書籍紹介『えほんのせかい こどものせかい』絵本の時代は、心を育てる時代——。

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【ほいくらし本棚|オススメの1冊】『えほんのせかい こどものせかい』(松岡享子 著)
『うさこちゃん』『パディントン』シリーズの訳者として知られる松岡享子さん。翻訳家、児童文学作家として活躍する一方で、東京子ども図書館の名誉理事長もつとめており、絵本に囲まれた素敵な空間で、子どもたちをあたたかく見守り続けてきました。そんな松岡さんだからこそ伝えられる「子どものための絵本ガイド」が、今回ご紹介する『えほんのせかい こどものせかい』(文春文庫)です。
本作は、1987年に単行本として刊行されて以来、24刷まで版を重ねているロングセラー作品。今回、オリジナルページを多数追加収録して文庫化されたことから、あらためて注目を集めています。
絵本選びや読み聞かせの方法に悩んでいませんか?

みなさんは子どもたちに絵本を読んであげるとき、どのようなことを意識していますか? おそらく、多くの保育者が「子どもの心に良い影響を与えたい」「マナーや正しい生活習慣を身につけるきっかけにしたい」といった願いを込めながら、読み聞かせを実践しているのではないでしょうか。
子どもたちの「健やかな成長」に携わる大人として、それらは当然意識しなくてはならないこと。情操教育に適した物語を選ぼうと心がける気持ちは、とても理解できます。でもふとしたときに、「この絵本、本当に子どもたちが読んでほしいと思っているのかな?」「この読み方では、子どもたちの心をつかめていない気がする」などの“素朴な疑問”が頭によぎることはありませんか?
そんなとき、“頼りになる絵本ガイド”があると、すごく心強いですよね。
となれば、『えほんのせかい こどものせかい』の出番です。本書には、優れた絵本を選ぶポイントや読み聞かせのコツ、さらには厳選された34冊の絵本紹介まで、長年にわたって絵本の素晴らしさを伝えてきた経験からつづられる素敵なエピソードが満載。絵本選びや読み聞かせに迷ったときの強い味方になってくれるはずです。
絵本から受けた教訓は、子どもの成長とともに長い年月をかけて育まれる

松岡さんは本書の中で、保育者が子どもに絵本を読んであげるときの思いについて、「どうして作品の“ねらい”や“意図”を問題にし、子どもたちを“引っ張ったり”、“もっていったり”することに熱心なのでしょう」と指摘しています。
たしかに私たち大人は、「せっかく絵本を読むんだから、何かしらプラスになるものを受け取ってもらいたい」と考えがちです。でも、松岡さんは「絵本に作られるような短いお話の中にも、深い教訓が含まれていることは少なくありません」とした上で、次のように述べています。
しかし、それは、お話のおもしろさのかげにかくれて、子どもの心にすべりこみ、
そこで長い間じっとしているうちに、子どもといっしょに成長していくような性質のもので、
ことばとして教えたり、その場で理解させたりできるものではありません。
引用:『えほんのせかい こどものせかい』49ページより(松岡享子 著/文春文庫)
たとえ絵本の中に教訓が潜んでいたとしても、それは子どもが成長していく過程で、少しずつ感じとっていくもの。絵本を読んだそばから「このお話は何を伝えたいのかな?」「どういうことを学んだ?」と、教訓を探すような作業を強いてはいけない、というわけです。
また松岡さんは、子どもたちが純粋に物語を楽しめるように、あるいは絵本の世界にすっと入っていけるようにする読み方には、いくつかの注意点があるといいます。詳細は本書に譲りますが……。絵本の持ち方からめくり方、心のこめ方まで、細かい点に着目しながら解説されているので、それらを意識するだけで、読み聞かせの時間がより楽しいものになりそうです!
おすすめの34冊の絵本の紹介ページにも、一冊ごとに読み方のポイントがつづられているので、絵本選びや読み聞かせをするときには、そちらもぜひ参考にしてくださいね。

文/保育ライター野口 燈
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