文: 神戸のどか(保育士ライター)
モロー反射とは?
モロー反射とは、赤ちゃんが外部からの刺激に反応して手足をビクッとさせて左右対称に腕や手を広げたあと、何かに抱きつくような動作をする反射的運動のことです。モロー反射は、生まれつき赤ちゃんに備わっている原始反射の一つであり、赤ちゃんの意思とは別に無意識のうちに起こります。
赤ちゃんが驚いたような仕草をするので、初めて見た保護者はびっくりしてしまうでしょう。しかし、モロー反射は正常な反応であり、赤ちゃんの成長に欠かせないものですので、無理に止める必要はありません。
モロー反射が表れるタイミング
モロー反射は、外部からの刺激を与えられたときに表れます。外部からの刺激には、たとえば下記のような触覚・視覚・聴覚刺激 などがあります。
【モロー反射が表れるタイミングの例】
- 大きな物音が聞こえたとき
- 頭の位置が下がったとき
- 温度の変化を感じたとき
- 明るい光を感じたとき
- 風が当たったとき
- 揺れを感じたとき
- 布に触れたとき など
赤ちゃんは些細な刺激にも反応するため、1日に何度もモロー反射が表れます。家の中では、「ドアが閉まったとき」「扇風機の風を感じたとき」などのタイミングでモロー反射が見られることもあるでしょう。また、寝かせようとしたベッドのひんやりとした冷たさが刺激になりモロー反射を起こすこともあります。
外部からの刺激の他にも、自分自身の動きにびっくりしたときにもモロー反射が見られます。
モロー反射の原因
モロー反射は赤ちゃんがお母さんから離れないように抱きつくための動作であり、「抱きつき反射」とも呼ばれています。赤ちゃんが外部の危険から自分の身を守るために起こるものとも言えるでしょう。
原始反射の一つであるモロー反射は、新生児から見られる反射的な運動です。特に、赤ちゃんが生まれたばかりの頃は危険の予測がまだうまくできないため、さまざまな刺激に反応してしまいます。
モロー反射が表れる時期・見られなくなる時期
モロー反射が表れるのは、おおよそ生後0ヶ月~6ヶ月頃です。発達には個人差があるため、赤ちゃんによって見られる時期が異なることもあります。また、早産の赤ちゃんには見られないこともあるようです。
モロー反射は、中脳や大脳の発達に伴い生後4~6ヶ月頃に消失します。 赤ちゃんの「見たい」「触れたい」という意思によって動かす随意運動が発達すると、だんだんと消失していきますが、消失するタイミングには個人差がありますので、生後半年頃までは焦らずに落ち着いて見守りましょう。
モロー反射に似ている病気「点頭てんかん」とは
モロー反射の動きに似ている病気に「点頭てんかん」があります。点頭てんかんは、ウエスト症候群とも呼ばれています。
点頭てんかんは刺激の有無にかかわらず、両手両足を曲げたり伸ばしたりして頭部を前屈させる動作を一定時間おきに繰り返すことが特徴 です。発症時期は、生後4~8ヶ月であることが多く、 モロー反射が表れる時期と重なっています。
発症時期や動作が似ていることから、家庭で判断することは難しいので、気になるときはかかりつけの病院に相談するとよいでしょう。その際は、赤ちゃんの様子を動画で撮影しておくことで、診察の助けになります。
モロー反射に関するよくある4つの質問
モロー反射は、赤ちゃんが成長していくうえで必要な反射的な運動です。しかし、「いつもより動きが激しい」「モロー反射があまり見られない」など、赤ちゃんの様子によっては心配になることもあるでしょう。ここからは、モロー反射に関するよくある4つの質問にお答えします。
モロー反射がいつもより激しいのはなぜ?
赤ちゃんのモロー反射がいつもよりも激しいときは不安になるかもしれません。モロー反射の影響で赤ちゃんがなかなか眠れず、保護者が対応に困ることもあるでしょう。
モロー反射が激しい場合は、いつもよりも環境による刺激が強いことが考えられます。まずは、どのようなときにモロー反射が出ているのかをよく観察しましょう。たとえば、いつもより「大きな物音が続く」「日光が当たっている」など赤ちゃんの周りに刺激となる要因があるかもしれません。環境を見直すことで、赤ちゃんが落ち着くこともありますので、焦らずに対応してみましょう。
赤ちゃんの様子が、「いつもと違う」と感じたときは、動画を撮影しておくとかかりつけ医に相談する際に正しくスムーズに伝えられます。あわせて、頻度や様子も記録しておくことをおすすめします。
モロー反射で赤ちゃんが頻繁に起きてしまうときの対策は?
