母子生活支援施設とは?保育士が働く時のメリット・デメリットも解説

社会福祉や社会的養護などの知識がある保育士さんは、母子生活支援施設に興味がある方もいるのではないでしょうか?この記事では保育士資格で働ける母子生活支援施設の仕事やメリットについて解説します。
母子生活支援施設とは
母子生活支援施設は児童福祉法で定められた支援施設のひとつで、母子が一緒に暮らせる唯一の児童福祉施設です。公設公営・公設民営・民設民営の運営形態があり、全国に261箇所となっています。(平成23年10月/家庭福祉課調べ)
経済的な困窮やDV被害など様々な事情で子どもの養育が難しい母子を保護し、生活と自立をサポートすることを目的としています。
【児童福祉法(昭和22年法律第164号)】 第38条 母子生活支援施設は、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。 |
原則18歳未満の子どもと母が職員の援助とともに自立を目指す場ですが、最近ではDV被害者の保護施設としての役割も大きく、一時入所できる設備環境や心理面のケアも重視されています。
利用期間に関する法的な決まりはありませんが、多くの施設が2年または3年と定めており、課題を抱えたまま退所した母子のアフターケアも行っています。
母子生活支援施設を利用している人
母子支援施設は経済的に困窮している家庭だけでなく、DV被害者から一般的な地域のママまで多くの人が利用できる事業が展開されています。
- 生活に困窮している原則18歳未満の子どもと母(入居による自立支援)
- DV被害などからの保護を必要とする母子家庭(緊急一時保護・ショートステイ)
- 保育園に入所できない母子(保育サービス)
- 就労などの事情で親の帰宅が遅くなる子どもへの夕食提供と保護(トワイライトステイ)
- 生活や育児に悩む地域の母子(電話相談・地域交流など)
※施設によって実施内容に違いがあるので、就職を検討する際はよく調べておきましょう。
母子生活支援施設の入所理由
地域や施設の特性などによる違いもありますが、施設数がもっとも多い東京都の「母子生活支援施設の状況」によると、令和3年時点の入所理由は住宅困難が1位(約40%)、夫などの暴力が2位(約30%)、経済的困窮が3位(約10%)となっています。
※出典:令和6年 都内母子生活支援施設の現状「入所理由について」(東京都福祉局)
経済的な困窮や養育不安の背景には母子の障がいもあります。同調査では入居者のうち、母の38.8%、子どもの20.6%に何らかの精神的疾患や身体的障がいがあると報告されています。
また家族からの暴力は母が加害者のケースも3割程度あり、施設入居後も虐待がないか注意深く見守る必要があります。
母子生活支援施設の職員
母子支援生活施設は施設長・母子支援員・少年指導員・保育士(保育設備がある場合)・調理員・嘱託医の職員配置が義務付けられています。
さらに専門性の向上を目指す施設では、特に専門的な業務を行う職員も別途配置されます。
【基本の職員配置】
職種 | 人数 | 仕事内容 |
---|---|---|
施設長 | 1人 | 人事・労務のマネジメントや施設運営の責任者。自立支援の策定も行う 医師・社会福祉士・3年以上の母子支援生活施設勤務経験のいずれかに該当するか、同等以上の能力を都道府県知事に認められる人物 |
母子支援員 | 1人/10世帯未満 2人/20世帯未満 3人/20世帯以上 | 母子の自立支援計画に従って就労支援・育児相談・関係機関との調整を行う |
少年指導員 | 1人/20世帯未満 2人/20世帯以上 | 子どもの18歳までの自立を目指して生活習慣や学習の指導、人間関係の構築支援を行う(施設の事務員兼務) |
保育士 | 1人/30人 ※保育所設備がある場合 | 施設内保育などを通じて低年齢児を主に保育や子育て支援を行う |
嘱託医 | 1人 | 入居する母子の病気の予防や健康管理を担 |
調理員 | 1人以上 | 施設内保育がある厨房の調理スタッフ。母子に栄養バランスのとれた食事を提供する |
【特に専門的な業務を行う職員】
職種 | 人数 | 仕事内容 |
---|---|---|
心理療法担当職員 | 1人 ※10人以上に心理療法を行う場合 | 心理療法を必要とする母子のケアを行い心理的困難を改善する |
個別対応職員 | 人数規定なし | 虐待を受けた子どもへの1体1の対応や保護者への援助を行う |
特別生活指導員 | 人数規定なし | 心身の障がいや複雑な生活課題があるなど特に保後・指導が必要な母子の支援を行う |
基幹的職員 | 人数規定なし | スーパーバイザーとして職員へ指導を行い、専門性の向上や質を確保する。施設長が担う場合もある |
自立支援担当職員 | 人数規定なし | 退所前の進学や就職の自立支援および退所後のアフターケアを行う |
参考:
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)
児童福祉施設最低基準等の一部を改正する省令の概要(こども家庭庁)
都内母子生活支援施設の現状(東京都福祉局)
保育士資格が活かせる母子生活支援施設の仕事
保育士の資格や知識が活かせる母子生活支援施設の仕事は3つあります。それぞれの役割と特徴を詳しく解説します。
