子どもが爪を噛む姿を見て「なにかストレスを感じているのでは? 」「爪がボロボロになるから早くやめさせたい」と思っている保護者も多いはず。爪を噛む癖は3人に1人あるといわれており、そう珍しいことではありません。しかし、さまざまなリスクを考えて早期にやめさせてあげたいですよね。この記事では、爪噛みの原因ややめさせる方法を詳しく解説していきます。

爪を噛む癖とは? 

爪を噛む癖は、正式には「咬爪癖(こうそうへき)」「咬爪症(こうそうしょう)」と呼ばれるものです。2~3歳ごろから見られ、学童期に多くなるという特徴があります。

武庫川女子大学経営学部と株式会社「イロドリ」がおこなった、爪噛み癖に関する共同調査によると、爪噛みは3人に1人に見られる癖とのこと。さらに、10人に1人は成人するまで癖が続いているという結果があります。

ただの癖とあなどることなかれ、歯で爪を噛むことで見栄えが悪くなるだけでなく感染症などのリスクも大きくなってしまいます。子どもは爪が伸びてもすぐにまた噛んでしまい、深爪になってしまうことも多くあります。

※参考:武庫川女子大学経営学部と株式会社「イロドリ」の爪噛み癖に関する共同調査結果

なぜ? 子どもが爪を噛む心理

爪を噛む理由のひとつは「ただなんとなく」です。指吸いからなんとなく爪を噛み始めたり、割れた爪を噛み切ったことをきっかけに噛んで処理することが日常化してしまったり…。そのほか、考えられる理由を見ていきましょう。

愛情不足

指吸いと同じく、爪噛みの原因として指摘されるのが愛情不足です。寂しさや不安を紛らわせるために指を口元にもっていき、そこに爪があるから噛んでしまいます。目に見えないからこそ、対策が難しいものといえるでしょう。

ストレス

入園・入学で周囲の環境が変わったり、兄弟の誕生や引っ越しなどで居住環境が心地よくなくなったり、子どもにかかるストレスはさまざま。そのような状況下でも安心して過ごすために、爪を噛んでいる可能性も少なくありません。

手持ち無沙汰

ちょっとした待ち時間など手持ち無沙汰なときに、刺激が欲しくて爪を噛んでしまうケースも。玩具などをわざわざ出さなくても、爪はすぐ目の前にあるため子どもは安易に暇つぶしできます。保育園でも、爪噛みがある子どもは順番待ちなど「なにもしない時間」に指を口に入れてしまう傾向があります。

こだわり

子どもの性格的な一面が、爪噛みを助長していることも少なくありません。爪の長さがいつもより少しでも違うと気になったり、ささくれがあると取りたくて仕方なかったり。そのほか、爪を噛む音を聞きたい、爪を噛むときの食感を味わいたいと考える子どももいます。

ただの習慣

きっかけはどうであれ、ただ習慣として爪を噛む場合もあります。習慣は無意識であることが多く、噛んだ覚えがないのにいつの間にか爪がガタガタになっているというケースも少なくありません。

爪を噛む癖がもたらす影響

爪を噛むこと自体は誰かに迷惑をかけるものではないため、無理にやめさせるか迷う人もいるでしょう。その原因が自分を安心させるものであればなおさら、禁止してしまうとかわいそうに感じますよね。しかし、爪噛みにはさまざまなリスクがあります。

爪や指からの出血

爪を噛む癖が強い子どもは、深爪になるまで噛んでしまいます。ときには爪周辺の皮膚まで噛みちぎり、爪や指から出血してしまうことも少なくありません。治るまでの間にも、かさぶたや荒れた皮膚をさらに噛んでしまい事態が悪化してしまう可能性も。

爪や指の変形

爪噛みを長く続けることで、爪が裂けたりガタガタになったり見た目が悪くなってしまいます。さらには、爪噛みが原因で指先が丸くとがったり、爪が正常に成長しなくなったりする場合もあります。子どものうちは気づきにくいかもしれませんが、大人になってから後悔することがあるかもしれません。

雑菌による感染症

爪を噛むことで気になるのが、衛生面です。爪の間に溜まった雑菌やゴミを口に運び、さまざまな病気に感染するリスクが上がります。もし血管内に細菌が入ると、敗血症や骨髄炎などの病気になってしまうリスクもあるため軽視できません。

歯並びの異常

前歯を巧みに使って小さな爪を噛もうとすることで、噛み合わせが悪くなる恐れもあります。とくに、子どもの口腔内は未完成です。乳歯から永久歯への生え替わりの時期でもあることから、永久歯が正しい場所に生えてこないというトラブルが起こる恐れもあります。

爪噛みをやめさせる5つのステップ

爪を噛む癖は、叱ったりご褒美で誘導したりしてやめられるものではありません。成長とともに爪を噛む行動が恥ずかしいと感じたり、噛みたい気持ちをコントロールできるようになったりすることで自然に噛まなくなるのが理想です。

