子育て世代が注目する旅育とは?|家族旅行を通じて主体性&感受性を育もう

子育て世代が注目する旅育とは?|家族旅行を通じて主体性&感受性を育もう

文: 山本あやか(保育士ライター)

「単純に家族で旅行を楽しむ」のではなく、「さまざまな体験を通じて、子どもの育ちや学びを刺激する家族旅行」が注目されています。こうしたスタイルは「旅育(たびいく)」と呼ばれており、近年は旅育をテーマにした旅行プログラムも増えているんですよ。

そこでこの記事では、旅育が子どもに与える影響や、旅育を成功させるポイントについて解説していきます。家族旅行を子どもの健やかな成長につなげられるよう、ぜひ参考にしてくださいね。

コメントで
\旅育を教えてくれた先生/

アルバアレルギークリニック 院長
続木 康伸先生

札幌で新生児からシニアまで治療する、アルバアレルギークリニックの院長。15歳の男の子と、13歳、4歳の女の子の3児の父。子どもたちを毎年様々な国に最低2週間連れて行き、旅育を兼ねたプログラムを実施している。 学研「保湿をかえればアトピーは治せる」著者。日本テレビ系「カズレーザーと学ぶ。」、東京MX「医史」出演。

旅育とは?

旅育について、もう少し説明しておきましょう。旅育というのは、旅行をしながら多くの知識を学んだり、子どもの心身の育ちを促したりする旅行のこと。家族旅行といえば、大人の興味に合わせて有名な観光地をめぐったり、子どもが好きなテーマパークで遊んだりする光景をイメージする人も多いと思いますが、そうした旅とは少し意味合いが違います。

ここ数年は「せっかく家族で旅行をするなら子どもの学びにつなげたい」「旅行を通して多くの価値観に触れて多様性を持ってほしい」など、旅と育児を重ねて考える人が増えており、そうした思いから生まれたのが旅育なのです。

旅育が注目されるようになった背景には、新型コロナウイルスの影響もあります。自粛期間が長かったことで、外遊びはもちろん各種行事や野外学習などの機会がなくなり、子どもの情操教育の機会が一時的に激減してしまいました。そうした状況を補うため、家族旅行を子どもの心身の成長につなげようとする旅育に注目が集まっているのです。 また、昨今は情報の大半がスマホやPCを通じて送られてくることから、“本物の体験”を求める傾向が高まっています。そうした点も、旅育需要を高めている要因でしょう。

旅育が子どもに与える10の影響

旅育は、家族で一緒に旅をするだけでなく、子どもの五感に働きかける「体験」を重視します。そして、体験を重視した旅は、子どもの成長に大きな影響を与えます。ここからは、旅育が子どもに与える10の影響をご紹介しましょう。

計画性

目的地までの距離や交通手段を調べたり、旅先での活動や宿泊先を決めたり……。旅行を充実させるには、綿密な計画が欠かせません。そして、そうした段階から子どもを参加させることで、高い計画性が身につきます。見通しを持って行動したり、段取りよく時間を管理したりできるスキルは、大人になっても必要とされるため、早い段階から意識しておくことが大切です。

主体性

子どもを中心にして、「次の旅行はどこに行くか」「どのような体験をするか」などを話し合うことで、主体性が育まれます。自分が中心になって計画を進めれば、旅行へのモチベーションも高まるでしょう。また、主体的に取り組んだ旅行が充実したものになれば、大きな自信にもつながります。

地理力

国内・海外を問わず、旅行は地理に詳しくなる絶好の機会でもあります。実際に飛行機や電車に乗って移動することで、目的地までの距離や自分が住んでいる地域との違いを肌で感じられるでしょう。旅行先を学校の地理学習とリンクさせることで、より学びを深められるので、ぜひ試してみてください。

歴史力

教科書でしか学べない歴史を現地で知れば、忘れることのない知識として深く刻まれることでしょう。地理と同じく、授業で学んでいる歴史と関係の深い場所を旅することで、より高い効果が得られます。

感受性

いままで見たことのないものを見たり、触れたことのないものに触れたりする体験は、子どもにとって非常に感動的な出来事です。行ったことのない場所を訪れ、さまざまな人や物事、自然に触れることで、子どもたちの感受性はより豊かになるでしょう。

