文:塚田萌(保育士ママライター)

さまざまな場面で「乳幼児」という言葉を聞く機会があると思いますが、乳幼児は月齢何ヶ月頃までの子どもを指すのでしょうか。また、電車や飛行機、医療制度などによって、それぞれ子どもの年齢区分はどのように異なるのでしょうか。

今回は、さまざまな観点から「乳幼児」は何歳までを指すのかを解説します。保育園や幼稚園での区分も併せて紹介しますので、参考にしてください。

乳幼児は何歳から何歳まで?

乳幼児は、「乳児」と「幼児」の総称です。乳幼児といってもさまざまな年齢の定義がありますが、まずは、児童福祉法における乳児・幼児の定義を見てみましょう。

児童福祉法での「乳児」の定義

児童福祉法では、乳児は「満1歳に満たない者」と定義されています。
つまり、児童福祉法では、誕生から1歳の誕生日を迎えるまでの赤ちゃんは(0歳の間)は「乳児」と呼ぶということです。

この時期の赤ちゃんは、母乳やミルクから栄養を摂るので「乳児」といわれています。

乳児の成長には目を見張るものがあります。生まれたての「赤ちゃん」から、首が据わって寝返りをするようになり、伝い歩きをし始めるでしょう。離乳食を食べ始めるのも乳児の頃です。簡単な言葉を話し始める子どももいます。

児童福祉法での「幼児」の定義

一方、幼児は児童福祉法で「満1歳から、小学校就学の始期に達する者」と定義されています。1歳の誕生日を迎えてから、小学校入学までが「幼児」ということです。
なお、小学校に入学すると、幼児から「少年」に呼び方が変わります。

幼児になると、離乳の開始や排せつの自立など、子どもは大きく成長します。子どもの成長は保育士や保護者にとって楽しみですが、子どもの成長段階は子どもによって大きく異なる点は理解しておきましょう。

乳児と幼児という年齢での区分だけでなく、個々の子どもの発達段階や、年齢ごとにおおよそ予想される心身の発達目安に照らし合わせて、一人ひとりの子どもの個性を尊重しながら成長を把握する必要があるのです。

赤ちゃんはいつまでを指す?

児童福祉法で「乳幼児」の定義が定められている一方で、「赤ちゃん」という呼び方は専門用語ではありません。広辞苑では「赤ちゃん」は「生まれて間もない子ども」と定義されていますが、明確に「何歳まで」とは決まっていないのです。

なお、出生から28日経っていない赤ちゃんは「新生児」と呼ばれます。

一般的にミルクや母乳が必要なくなるのは1歳前後といわれており、これを「離乳」と呼びます。離乳までの期間を「赤ちゃん」ととらえることもできるでしょう。

さまざまなシーンにおける「乳幼児」の区分

行政の医療福祉サービスを受けたり、電車やバス乗り物に乗ったりする際にも「乳幼児」という区分が使われることがあります。ここでは代表的な例を紹介しましょう。

医療における「乳幼児」は何歳まで?

多くの自治体では、小学校就学前の子ども(乳幼児)に対して、「乳幼児医療証(マル乳医療証)」を発行し、子どもの医療費にかかる保護者の負担を軽減しています。医療費が無料になる場合や少額になる制度が実施されているため、詳しくはお住まいの自治体のホームページを確認してください。

助成内容や、保護者の負担割合は自治体によって異なりますが、厚生労働省の調査によると、国内すべての都道府県および市区町村が、乳幼児などに対してなんらかの医療費の援助を実施していることがわかります。

子どもを扶養している、主な生計費を担っている家族が高所得の場合、助成を取りやめている自治体もありましたが、昨今、子育て家庭への支援格差が活発に議論され、所得に関わらず助成を受けられる自治体も増えてきています。

電車・バス・飛行機では「乳幼児」の区分はない

電車やバスなどの公共交通機関においては、基本的に「乳幼児」の区分は使用されていませんが、旅客および荷物運送規則第九条では次のとおりに子どもの区分が定められています。

  • 乳児 1歳未満
  • 幼児 1歳から6歳未満
  • 小児 6歳から12歳未満

電車やバスでは基本的に乳幼児の運賃は発生せず、小児のみ小児料金が発生します。そのため乳児、幼児、小児の区分が分かれており、運賃が発生する時期を明確に示しているのです。

ちなみに、乳幼児であっても特急の座席を利用する場合などは利用料金がかかります。
交通機関の運営元の会社によって、小児が大人の半額だったり、独自の小児料金が定められていたりするため、利用する交通機関のホームページで確認しておくとスムーズに利用できるでしょう。

飛行機の国内線の場合、3歳から子ども料金がかかります。また、3歳未満であっても座席が必要な場合は料金が発生します。

保育園における乳児・幼児は何歳まで?

