保育士になるのに必要な学費はいくら?学校の種類や費用を抑える方法も解説

保育士を目指す場合、卒業と同時に保育士資格がもらえる学校に通う方法が一般的ですが、学費が気になりますよね。
この記事では保育士になるのに必要な学費を学校の種類別に解説します。費用を抑える方法も併せてご紹介するので、保育士を目指す人はぜひ参考にしてください。
保育士資格が取得できる学校の種類と特徴
保育士になれる学校(厚生労働省指定保育士養成施設)には、大学・短期大学・専門学校・通信制大学などがあり、授業内容にも特徴があります。学費を考えると同時に、保育士資格を取る目的に適した学校を選ぶことが大切です。
大学:専門分野も学べて進路も豊富
保育に必要な知識スキルのほか、一般教養や専門的な学問も充実している。臨床心理学や教育理論、人間科学などより深い学びが得られるため、卒業後は保育士以外にカウンセラーや小学校教諭、社会福祉施設、自治体職員、一般企業など幅広い就職先が選択できる。保育現場での初任給がやや高めなケースも多い。
短期大学:免許取得が早く、保育士以外の就職先も選べる
保育に必要な知識スキルと同時に一般教養も学べるため、保育士以外に社会福祉施設や一般企業などへの就職も可能。2〜3年制のため4年制大学と比べると卒業までのカリキュラムが詰まっているのも特徴。保育現場での給与は専門学校と変わらない場合が多い。
専門学校:より実践的な保育士教育が受けられる
短大と同じ2〜3年制だが一般教養がない分、実習時間も長く保育に特化した教育が受けられる。就職先は保育現場が中心になるが、卒業後に提携大学への編入を選べる専門学校もある。保育現場での給与は短期大学と変わらない場合が多い。
通信制大学:働きながら保育士免許が取れる
オンラインや日曜受講などが可能で仕事をしながら専門的な保育教育を受けられる。学校ごとにカリキュラムは異なるが2年〜3年程度で保育士免許を取得できるコースが主流。保育実習も体験できる。保育現場での給与は短大や専門卒と同じケースが多い。
保育士になるのに必要な費用の種類
保育士になるために必要なのは授業料だけではありません。学校やカリキュラムによっても異なりますが、設備費や後援会費、保険料などが発生する場合も多いようです。
- 保育士資格が取得できる学校の主な費用
-
- 入学金(入学時のみ)
- 授業料(前期・後期ごと)
- 施設設備費(年度ごと)
- テキスト・教材費(年度ごと)
- 実習・研修費(都度)
- 学友会費(年度ごと)
- 後援会費(年度ごと)
- 傷害保険料(年度ごと) など
通信制の学校ではスクーリング(面接授業)受講料やシステム利用料、学籍管理料が別途かかる場合もあります。
入学してから困らないように全体の費用項目と支払いのタイミングを確認して、無理がないように備えましょう。
【進路別】保育士になるのに必要な学費はどれくらい?
保育士資格が取得できる学校の大まかな学費相場をご紹介します。長期在学する4年制大学はやはり高めですが、短大や専門学校、通信大学は比較的学費が抑えられるようです。
ただし、国公立と私立の違いや独自の奨学金制度など実際の学費は各学校ごとに異なります。この数字はあくまで目安として興味がある学校の学費は詳しく調べてみましょう。
大学(4年制):約280〜520万円
文部科学省の令和5年度の学生納付金の調査の初年度学費を参考に、公立大学と私立大学の学費を算出してみました。
公立大学の4年間の学費平均は約214万円、入学時の諸経費を加えると約254万円※でした。その他、実習料や他の諸経費などが約30%かかると言われていますので、280万円程度みておくといいかもしれません。※入学料は地域外で算出
一方で私立大学の初年度納付金の平均総計額は約148万円でした。入学費用や実習料などの諸費用を含めた4年間の学費は約520万円になります。
初年度学費平均値内訳(単位:円)
授業料 | 入学料(地域内) | 入学料(地域外) | 入学検定料 | 初年度総計(地域内) | 初年度総計(地域外) | |
公立大学 | 536,191 | 224,066 | 374,371 | 17,186 | 777,443 | 927,748 |
授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 実験実習料 | その他 | 総計 | |
私立大学 | 959,205 | 240,806 | 165,271 | 28,864 | 83,194 | 1,477,339 |
短期大学(2年制/3年制):約240万円/約330万円
短期大学の実習料などを含めた1年あたりの学費平均は約103万円、入学費用は約24万円となっています。2年制では約240万円、3年制では約330万円程度の学費をみておきましょう。
初年度学費平均値内訳(単位:円)
授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 実験実習料 | その他 | 総計 | |
短期大学 | 729,069 | 237,122 | 163,836 | 40,229 | 101,732 | 1,271,988 |
