日々の保育の中で、必ずと言っていいほど毎日起こる子ども同士のトラブル。「さっきまであんなに仲良く遊んでたのにどうして!?」なんて経験は誰もがあると思います。しかし、トラブルの仲裁の仕方で悩んでしまう方は意外と多いのではないでしょうか。

今回はトラブルの仲裁で困った時に参考にしていただきたいポイントを、いくつかご紹介していきたいと思います。

トラブルの仲裁は難しい

子どものトラブルを仲裁する難しさとはなんでしょうか。それは食い違う双方の意見を受け止め、どのように妥協点を見つけていくかということだと思います。

トラブルの瞬間を見ていないのに「〇〇くんが叩いたの」「違う!そんなことしてない」と言い合いになってしまえば、子どもたちに話を聞くところから始めなくてはなりません。

双方が納得しなければいつまでも話し合いは続きます。そのうち、何が本当で何が嘘なのかどんどん分からなくなり、保育士も解決の糸口を見出せなくなってしまうでしょう。

このように、「トラブルの仲裁には真実と嘘とを見抜く必要がある」と考えることで、どうすれば良いか分からなくなってしまう部分があると言えます。ところが、必ずしも仲裁するのに全ての状況を把握している必要はないのです。

仲立ちする際のポイントとは

それでは、具体的にどのように対応すれば良いのでしょうか。ここでは3つのポイントをご紹介します。

1つ目は「どうしたいか」を子どもに聞いてみることです。例えば、一生懸命に状況を説明する子どもに対し、「それでどうしたいの?」と聞くと「痛かったから謝ってほしかった」などと気持ちや願いを話してくれます。そうすることで、子どもの思いを理解しやすいのです。「なんで?」「どうして?」という言葉よりも、「どうしたいの?」という言葉かけの方が解決に近づけると言えるでしょう。

2つ目は良し悪しを保育士が決めないことです。子どもの話を聞くうちに「それは〇〇くんが良くないよ」と言いたくなることもあると思います。しかし、保育士の仕事は子どもを裁くことではなく、自分たちで解決するための援助をすることです。そのためには「Aくんはこう感じたのね?でも、Bちゃんはこう感じたみたいよ?」とそれぞれの気持ちを受け止めながら話し合いを進めていく方が、子どもたちは落ち着いて自分の思いを伝えられるのです。

3つ目は「喧嘩の勝敗を決める方法」を子どもたちに考えてもらうことです。例えば、おもちゃの取り合いになら、遊ぶ順番決めの方法を子ども自身に選んでもらいましょう。互いに納得していればジャンケンで決める必要はなく、にらめっこや腕相撲でも問題ありません。ルール作りに参加することで、勝敗が決まった時もその結果を受け入れることができるのです。しかし、中には「ジャンケンは嫌だ」「にらめっこも嫌だ」と否定ばかりする子もいますね。そういった子には「嫌なら別の決め方を考えてね」と伝えるのが良いでしょう。

「トラブル」も失敗のひとつと考えよう

友達とトラブルになってしまうことも経験のひとつです。これは自分の思いが上手く相手に伝わらなかったという失敗を通して、「次はどうしたら上手く伝わるか」を考えてもらう良い機会になります。

失敗する多くの原因は、暴力や仕返しで自分の気持ちを伝えようとしてしまうことです。自分の思いをより正確に伝えるためには言葉で伝える必要があり、そのためには失敗を自覚してもらうことが大切です。

「言葉で言うんだよ」と促す声かけも大切ですが、それ以上に「上手く伝わらなかった」という事実を失敗として受け止めてもらうことで、言葉による伝え合いへと繋がっていくでしょう。

いかがですか?子ども同士のトラブルと言えば本当に色々なものがありますが、この3つのポイントはどんなケースでも使える方法です。

最初のうちは機械的な聞き方になってしまうかもしれませんが、慣れてくればアレンジを加えながらその時々の状況に合った伝え方ができるようになると思います。良かったらぜひ試してみてくださいね。

保育士ライター
東京都で働く現役の保育士。 自身の子育てや育休の経験を通して家庭保育の大変さを痛感し、子育て支援のための活動を始めた。
「少しでも楽しく子育てを!」をモットーに育児の楽しさを伝える活動を精力的に行っている。
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