保育職向けの転職エージェントサービス『マイナビ保育士』は「保育職に関する調査」の結果を発表しました。物価高騰・円安などの社会情勢により、保育者は金銭的な不安を感じており、園ではコストカットが進み園児も影響を受けているようです。(ほいくらし編集部)
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)が運営する保育職向けの転職エージェントサービス『マイナビ保育士』は、2022年以前から現在の勤め先で同じ職種で働いている保育職(保育士・幼稚園教諭)と一般会社員を対象に初めて実施した、「保育職に関する調査」の結果を発表しました。
【調査概要】
8割の保育職が円安や物価高騰により業務に「影響があった」と回答。人件費削減での職員不足や、事務用品を自分で用意するなど金銭面の負担も
保育職に昨今の円安や物価高騰による業務への影響をきくと、8割の保育士が「影響があった」と回答した。影響があったと感じる部分は「適切な人員配置がされず業務過多」(40.7%)が最多、次いで「園内の節電」(36.3%)となり、円安や物価高騰により人件費や光熱費のコストカットが行われていることがわかる。
また、影響があった具体的な内容をきくと、人件費の削減や節電などのコストカットだけでなく、「事務用品を自分で用意しなければならない」「同じ食材を使った給食メニューが増えた」など、金銭的にも保育職に負担がかかっていることや、園児たちも影響を受けている様子がうかがえる。【図1、2】
8割以上の保育職が現在の生活に「金銭的な不安を感じる」と回答。「日用品」や「食費」を節約する保育士が半数以上
保育職として働く人に、自分の働きに見合うと思う年収額をきくと、平均524万円で、実際の年収額の平均374万円と、150万円の差があることが分かった。一般会社員では自分の働きに見合うと思う年収額は平均573万円だったのに対し、実際の年収額は平均484万円で、その差は-89万円となり、保育職のほうが自分の働きに年収が見合っていないと感じていることが分かった。【図3】
また、今の生活に金銭的な不安を感じるかをきくと、82.3%の保育職が金銭的な不安を「感じる」(「感じる(37.3%)」+「少し感じる(45.0%)」)と回答した。さらに普段の生活で84.0%の保育職が「節約している」と回答し、節約しているものをきくと「日用品(53.0%)」、「食費(53.0%)」が最多となった。【図4、5】
自分の働きに見合うと思う年収と現実の差だけでなく、それによる金銭的な不安も大きく、結果的に日用品や食費など生活するうえで最低限必要のものから節約をしている傾向であることがわかる。
保育職の77.0%が現在の仕事に充実感・やりがいを「感じている」と回答。7割以上の保育職が「今後も同じ職種で働きたい」
保育職に、現在の仕事に充実感ややりがいを感じているかをきくと、77.0%が「感じている」と回答した。一般会社員(47.0%)と比べると30pt以上高く、大きく差が出る結果となった。
また、保育職に現在の仕事を今後も続けたいかきくと、75.7%が今後も「同じ職種で働きたい」(「現在の勤め先で同じ職種の仕事を続けたい(52.9%)」+「別の勤め先で同じ職種で転職したい(22.8%)」)と回答した。保育職は賃金に対する不満・不安や、肉体的・金銭的な負担を抱える一方で、仕事にやりがいを感じている人が多く、今後も保育職を続けたい意向を示す人が多い結果となった。【図6、7】
調査担当者コメント
今回の調査で、昨今の物価高騰の影響が保育の現場にも及んでいることが分かりました。給食の量が減り安い食材が多く使われる、おもちゃや教材の購入が厳しくなるなど、物価高騰が子供たちの園での生活にも影響を与えています。また、今年は連続的に猛暑日を記録した地域も多くあったなか、プール・水遊びの回数を減らす、エアコンの設定温度を制限するといった声もありました。園は子供たちの健康を守る必要があり、学び・遊びの機会を奪うことは避けなければなりません。物価高騰・円安などの社会情勢に関わらず、保育や教育の内容に悪い変化が起こらないような取り組みを社会全体で考えていくことが必要です。また、今回の調査で保育職は仕事にやりがいを感じながらも、現在の給与に満足していないことも明らかになりました。そのような中で、施設の出費を抑えるために事務用品などを自腹で購入する保育職もいるようです。現在政府が掲げている保育職の待遇改善の今後の進展に期待します。