放課後児童支援員は、学童保育施設で小学生が安全に過ごせるよう見守る専門職です。仕事内容は出席確認やおやつの提供、遊びや学習の見守り、保護者への連絡や地域との連携など多岐にわたります。放課後児童支援員として働くには、一定の条件を満たした上で研修を受講し、資格を取得することが必要です。
当記事では、放課後児童支援員の仕事内容や1日のスケジュール、資格取得の条件について詳しく解説します。学童保育の現場で働きたい方や、放課後児童支援員を目指している方は必見です。
目次
放課後児童支援員とは?
放課後児童支援員とは、学童保育(放課後児童クラブ、学童クラブ)を利用する小学生たちが安全に過ごせるよう見守る専門職員です。学童保育には小学校1年生から6年生までが通います。サポートするスタッフは、子どもたちの性格や発達状況を理解し、適切に接することが欠かせません。
そのためには高度な専門知識が必要との認識が広まり、2015年に子ども・子育て支援新制度が施行された際に、放課後児童支援員の資格も創設されました。学童保育で放課後児童支援員として働くためには、資格の取得が必要です。
2020年度からは、学童保育には2人以上の放課後児童支援員を配置することが義務付けられています。
(出典:厚生労働省「放課後児童支援員の役割及び職務と補助員との関係」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000059715.pdf)
児童指導員との違い
放課後児童支援員と混同されがちな資格に、児童指導員や学童指導員(放課後児童指導員)があります。似た印象を持つ名称ではあるものの、それぞれ異なる職種です。以下の点で違いがあります。
勤務場所 | 仕事内容 | 資格の有無 | |
---|---|---|---|
放課後児童支援員 | 学童保育施設 | 学童保育を利用する子どもたちが安全に過ごせるよう見守る | 必要 |
児童指導員 | 児童福祉施設 | 児童福祉施設に通所・入所する子どもたちの健全な成長をサポートする | 必要 |
学童指導員 (放課後児童指導員) | 学童保育施設 | 放課後児童支援員とほぼ同じ | 不要 |
学童保育施設で働くスタッフのうち、有資格者を「放課後児童支援員」、無資格者を「学童指導員」と呼び分けています。児童指導員は資格が必要で、勤務先は学童保育施設ではなく主に児童福祉施設です。
(出典:厚生労働省「児童指導員」/ https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/243)
保育士と児童指導員の違いは?資格や仕事内容・給与の違いを解説
放課後児童支援員の仕事内容
放課後児童支援員の仕事は、放課後や夏休みなどの長期休暇に、学童保育の施設で子どもたちのお世話をすることです。出席確認、おやつの提供、宿題や自由遊びの見守りなどが仕事内容で、お誕生日会などを実施することもあります。
ここからは、放課後児童支援員の主な仕事内容を紹介します。
(出典:厚生労働省「放課後児童支援員の役割及び職務と補助員との関係」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000059715.pdf)
子どもが安心して過ごせる環境をつくる
放課後児童支援員が担う重要な役割の1つが、子どもが安心して楽しく過ごせる環境を整えることです。以下のような業務を通して安心できる環境づくりをします。
- 出欠確認をする
- 子どもたちの心身の健康状態を把握する
- 手洗いやうがい、整理整頓といった基本的な生活習慣が身に付くよう援助する
- 子どもの健康管理や衛生管理、安全点検を行う
- 掃除や片付けの補助をする
- 子どもが自発的に遊べるようサポートし、自主性や社会性を育む手助けをする
- 子どもが自主的に宿題や学習に取り組めるよう誘導したり環境を整えたりする
(出典:厚生労働省「放課後児童支援員の役割及び職務と補助員との関係」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000059715.pdf)
学童保育を利用する子どもの発達状態はさまざまなため、一人ひとりの様子をよく観察し、適切に補助する必要があります。
保護者に対する子育て支援をする
放課後児童支援員は、子どもの保護者に対する支援も行います。
- 事務連絡をする
- 保護者に学童保育での子どもの様子を伝えたり、家庭での様子を聞いたりする
- 保護者からの相談にのる
- 子どもの様子を記録する
保護者への連絡や情報交換は、連絡帳を通す方法が一般的です。子どもだけでなく保護者をフォローすることも、放課後児童支援員の大切な仕事です。
地域や学校と連携できる関係性を構築する
放課後児童支援員は、地域や学校との連絡役も担います。
- 地域にある子育て支援機関や団体との連絡、調整を行う
- 学童保育を利用していない子どもたちや地域住民と交流する
- 子どもの状況に関して学校に連絡したり、情報交換したりする
地域住民との交流は、子どもの社会性を育みます。子どもの心身の変化をいち早く理解するため、学校との情報共有や連絡も欠かせない仕事です。
放課後児童支援員の1日のスケジュール
放課後児童支援員の仕事の流れを把握するために、ここでは学校がある平日の1日のスケジュール例を紹介します。
夏休みや冬休みなどの長期休業期間は朝から子どもたちを受け入れお世話するため、開所時間が長くなります。早番と遅番に分かれてシフトを組み、対応するケースが一般的です。
放課後児童支援員の1日のスケジュール例 | |
---|---|
11:00 | 出勤し、掃除やおやつの準備、事務作業などをこなす |
12:00 | 昼休憩を取る |
13:00 | スタッフ全体でミーティングを行う |
14:00 | 順次やってくる子どもたちの出席を取り、健康状態を確認する子どもたちの宿題や遊びの様子を見守る |
15:30 | おやつを提供する |
16:30 | 遊びの様子を見守ったり一緒に遊んだりする |
17:00 | 帰りの会を開き、お迎え時間が来た子どもから帰る |
18:00 | 掃除や事務作業を手分けして行い、戸締りして退勤する |
日によっては、自由遊びではなく、季節の行事などのイベントを実施することもあります。
放課後児童支援員になるには?
