子どもの「聞く力」を育てるためには?

子どもの「聞く力」を育てるためには?

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自分の話ばかりする、何度言っても同じことを繰り返す、相手の言っていることを理解できていないことが多い……。今、人の話を聞けない・聞く力が弱い子が増えているといいます。 コミュニケーションを良好にするにも、小学校で授業を理解するにも、「聞く力」がしっかりと育っていないと苦労することになるでしょう。子どもたちのより良い未来のためにも、できれば幼児期から「聞く力」を鍛えてあげたいものです。

小学校入学までに身につけたい「聞く力」

ここで言う「聞く力」とは、ただ単に音を耳に入れるだけの動作を指すわけではありません。相手の言葉を理解しようと集中して聞くことこそ、真の「聞く力」なのです。

人の話を聞けない子は、相手の話の途中で質問したり、集中が途切れておしゃべりを始めたり、モゾモゾし始めて落ち着きがなくなったりしがち。その結果、話を最後まで聞けずに、内容を理解するに至らないのです。

もちろん幼児期の子どもは集中力がなくて当たり前。大人の話をじっと黙って聞ける子は多くないでしょう。しかし、小学校に上がる前に聞く力を育てることは、その後の小学校生活において大きなプラスになります。

心理学博士の榎本博明先生は、『PHPのびのび子育て』で次のように話しています。

近頃では、幼稚園から小学校への移行でつまずく子が多く、深刻な問題になっている」ことを挙げた上で、その原因として「聞く力」が身についていないことを指摘。榎本先生によると、聞く力が不足していると「元気に遊んでいればいい幼稚園時代とは違い、教室で勉強しなければならない小学校生活に適応できない

引用:PHP研究所『PHPのびのび子育て 2020年7月号』

聞く力が弱いせいで、先生の話をじっと聞いていられず、授業中に騒ぐなど自分の衝動をコントロールできない子が急増していることからも、入学前からしっかりと「聞く力」を身につける必要性がありそうですね。

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「聞く力」があれば他の能力もぐんぐん伸びる!?

「聞く力」が弱いと、それにともない他の能力を伸ばすことも難しくなります。逆に「聞く力」がしっかりと育っていれば、次のような力もぐんぐん伸びていくでしょう。

◎読解力

人の話を聞き、何を伝えたいのかを理解することが読解力の土台になります。聞く力がしっかりと身についていれば、話を聞いても本を読んでも、伝えたいことを読み解くことができます。

◎表現力・語彙力

音声を敏感に聞き取る力は、幼児期のほうが優れています。この時期に聞く力が備わっていれば、周りの会話などから新しい言葉や表現をどんどん取り入れて、習得していけるでしょう。

◎共感力・人間関係力

人間関係を円滑にするために欠かせないのが共感力。共感力を発揮するはめには、まずは相手の言葉に耳を傾ける努力をしなければなりません。話を聞く習慣をつけることで、徐々に相手の気持ちが理解できるようになります。

◎がまん強さ

相手が話しているときに、途中で口を挟んだり、飽きてほかのことをし始めたり、無視したりせずに、しっかりと耳を傾けることでがまん強さも身につきます。

このように「聞く力」が身についていると、相乗効果でほかの能力向上も期待できます。幼少期に鍛えるべき力は、何よりも「聞く力」なのかもしれません。

子どもの「聞く力」を育てる大人の話し方

聞く力の弱さの原因は、子どもだけにあるとは限りません。身近な大人である保護者や保育者の“伝え方”によっては、子どもの聞く力が育ちにくくなることも。

文教大学教授の石川洋子先生は、次の点に注意して子どもに話を伝えるとよいとアドバイスしています。

・ゆったりと話す

・タイミングを見ながら、身近な例を取り入れて話す

・気持ちが落ち着いてから話す

・子どもの話にも耳を傾け、共感する

引用:PHP研究所『PHPのびのび子育て 2020年7月号』

ポイントは、「話を聞くおもしろさ」がわかるようになること。子どもが「そうか!」「おもしろい!」「もっと聞きたい!」と思えるような話をするように工夫しましょう。

[参照]

PHPのびのび子育て 2020年7月号,PHP研究所.
PHPのびのび子育て 2020年10月特別増刊号,PHP研究所.
高取しづか(2012),『コミュニケーション力を育てる 実践 ことばキャンプ』,主婦の友社.
野村恵理(2017),『保育者のためのアンガーマネジメント』,中央法規.

文/保育ライター 野口 燈

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