喫食とは?摂食との違いや喫食率の計算方法・上げ方を解説!
子どもの頃の食事は身体的な栄養だけでなく家族や友達、先生と一緒に食べて食事の楽しさや美味しさを感じ、心の成長にも大きな影響を与えます。幼少期の食事の経験は大人になっても引き継がれるため、何気ない毎日の保育園の食事でも子どもたちに楽しく美味しく食べてもらえるよう工夫が必要です。
当記事では、喫食と摂食の意味の違い、また喫食数の意味と計算方法、喫食数の上げ方などを解説します。子どもたちに給食をしっかり食べてほしいという保育士・栄養士・調理師の方は、ぜひ参考にしてください。
1. 喫食とは?
喫食とは、満足しながら楽しく食事することを意味する用語で、読み方は「きっしょく」です。「美味しく食べる」「楽しんで食べる」といったニュアンスを含みます。
(出典:日本訪問歯科協会 日本訪問歯科協会「「喫食」ってなに?」/https://www.houmonshika.org/oralcare/c88/)
たとえば、家族や仲のよい友人とおしゃべりしながら楽しく食事を摂る行為は喫食です。お腹だけでなく気持ちの面でも充足し、満足感が得られます。
保育の現場においても、子どもたちが食に興味を持ち食べることに意欲的になるには、喫食の時間を持つことが非常に重要です。
1. 喫食と摂食の違い
喫食と似た用語に「摂食」があります。摂食は「(必要な栄養を補給するために)食事を摂る行為」であり、それ以上のニュアンスは加わりません。
(出典:医療法人スカンジナビア会 クリニックささもと歯科「摂食嚥下とは」/http://www.clinic-sasamoto.com/15639276456568)
一般的に、喫食は人間に対し、摂食は動物に対して使われる傾向にあります。下記のような使い方です。
・食材を工夫したところ、子どもたちの摂食率が向上した ・猫の摂食行動を観察する |
ただし、食べる行為に重点を置く場合は、人間に対しても摂食が使われます。たとえば、生きるために必要な食事が摂れなくなったり異常に食べすぎてしまったりする疾患は「摂食障害」です。なお、楽しんで食べられない疾患の「喫食障害」と言います。
(出典:厚生労働省「摂食障害:神経性食欲不振症と神経性過食症」/https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-005.html)
(出典:一般社団法人 日本訪問歯科協会「喫食障害とは」/https://www.houmonshika.org/oralcare/c89/)
2. 喫食率とは?計算方法を解説
喫食率とは、食事を摂った割合を示す数値のことです。下記の2種類があり、どちらを利用するかは職場によって異なります。
・人数に対して食べられた食事数が占める割合(食事の利用数の割合) ・1回の食事でどの程度の量を食べたかを示す割合(食事全体に対する摂取量の割合) |
保育の現場では、食事の利用数の割合を示す喫食率は高くなることが一般的なため、あまり使われません。喫食状況を把握するためには、食事全体に対する摂取量の割合を示す喫食率のほうが重要です。
喫食量が多い場合、子どもたちは必要なエネルギー量をしっかり摂取できていることが分かります。残食量が少なければ、食事に対する満足度が高いことも見て取れます。
以下では、喫食率の計算方法を解説します。
1. 喫食率の計算方法
食事の利用数の割合と食事全体に対する摂取量の割合、それぞれの計算式は以下の通りです。
■食事の利用数の割合の計算方法
・食事の利用数の割合=利用者の総数÷園児・保育スタッフの総数×100 ※利用された食数が70個で、園児と保育スタッフが合わせて80人いる場合、70÷80×100で喫食率は87.5% |
■食事全体に対する摂取量の割合の計算方法
・食事全体に対する摂取量の割合=100-(食事の残量÷提供量×100) ※残った量が40g、提供した量が80gの場合、100-(40÷80×100)で喫食率は50% ※()内の食事の残量÷提供量×100は残食率を表す |
3. 喫食率の上げ方
保育施設では給食が提供されます。栄養バランスの取れた給食を提供することで、子どもの健康増進や成長を促すことが目的です。また、配膳や片付けの方法を知る、行事食や地域の食文化への理解を深めるなど、食に関する指導に効果的な教材としての意味合いも持ちます。
喫食率が低い状況では、子どもたちは必要な栄養が摂取できていないことになり、給食の目的が達成できません。喫食率が低い場合は、上げる工夫をすることが必要です。
ここでは、喫食率を上げる方法を2つ紹介します。
1. 子どもに声掛けをする
子どもは、味覚がはっきりしてくる1歳児ごろから食べ物に好き嫌いが出てきます。栄養バランスよく食べる必要があることが分からないため、嫌いなものは食べません。
食の細い子どもに対しては、食事中の保育士の声かけが効果的です。「苦手なにんじん、食べたんだね!かっこいいね!」「ぱくぱく!噛むの楽しいね!」など、明るく楽しく声かけをしましょう。
