2024 年度 スキルアップ研修第2回 「保育の環境構成」 2024 年度 スキルアップ研修第2回 ~子どもの主体性を育む年齢に合わせた環境構成とは~

昨年度多くの皆様からご好評いただき、今年度も開催が実現したスキルアップ研修。
第2回のテーマは“保育の環境構成”です。
講師を務めるのは、38年間保育現場を歴任し現在は保育環境アドバイザーとしてご活躍中の井上さく子先生。セミナー前半は子どもを取り巻く環境、遊び・年齢に合わせた環境構成について詳しく解説いただき、後半は参加者から寄せられたお悩み相談や質問に答えていただきました。
環境設定と環境構成の違い
環境設定とは
大人たちが仕事で使いやすくするために、様々な導線や表示を調整すること
環境構成とは
子どもの育ち・発達に合わせた、道具や素材を準備し提供すること
安心・安全を打ち出して一年中遊び道具を一切変えない園がありますが、それは“環境設定”にあたります。子どもたちの願いや発達に合わせて、興味・関心を引き出し受け止められるような“環境構成”を常に意識することが重要です。大人の都合で環境を設定せず、子どもたちの願いを叶えるための環境を構成することを意識しましょう。
子どもを取り巻く環境
人的環境
子どもたちを育む環境の中で、子どもに一番大きな影響を与えるのがこの人的環境です。
子どもたちの仕事は「大人の丸ごとをかじって、生きる力を育んでいくこと」なので、園の大人たちは積極的に動く必要があります。
物的環境
子どもたちの「してみたい」という好奇心は、人としての土台となる大切な要素です。子どもたちが興味関心を抱ける居心地のよい環境構成をデザインしましょう。まず、どんな子どもになってほしいかの「願い」を定め、その願いに合った環境を整えましょう。そして、子どもの発達に合わせた道具や素材を準備することが大切です。
自然環境
園庭をはじめとする園周辺の自然と触れ合う機会をいかに作っていくかが重要です。食育活動の一環で野菜を育てたり、虫や動物と触れ合ったりする機会を作れば、子どもたちに命の大切さを伝え、優しさ・思いやりを育むことができるでしょう。
園庭にも地面のデコボコや小山などの自然はあり、アリやダンゴ虫やミミズなど身近な生き物は息づいています。身近なところで子どもと自然が触れ合える場所はないか、一度あたりを見回してみましょう。
社会的環境
園で働いていると、どうしても園内のことに意識が集中しがちです。しかし園が成り立つのは地域の支えがあってこそだという発想を持ちましょう。園だけを主体に考えるのではなく、近隣住民の暮らしも考慮し地域と連携しながら運営することが大切です。
また子どもたちが自発的に地域で遊び社会化できるように、お祭りや地域のイベント、公共施設などで社会と触れ合う機会を設け、社会と繋がる園を目指しましょう。
遊び別の環境構成
室内遊び
子供たちが生活の大半の時間を過ごす園の環境は本当に居心地がいいものになっているでしょうか?子どもの目線に立って360°見渡して安全安心な環境だと言い切ることができるようにしましょう。
環境を構成する際には、年齢によって「これだけあれば十分」という一律の基準はありません。子どもの願いや発達に応じた環境を作るためには、子どもの生活、成長、遊びをよく観察することが重要です。目の前の子どもたちの成長をしっかりと見守り、理解した上で、必要な場所や物を適切に用意しましょう。
戸外遊び
ただ広い園庭があるだけでは、子どもたちは与えられたものでしか遊べない指示待ちをする人に育ってしまいます。好きな場所も使いたい道具も一緒に遊ぶ友達も、全て自己選択・決定ができる選択肢を提供することが大切です。また、園庭の有効活用も重要です。園庭はどんどん改良していい場所にしていきましょう。改良に当たっては、大人たちの頭だけで考えることはNGです。子どもたちの力を借りましょう。子どもたちの遊んでいる様子をよく観察して不足しているものを洗い出したり、4~5歳の子どもたちに園庭でしてみたいことを大きな模造紙に書きだしたりしてもいいでしょう。全てとは言わずとも、大人と子どものどちらの願いもある程度叶えられる園庭を目指していきましょう。
表現・制作遊び
子どもには、大人が教えなくても考え工夫する力が備わっています。子どもたちが作りたい時に作れるよう、必要な道具や素材を準備しておくことが重要です。
作っている途中で「もう疲れた、先生作って」と言われても、代わりに作ってあげるのではなく、「ちょっと休むとパワーが湧くよ」などと肯定的な言葉をかけてあげましょう。子どもたちは、自分で表現できた経験を通して、自分を認めることができるようになります。
「集団」ではなく一人ひとりの「暮らし」の集まり
不適切保育が起きやすいのは、場所や活動の切り替えの時間だといいます。大人が子どもたちを「集団」と捉え、無理やり動かそうとすることで不適切保育が発生してしまいます。「集団保育」は大勢の子どもたち一人ひとりの「暮らし」の集まりです。子どもたちを「園で暮らしている人」として見れば、関わり方も自然と変わってくるはずです。
また、不適切保育の根本的な原因として現場の人員不足があります。大人たちの心と時間に余裕がなければ、目の前の子どもたちを全面的に受け入れることは難しいでしょう。人員が不足した場合は、できるだけ早く新たな人材を補充することが重要です。
さいごに
子どもたちを取り巻く環境の中で何よりも重要なのは「人的環境」です。まずは人的環境を整えることを最優先にして、子どもたちの「暮らし」を保証しましょう。子どもたちが園で過ごす6年間は、人としての基盤を築く大切な時期です。決して学校に行くための準備期間ではありません。人間力が豊かな大人から、子どもたちの自己肯定感は育まれます。子どもたちの願いを叶える環境構成を、一歩ずつ進めていきましょう。
本研修にご参加いただき、誠にありがとうございました。
今回のスキルアップ研修が、皆様の園の“環境構成”の一助となり、園づくりを見直すきっかけとなれば幸いです。
スキルアップ第3回では「発達が気になる子ども」について伊丹晶一先生よりお話しいただきます。 皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
~次回の開催情報~
●【日時】
2024年12月12日(木) 13:00~15:00
●【テーマ】
発達が気になる子ども
~症例と支援例、保護者へのアプローチ~
伊丹晶一先生