保育の仕事をしていると、過去の大きな失敗や、子どもたちや親御さんに投げかけられた言葉などにより、ときにショックを受けることもあるかもしれません。心理カウンセラー・中島輝さんによる連載第5回目は、「突然、過去の記憶がフラッシュバックして、とてもつらくなる」という悩みに対して考えていきます。
中島さんによると、過去のつらい記憶にとらわれないためには、そのネガティブな感情を否定しようと頑張るのではなく、「ただの感情」として扱うことがポイントだといいます。ストレスや「うつ感情」につぶされないためにも、保育士のみなさんが身に付けておきたい対処法を紹介します。
「過去の記憶がフラッシュバックしてつらい」ときの対処法
突然、過去の記憶がフラッシュバックして、とてもつらくなることがあります。
心理カウンセラー 中島 輝さんからの回答
過去のつらい記憶がフラッシュバックするほど強烈なトラウマを抱えているのは、あなたがそれだけ「葛藤に苦しめられる人生」を一生懸命に生きてきたからです。そう自分を認めて、受け入れることがスタートです。
また、フラッシュバックが起きるのは、「自己肯定感」が低くなっているときだということも、ぜひ知ってほしいと思います。
フラッシュバックするたびに、過去のイヤな出来事に火をつけて、もっと怖くなったり悲しくなったりすることがあります。
だからこそ、「自分はいまネガティブな状態だからそうなるのだ」と、冷静に考える姿勢を持つことです。「フラッシュバックだ!」、「そうか、いま自己肯定感が弱まっているんだ」と、自分を客観視するだけで冷静さを取り戻すことができるはずです。
このように、感情は「ただの感情」として扱い、むやみに自分を責めないようにしましょう。湧き上がってきた感情を、いわば「ただの出来事」として扱うといえばいいでしょうか。
過去の感情といまの感情がぶつかるのは、薄いガラスのコップが強くぶつかるようなもので、必ず両方ともが壊れます。だからこそ、フラッシュバックが起きたときに、「感情はガラスのコップだから気をつけて扱おう」と思うことで、自分を取り戻すことができます。
過去にショッキングな出来事を体験したのなら、フラッシュバックが起きるのは、ある意味ではどうしようもないことです。
大事なのは、過去のイヤな記憶がよみがえってきたときに、「それだけ自分は深く思いを寄せていたんだ」「それだけ真剣に向き合っていたんだ」と、その感情をきちんと「ただの出来事」として扱い、自分を大切にしてあげることです。
それでもネガティブな感情にとらわれがちな人には、「自分の人生に価値がない」と思ったときの対処法でも紹介した、自分に反論するエクササイズをするのも効果があります。わたしはこれを「反省除去」とよんでいます。
《反省除去のエクササイズ》
❶否定的な考えが浮かんだら、その否定的な考えを紙に書き出しましょう。
❷それに対して、まったく別の反論を試みてください。
どうですか? 自分の力で自分の「心のブロック」を外すことができれば、あなたは気持ちをもっとうまく扱えるようになります。
中島 輝さんからのワンポイントアドバイス
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 写真/川しまゆうこ
※この連載は、『自己肯定感が高まる うつ感情のトリセツ』(きずな出版)をアレンジして掲載しています。
自己肯定感が高まる うつ感情のトリセツ
著者名:中島 輝
出版社:きずな出版 2022年4月発売
自己肯定感アカデミー(https://ac-jikokoutei.com/)