放任主義の子育てはいいこと?過干渉になりすぎないメリット・デメリット
「放任主義」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべますか? 「放任」という文字は「責任を放る」と読み取れてしまい、あまりよい印象を持たない人も多いでしょう。
この記事では、放任主義の特徴や、子育て方針として取り入れるメリット・デメリットを解説します。
育児における放任主義とは?
放任主義とは、子どもが自分で考えて行動できるよう、あえて手や口を出さない子育て方針のことです。「手を貸さなければ失敗するかもしれない」「口を出さなければ選択を誤るかもしれない」といった場面でも、子どものためにあえて介入しない姿勢を貫きます。
そうすることで、自分の行動に責任を持ち、自分で考え行動できる子どもに育つのです。しかし「放任」という名のもと、面倒だから子どもの行動に関与しないという親も少なくありません。では「よい意味の放任主義」と「悪い意味の放任主義」には、どのような違いがあるのでしょうか?
よい意味での放任主義
- 子どもがやることや選択に親が口出しせず信じて任せる
- 子どもが自分で意思決定できるように促す
- 基本的なルールやマナーを守れるようにしつけたうえで自由を与える
- 自分で解決できるように子ども同士のトラブルには介入しない
- 人を傷つけたり、人に迷惑をかけたりした場面ではしっかり叱る
- 口出ししなくとも、子どもの様子は把握している
悪い意味での放任主義
- 子どものやることを尊重し自由奔放に過ごさせている
- 年齢に合わない持ち物を持つことや不適切な行動を黙認している
- 必要なことまで放任して衣食住に不足がある
- 子どものやることに興味がなく行動を把握していない
- 社会のルールやお友だちとの関わりに問題があっても気づかない
- 子どもが助けを求めているときでも無関心を貫く
それぞれの特徴を見ると、「信頼」「愛情」があるうえで成り立つのがよい意味での放任主義、「怠惰」「無関心」が根底にあるのが悪い意味での放任主義といえるでしょう。
放任主義と放置の違い
放任主義と放置には、大きな違いがあります。たとえば、学校に持って行くはずのものを忘れていると気づいたとき。「忘れているよ」と声をかけたり、子どものあとを追いかけて届けたり。はたまた授業が始まるまでに学校まで届けに行くなど、対応は家庭によってそれぞれです。
そのような場面で、あえて子どもに手を貸さず「忘れたときはどうするのか」「次忘れないようにするにはどうするのか」といったことを考えさすのが放任主義といえます。
一方、子どもを放置している親は、子どもが忘れものをしていることにも気づきません。困っていることも知ろうとしません。「うちは放任主義だから」と、放任の意味をねじ曲げて必要な育児・教育部分を放棄してしまう状態が放置といえます。
あなたはどのタイプ? 子どもへの関わり方5種類
どこまで口を出し、手をかけるかは家庭によって差があります。親自身が育ってきた環境による相違もあるでしょう。子どもに悪影響を与える子育てをする親は、最近では「毒親」と呼ばれることも。明確な定義がないため「普通の子育て」に悩む人も多いでしょう。
そこでここからは、子どもへの関わり方を5つの段階に分け、特徴を解説していきます。
ストレスなど複数の要因から「ネグレクトする親」
子どもに関するさまざまなことを放棄し、不適切な育児をおこなうタイプです。ネグレクトとは、育児放棄とも呼ばれる児童虐待のひとつ。子どもへの愛情不足やストレスが根底にあり、以下のような行動をしてしまう親が少なからず存在します。
- 食事や衣服など必要なものを与えない
- 不適切または不潔な環境で生活させる
- 子どもからの訴えを無視したり放置したりする
ネグレクトは、ときに子どもの命につながる劣悪な子育てです。なお、悪い意味での放任主義は、一歩間違えばネグレクトにつながってしまうかもしれません。
子どもへの関心が低く「子どもを放置する親」
子どもへの無関心が理由で、家庭教育をおこなわないタイプです。子どもに興味がないあまり、以下のような行動が定着してしまっています。
- 子どもにいつも留守番をさせている
- 子どもが普段なにをして遊んでいるのか把握していない
- 子どもからの話しをしっかり聞かない
このような家庭も、ある意味放任主義といえます。学ぶべき社会のルールが欠如し、やりたい放題する子どもに育つ可能性があります。
子どもの自主性を育むために「放任する親」
子どもが自分自身で考えて行動できるよう放任するタイプです。「こうしなさい」「こっちの方がいい」と指示をすることなく、以下のような見守りをおこないます。
- 子どもの意思を尊重してチャレンジする姿勢を見守る
- 失敗が成長の糧になると信じて子どもに任せる
- 小さなトラブルは介入せず自分で解決させる
人に迷惑をかけたり、命に関わるような危険なことをしたりしないよう、しつけたうえでの放任です。自分の意思が尊重されたこと、手や口を出さずに見守ってもらえたことにより、自主性が育まれます。
子どもの可愛さからつい「過干渉になる親」
困っている子どもを放っておけず、ついつい過干渉になるタイプです。わが子の可愛さから、以下のように手や口を出してしまいます。
