保育士試験の実技で落ちる人は何が足りない?評価ポイントと対策とは

保育士試験の実技で落ちる人は何が足りない?評価ポイントと対策とは

保育士の実技試験の合格率は8割ともいわれますが、「何度も落ちた」という話も珍しくありません。しっかりできたはずなのに落ちるのはなぜでしょうか?今回は実技試験で落ちる理由と対策について解説します。

保育士の実技試験とは

保育士の実技試験は、筆記試験合格後に進む芸術表現の試験です。確実な答えがある筆記とは異なり、試験官の印象で採点されるため通知がくるまで合否の判断はできません。

音楽・造形・言語から2分野選び、30点以上確保する

実技試験は音楽・造形・言語の分野から2つ選び、50点満点中30点以上が合格です。令和7年度は下記のような概要になっています。

●音楽に関する技術
幼児に歌って聴かせることを想定して、2つの課題曲(両方)を弾き歌いする。
※ピアノもしくはギターで演奏する

●造形に関する技術
当日に示される保育の一場面を絵画で表現する。
※鉛筆・シャープペンシル・色鉛筆を使用する

●言語に関する技術
3歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定して、集中して聴けるお話を行う。
※指定されたお話を本や道具を使わずに話す

詳しくは全国保育士養成協議会の「実技試験概要」をご覧ください。

高い合格率でも落ちる可能性は十分にある

直近の保育士実技試験の合格率は公表されていませんが、保育士養成課程等検討会の過去の資料によると平成17年〜26年までの10年間の平均合格率は約8割でした。インターネットで情報収集できる今はさらに高いかも知れません。

一見、余裕に思える「8割合格」ですが「5人に1人落ちる」と考えると意識が変わります。

難関で知られる筆記試験をクリアした優秀者ばかりが揃う実技試験の実力差はごくわずかです。ほんの少しの差で落ちる試験だと緊張感を持って臨みましょう。

保育士の実技試験に落ちる理由

保育士の実技試験に落ちた人の中には「演奏も表現も完璧だったのに」という人もいます。「保育士の採用面談」とも言われる実技試験の評価は、課題の仕上がり以外の要素も重視されます。

表現力不足

ただ弾くだけの演奏、楽しさが伝わらない絵、飽きる話し方など、子どもたちが楽しめる表現ができていない実技は落ちてしまいます。例え試験でも子どもたちの喜びを考えることが大切です。

練習不足・練習しすぎ

実技試験の練習不足でのミスはもちろん、練習しすぎも落ちる原因になります。演奏や読み聞かせは繰り返しすぎると表現が単調になりがちです。適度なバランスを心がけましょう。

試験の途中であきらめた

さっきの課題で失敗したからと、次の課題に投げやりな気持ちで取り組むと絶対に合格できません。実技試験は2つの分野で合計30点取れば合格です。失敗しても次で取り返すつもりで頑張りましょう。

目の前に子どもがいる設定を忘れている

音楽と言語の試験は「幼児がいることを想定して」という条件があります。子どもへの配慮がない以下のような行動は減点対象です。実際に保育士になったつもりで実技を行いましょう。

  • 歌っている最中での演奏ストップ
  • 3歳児には分からない言葉が多いお話
  • 子どもたちの方をまるで見ない、笑顔がない  など

試験内容を把握していない

実技試験の課題は細かいルールや条件が指定されています。間違った演奏方法や持ち込み禁止の道具の使用などに注意しましょう。

【見落としやすい注意事項の例】

  • 添付楽譜に示された部分のみ弾き歌いすること。
  • 解答用紙の大きさはA4判だが、絵を描く枠の大きさは縦横19㎝とする。
  • お話の内容をイメージできるよう、適切な身ぶり・手ぶりを加える。

社会人としてのマナーが未熟

「表現も技術もルールの把握も完璧だったのに落ちた」という人は社会人として何か不適切なミスがあったのかも知れません。

実技試験の合格は「この人は保育士にふさわしい」と試験官が認め、社会に出すということです。

いくら実技が素晴らしくても「子どもたちを任せる人物としては今一歩足りない」と判断されると不合格になります。

【音楽】実技試験の評価ポイントと対策

音楽分野の実技試験で評価されるポイントと対策方法を見ていきましょう。

音楽分野の評価ポイント

音楽試験の課題と概要は下記のようになっています。

幼児に歌って聴かせることを想定して、2つの課題曲(両方)を弾き歌いする。
求められる力:保育士として必要な歌、伴奏の技術、リズムなど、総合的に豊かな表現ができること。
出典:実技試験(前期)概要(保育士養成協議会)

音楽は「子どもたちが楽しく歌える、正しい演奏と唱歌ができるか」が重要です。

  • 間違えても笑顔で、最後まで弾けるか
  • 伴奏の音と声の大きさのバランスは取れているか
  • 子どものお手本となる歌と演奏か
  • 一緒に歌うイメージを持ってしっかりと歌えるか

本当に子どもたちが歌っていたら、大きな声で歌わないと聞こえませんよね。途中で演奏を止めたら歌っていた子どもたちは残念な気持ちになります。元気にニコニコと、何事にも動じない保育士として弾ききりましょう。

歌と伴奏は必ずセットです。また歌と同じ旋律だけ弾いて歌うのは評価対象外になります。

音楽分野の対策

子どもたちを楽しませる演奏をするには下記のポイントを意識して練習しましょう。

  • 初級者向けの簡単な曲を選ぶ
  • 知っている曲でも必ず楽譜で練習する
  • 動画で正確なリズムをつかむ
  • 発声練習と笑顔の練習もする
  • 自分の演奏を録音して客観的な目で確認する