興味・関心

いつもの通学路や見慣れた教室、決まった習い事、よく知った仲間たちとのやりとり……。旅行はそんな日常から離れ、多くの刺激が得られるよい機会です。さまざまな価値観に触れることで、子どもの興味・関心や世界観が広がるでしょう。

コミュニケーション能力

知らない場所で、知らない人とコミュニケーションを図る経験は、日常ではなかなかできないもの。旅先でさまざまな人と出会い、触れ合うことで、コミュニケーション能力が養えます。また、きれいなものを見たり、感動的な体験をしたりすると、いつも以上に家族の会話もはずむはずです。

異文化交流

生まれ育った環境や価値観の違う人と交流する機会は、そう多くはありません。異文化交流は、多様性を学び自分自身を見つめるとてもよい機会なので、旅先では大人が手本となって積極的な交流を促しましょう。

家族の絆

「共働きなので、普段子どもとのコミュニケーションを取る時間が少ない」という家族にとって、家族旅行は絆を深める貴重な時間です。感動的な体験を共有したり、ちょっとしたトラブルを乗り越えたりすることは、家族の団結力を高めるきっかけになるでしょう。

自学力

子どもはとても好奇心旺盛なので、新しいものを見たり、聞いたりすることで「もっと詳しく知りたい」という気持ちが高まります。そのため、旅先での体験が帰宅してからの学習意欲につながり、「自学(自分で調べ学ぶ)力」が育まれます。

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アルバアレルギー
クリニック 院長
続木 康伸
(医師・歯科医師)
\旅育が子どもに与える影響とは?/
旅育の本質は、現地の生活を体験し、異なる文化に触れることです。まずやってみることで、自分と他人は違うのだと理解力を備えることです。うちの子どもたちは毎年、さまざまな国に最低2週間連れて行き、宿泊はAirbnb、そして現地の人々とできるだけ同じ生活をするようにしています。

旅育に適した子どもの年齢は?

旅育は、言葉が話せるようになる幼児期から、学びが盛んになる学童期に実践するのがおすすめです。とはいえ、「その年代でなければダメ」ということではありません。旅育はどの年代の子どもにもメリットがあります。

年齢メリットポイント
乳児期(0~2歳)・五感を刺激できる
・語彙力が増える
・いましか撮れない思い出を残せる
・ゆとりを持った計画
・自然に触れる
・旅行代を抑えられる
幼児期(3~5歳)・興味や関心を広げられる
・自己肯定感が高まる
・感受性が豊かになる
・ゆとりを持った計画
・動物園や水族館など
・見て触れる体験を重視
低学年(6~9歳)・計画性や主体性が身につく
・コミュニケーション能力を養う
・価値観が広がる
・子どもの意見を採用する
・計画から参加させる
・主体的に取り組む体験
高学年(10~12歳)・異文化交流を楽しめる
・地理や歴史に詳しくなる
・自分で学ぶ力が身につく
・役割を与える
・学校の授業と連携する
・生活や環境に目を向ける
中学生(13~15歳)・家族の絆が深まる
・非日常を楽しめる
・精神の安定性が高まる
・子どもに決めてもらう
・学校の授業と連携する
・非日常を意識する
高校生(16~18歳)・社会性や思いやりの心を培う
・家族の団結力が高まる
・視野が広がる
・旅の仲間として接する
・いましかできないことを大切に
・大人も一緒に学ぶ
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アルバアレルギー
クリニック 院長
続木 康伸
(医師・歯科医師)
\どの世代の子どもにも旅育の効果が期待できる?/
子どもたちは観光客としてではなく、現地の一員として文化を体験する機会を得るように親がセッティングしてあげることも大事です。
それぞれの年代で感じることが違うので、これが価値観を変え、異文化への理解を深める重要な要素と信じています。なので、旅育を始めるのにどの年齢でも関係はないと思っています。

旅育を成功させる「子ども目線」のポイント

旅育のポイントは「子ども目線を大事にすること」です。大人の行きたいところや、大人のテンポに合わせてしまうと、子どもの学びが浅くなってしまう可能性があります。

ここからは、旅育を成功させる6つのポイントをご紹介しましょう。

家族と一緒に計画する

「旅育で子どもを成長させたい」という思いから、大人目線でプランを考えてしまうと主体性が育ちません。家族旅行はみんなで楽しむものなので、子どもと一緒になって計画を練りましょう。子どもの意見に耳を傾けることで、いままで気づかなかったような新しい発見があるかもしれませんよ。