- 「転ぶよ」「こぼすよ」「落とすよ」など先読みして口を出しすぎる
- 失敗を恐れてつい正解に導こうとしてしまう
- 子どもが自分でできることまで、よかれと思って手を出してしまう
自覚なく過干渉になってしまっている親も多いはず。乳幼児期は問題ありませんが、学童期になると過干渉が自立を妨げてしまう恐れがあります。
子どもを思い通りに動かすため「管理する親」
理想とする子育て像や自分のこだわりがあり、子どもの行動を管理してしまうタイプです。以下のように、子どもに決定権を与えないなどの特徴があります。
- 習い事や遊び相手などを親が勝手に決めてしまう
- 着る服や購入するものは子どもの意見を反映させない
- 子どもが不利益を被ることがあれば率先して解決に向かう
「あなたはなにも心配しなくていい」という合い言葉のもと、親がなんでも管理してしまうと、困ったときの対処法がわからず主体性のない子どもに育つ可能性があります。
放任主義で育てることのメリット
放任主義を育児方針に掲げるメリットは、以下のとおりです。
自分のことは自分でできる子どもになる
放任主義で育てられた子どもは、経験豊富でたくましく育ちます。いつも親にやってもらうのが当たり前になると、ある程度の年齢になっても「朝自分で起きられない」「掃除や片づけの経験がない」など自立の準備ができない可能性が。放任主義で育った子どもは、過干渉で育った子どもよりもたくましく育つといえるでしょう。
自分で考えて行動する自主性が育つ
自分で考えるチャンスをたくさん与えられた子どもは、自主性が身につきやすくなります。「こっちの方がいいんじゃない? 」「それだとこぼれちゃうでしょ」など、子どもが選ぶものや行動に対して親が干渉しすぎると、誰かの意見を聞かなければ動けなくなる可能性も。失敗しても、自分で考えて行動する経験は将来の糧となるでしょう。
好奇心旺盛で経験豊富な子どもになる
あれこれ口出しや批判を受けず、放任してもらうことで好奇心旺盛になれます。親の顔色をうかがわず、気になったことに臆することなくチャレンジする経験は、お金では買えないもの。また、チャレンジするにあたっての責任感も付随して身につきます。
放任主義で育てることのデメリット
放任主義を育児方針に掲げるデメリットは、以下のとおりです。
関わり方によっては愛情不足を感じることがある
「自分でできるはず」という考えから、子どもが困ったときも助け船を出さない状態が続くと、愛情不足を感じる可能性があります。ここで気持ちがすれ違ってしまうと「どうせ興味ないから」と、外でなにか悪いことをしてしまう可能性も。
子どものピンチに気がつかないことがある
子どもの可能性を信じて放任しているうちに、ピンチに気づかないというデメリットも。自分のことを自分でできるといっても、まだまだ子どもです。困難な場面に直面したときにいっしょに対峙してあげなければ、間違った方向に進んでしまう恐れがあります。
周囲にあまりよい印象を与えない可能性がある
「放任」とういう言葉の受け取り方は人それぞれであることから、周囲にはあまりよい印象を持たない人が出てくるかもしれません。とくに、子どもが学校や近所でなにか迷惑をかけたときです。「あそこは放任主義だから」といわれてしまう可能性も考えられます。
【重要】放任主義で育てるときのポイント
ここからは、放任主義で育てるときの重要なポイントをご紹介します。
基本的な社会のルールやマナーを知らせる
放任主義で育てるには、基本的な社会のルールやマナーを身につけていることが大前提です。「子どもには自由に遊んでほしい」という思いから、ルールやマナーが身についていない状態で目を離すと、人の敷地に入って遊んだりポイ捨てをしたりすることも考えられます。周囲からの「放任」への風当たりもきつくなるため、基本的なしつけが大前提です。
管理はしなくとも子どもの行動を把握しておく
子どもの選択や行動に口出ししないことをモットーにしていても、まだ相手が未成年で未熟な子どもであることは忘れてはいけません。子どもだけではどうにもならないトラブルがあったとき、迅速に対応できるよう行動を把握しておく必要があります。「どこで・だれと・なにをする」など、基本の情報共有を徹底しましょう。
必要なときに頼れるよう信頼関係を築く
自分で選択・行動することにより、子どもは生きる力を身につけていきます。しかし、ときには悩み苦しむこともあるでしょう。約束をやぶってしまったり、失敗したりすることも考えられます。そのようなピンチを前に「親に話しても無関心だからな」と思われてしまうと大変です。必要なときにしっかり頼ってもらえるよう、日頃からコミュニケーションを図り信頼関係を築いておくことが大切です。
まとめ
この記事では、子育てにおける放任主義について解説しました。子どもの力を信じ、自分で生きていく力を身につけるために有効な子育て方法ですが、場合によっては「ほったらかし育児」と思われてしまうことも。放任主義は、子どもとの信頼関係や深い愛情がなければ成り立たないものです。ときには叱り、ときには全力でサポートするなど、臨機応変に対応していきましょう。
保育士経験を活かし、季節の行事に家族で手作りの飾りつけを楽しむのが趣味。
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