保育士
保育施設がある母子生活支援施設では、乳幼児30人あたり1人の保育士配置が定められています。
通常の認可保育施設を持っている母子生活支援施設の仕事は一般的な保育士と変わりませんが、保育スペースなど小規模の保育設備の場合は様々な年齢の子どもを同時に保育したり、保護者に代わって体調不良の子を担当するケースもあります。
【必要資格】
保育士免許
母子支援員
保育士資格の保有者は母子支援員にもなれます。施設長と策定した自立支援計画のもと、母子の生活や育児、仕事や健康、就職活動、精神的障がいのサポートなど、ケアが必要な物事のすべてに対して相談を受け、自立できるように支援します。
母子支援員の仕事は母の相談支援以外にも、小学生から18歳までの子どもの送迎や学習サポート、進路相談まで幅広いものです。関連する外部施設との連携なども担当します。
【必要資格】
- 保育士免許・社会福祉士・精神保健福祉士のいずれか
- 都道府県指定の児童福祉施設職員の養成校またはその他養成施設を卒業
- 高校卒業者もしくは通常課程12年の学校教育を修了後2年以上児童福祉での実務経験がある
- ※児童指導員任用資格があると望ましい
少年指導員(事務員兼務)
保育士は少年指導員としても活躍できます。母子指導員と必要な資格は同じですが、子どもをメインに担当し、事務員も兼ねるという違いがあります。
入所している子どもが18歳までに自立できるように、生活習慣や学習の指導、良好な人間関係が築けるようにサポートします。施設によっては地域の子どもたちに学童保育や夕食の提供などを行う場合もあります。
【必要資格】
- 保育士免許・社会福祉士・精神保健福祉士のいずれか
- 都道府県指定の児童福祉施設職員の養成校またはその他養成施設を卒業
- 高校卒業者もしくは通常課程12年の学校教育を修了後2年以上児童福祉での実務経験がある
※児童指導員任用資格があると望ましい
保育士が働くメリット
母子生活支援施設で働く保育士は、専門知識をフル活用できる環境や幅広い年齢の子どもや家庭まで関われることにメリットを感じているようです。
- 保育士資格の知識を本格的に活かせる
- 少年や母のサポートもできる
- 強いやりがいを感じられる
2022年の母子生活支援施設職員を対象にしたアンケート調査でも、やりがいを感じ、仕事を続けたいと考えている職員が多いことがわかります。
参考:大原社会問題研究所雑誌 武藤敦士著「母子生活支援施設職員の給与水準と待遇に関する諸課題」
※グラフは同資料を参考に編集部が作成
保育士が働くデメリット
母子生活支援施設で働く保育士のデメリットは、複雑な事情を抱える母子を支援する責任の重さや施設の社会的役割からくる勤務体制などがあげられています。
- 責任が重い
- 変則的な勤務シフトが多い
- 施設によって運営体制や設備などに差がある
夜勤のお母さんを持つ子どもの保育や深夜の保護対応に備えるため夜間や土日の勤務も多く、小規模保育施設では保育士が1人という職場もあります。
また、施設によって職員配置や設備の充実度に大きな差があるため、他の母子生活支援施設の保育士と同じ働き方ができるとは限りません。
母子生活支援施設の保育士の給与・待遇
令和7年3月現在の保育士資格が活かせる母子生活支援施設の職員の待遇は以下のようになっています。
※時期や地域、法改正などによって変動するため目安となります。
保育士の待遇 月給21〜27万円程度
母子生活支援施設の職員でも仕事内容が乳幼児の保育のみの場合、一般的な園の保育士の待遇と大きな違いはありません。
<正社員>
年2回賞与・昇給あり
交通費支給 社保完備 長期休暇あり 介護休暇あり 住宅手当あり 年間休日100日以上
母子支援員・少年指導員の待遇 月給21万円〜30万円程度
母子支援員や少年指導員の待遇は基本給に様々な手当が加算されて、高めの給与になる傾向があります。また休日取得や福利厚生もしっかりとしている施設が多いようです。
※母子支援員や少年指導員の求人は「保育士」として募集されているケースも多いので注意しましょう。
<正社員>
年2回賞与・昇給あり
交通費支給 資格手当 住宅手当 宿直・夜勤手当 時間外手当 行事手当 扶養手当 処遇改善手当 調整手当 社保完備 研修あり 長期休暇あり 介護休暇あり 年間休日100日以上
母子生活支援施設の求人はアドバイザーに聞くと安心
母子生活支援施設は施設によって事業内容や働き方が大きく違うため、転職を検討する場合は、業界に詳しいアドバイザーに相談すると安心です。待遇はもちろん、職場の雰囲気から設備、働いているスタッフの状況まで事前に確認できます。
母子の人生に関わる責任を思うと不安になるかも知れませんが、やりがいを持って働く専門家の職員と働くのは素晴らしい経験になるはずです。プロのアドバイスを聞いてふみだす勇気をもらいましょう。
まとめ
母子生活支援施設は母子が一緒に入所できる唯一の支援施設です。生活に困窮している母子からDV被害者、地域の母子まで利用できる事業を行っています。
保育士資格を持つ人は施設内の保育士や母子支援員、少年指導員として活躍できます。母子生活支援施設の仕事は重い責任が伴いますが、やりがいを持って働ける職場です。
待遇も比較的良好で、不安要素は転職アドバイザーに相談できます。キャリアアップのためにぜひ検討してみましょう。