて交友を維持できるメリットがあります。職場に近い保育園も、熱が出たときに迎えに行きやすいメリットがあるため、慎重に選びましょう。

勤務条件を明確に決める

保育士として職場復帰するときは、雇用形態や勤務時間などの条件が変わることがあります。まずは、自分が何を重視したいのか、希望する働き方や条件をあらかじめ明確にしましょう。

譲れない部分は何か、妥協できる範囲はどこか明確にしておくと、交渉しやすくなります。新しく求人を探すときも、優先順位が分かった状態で吟味したほうが自分に合った職場を見つけられます。

明確にすべき条件は、たとえば下記の通りです。

  • 雇用形態
  • 勤務時間
  • 休日
  • 残業の有無
  • 給料などの待遇面
  • 通勤のしやすさ など

勤務時間を重視する場合、担任クラスをもたないフリー保育士という選択肢もあります。

また、産休育休への取り組みも勤務先の質を判断する大切なポイントです。制度の利用に積極的であれば、復職者の受け入れも前向きに考えてくれます。

再就職に生かせる研修に参加する

育休からの復職時、ブランクによる知識不足や新しいシステムへの適応に不安を抱く方もいます。少しでも不安を和らげる対策として、行政や民間企業が行っている復職支援研修や再就職セミナーへの参加がおすすめです。

たとえば行政による支援制度は各自治体の保育士・保育園支援センターで行われており、講習会・研修会・相談会に加えて求職マッチングも利用できます。

保育士専門の求人や人材派遣を取り扱っている民間企業でも、再就職のための研修やセミナーが行われていることがあります。利用時は、開催企業ごとにサービス内容や研修の質が異なる点に注意しましょう。

頻繁に求人情報を確認する

時間が空いたときは、意識して求人情報を確認することも大切です。復職の目途が立つ前から多くの求人を見ることで、自分が優先したい条件は何か、各募集元のどこを見るべきかが分かるようになります。

子育て中は忙しくて、なかなか本格的に求人探しができない方も多いのではないでしょうか。本格的に転職先を探すのではなく、まずは求人を見る練習をするつもりで、気軽に確認することから始めましょう。

保育士証を確認する

保育士として働くためには、資格を有していることを証明する「保育士証」の交付を受ける必要があります。出産や育児で忙しい休職中は、保育士証の管理を忘れる可能性も考えられます。

保育士証を紛失していないか、本格的に復職活動を始める前に確認しましょう。保育士証が見つからない場合は、登録事務処理センターへの問い合わせが必要です。「保育士登録の手引き」を送付してもらい、必要書類と手続き料を用意すれば保育士証を交付してもらえます。

保育士登録とは?申請・登録方法や必要書類を詳しく解説!

保育士が子育てと仕事を両立して復帰するには?

保育士の方が子育てと仕事を両立するためには、周りの環境を変えることも大切です。従来の働き方ではなく時短勤務を利用したり、思い切って転職を検討したりする方法もあります。

以下では、時短勤務で子育てと仕事を両立する方法や保育士における転職について紹介します。

時短勤務で子育てと仕事を両立する

育児のための両立支援制度の1つに、「短時間勤務制度」を利用した時短保育士としての勤務があげられます。短時間勤務制度とは、育児・介護休業法にもとづいて行われる、所定労働時間の短縮措置です。事業主は3歳未満の子どもをもつ従業員に対して、本人が希望する場合は短時間勤務制度を設けることが義務づけられています。

(出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」/ https://jsite.mhlw.go.jp/yamanashi-roudoukyoku/library/yamanashi-roudoukyoku/kintoushitsu/kintousekoujoukyou6.pdf

短時間勤務制度を利用すると、原則として1日5時間45分~6時間の時短勤務が許可されます。短時間勤務制度を申し込むためには、各勤務先が定めた就業規則に沿った手続きが必要です。

日々雇用される従業員ではないことなど、いくつかの適用条件もあるため、事前に確認した上で活用しましょう。

保育士が時短勤務で働くメリットは?利用条件やスケジュール例も紹介

転職も視野に入れる

出産直前まで勤務しており、時短制度や産休育休制度を利用できていない場合は、職場そのものを変更することも視野に入れましょう。子育てと仕事の両立は家族のみならず、勤務先の協力も必要です。育休職員のサポート体制が確立している職場であれば、万が一子どもが熱を出したときや、イベント・行事で休む必要が出たときも、気軽に相談できます。

仕事を楽しみつつ子育てと両立させるためには、保育士の方が気持ち良く働ける勤務形態や職場を選ぶことも大切です。現状の職場に不安がある場合は、仕事復帰のタイミングで転職活動も検討することをおすすめします。

まとめ

保育士の登録者の中には保育所などで資格を生かして働いていない潜在保育士も多く含まれており、さまざまな理由によって復帰しない選択をしています。保育士として就業を希望しない理由には、ブランクがあることへの不安や子育てとの両立が難しいと感じているケースもあり、育休からの復帰に悩みや不安を抱えている方は多いでしょう。

育休から復帰するには、子どもの預け先を確認するほか、再就職に生かせる研修に参加することも大切です。転職先を探す場合は頻繁に求人情報を確認して、自分が優先したい条件やそのほか勤務条件も明確に決めましょう。

※当記事は2023年12月時点の情報をもとに作成しています