保育園では、児童福祉法とは異なり、一般的に0,1,2歳クラスを「乳児」、3歳以上を「幼児」ととらえています。

保育園では、0歳から5歳まで年齢別のクラスに分かれている場合や、3歳以上の「幼児」を「幼児クラス」としてまとめている場合など、園の方針によってさまざまなクラス割りが採用されています。

どのようなクラス割りであっても、基本的には食事の介助やトイレの援助、子ども一人ひとりに対する関わり方の違いから、乳児と幼児が区分されています。

3歳以上を幼児クラスとして区分している理由としては、概ね3歳以上から「トイレに自主的に行ける」「1人で食事ができる」など、保育士のサポートが必要な場面が減るためです。

保育園で定められている子どもの年齢と配置基準

保育園では、乳児クラスと幼児クラスにおける保育士の配置基準も異なっています。保育園での保育士対子どもの人数配置基準は次のとおりです.

  • 0歳児 子ども3名に対して、保育士1名
  • 1,2歳児 子ども6名に対して、保育士1名
  • 3歳児 子ども20名に対して、保育士1名
  • 4歳児以上 子ども30名に対して、保育士1名

この配置基準は必要最低人数として定められていますが、昭和23年に定められてから基準が変わっていないことが、保育士への大きな負担となっていることが指摘されています。

近年は、子どもたちの個性を尊重し、一人ひとりに合わせてサポートする保育へと変わっているため、上記の配置基準を変えようとする動きも出てきています。

保育園における「乳児」と「幼児」の違い

保育園で一般的に認識されている「乳児」(0,1,2歳児クラス)では、ミルクの調乳やミルクを飲む量の管理、離乳の進め方などが、幼児一人ひとりによって異なることに加えて、安全管理などの観点から、幼児クラスよりも保育士を多く配置する必要があります。

また、幼児クラス(3歳頃から)において自立した生活習慣を身につけていくためにも、2歳までは保育士が手厚くサポートして、子ども一人ひとりの育ちを促す必要があると考えられています。

家庭でも保護者が「着替え」や「トイレ」のトレーニングをおこなっている場合がありますが、一般的に1日のうち8時間ほどを保育園で過ごす子どもたちにとっては、保育園でおこなわれる生活習慣のサポートは、大きく影響するのです。

一方、幼児(3歳頃~)になると、概ね自立して食事や排せつをおこなえることや、子ども同士の関わりがより活発になり、乳児と比較して大人のサポートの必要性が少なくなります。

幼稚園は一般的に「幼児」のみ

幼稚園に入園できるのは、基本的に満3歳からです。つまり、児童福祉法の定義では、幼稚園に入園する子どもは全員「幼児」となります。

幼稚園の年少クラスは、3歳から4歳になる年齢の子どもが該当します。満3歳になった時点で幼稚園に入園できるとは限らず、園の体制によって入園できるタイミングが異なるため、入園を検討している場合は園に問い合わせてみましょう。

なお、幼稚園は教育をおこなう「学校」であり、「児童の預かりと養護」を基本とする保育園とは役割が異なります。

「3歳未満児」のクラスを設ける幼稚園も増えている

基本的に登園からお昼過ぎまでの時間に子どもへ教育をおこなっている幼稚園ですが、働く保護者の増加や、育児をサポートする祖父母や親せきの不在など、昨今の家庭環境の変化もあり、体制が多様化しています。

地域や保護者からの要望があれば、教育時間が終わったあとの預かり保育や、長期休暇期間の預かり保育を実施する幼稚園が増えています。

また、幼稚園に入園する1年前からお試しで通う「プレ幼稚園」や「未就学児クラス」を実施するケースもあります。
プレ幼稚園は「親子で参加する園」や「子どもだけで活動する園」など、実施形式も多様化しているため、幼稚園教育に興味がある方は園に問い合わせてみましょう。

幼児教育の無償化について

保育園と幼稚園では保育料の算出方法が異なります。幼稚園では満3歳になった時点から利用料は無償になります。

例えば、4月生まれの子どもを入園させ、無事3歳を迎えた場合、幼稚園であればその時点で無償化の対象になりますが、保育園では翌年の4月に3歳児クラスへ上がるまでは保育料がかかります。

子どもの預け先を保育園にするか幼稚園にするか迷ったら、施設としての違いも参考にするとよいでしょう。

乳幼児がいつまでかを正しく理解しておこう

乳幼児が月齢何ヶ月頃までを指すのかは、児童福祉法の定義が一般的です。しかし、子どもの年齢区分に関しては、適用される環境によって異なる場合も多いのです。

乳幼児について、環境によって異なる考え方を理解するには保護者の方や先生のリサーチ力や経験が必要です。

一般的な区分を理解しながら、他の考え方も学んでおき、臨機応変に考えられるとよいでしょう。

参考:

塚田萌(保育士ママライター)
学童クラブや保育園で子どもと8年にわたり関わる。2児の母。
現在は子育てをしながらWebライターや編集の仕事をしている。
自身の経験を踏まえて子どもの遊びや発達、お出かけ情報をWebメディアやブログで発信中。
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