保育士の演奏では難しい技術を披露するよりも、子どもたちに伝わりやすい演奏をすることが大切です。また、緊張する場でも笑顔と声を出せるように訓練しておきましょう。

【造形】実技試験の評価ポイントと対策

次に造形試験での評価ポイントと対策を見てみましょう。

造形分野の評価ポイント

造形試験の音楽試験の課題と概要は下記のようになっています。試験当日に出されるテーマに沿って保育のイラストを描く試験です。

保育の一場面を絵画で表現する。
求められる力:保育の状況をイメージした造形表現(情景・人物の描写や色使いなど)ができること。
出典:実技試験(前期)概要(保育士養成協議会)

以下のような点を評価されるようです。

  • テーマや条件にあった内容になっているか
  • 試験時間の45分以内に仕上げられるか
  • 色やレイアウトのバランスが取れているか
  • 書き直しの跡がキレイに処理されているか
  • 子どもたちが親しみをもてる豊かな絵に仕上がっているか

造形の試験はルールが多いので概要をしっかり確認しましょう。
・クレヨン・パス・マーカーペン等の使用は不可
・人物の形をしたイラスト入りのものは机に置けない
 ※筆記用具や筆箱、色鉛筆のケースのデザインに注意しましょう。
・解答用紙の大きさはA4判だが、絵を描く枠の大きさは縦横19㎝ など

造形分野の対策

音楽や言語よりも個人的な感覚が左右される要素が多いので、これまでの合格作品などを探して傾向を学ぶことから始めます。色使いや構図は絵本も参考になります。

  • これまでの合格作品を見て傾向を確認する
  • 過去の色々なテーマを45分で描けるようにする
  • 子どもや保育士の描き分けをする
     (男児女児の違い、髪型や服装、保育士と子ども、表情や動きなど)
  • 子どが魅力を感じる絵にする
     (強弱のある色使い、楽しそうな顔、保育室やおもちゃ、背景の工夫など)
  • 隅々までキレイに仕上げる
  • 他の人(できれば保育士)に見せて客観的な意見を聞く

【言語】実技試験の評価ポイントと対策

最後に言語分野の試験のポイントを見ていきます。

言語分野の評価ポイント

言語分野の試験は事前に提示された物語の流れを暗記して、子どもが楽しんで聞ける形にアレンジして試験官の前で話します。3つ提示された物語のうち当日に一つだけ指定されます。

3歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定して、子どもが集中して聴けるようなお話を行う。
1~3の課題のうち、指定されたお話を話すこと。求められる力:保育士として必要な基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方ができること。
出典:実技試験(前期)概要(保育士養成協議会)

評価されるポイントは以下のようなものです。

  • 話の流れを無理なく3分にまとめられているか
  • 目の前に15人の子どもがいる想定で話せているか
     (笑顔・声の大きさ・顔の向きなど)
  • 3歳の子どもに面白さや驚きが伝わる表現ができているか
  • イメージしやすい身振り・手振りが加えられているか

・絵本や人形などの持ち込みは禁止
・身振り手振りは必須
・時間はタイマー係が計るので時計を見ないように注意

言語分野の対策

  • 3歳児が分かる言葉で3分で話せるようにアレンジする
  • 話が頭に入ったら盛り上げる工夫を考える
     (身振り手振り、声の強弱、表情の変化・息を吸うタイミングなど)
  • 録音や動画をとって客観的に仕上がりを確認する
  • 子どもに実際に聞いてもらって反応をみる
  • 試験中は15人の子どもの顔を見るように見渡しながら話す
  • 時間が余っても時間終了まで笑顔で耐える

保育士試験の実技科目の選び方

音楽・造形・言語の3分野から2つ選ぶときは下記のポイントを参考にしましょう。

  • 得意なことにつながりがある分野
  • 楽しんで練習できる
  • 特に苦手な分野を消去する

実技表現にはその人の気持ちが表れます。自信を持てることや興味があることを優先して選ぶと練習がはかどって有利になるはずです。苦手なジャンルは仕上げるまでに苦労したり、顔に出てしまうのでなるべく避けた方が賢明です。

実技で落ちるのが怖い人は地域限定保育士もおすすめ

地域限定保育士の試験は、実施する自治体によっては実技試験が免除になります。

指定の保育実技講習を受講することが条件になりますが、実技試験を受けずに保育士になれるので実技が不安な人にはおすすめです。

通常の保育士試験で合格した筆記科目は受験免除になるので、これまでの勉強も無駄にならず、資格登録から3年後には通常の保育士として全国で働けるようになります。

地域限定保育士試験を実施する時期や自治体は毎年変わるので、気になる方は全国保育士養成協議会や自治体の地域限定保育士の試験情報を確認しましょう。

【詳しくはこちら】
地域限定保育士とは?通常資格との違いやメリット・デメリットを解説

まとめ

保育士の実技試験で落ちる人は、実力不足・ルール違反・保育士として不十分に見えたなどの理由が考えられます。実技の合格者は保育士として社会に出る人材のため技術だけでなく、規定の遵守や社会人マナーなども見られています。

試験評価では子どもの視点も重視されます。音楽なら子どもの歌いやすさ、造形なら子どもの興味をひく色使い、言語なら3歳児が楽しめるかなどを意識するのがポイントです。

客観的な判断が必要な試験なので練習や対策は動画撮影や録音、他の人の意見などを活用しましょう。実技試験が苦手な人は、実技が免除になる地域限定保育士試験もおすすめです。

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