レッジョエミリアとは|特徴・メリットや一般的な教育方法との違い

日本・海外の保育園で行われている幼児教育法には、さまざまな種類があります。中でも、イタリア発祥の「レッジョエミリア教育」は子どもの興味・関心に主眼を置いた教育法であり、明確なカリキュラムや時間割は存在しません。レッジョエミリアは、子どもたちの創造力を高めたり自主性を育んだりできる幼児教育法として注目されています。
当記事では、レッジョエミリアの教育理念や一般的な教育との違いを紹介します。レッジョエミリアを取り入れるメリットが知りたい方や、実践する際のポイントが知りたい方は必見です。
1. レッジョエミリアとは?
レッジョエミリアとは、北イタリアにある「レッジョ・エミリア」という都市で誕生した教育方法です。レッジョエミリア教育は、自由なアート活動や保育ドキュメンテーションなどを取り入れ、子どもの自立性や協調性を養う教育をプロジェクト形式で行います。
日本では、アートの時間を設けたり、子どもたちの活動を写真や動画で記録して振り返ったりして、レッジョエミリア教育を取り入れている保育施設や幼稚園があります。保護者の方からも注目されている幼児教育法と言えるでしょう。
(出典:厚生労働省「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会(保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業)報告書」/https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf)
1. レッジョエミリアの教育理念
レッジョエミリア教育には、子どもたちの主体性を引き出すために、「社会性」「時間」「権利」の3つの教育理念があります。
・社会性 レッジョエミリア教育では、4〜5人のグループをつくり、子どもたちがお互いに意見を出し合って作業を進めていくのが特徴です。活動の中で、子どもたちはお互いの意見を尊重するようになり、自然と社会性が身につきます。 ・時間 時間割や決まったカリキュラムを設けず、子どもたちのペースで学んでいくのもレッジョエミリア教育の特徴です。時間を制限すると、創造力や好奇心を発揮できないこともあるでしょう。レッジョエミリアでは、子どもたちのペースに合わせて長期的なプロジェクトを組み、ゆとりある教育を行います。 ・権利 レッジョエミリアは、子どもの権利の尊重を重要視した教育方法です。子どもの権利とは、「何かを試す権利」「黙る権利」「迷う権利」などが挙げられます。子どもが持っている一つ1つの特性をすべて受け入れると、子どもの成長につながると考えられています。 |
2. レッジョエミリア教育と一般的な教育の違い
レッジョエミリア教育では、1年単位で1つのテーマについて子どもたちで話し合い、制作をしたり調べたりするプロジェクト活動を行います。日本で取り入れられている教育システムは、子どものうちから計算学習や読書を取り入れる「ヨコミネ式」や、幼児期に言語教育に力を入れる「石井式」などがあります。
レッジョエミリア教育と一般的な教育の大きな違いは、大人が指示を出すのではなく、子どもが自分たちで考えて行動する力を重要視している点です。日本の教育では1年間のカリキュラムが事前に決まっている場合が多く、子どもたちのペースで活動する機会は少ない傾向にあります。
ただし、日本の教育は保育活動の質を高めるために、「低年齢からの子どもの思いや興味を大切にした教育」を重要視しています。一般的な日本の教育は、レッジョエミリア教育とは異なる方法ではありますが、子どもたちの個性を生かし、自主性や社会性を養うという点では、共通点も多いと言えるでしょう。
(出典:厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会(第6回)議事録」/https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000379331.pdf)
3. レッジョエミリア教育を取り入れる3つのメリット
家庭や保育現場でレッジョエミリア教育を取り入れると、多くのメリットがあります。一般的な教育方法では習得が難しい交渉力は、子ども同士で意見を出し合いながら進めていくレッジョエミリア教育であれば、身につきやすいというのもメリットの1つです。
ここでは、レッジョエミリア教育が、子どもの成長にもたらすメリットを3つ紹介します。
1. 子どもの好奇心を刺激できる