子どもの関心に合った旅先を選ぶ

「どこに行く」「何をする」など、子どもと相談しながら、興味・関心に沿った旅先を選ぶことも旅育を成功させる大切なポイントです。子どもが自己表現しやすい環境を作ったうえで、活発に意見を出し合いましょう。希望や提案を受け入れることは、子どもの自己肯定感を高めることにもつながります。

ゆとりを持ったスケジュールを組む

旅行にトラブルはつきものです。とくに子どもが小さいうちは、何かとバタバタしてしまうので、旅育ではゆとりを持った計画を立てるのがおすすめです。無理のない計画を立てれば、家族同士で会話をする機会も増えますよ。もし、トラブルが起きてしまっても、「ピンチはチャンス、学びに変えてしまおう」ぐらいの気持ちで、あわてずに対処してください。

本物の体験を意識する

普段、テレビや本で見ているだけの場所や体験を、実際に楽しめるのが旅行のよいところです。収穫体験で自然に触れたり、教科書で見た建造物を実際に見学したり……。そのような体験を繰り返すうちに、「興味がわいたら自分で探求してみる」という気持ちが育つはずです。

非日常を楽しめるようにする

旅行の醍醐味は、非日常を楽しむこと。普段、持っているゲームやタブレットは、自宅に置いたまま出掛けてみてはどうでしょう。「手持ちぶさたになるのでは?」と思うかもしれませんが、そうした時間に物事をじっくり観察したり、他人の話に耳を傾けたりすることが、子ども成長につながります。また、旅育では旅の思い出を記録に残すことも大切です。旅行後に記録を見返すことで自己肯定感が高まりますよ。

子どもに役割を与える

切符を購入する、受付をする、道に迷ったときに誰かに聞くなど、旅行中は子どもに役割を与えてみましょう。そうした役割が責任感につながり、普段の生活とは異なった視点で物事を見られるようになります。

【国内】旅育のすすめ

旅育で国内を選ぶメリットは、なんといっても手軽なこと。近年では、旅育をテーマにしたツアーも数多く企画されています。どの季節に旅行をしても、以下のように見どころがたくさんあるほか、四季それぞれの自然を感じられるのも国内旅行のよさですよね。

  • 動物園
  • 水族館
  • 博物館
  • 科学館
  • 美術館
  • 国宝・重要文化財
  • 農業体験
  • 工場見学

授業で学んでいることに沿った旅先を選ぶと、子どもの学びをより深められます。また、海や山に宿泊し、自然のなかで生きる力を育てるのもおすすめです。

【海外】旅育のすすめ

子ども連れで海外旅行となると、ややハードルが高いと感じてしまう人も多いでしょう。しかし、旅育と海外はとても相性がよく、得られる効果もたくさんあります。

  • 異文化交流により視野が広がる
  • 新しい刺激を受けて価値観が変わる
  • 英語など語学に興味を持つ
  • コミュニケーション能力が高まる
  • 生まれ育った日本のよさに気づく

「本格的な海外旅行は不安」という人は、クルーズ旅を選んでみてはどうでしょう。近年では、手頃でカジュアルなプランも多く、小さな子どもがいる家族連れの旅育にぴったりですよ。

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まとめ

旅行という特別な体験を通して、子どもの好奇心を刺激する「旅育」。ここに紹介したように、旅育は子どもの成長を促すさまざまな効果が期待できます。より成長や学びを促せるよう、五感を刺激できる体験を選んだり、子ども主体の旅行を意識したりしたいですね。

保育ライター
保育士・幼稚園教諭資格を持つ2児の母。保育士歴10年、現在はライターとして活動中。
保育士経験を活かし、季節の行事に家族で手作りの飾りつけを楽しむのが趣味。
Instagram:https://www.instagram.com/hoik_aya___/
アルバアレルギークリニック 院長
札幌で新生児からシニアまで治療する、アルバアレルギークリニックの院長。
15歳の男の子と、13歳、4歳の女の子の3児の父。
子どもたちを毎年様々な国に最低2週間連れて行き、旅育を兼ねたプログラムを実施している。
学研「保湿をかえればアトピーは治せる」著者。日本テレビ系「カズレーザーと学ぶ。」、東京MX「医史」出演。
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