放課後児童支援員になるには、資格が必要です。一定の条件を満たした上で各都道府県が実施している認定資格研修を修了すると、資格が取得できます。
ここでは、資格取得の具体的な条件や研修の内容を説明します。
放課後児童支援員の資格を取得できる条件
放課後児童支援員の資格は、放課後児童支援員認定資格研修を修了すれば取得できます。ただし、研修を受講するには以下の条件を満たす必要があります。
-
一 保育士の資格を有する者
二 社会福祉士の資格を有する者
三 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)の規定による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による中等学校を含む。) 若しくは中等教育学校を卒業した者、同法第九十条第二項の規定により大学への入学を認められた者若しくは通常の課程による十二年の学校教 育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む。)又は文部科学大臣がこれと同等以上の資格を有す ると認定した者(第九号において「高等学校卒業者等」という。)であって、二年以上児童福祉事業に従事したもの
四 学校教育法の規定により、幼稚園、小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校の教諭となる資格を有する者
五 学校教育法の規定による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。)において、社会福祉学、心理学、教育学、社会 学、芸術学若しくは体育学を専修する学科又はこれらに相当する課程を修めて卒業した者
六 学校教育法の規定による大学において、社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学若しくは体育学を専修する学科又はこれらに相当する 課程において優秀な成績で単位を修得したことにより、同法第百二条第二項の規定により大学院への入学が認められた者
七 学校教育法の規定による大学院において、社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学若しくは体育学を専攻する研究科又はこれらに相当 する課程を修めて卒業した者
八 外国の大学において、社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学若しくは体育学を専修する学科又はこれらに相当する課程を修めて卒業 した者
九 高等学校卒業者等であり、かつ、二年以上放課後児童健全育成事業に類似する事業に従事した者であって、市町村長が適当と認めたもの
(引用:厚生労働省「放課後児童支援員に係る都道府県認定研修ガイドライン(案)の概要」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000057166.pdf 引用日2024/05/10)
保育士や社会福祉士、幼稚園か小中高のいずれかの教員免許状保有者、大学・大学院で専門的に学んだ方は、実務経験がなくても研修を受講できます。それ以外の方は「高卒以上でなおかつ児童福祉事業(放課後児童クラブや保育所など)に2年以上従事したもの」など、学歴によって一定の実務経験が必要です。
なお、研修の受講条件は「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」にて定められています。
(出典:e-Gov法令検索「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426M60000100063)
放課後児童支援員認定資格研修の内容
放課後児童支援員認定資格研修は、厚生労働省のガイドラインに基づき実施されます。主に、学童保育施設で働く際に必要な知識やスキル、心構えなどを学ぶ内容です。
放課後児童健全育成事業の内容や子どもを理解するための基礎知識、育成支援など、6分野16科目の講義や演習が実施されます。トータルで24時間ほどのカリキュラムで、資格を保有している場合は一部の科目が免除される場合があります。
研修後に試験を受ける必要はなく、受講が修了すれば資格が取得できます。具体的な研修内容は以下の通りです。
<放課後児童支援員に係る都道府県認定研修の項目・科目及び時間数>
-
1. 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の理解 【4.5時間(90分×3)】
① 放課後児童健全育成事業の目的及び制度内容
② 放課後児童健全育成事業の一般原則と権利擁護
③ 子ども家庭福祉施策と放課後児童クラブ
2. 子どもを理解するための基礎知識 【6.0時間(90分×4)】
④ 子どもの発達理解
⑤ 児童期(6歳~12歳)の生活と発達
⑥ 障害のある子どもの理解
⑦ 特に配慮を必要とする子どもの理解
3. 放課後児童クラブにおける子どもの育成支援 【4.5時間(90分×3)】
⑧ 放課後児童クラブに通う子どもの育成支援
⑨ 子どもの遊びの理解と支援
⑩ 障害のある子どもの育成支援
4. 放課後児童クラブにおける保護者・学校・地域との連携・協力 【3時間(90分×2)】
⑪ 保護者との連携・協力と相談支援
⑫ 学校・地域との連携
5. 放課後児童クラブにおける安全・安心への対応 【3時間(90分×2)】
⑬ 子どもの基本的な生活面における対応
⑭ 安全対策・緊急時対応
6. 放課後児童支援員として求められる役割・機能 【3時間(90分×2)】
⑮ 放課後児童支援員の仕事内容
⑯ 放課後児童クラブの運営管理と職場倫理 合計 24時間(16科目)
(引用:厚生労働省「放課後児童支援員に係る都道府県認定研修ガイドライン(案)の概要」/ https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000057166.pdf 引用日2024/05/10)
まとめ
放課後児童支援員は、学童保育施設で子どもたちが安心して過ごせる環境を整える重要な役割を担っています。仕事内容は、子どもたちの出席確認や安全確認、おやつの提供、遊びや学習の見守り、生活習慣の指導、保護者や地域との連携など多岐にわたります。
放課後児童支援員として働くには、資格取得のために一定の条件を満たした上で放課後児童支援員認定資格研修の受講・修了が必要です。放課後児童支援員としてのキャリアを考えている方は、研修の受講条件や内容をよく確認しましょう。
※当記事は2024年5月時点の情報をもとに作成しています