レッジョエミリア教育は、子どもの好奇心を刺激できるのが特徴です。一般的な教育ではゴールや時間が決まっており、保育士の方が指示を出し、子どもたちを誘導する保育方法が採用されています。一方、レッジョエミリア教育では、時間やゴールが決まっていないため、1つのテーマに数か月や1年かけて長期的に取り組み、子どもの好奇心を追求して学ぶことが可能です。
また、レッジョエミリア教育は、子どもたちの「なぜ?」「どうして?」という思いを大切にした教育活動です。レッジョエミリア教育を受けると、学びそのものに対しての好奇心を刺激できます。
2. 協調性・自主性・想像力を養える
レッジョエミリア教育のプロジェクト活動は、4〜5人のグループで行います。保育士の方からの指示はなく、子どもたちだけで考えて話し合って行動する必要があるため、協調性や自主性を養うことが可能です。活動の中で、自分の意見を発言したり相手の意見を尊重したりする経験が、多くの学びを得るきっかけとなるでしょう。自分の意見を否定される経験や活動での失敗も、子どもたちに新たな気づきを与えることにつながります。
子どもたち自身が考えたレッジョエミリア教育の中で実施される自由な芸術活動は、創造力を培うことにもつながります。時間にとらわれず、自由な芸術活動にアプローチできるのは、レッジョエミリア教育のメリットの1つです。
3. 交渉力が身につく
プロジェクト活動を行う上で、交渉力と提案力は重要な能力です。活動内容は、グループの子どもたちで話し合って決めるため、自分が「やりたい」と思った内容でも、他の子どもたちを説得できなければ提案は通りません。そのため、グループの仲間を説得できるような交渉力や提案力が必要です。
子どもは、どうすれば自分の提案が仲間に認めてもらえるかを考えて、話し方を工夫するようになります。また、うまく仲間を説得している子どもを観察して、真似をしながら学ぶ場合もあります。仲間への説得や先生との交渉を何度も経験することによって、交渉力や提案力を身につけることが可能です。
4. レッジョエミリア教育を実践する際のポイント
レッジョエミリア教育を実施するには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。以下では、家庭で行う場合と保育園で行う場合の2つに分けて紹介します。
・家庭の場合 自宅で工作をするときには、子どもに好きなように作品を作ってもらいましょう。思うままに制作することによって自主性が育まれるため、子どもが作りたいと言ったものを親たちが否定するのは望ましくありません。工作中に、はさみやノリがうまく使えないときは、すぐに手伝うのではなく、「どうしたら上手に使えるかな?」と問いかけ、子どもに考えさせることも大切です。 作った作品や絵を展示するスペースを設け、作ったときの気持ちを子どもと一緒に話し合い、評価する時間をつくることもポイントです。話し合った内容は、紙などにまとめると、次の作品作りに生かせます。 ・保育園の場合 レッジョエミリア教育で最も重要視されているのは、「子どもの権利」を尊重することです。そのため、保育園でレッジョエミリア教育を行う場合、子どもたちの興味関心に合わせた提案をする必要があります。毎日の保育内容は、子どもの意見を取り入れながら決めていきます。実践できそうな選択肢をいくつか用意し、子どもに意見を聞きながら1日の行動を決めるとよいでしょう。 保育園では、子どもの好奇心を駆り立てる教育環境を用意する必要があります。子どもたちが「どうして?」「何で?」と疑問を持つと、子ども自身が図鑑で調べるなどの行動を起こし、学びにつながります。自然と触れ合える機会を多くつくったり、園内で動植物を観察できるようにしたりして工夫することがポイントです。 |
まとめ
レッジョエミリアとは、北イタリア発祥の子どもの自立性や協調性を養うことを目的とした教育方法です。レッジョエミリアの教育理念には「社会性」「時間」「権利」がありますが、中でも重要視されているのが子どもの権利を尊重することです。一般的な教育との違いは、大人が指示を出すのではなく、子どもが自ら考えて行動する力を重視する点にあります。
レッジョエミリア教育を保育園で実践するときは、子どもたちの興味関心に合わせた提案・保育内容を考える必要があります。自然と触れ合ったり動植物を観察したりできるようにするなど、子どもの好奇心を駆り立てる教育環境を用意することが大切です。
「ほいくらし」では、保育現場で活躍する方に向けて、保育に関するさまざまな情報を発信しています。レッジョエミリア教育の他にも教育に関する情報も掲載しているため、気になる方はぜひご覧ください。
※当記事は2023年4月時点の情報をもとに作成しています
お得な情報や最新コラムなどをいち早くお届け!ほいくらし公式LINE 保育の最新情報や役立つ知識をゆる~く配信中!ほいくらし公式X(旧Twitter)