現職の保育士の方及び復帰を考えている潜在保育士の方で、日中に働く通常の保育所ではなく、夜間保育所で働くことを検討している方もいるでしょう。
通常の保育所とは業務特性や勤務時間帯が大きく異なる夜間保育所では、仕事の適性やライフスタイルとのバランス、メリット・デメリットをよく検討して働くことが重要です。
今回は、夜間保育の概要や仕事内容から、夜間保育士として働くメリット・デメリット、需要や将来性までを解説します。夜間保育士として活躍したい方は、ぜひ参考にして下さい。
夜間保育とは
夜間保育とは、保護者の就労等の事情で家庭での保育を受けられない子どもを、夕方から夜間まで預かるサービスです。夜間保育を行う保育施設を「夜間保育所」と言います。
厚生労働省の資料によると、原則として夜間保育所の開所時間は「おおよそ午前11時から午後10時まで」の「おおむね11時間」とされています。しかし、働き方が多様化したことで保育のニーズも多様化しており、一部の認可外保育所では早朝も対応する「24時間保育」や「宿泊を伴う保育」を提供している場合もあります。
子ども家庭庁によると、令和5年4月1日時点における全国の夜間保育所は、全国で73箇所ですが、主に指定都市や中核市に設置されていることから、都市部での需要が高いことがうかがえます。
平成26年度には全国に85箇所の夜間保育所がありましたが、年々減少傾向にあり、夜間保育を行う施設自体が不足しています。また、夜間保育所の設置がない都道府県も多いため、夜間保育所のない地域に住む保護者は夜間に働くという選択肢を諦めなければいけないこともあるかもしれません。 しかし、近年は共働きの家庭が増加していたり、夜勤がある保護者や、家計を支えるために夜間も働く保護者もいたりするため、夜間保育の需要は高まっているといえるでしょう。
夜間保育所の設置基準
夜間保育はどの保育所でも行ってよいわけではなく、一定の設置認可基準を満たしている必要があります。ここでは、夜間保育所の設置基準について解説します。
施設形態
夜間保育の実施にあたっては、夜間保育を専門として行っている保育所であることを原則としています。厚生労働省によると、下記のように定められています。
夜間保育を行う保育所は、夜間保育のみを行う夜間保育専門の保育所及び既存の施設(保育所、乳児院、母子生活支援施設等)に併設された保育所を原則とするが、これ以外に例えば既設の保育所において、当該施設の認可定員の範囲内で、通常の保育と夜間保育とを行うもの等であっても差し支えないこと。
引用:厚生労働省「夜間保育所の設置認可等の取扱いについて」
また、保育所・乳児院・母子生活支援施設などに併設された保育所であることも原則として定められています。
対象児童
夜間保育の対象となる児童は、夜間時間帯に保護者の就労などの事情により家庭での保育が困難であり、自治体が保育の実施を行う必要がある児童となります。
定員
夜間保育所では、預かることができる子どもの定員は20人以上とされています。
職員配置基準
夜間保育所においては、児童福祉施設最低基準に準拠した職員を配置しなければなりません。厚生労働省の資料によると、下記のように員配置基準は児童の年齢により細かく定められています。
- 0歳児 3人につき1人
- 1歳児~2歳児 6人につき1人
- 3歳児 20人につき1人
- 4歳児以上 30人につき1人
乳幼児の場合は安全上の理由からも、特に厳しい基準が設けられていることが特徴です。
設備及び備品
夜間保育を提供するためには、業務特性に合わせた設備・備品を設置するように定められています。厚生労働省による設備基準は下記の通りです。
①仮眠のための設備及びその他夜間保育のために必要な設備、備品を備えていること。
引用:厚生労働省「夜間保育所の設置認可等について」
②既存の施設に夜間の保育所を併設する場合にあっては、直接児童の保育の用に供する設備については専用でなければならないが、管理部門等については運営に支障を生じない範囲で既存の施設の設備と共用することも差し支えないこと。
③地域の実情に応じて、分園(平成一〇年四月九日児発第三〇二号「保育所分園の設置運営について」に定める分園をいう。)を設置することができる。
通常の保育所とは異なり、特に仮眠のための寝具や入浴設備の充実が重視されています。
夜間保育における保育士の仕事内容
ここでは、夜間保育士の仕事内容について解説します。日中に働く保育士とはどのような違いがあるのかを確認しておきましょう。
夜間保育士の仕事内容
夜間保育士の業務内容は、日勤の保育士と共通する部分もありますが、食事(夕食)・入浴・就寝といった、家庭生活で夕方以降に行われることが業務の中心となることが特徴です。
- 登園対応
- 食事(夕食)対応
- 入浴
- シャワーのサポート
- トイレサポート
- おむつ交換
- 寝かしつけ
- 就寝後の見回り
- 行事の準備
- 開催
- 事務作業(帳簿記入など)
- お迎え対応
子どもたちが家庭と同じように安心して過ごせるような保育を行うことが、夜間保育士の重要な役割であると言えるでしょう。
夜間保育士のスケジュール
時間 | 業務内容 |
17時~18時台 | 夕食、歯磨きの援助 |
19時~20時 | 入浴の援助 |
20時~21時 | 寝かしつけ |
21時以降 | 子どもたちの見守り、事務作業、お迎えの対応 |
夜間保育士として働くメリット・デメリット
夜間保育で働く保育士の方は、日中に働く通常の保育士とはメリット・デメリットも大きく異なります。これから夜間保育所で働くことを検討している方は、満足度の高い働き方をするためにも、メリット・デメリットの両側面を把握しておくことが重要です。