ただ、10人に1人は大人まで継続する可能性があると考えると不安ですよね。そこでここからは、爪噛みをやめさせるために実践したい、5つのステップをご紹介します。

ステップ1:どのようなときに爪を噛むか観察する

まずは、子どもがどんなときに爪を噛んでいるのか観察することから始めます。保育園と家庭で協力して爪噛みのトリガーを見つけてみましょう。子ども自身が爪噛みを無意識におこなっている場合は、自覚させるために「爪どうしたの? 」と、声をかけてみるのもおすすめです。

ステップ2:爪を短く切り整える

爪を噛むタイミングがわかったら、次は噛めないように爪を短く丁寧に切り整えていきます。そして年齢に合わせて手指のばい菌について、わかりやすくお知らせしましょう。手洗い・うがいの大切さを伝えるイメージで「指を口に入れる危険」を知ってもらいます。

ステップ3:子どもにかかるストレスを減らす

次に、爪噛みがストレスにより起こっている可能性を考えて、子どもが心身共に過ごしやすい環境作りを意識します。物理的にストレスとなる物事を排除できない場合は「心配しなくても大丈夫」「みんないっしょだから安心だよ」など、子どものストレスを緩和できるような声かけをおこなっていきます。

ステップ4:爪を噛むタイミングで別の行動を促す

ステップ1で把握した爪噛みのタイミングに合わせて、なにか別の行動を促していきます。あくまでも提案であり「爪噛まないで! 」と阻止するものではありません。癖にならないよう気をそらすイメージです。

  • 手にボールを握らせる
  • 手をつないでできる遊びを提案する
  • 近くにあるものを取ってきてもらう

4~5歳であれば別の遊びに誘って行動自体を変えてしまうのがおすすめですが、2~3歳くらいであれば「お洋服くまさんだね」「靴下なにが描いてあるの? 」など、声かけだけでも爪噛みから気持ちをそらせます。

ステップ5:心を落ち着かせる習慣をつくる

普段から爪噛みで刺激をもらっている子どもは、爪を噛めなくなることでモヤモヤし始めます。そのような気持ちを鎮めるため、リラックスできる別の習慣を与えてみましょう。子どもが大好きなぬいぐるみを抱きしめたり、ふわふわで気持ちのよい毛布を触ったり…。爪噛みよりも心を落ち着かせられるアイディアを提案することで、依存を断ち切っていきます。

こんな方法も? 爪噛みを止める方法

子どもの意思が固く、なかなか爪噛みをやめさせられない場合は以下のような方法もおすすめです。

「1本の指だけにしよう」と声をかける

爪を噛む度に「ほらまた! 爪噛まないよ! 」と厳しく叱責する度、子どものストレスは大きくなります。そして隠れて爪噛みをするようになり今まで以上に状態がひどくなることも。もちろん目的は爪噛みをやめさせることですが、すべてを禁止せず「噛むなら1本にしよう」と伝え、ゆっくり進めていくのも作戦のひとつです。

常に手袋をつけて過ごすよう促す

手袋は、無意識に爪を噛んでいる子どもにおすすめです。爪を噛むために「手袋をはずす」という動作が加わります。そうすることで「今また爪を噛もうとした」と、自分で意識できるようになります。同じように、爪噛みがひどい指の先に絆創膏を貼るのもおすすめです。

いい匂いのハンドクリームを塗る

普段、手になにかを塗る経験のない子どもは、ハンドクリームを塗るだけで特別感を得られます。「このクリームは魔法のクリームなの」という言葉といっしょにクリームを塗ることで、心理的に爪を噛みづらくする作戦です。なお、食べたくなるようなおいしい匂いは、逆効果になるため注意が必要です。

子ども専用のマニキュアを塗る

爪に、子ども専用のマニキュアを塗るのもおすすめです。爪に色を塗るのが好きな子どもであれば、そのかわいさに喜び爪を大切にしようとします。爪噛み防止専用のものもあるため、匂いや味で物理的に爪噛みを防止するのもよいでしょう。

小児科など専門家に相談する

どうしても早くやめさせたい、見守り寄り添う時間がないという場合は、専門家に相談するのが近道です。爪や歯の形を見て状況を診断してくれるため心強いでしょう。症状がひどい場合は塗り薬を処方してもらえるため、指先の状況が悪い場合も受診をおすすめします。

まとめ

子どもの爪噛みは、指しゃぶりのように「そのうちいつかやめる」というものではありません。大人になってもつい爪を噛んでしまう人は少なくないため、できれば長引く前にやめさせたいもの。まずはどんなときに爪を噛んでいるのか観察し、そのタイミングに声をかけて気をそらしながら回数を減らしてあげたいですね。

保育ライター
保育士・幼稚園教諭資格を持つ2児の母。保育士歴10年、現在はライターとして活動中。
保育士経験を活かし、季節の行事に家族で手作りの飾りつけを楽しむのが趣味。
Instagram:https://www.instagram.com/hoik_aya___/
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