保育士が食べて「おいしい~!」と言ったり、よく食べる子どもと同席させ「○○ちゃん、たくさん食べているね!すごいね!」など言ったりするのも効果的です。
2. 食育を取り入れる
子どもは、教わらなければ「食べ物には栄養がある」「栄養はバランスよくとることが大事」といったことは理解できません。そのため、保育に食育の時間を取り入れることが大切です。
食育とは、食に関するさまざまな知識を身につけ、健康的な食生活が送れるようにする教育のことです。
食育は、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けられるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てるもの。 |
厚労省の「保育所における食育に関する指針」によると、保育園の食育では下記を目標として掲げています。
① お腹がすくリズムのもてる子ども ② 食べたいもの、好きなものが増える子ども ③ 一緒に食べたい人がいる子ども ④ 食事づくり、準備にかかわる子ども ⑤ 食べものを話題にする子ども |
各保育園では、午前中に散歩や外遊びをしてお昼にお腹がすくリズムを整えたり、当番活動を通して準備やお片付けを経験させたりなどで食育を取り入れています。園庭で野菜を育てたり、簡単な調理をさせたりする取り組みを行っている園もよく見られます。
3. 栄養士や調理師と関わる機会を設ける
子どもたちと栄養士や調理師の方が一緒に給食を食べるなど、双方が関わる機会を設けることも有効な方法です。子どもたちは、誰かが作ってくれるから毎日給食が食べられることが理解できるようになります。作り方など気になることを聞くうちに、食に対してより興味が持てるようにもなるでしょう。
調理師は、子どもたちが給食を食べている様子を直接見たり話したりして調理の改善点などが分かります。実際の状況に即して食べやすく改善することで、給食の喫食率の向上に結びつくでしょう。
4. 給食献立の見直し
全体的に喫食率が低い場合、給食の献立に問題がある可能性があります。たとえば、見た目が地味で食欲をそそられなかったり、苦手な味のものを出していたりする場合です。
子どもは、苦手な食材でも見た目がかわいければ、食欲をそそられて食べることがあります。にんじんを星形に切ったり、トマトやブロッコリーなどの色の濃い野菜を取り入れてカラフルにしたりするだけで、食べる確率が上がるでしょう。
4. 喫食率と一緒に調べたい嗜好調査
子どもたちに給食を楽しみながらしっかり食べてもらうには、好む味付けや食べやすい食材の形態などを把握し、調理に反映させることが欠かせません。食の嗜好を知るための有効な方法として、嗜好調査があります。
嗜好調査は喫食者の嗜好や食に関する意見を調べる調査です。調査目的は、結果を生かして献立内容や調理方法、給食の提供方法などを改善し、喫食者の食の満足度を向上させることです。保育施設のほか、介護施設や病院などでも行われます。
実施する施設によって調査内容の詳細は異なりますが、保育所で実施する嗜好調査では下記のようなことが分かります。
・保育所の給食について、子どもがどのように感じているか ・給食を食べるようになって、子どもに変化があったか(食べる量が増えた、食に関心を持つようになったなど) ・家庭での食事量や食事中の様子 ・家庭では間食をしているか ・子どもが好きな献立・嫌いな献立 ・給食に対する意見や要望 |
調査の結果はよく検討し、内容を給食業務に反映させることが大切です。結果は表にまとめて園だよりや公式サイト上で保護者に公表されるケースがよく見られます。
嗜好調査の方法には、喫食者に直接質問して答えてもらう方法やアンケート用紙に回答してもらう方法などがあります。病院で実施する場合は、患者の方に聞き取りすることが多いでしょう。保育所で実施される嗜好調査では、幼い子どもが対象者となるため、各家庭にアンケート用紙を配布して母親や父親に回答してもらい、集計する形で実施することが一般的です。
まとめ
喫食は「きっしょく」と読み、満足感とともに楽しく食事をするという意味を持った言葉です。保育園では子どもたちが1回の食事においてどの程度の給食を食べたかを確認するため、喫食率を計算することが重要です。喫食率が低い場合は子どもたちが給食をしっかり食べていないことになるため、喫食率を上げる必要があります。
食事の際に声掛けをしたり保育に食育を取り入れたり、食事を作る栄養士や調理師と関わったりなど、楽しい食事や食品との経験から喫食率の改善が期待できます。嗜好調査も取り入れながら、給食の献立や調理方法を改善し、喫食率の向上を目指しましょう。
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※当記事は2023年4月時点の情報をもとに作成しています
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