加配保育士とは?仕事内容や必要なスキル、給料を解説

「保育士」という言葉は一般的に使用されていますが、「加配(かはい)保育士」という言葉を聞いたことのある人は、少ないのではないでしょうか。子どもの成長を支えるうえで、加配保育士は欠かせない存在です。
保育の現場を目指す場合は、加配保育士の概要を詳しく知っておくことで、自身の選択肢が広がる可能性もあるでしょう。
今回は、加配保育士の概要を解説します。加配保育士に必要な資格やスキル、仕事内容なども併せて紹介するため、加配保育士のことを詳しく知りたい人は参考にしてください。
加配とは?
加配とは、保育所において障害のある子どもや配慮が必要な子どもをサポートできるよう、通常の人数に加えて保育士を配置する制度のことです。
保育所が独自に加配するケース、保護者からの要望に応じて加配を行うケースがあります。
加配保育士とは?
加配保育士とは、障害の診断を受けた子どもを対象に配置される保育士です。厚生労働省が支援する職種のため、補助金制度など国からの支援策が用意されています。
加配保育士は、保育園や保護者からの申請に応じて、子ども2人につき1人を基準として配置されることが一般的です。通常勤務の保育士に加え、自治体ごとに定められた規定に基づいて加配保育士が配置されます。
加配保育士は一般の保育士と異なる仕事を行うこともあるため、専門的な知識が必要です。
加配保育士の仕事内容
加配保育士の仕事内容には、障害を持つ子どもの生活支援や見守り、個別カリキュラムの作成などがあります。障害を持つ子どもが保育園で安全に過ごせるよう、さまざまな部分で子どものサポートをすることが加配保育士の仕事です。
ここでは、加配保育士の具体的な仕事内容を解説します。
障害を持つ子どもの見守り・支援
加配保育士の仕事では、障害を持つ子どもが園でスムーズに過ごせるような支援を行います。たとえば、障害によって身体を動かすことが難しい子どもに対しては、食事や着替え、排せつなどで適切な支援が必要です。
また、障害によって周囲の人とのコミュニケーションや集団行動に支障がある子どもに対しては、トラブルが起こらないように見守ることも求められます。
障害を持つ子どもがいじめの対象となったり、反対に障害を持つ子どもが他の子どもに危害を加えたりしないような環境づくりも重要です。単独行動を好む子どもには集団生活に加わることを強制せず、加配保育士が個別に対応することも必要となります。
園の子どもたちの関係性や個性を見守りながら、適切なサポートを行うことが加配保育士の仕事です。
個別カリキュラムの作成
障害を持つ担当児童向けに個別カリキュラムを作成することも、加配保育士の仕事に含まれます。
保育園では、月ごとや週ごとのカリキュラムに沿って保育を行うことが一般的です。しかし、障害を持つ子どもは、保育園で設定したカリキュラムを実行できない場合があります。
障害を持つ子どもの能力や発達段階に応じて、月ごとや週ごとのねらいや目標を考え、遊びや活動などのカリキュラムを作成することが加配保育士の仕事です。
適切なペースでカリキュラムを達成できれば、障害を持つ子どもも他の子どもと同様に、充実した園生活を送ることができます。
行政機関や保護者との連携
行政機関へ子どもの様子を伝え、連携を取ることも役割のひとつです。子どもの様子を記録にまとめたり、療育機関や発達支援機関からの指導を他の保育士に周知する仕事も行います。
保護者との連携も欠かせません。加配保育士は、保護者の心の支えです。相談を受ける機会も多くあるでしょう。保護者とコミュニケーションをよく取り子どもの様子について伝えあうことで、どのようなサポートが必要なのかが見えてくるはずです。
担任や副担任との連携
担任や副担任と情報共有することは重要です。担任は集団保育を行っているため加配対象の子どもの些細な変化に気づけないこともあります。そのため、加配保育士が「どんなときにどんな行動をするのか」「なぜ行動が変わったのか」などの気付きを記録し、積極的に共有しましょう。
加配保育士に求められるスキル・資格
加配保育士は保育士資格の他、障害を持つ子どもをサポートするための専門知識やスキルが求められます。加配保育士の資格は存在しないため、保育士資格を持っていれば加配保育士として働くことができます。
ここでは、加配保育士に求められる資格やスキルについて具体的に解説します。
保育士資格
保育士の有資格者は、加配保育士が配置されている園に就職することで、加配保育士として働くことが可能です。
加配保育士に類似する職業には、保育士の仕事を補助する「保育補助」がありますが、保育補助には資格が必要ありません。
障害に対する正しい知識・理解
加配保育士には、子どもの持つ障害に対する正しい知識と理解が欠かせません。保育士資格を取得するときに学ぶ障害児保育に関する知識以外にも、実際の保育現場での経験や、研修や書籍で得たスキルが役立ちます。
子どもが持つ障害の種類や度合いによってサポート方法は異なるため、正しい理解に基づいて適切に関わることが大切です。