夜間保育で働く保育士のメリット・デメリットについて、以下に解説します。
夜間保育士として働くメリット
夜間特有の業務を通してスキルアップできる
夜間保育は夕方から深夜の時間帯に子どもを預かる特性上、通常の保育所とは業務内容が大きく異なることが特徴です。
夜間保育所の保育士の業務は、食事・入浴・睡眠サポートが中心となり、子どもたちの就寝後は帳簿を付けながら見守りやお迎え対応を行ないます。遊びに関しても外で元気に遊んだりすることはなく、室内での遊びや絵本の読み聞かせなど静かな遊びとなります。
子どもの生活リズムや情緒安定を保つため、なるべく一般の子育て家庭と同じ生活リズムで食事・入浴・睡眠を提供することが夜間保育所に求められる重要な役割です。
夜間保育所においては特殊な事情を考慮した保育を提供する必要があるため、保育の専門性やスキルを磨くことができます。
夜勤手当によって給与が高くなる
夜間保育で働く保育士は、基本的に勤務時間が深夜時間帯に及ぶため、深夜割増料金の適用により日勤の保育士よりも高い給与を得ることができます。また、園によっては夜間保育で働いてくれる保育士を確保するために、深夜割増料金に加えて夜間手当を支給している場合もあります。
22時~翌朝5時までの間は、基本時給に対して25%の割増賃金が上乗せされるため、勤務時間帯によっては大幅に給与をアップさせることができます。
高い給与を得られることは、夜間保育で働く保育士にとって大きなメリットと言えるでしょう。高収入を期待して夜間保育を選択する保育士の方も多くいます。
日中は別の仕事をするなどWワークが可能
夜間保育は勤務時間が夕方から深夜であるため、日中の時間は自由に活用することができます。また、人手不足の夜間保育所が多いため、パートタイムでの勤務も可能な園も多くあります。
日中の時間を活用してWワークを行ないたい方や、資格の勉強の時間に充てたい方にはおすすめと言えるでしょう。
夜間保育士として働くデメリット
生活が不規則になりやすい
夜間保育で働く保育士は、夕方から深夜のシフトでの勤務となるため、夜型の不規則な生活となることが否めません。そのため、体調管理や長期的な勤務が難しいというデメリットがあります。
子育て中だと夜間の子どもの預け先が必要になるだけでなく、朝の身の回りのお世話、園や学校への送り出しについても家族の手助けが必要となります。将来的に転職せざるを得ない可能性があるでしょう。
学級担任や行事を経験できない
夜間保育園は、一般的な保育所で行われているような行事などがありません。年齢ごとの保育も行わないため、日勤の保育士とは違う働き方になります。
子どもに何かを経験させたり、何かの力を身につけたりするための援助より、保護者の代わりに食事や入浴の援助などを行い、安心して過ごせる環境を提供する役割の方が大きくなります。
一般的な保育所で働く保育士が学級担任や運動会や発表会などの行事を経てスキルアップしていくのに対し、夜間保育士はその点での経験が積みにくいのはデメリットの一つでしょう。
私生活とのバランスが取りづらい
ライフステージの変化などにより、夜間に働くこと自体が難しくなる場合があります。例えば、子育て中だと夜間の子どもの預け先が必要になるだけでなく、朝の身の回りのお世話、園や学校への送り出しについても家族の手助けが必要となります。
また、夕方以降から仕事が始まる場合が多く、帰宅するのは翌日の朝ということもあるでしょう。そのため、午前中や夕方以降の予定が立てにくくなるのも、デメリットの一つといえます。
保護者や子どもへの特別な配慮が必要になることも
夜間に働く保護者のなかには、やむを得ない事情により夜間の仕事を選んでいる保護者もいます。そのような保護者に対しては、関係各所と連携を取りながら慎重な配慮が必要になることもあり、プレッシャーを感じる保育士もいるでしょう。
また、利用する子どもたちも、昼間よりも不安になりやすかったり、家庭以外の場所で長時間過ごすことによる疲れが出やすかったりします。
様々な事情を持つ保護者や子どもたちに寄り添いながら、夜間の保育を行うことは肉体的にも精神的にも辛いと感じることがあるかもしれません。
まとめ
女性の社会進出の機会が増えたことや働き方が多様化したことにより、夜間保育や夜間保育士の需要は高まっています。しかし、全国的に見ても夜間保育を行う施設は減少傾向にあり、そもそも夜間保育を行う施設が設置されていない都道府県も少なくありません。
夜間保育は、一般的な保育所とは働く時間帯や援助の内容が異なりますが、その業務特性や働き方を理解すればメリットのある仕事です。夜勤手当がつくため、一般的な保育所で働くよりも給料が高くなる場合が多いでしょう。また、働く時間帯によっては日中の仕事と掛け持ちすることもできるため、時間を有効活用できます。
一方、不規則な生活となるため体調管理の難しさを感じたり、私生活とのバランスが取りづらかったりすることもあるかもしれません。また、一般的な保育所で行われているような行事がないため、いずれ日勤で働きたいと考えている場合にはスキルを積み上げるのが難しい職場ともいえます。自分の理想とする働き方や今後のビジョンと照らし合わせ、働き方を考えるのが大切です。
夜間保育士は、日勤の保育士とは働く時間帯や環境こそ異なりますが、夜間の子どもの対応を通じて子どもに安心感を与え、夜間に働く保護者を支える大切な仕事です。働き方の選択肢の一つに夜間保育士を入れてみると、自身の保育観や働き方を広げられるでしょう。
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