専門学校(2年制/3年制):約220万円/約320万円
東京都の私立専門学校のデータを見ると、実習料などを含めた1年あたりの平均学費は約100万円、入学費用は約17万円となっています。2年制では約220万円、3年制では約320万円程度の学費となります。
初年度学費平均値内訳(単位:円)
授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 実験実習料 | その他 | 総計 | |
専門学校保育・教育 | 693,000 | 166,000 | 159,000 | 54,000 | 99,000 | 1,171,000 |
通信制大学(3年制):約75~300万円※別途費用あり
通信制短大では3年制コース、通信制大学では2年次編入で3年間学んで保育士資格を取得する方法が一般的です。(3年次編入で2年間で保育士資格を取得できる学校もあります)
通信制大学の学費は学校毎に大きな差があり、5万円程度で入学できる学校もあれば90万円かかる学校もあります。また、まとまった教育費とは別にスクーリング受講料やテキスト代などが別途設定されているため受講スタイルによっても費用は変わるのも特徴です。
初年度学費平均値内訳(単位:円)
大学名 | 入学年次 | 入学諸費 | 教育費等 | 合計(円) | 別途費用 |
東京福祉 | 1年 | 30,000 | 149,000 | 179,000 |
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2.3.4年編入 | 55,000 | 149,000 | 204,000 | ||
聖徳(短期) | 1年 | 40,000 | 100,600 | 140,600 |
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2年編入 | 75,000 | 94,400 | 169,400 |
出典:私立大学通信協会「2024大学通信教育ガイド」
学費を抑えるには奨学金や学費免除制度の活用がおすすめ
保育士になるには少なくとも200〜300万円の学費が必要になる場合がほとんどですが、保育士を目指す学生には様々な支援制度があります。国や自治体、民間団体、学校独自の奨学金や免除制度を積極的に活用しましょう。代表的ないくつかの制度をご紹介します。
日本学生支援機構の奨学金
国費を財源にしている日本学生支援機構の奨学金は、家計基準や学力基準を満たすことを条件に費用を貸与されます。返還不要の給付型奨学金、無利息の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります。
自治体の保育士修学資金貸付制度
保育士資格の取得は各自治体でも積極的にサポート制度を設けています。
例えば東京都の「保育士修学資金貸付事業」では、指定保育士養成施設に在学する人に対して無利子で修学資金の貸し付けを行い、卒業後5年間都内の保育所に勤務すると全額返還免除になる取り組みをしています。
企業や民間団体の奨学金
一般企業や民間団体でも保育士育成制度が設けられています。株式会社日本保育サービスの「資格取得コース」では同社の保育士となることを条件に、正社員待遇で働きながら勤務時間中に勉強でき、交通費や受験費用なども会社が負担してくれます。
全国に2,100校以上の提携校を持つ株式会社オリエントコーポレーションの「Orico学生サポートプラン」は学費の分割払いが可能で、年収や学力基準の審査も緩やかで幅広い学生が利用できます。
学校独自の奨学金制度
保育士免許を取得できる大学や専門学校などでも独自の奨学金やサポート制度を設けています。例えば、日本育児専門学校の授業料が半額になる減免制度、東京福祉専門学校の学費が最大50万円免除となる特待生制度など、希望校の制度も調べてみましょう。
独学で保育士になる方法もある
保育士になる方法は保育士養成学校を卒業する他に「独学で国家試験に合格する」という手もあり、その場合の学費はテキスト代、受験料、資料代などの数万円程度です。
ただし、保育士試験の合格率は20%を切ることもあり、非常に難易度が高い資格として知られています。
9個の専門科目の筆記試験と2つの実技試験で6割以上の合格点が必要です。時事問題では最新情報が、実技面では客観的な評価をしてくれる人が必要になります。
独学で保育士を目指す際は数年かかることを覚悟し、頼れる保育経験者と一緒に根気強く取り組みましょう。
まとめ
保育士になるには、卒業と同時に保育士資格を取得できる学校で学ぶのが近道です。保育士養成学校は大学、短大、専門学校、通信大学などがありますが、それぞれ特色も学費も異なるためよく調べてから進路を決定しましょう。
保育士になるための学費は4年制大学はやや高額になる傾向がありますが、諸経費を含め250〜350万円程度を見込んでおくといいでしょう。
もっとも安価なのは独学で国家試験に合格することですが、非常に難易度が高いため覚悟が必要です。保育士を目指す人は様々な奨学金や支援制度が受けられます。学費で諦める前に希望校で使えるサポート制度を探してみるのがおすすめです。