赤ちゃんを布団の上に寝かせようとしたときにモロー反射が原因で、「赤ちゃんが起きてしまった」または「泣いてしまった」という経験をした方も多いでしょう。個人差はありますが、夜中にモロー反射が原因で頻繁に起きてしまう子もいます。
モロー反射は正常な反応のため、頻繁に起きることは基本的に心配ありませんが、赤ちゃんがゆっくり眠れないと保護者も心配になるでしょう。モロー反射が原因で赤ちゃんが頻繁に起きてしまう場合は、下記の3点を試してみてください。
刺激になるものを少なくする
赤ちゃんの刺激となるものを少なくしてみましょう。たとえば「物音を立てないようにする」、「エアコンの風が当たらないようにする」などを意識してみましょう。日中の場合は、遮光カーテンを活用し、眩しくならないようにすることも有効です。赤ちゃんの周りに刺激となっているものがないか確認してみましょう。
おくるみを使用する
おくるみ(大判の布)で体を包んであげることで手足が固定され、モロー反射が起こりにくくなると言われています。おくるみは赤ちゃんの肌に直接触れますので、肌触りのよい素材を選ぶようにしましょう。吸水性や通気性に優れているコットン100%のものがおすすめです。
抱っこの仕方を工夫する
抱っこするときに赤ちゃんの頭を下げてしまうとモロー反射が起きやすくなります。また、ベッドに寝かせようとする際も、頭が下がりすぎないようにしましょう。
また、赤ちゃんによっては向きや体勢を変えることでモロー反射が起こることもありますので、抱っこをするときに意識してください。
モロー反射が「弱い」または「ない」場合は?
モロー反射は個人差が大きく、音や光などの刺激にあまり反応しない赤ちゃんもいます。しかし、モロー反射がまったく見られない場合は、「核黄疸(かくおうだん) 」の可能性もあります。あまりにもモロー反射が弱いまたは見られない場合は、一度かかりつけ医に診てもらいましょう。
乳児健診でもモロー反射の強弱や動作の左右対称性について確認してもらえる機会がありますので、 かかりつけ医に不安なことを話してみることをおすすめします。
モロー反射が消えないのはどうして?
通常、モロー反射は生後4~6ヶ月以降には消失します。モロー反射が長い期間なくならない場合は、脳や神経に問題がある可能性が考えられます。
とはいえ、赤ちゃんの発育には個人差がありますので、必ず病気だということではありません。もしも生後7ヶ月を過ぎてもモロー反射が出ている場合は、 乳児健診のタイミングで相談してみましょう。
モロー反射とあわせて知っておきたい「原始反射」の種類
モロー反射とは、刺激によって無意識のうちに起こる原始反射の一つです。赤ちゃんが生まれたあと、外の環境に適応して生きていくために必要なものと言われています。
原始反射には、モロー反射の他に下記のようなものがあります。原始反射の表れや消失は、赤ちゃんが健康に育っているかどうかの目安にもなりますので覚えておくとよいでしょう。
【赤ちゃんに見られる原始反射】
- 把握反射……赤ちゃんの手のひらに手やものが触れたときに握りしめる動作。
- 哺乳反射……赤ちゃんの口に入ってきたものを吸う動作。
- 自動歩行……足の裏が床などの平面に触れたときに起こる、足を交互に動かして歩いているような動作。
- バビンスキー反射……足の裏の外側をかかとからつま先に向けて刺激すると、足の指を扇形に開くような動作。
- 足底把握反射……足の裏を圧迫すると、足指を含めて内側に曲がる動作。
- 非対称性緊張性頸反射……赤ちゃんの顔を一方に向かせると、合わせて手足が伸びたり曲がったりする動作。顔を向かせた方の手足が伸び、反対側の手足が曲がる。
まとめ
モロー反射は生まれたときから備わっている原始反射の一つであり、赤ちゃんの成長に欠かせないものです。通常は、赤ちゃんが生まれてから4~6ヶ月頃まで現れます。
外からの刺激に反応するモロー反射ですが、反応の大きさや頻度には個人差があります。そのため、「病気ではないか?」「発達に問題はないか?」と不安に感じることもあるでしょう。乳児健診でも確認してもらえますが、「モロー反射が全く見られない」「左右対称ではない」「生後7ヶ月以降も続いている」という場合は、専門医に相談しましょう。
モロー反射について理解していることで、赤ちゃんの健やかな発育を支えることができます。赤ちゃんのモロー反射で困ったときや悩んだときは、ぜひ参考にしてください。
プロフィール:神戸のどか(保育士ライター)
保育園で、0歳児から5歳児の子どもたちの保育を5年半担当してきました。
「一人ひとりの個性」や「主体性」を大切にする保育園での勤務経験を活かし、現在は保育士さんや子育て中のママやパパに向けて記事を執筆しています。
絵本や歌が大好きで、特に絵本の読み聞かせや手遊びが得意です。
参考サイト:
- 赤ちゃんが生きていくために必要な反射|こくぶんじマッサージ治療室
- てんかん情報センター|ウエスト症候群
- 一か月健診|一般社団法人大阪小児科医会
- クリグラー・ナジャー(Crigler-Najjar)症候群|小児慢性特定疾病情報センター
- 運動発達、精神発達について(4-2 乳幼児期前半の運動発達)|医療法人社団 山中たつる小児科
保育園で、0歳児から5歳児の子どもたちの保育を5年半担当してきました。
「一人ひとりの個性」や「主体性」を大切にする保育園での勤務経験を活かし、
現在は保育士さんや子育て中のママやパパに向けて記事を執筆しています。