たとえば、自閉症の子どもをサポートする場合は、積極的な手助けが逆効果となるケースもあります。自閉症の子どもは自分が決めたやり方に強いこだわりを持つ場合があり、手助けをされるとかえって混乱することも珍しくありません。このような場合はむやみに手助けをせず、子どものペースに合わせてゆっくりと待つなどの関わりが求められます。
保護者への配慮・ケア
加配保育士は、子どもだけでなく保護者のケアをすることも求められます。保護者の中には、子育てに対して不安を感じる人も少なくありません。保護者に配慮し、相談できる相手となることも加配保育士の仕事です。
保護者の中には、子どもの障害を認めたくない気持ちから、子どもに診断を受けさせないケースもあります。加配保育士は医師ではないため、子どもの言動から考えられる障害について保護者に伝えることはできません。
このようなケースでは、加配保育士が保護者の心情を配慮したうえで、保育園での子どもの生活ぶりを伝えるなどのケアが求められます。
状況の判断力・洞察力
加配保育士には、その場に応じた判断力が求められます。障害を持つ子どもの多くは、クラスの状況や友達の気持ち・行動にとても敏感です。周りの影響を受けやすい傾向があるため、その場の状況に合わせてどのような援助が適切か、その都度判断が求められます。
担任や副担任などと連携を取りながら状況を判断し、子どもに寄り添う必要があります。
コミュニケーション能力
保護者や保育士、行政との連携をとるためのコミュニケーション能力が求められます。
子どもがどんな成長を遂げているのか、求められる課題は何か、どんな援助ができるのかなど、保護者や職員、行政機関に明確に伝える力が必要です。
また、加配対象となる子どもとのコミュニケーションにおいては、難しさを感じることも多いでしょう。人との関わりが苦手だったり、言葉で気持ちを伝えられずにいたりと、子どもによって難しさを感じるポイントは異なります。加配保育士が気持ちに寄り添って共感することで、安心感を持ってもらうようにしましょう。
信頼関係を築くには時間が必要ですが、愛情を持って一つひとつ丁寧に接するコミュニケーションが求められます。
加配保育士として抱えやすい悩み
加配保育士として働くうえで、以下のような悩みを抱えるケースがあります。
- 加配対象となる子どもと信頼関係が築けない・関わりを拒否されてしまう
- 担任が忙しいため頼りづらく、「自分で何とかしなければ」とプレッシャーやストレスを感じてしまう
- 子どもの気持ちが安定せず、癇癪や泣きわめくなどの行動に対して、対応に困ってしまう
- 担任の保育観に合わせて支援方法を変えることに難しさを感じる
上記のような悩みを解決するためには、担任や副担任、園長などとの連携が欠かせません。対応に悩んだら、身近な先生や同僚に相談してみることが大切です。加配保育士が1人で抱え込まず、周りのサポートを求めながら、園全体や家庭が連携して子どもの発達に寄り添っていきましょう。
ただ、加配保育士は、配置される人数が少ないことから、悩みを抱えていても相談しづらいケースもあるかもしれません。そのようなときは、園だけでなく、児童発達支援センターなど外部機関に相談してみるのも一つの方法です。実際に、専門機関の職員に、定期的に園の様子を見に来てもらうことで、現場の加配保育士や担任の負担が軽減されたケースもあるようです。
加配保育士の給料
加配保育士の給与は、基本的には保育士としての給与と同じ形態がほとんどです。しかし、園によって正社員や短時間雇用、パート、契約社員、派遣など、勤務形態が変わります。また、地域や大学卒、短大卒、経験年数などの状況によっても給与に変動があります。
ちなみに、令和5年賃金構造基本統計調査では、保育士の平均給与は27万1,400円でした(企業規模10人以上の「きまって支給する現金給与額」より)。
また、パートや短時間勤務などの場合は、1,000~1,800円前後と設定している園が多い傾向にあります。
園によって、勤務形態や給与は異なります。自分に合った職場を探す際には、実際に足を運んで園の雰囲気を感じることが一番ですが、人材紹介サービスの利用もおすすめです。
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まとめ
障害のある子どもに対して個別にサポートを行う加配保育士は、対象となる子どもの生活支援や見守り、個別カリキュラムの作成などが主な仕事内容です。障害のある子どものサポートにおいては、担任や副担任、行政との連携はもちろん、保護者への配慮やコミュニケーションも求められます。
加配保育士は、加配対象となる子どもへの対応や、信頼関係の構築において、難しさを抱えやすく、プレッシャーも大きい仕事です。しかし、特別な支援が必要な子どもたちが、通常の保育環境で健やかに成長していくために、加配保育士は重要な役割を担っており、やりがいも大きいでしょう。